交通事故による高次脳機能障害:左半側空間無視とリハビリテーション

2017年07月21日
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交通事故による高次脳機能障害:左半側空間無視とリハビリテーション

交通事故で頭を打ち,左半側空間無視という高次脳機能障害を発症しましたが,視線操作訓練などのリハビリテーションを行った結果,症状が改善して退院しました。




 左半側空間無視 



◆道順が覚えられない


Lさん(男性23歳)は,コンビニに買い物に行くために自転車で家を出て,交差点で自動車とぶつかり,頭を強く打って病院に運ばれました。


Lさんとその家族は,脳の画像診断を見せられて脳の一部が傷付いたことによる病気,高次脳機能障害を発症していると告げられました。



やがて,Lさんの家族はLさんの様子が交通事故に遭う前とは違うことに気付きました。

家族が面会に行くと,病室から団らん室に行きますが,団らん室は病室を出て廊下を左に曲がって15mほど行った左側にありますが,いつまでたっても団らん室への道順を覚えられないのです。病室を出ると廊下を右に曲がって,廊下を果てしなく歩き,すれ違った看護師さんが気づいて呼び止められるなどの問題が起きていたのです。

これは「道順障害」と呼ばれる脳の右半球の一部が傷付いたために起こる,高次脳機能障害の一種だったのです。




Lさんは,体の左側にあるものを無視するようになりましたが,これは右半球を損傷したことによる「左半側(はんそく)空間無視」と言う後遺症と診断されました。

Lさんは,左側に置かれた食べ物を食べ残し,新聞は右側のページしか読もうとしませんでした。
左半側空間無視により,病室を出て左側にある廊下を認知できないため,廊下を左に曲がるべきところを右に曲がってしまうので,道順障害が強く現れていました。

Lさんは,当面入院してリハビリテーションに専念することになりました。







◆リハビリテーションで症状の緩和を実感


LさんとLさんの家族は,はじめはリハビリテーションの効果について懐疑的でした。
というのは,医師から「高次脳機能障害は治らない病気」という説明を受けていたからです。

まだ20代のLさんにとって,病気が完治するかしないかは,これからの人生に大きな影響をもたらします。病気が完全に治るのなら頑張ってリハビリテーションに励むけれど,どうせ治らないのなら長期入院するよりも,早く家に戻りたいとLさんは思うのでした。




リハビリテーションスタッフは,リハビリテーションを行うことで,後遺症が完全に消えることはなくても,症状の改善が期待できること,たとえ後遺症が残っても,その症状に対してどう対処するか方法を覚えることができると,Lさんに説明してくれました。

Lさんは,理学療法士や作業療法士とリハビリテーションを開始しました。




左半側空間無視に対しては,視覚走査訓練,左側に置いたものを右側に移動するなどの作業を繰り返し行いました。「右側にエレベーターがあるから,ここを左に曲がって売店に行く」というように,声を出して自分の行動を確認するで,左側の空間を認識できないことを補いました。

道順が覚えられない道順障害は,左半側空間無視と密接な関係にあるので,左側の空間に対する注意喚起を行うリハビリテーションを繰り返し行いました。

リハビリテーションを繰り返し行った結果,道順障害の症状も徐々に緩和されていき,3カ月後,Lさんは無事退院しました。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:後遺障害認定から逆算して治療中からのフォローが大事な理由
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:膨大な過去事例の集積
解決事例:高次脳機能障害を負われた方の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で高次脳機能障害になったことに気が付くまで

2017年07月20日
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交通事故で高次脳機能障害になったことに気が付くまで

交通事故で頭を打ったので検査を受けても何ともなかったのに,やがて物忘れがひどくなり,1カ月後に再検査をしたところ,高次脳機能障害と診断されました。




 高次脳機能障害に気が付くまで,,, 



◆はじめは頭を打っただけだと思っていた



Pさん(男性35歳)は,休日に近所に買い物に出かけた折に,信号無視の車にはねられて転倒し,舗装道路に頭を激しくぶつけました。

意識ははっきりしており目立った外傷もありませんでしたが,打ったところが頭ということで念のために病院に行って診察をしてもらいました。


病院では,Pさんの頭部のレントゲン撮影とCT検査を行い高次脳機能障害の発病を疑うような異常な所見はないと診断されました。

Pさんは,念のために1カ月後にもう一度検査をすることと,体調に異変を感じたらすぐ受診するようにと言われ,帰宅しました。

Pさんは,会社の中間管理職で,仕事は多忙を極めています。
交通事故に遭った次の日,体調はいつも通りですし頭痛もしないので,いつも通り出社しました。







◆仕事のミスが増え,物忘れが目立つ


Pさんの仕事にミスが目立つようになったことに上司が気づいたのは,事故で頭を打って2週間後のことでした。

部内ミーティングがあることを忘れていて遅刻,レポート提出期限に気付かず準備をしていないなど,仕事の基本を守れないようになったのです。

これでは,中間管理職として部下を指導する立場として問題です。
上司はPさんを厳しく叱責しました。




一方,Pさんの奥さんも最近Pさんの物忘れがひどくなったことに気付いていました。
しかし,「あの人は昔からうっかり屋さんで,約束したことを忘れるのは今に始まったことではないから」と,さほど気にかけていませんでした。







◆致命的な仕事のミス,そして再受診


Pさんが仕事で大きなミスをしたのは,頭を打ってちょうど3週間後のことでした。

大きな商談がまとまる予定の日,得意先を午後2時に訪問する予定でしたが,Pさんは訪問予定を忘れ,別の得意先回りをしに出かけてしまったのです。約束の時間になってもPさんが現れないことに怒った得意先は,商談をなかったことにすると言い出し,会社は大混乱になりました。

ひたすら頭を下げて謝るPさんは,ようやく自分の物忘れが尋常ではないことを自覚しました。

そう言えば,病院を1カ月後に再受診するように言われていた・・Pさんは,再検査の必要性を感じ,翌日休暇を取って救急搬送された同じ病院で,頭部の再検査を受けました。




医師に物忘れがひどくなったこと,仕事でミスが多くなったことを伝えると,精密検査を勧められ,MRI検査の予約をしました。
翌週,
頭部のMRIの撮影をして,専門医が画像を診断したところ,脳の一部が損傷して高次脳機能障害を起こしていることが明らかになりました。

Pさんは会社に診断書を提出し,定期的にリハビリテーションに通っています。
病気の影響による仕事の誤りに対して会社が理解を示してくれたおかげで,Pさんは仕事と治療を両立させています。

あのまま再検査を受けずにいたら,高次脳機能障害を発症していることに気付かず,病気が進んでいただろう・・Pさんは,頭を打ったあとの再検査がいかに重要か痛感しました。




▼参考記事
・解決事例:高次脳機能障害を負われた方の解決事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:高次脳機能障害と家族の会
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:画像読影について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で,後遺障害等級が認められましたが,加重障害との記載がありました。 自賠責保険の加重障害とは何ですか?

2017年07月19日
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交通事故で,後遺障害等級が認められましたが,加重障害との記載がありました。 自賠責保険の加重障害とは何ですか?

加重障害とは,交通事故以前から何らかの後遺障害を負っていた場合において,事故によって後遺障害が重くなった場合の後遺障害です。加重障害と認定されると,以前の後遺障害の分は賠償金が減額されます。




 加重障害 


◆交通事故以前から後遺障害があると,どうなるのか?



交通事故で後遺障害が残ったら,その内容や程度に応じて後遺障害の等級認定を受けて,相手に対して賠償金を請求することができます。
具体的には後遺障害慰謝料と逸失利益が認められます。

ただ,被害者がもともと障害を負っていた場合には,満額の賠償金を認めるのは相当ではないという考えがあります。


もともとの障害の分は交通事故による損害ではないので,賠償金から差し引かないと不都合だということです。

このように,もともと障害があった人が交通事故に遭い,障害が悪化して後遺障害が残った場合を加重障害と言います。

ただし,もともと障害があっても,かならずしも加重障害認定が行われるわけではありません。
もともとの障害と新たな後遺障害が無関係なものであれば,加重障害とする根拠がないからです。

加重障害になるかどうかについては元々の障害と新たな後遺障害の部位によって取扱いが異なるので,以下で見てみましょう。







◆同じ部位に障害があったケース


まず,もともとの障害があった部位に後遺障害が残ったケースです。
この場合には,加重障害となります。


もともと右目の視力が0.6以下だった人が(後遺障害13級相当),事故によってさらに視力が悪化して0.1以下になった場合(後遺障害10級相当)などです。この場合には,後遺障害10級となりますが,もともとの後遺障害の分(13級相当の分)は,賠償金から減額されます。







◆同一の系列に障害があったケース


まったく同じ部位ではなくても,もともとの障害と新たな後遺障害が同一の系列であるケースがあります。この場合にも,加重障害となります。


後遺障害の等級認定では,もともとの後遺障害と新たな後遺障害をそれぞれ認定します。
たとえば,もともとの右手首の障害の等級が12級で,新たな右肘関節の後遺障害が10級の場合には,9級相当となります。


その上で,もともとあった障害の分の賠償金を差し引いて,本件の賠償金を計算します。







◆無関係な部位に後遺障害があったケース


最後に,まったく無関係な部位に後遺障害が残ったケースを考えましょう。
この場合,もともとの障害と新たな後遺障害が無関係なので,加重認定とはなりません。


たとえばもともと視力の低かった人が,右腕に後遺障害が残ったケースです。
認定された等級について賠償金の減額がされるということはありません。







▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:後遺障害等級認定の異議申立て
・解決事例:異議申立により非該当から14級9号となった事例(過去の交通事故での後遺障害と同一部位ではない事故)
・交通事故HP:交通事故による後遺障害の解説




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で後遺症が残ったので,等級認定申請をしたいと思っています。申請方法はどのような方法がありますか?

2017年07月18日
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交通事故で後遺症が残ったので,等級認定申請をしたいと思っています。
申請方法はどのような方法がありますか?

後遺障害の等級認定申請の方法には,事前認定の方法と被害者請求の方法があります。被害者請求のほうが,手続を自分でコントロールしやすいです。




 後遺障害等級認定申請 


◆後遺障害等級認定申請の方法は2種類



交通事故に遭って怪我をして,治療を継続したものの,その怪我が完治せず症状が残ることがあります。
その場合,残った症状に応じて後遺障害が認められます。

ただし,後遺障害として認めてもらうためには,後遺障害の等級認定を受けなければなりません。




等級認定を受けられていない状態では,相手の保険会社に対して後遺障害慰謝料や逸失利益の請求をしても,支払を受けられることはまずありません。

後遺障害の等級審査をするのは自賠責損害調査事務所ですが,そこで審査をしてもらうための方法には,事前認定と被害者請求の2種類があります。以下で,順番に確認しましょう。




(1)事前認定

事前認定とは,相手の任意保険会社に後遺障害の等級認定請求の手続をしてもらう方法です。
被害者が自分で手続を行う必要はありません。

事前認定をする場合には,被害者は通院している病院において,担当医師に「後遺障害診断書」を作成してもらうだけで済みます。それを受けとって,相手の任意保険会社に渡したら,相手の任意保険会社が必要な手続を進めてくれます。


ただし,この方法は,被害者にとって非常に重要な後遺障害の等級認定を相手に任せてしまうのですから,不安が大きいです。どのような資料を提出するかも任意保険会社が決めるなど,実際にどのような手続が行われているのかは被害者には公開されず,不透明であることも問題です。

任意保険会社が自賠責損害調査事務所に対して,低めの等級が相当であるといった意見書を提出することもあるようです。




(2)被害者請求

被害者請求とは,被害者自身が相手の自賠責保険に対して直接,後遺障害の等級認定請求を行う方法です。被害者請求をする場合には,相手の任意保険会社は関与しません。

被害者請求を行うためには,相手の自賠責保険会社に連絡を入れて,保険金請求書の書式一式を送ってもらいます。

そして,保険金請求書や事故状況発生報告書などの書類を作成し,交通事故証明書や後遺障害診断書,診療報酬明細書やレントゲン画像,CT画像などの各種の検査結果などを集めて,相手の自賠責保険会社に送付します。
追加で必要な書類があれば,収集して提出する必要もあります。


被害者請求は大変手間がかかりますが,自分で手続をするのでどのような資料を提出するかを自分で選択できますし,どのような資料が審査に用いられているか分からないという状態ではないという点で,安心感があります。







◆被害者請求を成功させる方法


確実に後遺障害の等級認定を受けたいなら,任意保険会社任せにしてしまう事前認定ではなく,被害者請求を利用して手続を自分でコントロールする方法がおすすめです。

ただ,被害者請求は専門的な手続なので,被害者本人がうまく対処出来ないこともあります。こうした場合には,弁護士に手続を依頼することが有効です。




今,交通事故の後遺障害が残って等級認定請求をしようとしている人は,一度交通事故問題に強い弁護士に相談すると良いでしょう。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:後遺障害申請の準備はとっても大切!!
・解決事例:会社員が,頚椎捻挫及び腰部打撲後の疼痛により,併合14級の認定を受け,375万円を獲得した事例
・交通事故HP:交通事故による後遺障害の解説




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭う前から既往症がありました。このような場合,過失相殺されるのでしょうか?

2017年07月14日
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交通事故に遭う前から既往症がありました。このような場合,過失相殺されるのでしょうか?

既往症の内容や程度によっては,過失相殺と同様の考え方によって賠償金額が減額される可能性があります。




 既往症と過失殺傷 


◆既往症とは



交通事故被害者が怪我をすると,慰謝料をはじめとした損害賠償金を加害者に請求することができます。

ただし,被害者に既往症がある場合には,その既往症が考慮されることがあります。

既往症とは,被害者がもともと持っていた症状や持病のことです。

たとえば,もともとヘルニアの症状があった人が交通事故に遭ってむちうちになった場合,既往症による影響があったのではないかが問題になります。

この場合,被害者の既往症によって症状が悪化しているのであれば,満額の賠償金を認めるのは不公平であり,賠償金額を減額すべきではないかということが問題となります。




そして,被害者に既往症があり,交通事故の怪我の症状に影響していると判断されると,賠償金が減額されることもあります。







◆過失相殺と素因減額


被害者に既往症がある場合には,過失相殺と同様の考え方によって賠償金が減額されます。

過失相殺とは,交通事故の被害者に過失がある場合に,その割合によって賠償金を減額することです。たとえば,過失割合が30%の場合には,賠償金額が3割減額されます。

被害者に既往症がある場合,被害者側の事情も加わって損害が発生したという点で過失相殺と同様ですので,過失相殺と同様の考え方により,賠償金を減額します。

このように,既往症を理由として賠償金を減額することを,素因減額といっています。







◆素因減額が認められる事例


それでは,素因減額はどのようなケースで認められるのでしょうか?
この点については,最高裁判所の判例があります。

まず,交通事故被害が発生したときに,被害者の疾患の態様や程度などにより,加害者に全部の賠償をさせることが不公平な場合には,過失相殺と同様の考え方で賠償金を減額できるとされています(最判平成4年6月25日)。

一方,被害者が平均的な体格や通常の体質とは異なる身体的な特徴を持っていても,それが疾患や一般人とかけ離れた身体的特徴(極端な肥満など)ではなく,単なる身体的特徴にとどまるときは,それを理由に賠償金を減額することはできないとも判断されています(最判平成8年10月29日)。


これらの判例や,さらに他の裁判例もまとめると,被害者に何らかの既往症があり,それが「疾患」等といえるほどのケースにおいては素因減額が行われますが,年齢相応の状態にとどまるときや,そもそも単なる身体的な特徴にとどまるときは,素因減額は行われません。




保険会社と示談交渉をしていると,何らかの身体的特徴があるとすぐに「既往症減額」を主張されることが多いですが,減額すべきではないケースもあります。

減額すべきケースではないのに適正な解決ができなかったという事態を防ぐためには,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:医師を味方につけよう!
・交通事故HP:交通事故の過失相殺とは
・交通事故HP:交通事故と弁護士費用のすべて




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の慰謝料が増額される場合は,どのような場合ですか?

2017年07月13日
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交通事故の慰謝料が増額される場合は,どのような場合ですか?

交通事故で怪我をしたら,相手に対して慰謝料を請求することができます。
交通事故の慰謝料が増額されることはありますが,増額理由はケースによってさまざまです。


また,必ずしも増額されるというものでもありませんし,増額幅も一定ではありません。以下で,どのような場合に増額されることがあるのかを見てみます。





 慰謝料の増額 


◆交通事故の慰謝料には幅がある



交通事故の慰謝料には,入通院慰謝料と後遺障害慰謝料,死亡慰謝料の3種類があります。

@入通院慰謝料とは,交通事故によって入院や通院による治療が必要になったことに対する慰謝料です。
A後遺障害慰謝料とは,事故によって後遺障害が残ったことに対する慰謝料です。
B死亡慰謝料とは,交通事故で死亡したことに対する慰謝料です。



これらの慰謝料には,算定のための基準がありますが,ある程度の幅が設けられています。


たとえば,後遺障害1級の場合の後遺障害慰謝料は,標準額は2800万円となっていますが,2600万円〜3000万円程度の幅があり,事案に応じて適切な金額が適用されます。

死亡という結果や後遺障害等級が共通する場合でも,慰謝料額が一定とは限らないということです。







◆交通事故の慰謝料が増額される要素


それでは,交通事故の慰謝料が増額される要素としては,どのようなものがあるのでしょうか?

(1)流産,中絶したケース
まずは,事故によって流産したり中絶したりしたケースです。
このような場合,母親の受けた精神的苦痛は甚大になることが多いので,母親の慰謝料が増額されやすいです。

(2)退職,廃業したケース
交通事故が原因で働けなくなり,会社員が退職を余儀なくされたり,自営業者が廃業せざるを得なくなったりするケースがあります。このような場合にも慰謝料の増額が認められやすいです。

退職したときの慰謝料増額については(事故によって退職を余儀なくされたかどうかの判断が先にされることになると考えられますが),被害者の年齢や勤続年数などが考慮されます。年齢が高く再就職が難しい場合などには,慰謝料は増額されやすいと考えられます。

会社員の場合には,昇進が遅れたり不可能になったりする場合にも慰謝料が増額されることがあります。自営業者が廃業した場合,年齢が高く再度の起業が難しい場合には慰謝料が高額になりますし,投下資本があったり事業のために借入をしていたりするようなケースでも,慰謝料が高額になる可能性があります。




(3)入学,留学できなくなったケース
さらに,子どもや学生が入学や留学できなくなったケースでも,慰謝料が増額される可能性が高いです。

(4)離婚したケース
交通事故が原因で家族関係が不和になり,離婚せざるを得なくなったケースでも,やはり慰謝料が増額されることがあります。

(5)悪質な加害者
飲酒運転,ひき逃げ,大幅なスピード違反などがあると,慰謝料増額の理由とされることがあります。

(6)危険な状態に陥った
一時生命の危険が生じるようなけがをしたときは,慰謝料増額を検討しなければなりません。




このように,慰謝料が増額される事由にはいろいろありますが,それぞれの事情があっても必ずしも慰謝料が増額されるとは限りませんし,増額される金額も一定ではありません。

慰謝料増額事由があるのに適正な解決ができなかったという事態を防ぐためには,交通事故問題に強い弁護士に相談することが大切です。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:慰謝料について増額される場合
・交通事故HP:交通事故と慰謝料のすべて
・解決事例:自営業者が左肩関節痛・左肩関節可動域制限により10級10号の認定を受け,3680万円を獲得した事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭った被害者本人だけではなく,家族の慰謝料が認められる場合はありますか?

2017年07月12日
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交通事故に遭った被害者本人だけではなく,家族の慰謝料が認められる場合はありますか?

家族の慰謝料が認められることはあります。死亡慰謝料の場合に認められやすいですが,重傷のケースでも家族の慰謝料が認められる可能性があります。




 家族の慰謝料 


◆交通事故の慰謝料と家族の精神的苦痛について


交通事故に遭って生命や身体に傷害が発生した場合,被害者本人には慰謝料が発生します。
交通事故の慰謝料は3種類あります。

(1)入通院慰謝料 :交通事故の怪我が原因で,入通院治療をした場合の慰謝料
(2)後遺障害慰謝料:交通事故による怪我が完治せず,後遺障害が残ったことに対する慰謝料
(3)死亡慰謝料  :交通事故が原因で死亡したことに対して,支払われる慰謝料

これら3つの慰謝料は,基本的には被害者本人のものです。
精神的苦痛を被るのは,被害者本人だからというのが,一応の理由です。

ただ,家族も精神的苦痛を被ることはあります。
特に死亡事案では,家族の精神的苦痛が強いので,家族の慰謝料が問題になることが多いです。
このような場合,一定のケースでは家族の慰謝料が認められます。







◆死亡慰謝料と家族の慰謝料


死亡事故の場合には,家族に固有の慰謝料が認められやすいです。

まず,自賠責保険の場合には,明確に家族の慰謝料が認められています。
具体的な金額は,以下になります。

・遺族が1人なら550万円,2人なら650万円,3人なら750万円
・被扶養者がいた場合には,遺族が1人なら750万円,2人なら850万円,3人なら950万円


これに対し,任意保険基準や弁護士・裁判基準の場合には,被害者本人の死亡慰謝料に基本的に家族の慰謝料も含まれると考えられています。

ただ,民法711条は,配偶者と子ども,親には固有の慰謝料を認めているため,配偶者や子ども,親の場合には,固有の慰謝料が認められ,本人の慰謝料とは別途認められるケースがあります。

また,内縁の配偶者や兄弟姉妹の場合にも,固有の慰謝料が認められることが比較的よくあります。







◆重度の後遺障害事案と家族の慰謝料


近親者の固有の慰謝料が認められるのは,基本的には死亡事案のみですが,それにとどまりません。


重度な後遺障害が残ったケースでも,家族が重大な精神的苦痛を被ることが考えられます。



たとえば,被害者の意識が回復しないままの状態になってしまったら,やはり家族は苦しむことになります。
このような場合も,家族の慰謝料が認められる可能性があります。

最高裁判所の判例は,「死亡にも匹敵するような精神的苦痛」を被った場合には,家族も慰謝料を請求しうるとしています。

被害者の意識が回復しないケース,重度な高次脳機能障害になったケース,重度な麻痺が残ったケースなど,家族による介護が必要になる事案で認められやすいです。




家族の慰謝料の金額算定においては,後遺症の等級,被害者の関係や今後予想される介護状況,被害者本人の慰謝料額等が考慮されます。慰謝料の金額としては,被害者本人に認められる慰謝料の10〜30%が目安となっているようです。




▼参考記事
・解決事例:横断歩道上で発生した死亡事故について4400万円の賠償が認められた事例(遺族固有の慰謝料の請求)
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:死亡事故による慰謝料
・交通事故HP:交通事故と慰謝料のすべて




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い後遺障害等級が認定された場合,慰謝料はいくらもらえるですか?

2017年07月11日
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交通事故に遭い後遺障害等級が認定された場合,慰謝料はいくらもらえるですか?

後遺障害が認定されると,認定された等級によって後遺障害慰謝料の支払を受けることができます。
後遺障害慰謝料は,認められた等級によって金額が変わってきます。また,採用する慰謝料の基準によっても金額が変わってきます。





 後遺障害慰謝料 


◆後遺障害慰謝料とは


交通事故に遭って怪我をした場合,治療を継続しても症状が完治しないことがあります。

その場合,残ってしまった症状のことを,後遺症と呼んでいます。その後遺症が,後遺障害に認定されるかどうかが問題となるわけです。




交通事故で後遺障害が残った場合には,事故の相手に対し,後遺障害慰謝料の支払を請求することができます。後遺障害慰謝料とは,交通事故により後遺障害が残ったことで発生する精神的損害に対する賠償金のことです。

後遺障害慰謝料の金額は,認定された等級によって異なります。後遺障害には重い方から1級〜14級までの等級がありますが,後遺障害慰謝料は,1級の場合に最も高額となり,だんだんと低い金額となって,14級の場合に最も低額となります。










◆等級ごとの後遺障害慰謝料


後遺障害慰謝料の計算基準には,自賠責基準と任意保険基準,弁護士・裁判基準の3種類があります。
自賠責基準の場合には最も低額となり,任意保険基準は中間値,弁護士・裁判基準なら最も高額になります。

以下で,等級ごとで認められる後遺障害慰謝料の金額を確認しましょう。



このように,弁護士・裁判基準を採用すると,他の2つの基準を使う場合よりも大幅に後遺障害慰謝料の金額が上がります。2倍以上になることが多く,3倍以上になっていることもあります。

適正な後遺障害慰謝料を受けとるためには,弁護士・裁判基準を使って計算することが必要であることがわかります。










◆高額な後遺障害慰謝料を受けとる方法


交通事故で後遺障害が残ると,多大な精神的苦痛を被るものです。
お金を支払ってもらっても健康が戻ってくるものではありませんが,せめて適正な慰謝料を受けとることが被害者の救済となります。


交通事故で高額な後遺障害慰謝料を請求するには,弁護士・裁判基準で慰謝料を計算することが必要です。そのためには,弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。被害者が自分で示談交渉をすると,任意保険会社は低額な任意保険基準で慰謝料を計算するので,金額を下げられてしまうからです。

交通事故で後遺障害が残ったら,適正な賠償金を受けとるために,交通事故問題に強い弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・交通事故HP:交通事故による後遺障害の解説
・交通事故HP:後遺症(後遺障害)
・解決事例:会社員が腰痛により8級相当の認定を受け1080万円を獲得した事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:賠償の大きな要素 慰謝料について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で,入通院したことに対する慰謝料はいくらもらえますか?

2017年07月10日
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交通事故で,入通院したことに対する慰謝料はいくらもらえますか?

入通院したことに対する慰謝料を入通院慰謝料といいますが,入通院慰謝料は,入通院期間に応じて計算されます。




 入通院慰謝料 


◆入通院慰謝料とは




交通事故に遭って怪我をすると,入通院による治療が必要になることが多いです。

交通事故によって入通院した場合には,入通院慰謝料という慰謝料が発生します。

入通院慰謝料の金額は,入通院した期間によって変わってきます。入通院期間が長くなればなるほど,慰謝料の金額が上がります。
また,通院期間よりも入院期間の方が慰謝料の金額が高額になることが多いです。







◆入通院慰謝料の計算基準


では,入通院慰謝料は,具体的にどのくらい支払われるのでしょうか?

入通院慰謝料の金額の計算方法には,自賠責基準と任意保険基準,弁護士・裁判基準の3種類があり,それぞれによって計算金額が異なります。以下で,順番に見てみましょう。




【自賠責基準】
自賠責基準による入通院慰謝料は,4200円×治療日数となります。
治療日数は,以下の2つのうち,少ないほうを採用します。


・治療期間
・実通院日数×2


たとえば,治療期間が3ヶ月(90日)の場合,実通院日数が35日であれば,35日×2=70日の方が小さくなるので,こちらが治療日数として採用されます。
このケースで認められる入通院慰謝料の金額は,4200円×70日=294000円となります。







【任意保険基準】
任意保険基準による入通院慰謝料は,任意保険会社によって多少異なりますが,だいたいの相場があります。

入通院の日数に応じて入通院慰謝料が定められていて,入院の方が通院より慰謝料が高額になります。たとえば通院3ヶ月の場合には,多くの場合,378000円となるようです。







【弁護士・裁判基準】
弁護士・裁判基準による入通院慰謝料も,入通院の期間に応じて定められます。
弁護士・裁判基準の場合,むち打ち症で他覚所見がない場合等とそれ以外のケースによって,入通院慰謝料の金額が異なります。




むち打ち症で他覚所見がない場合等のほうが,それ以外のケースよりも入通院慰謝料が低額になります。しかしむち打ち症で他覚所見がない場合等においても,任意保険基準や自賠責基準より高額になります。

治療機関が長くなると慰謝料が高額になりますし,通院期間よりも入院期間のほうが,その期間が同じであれば,慰謝料の金額は上がります。弁護士・裁判基準による入通院慰謝料の金額は,表になってまとまっているので,それを確認して各事案に適用します。




たとえば通院3ヶ月の場合には,むち打ち症で他覚所見がない場合等で53万円,それ以外の場合には73万円となります。自賠責基準では294000円(実通院日数が35日の場合),任意保険基準では378000円だったので,弁護士・裁判基準にすると,大幅に慰謝料の金額が上がっていることがわかります。




交通事故で怪我をして,適正な入通院慰謝料を受けとるためには,弁護士に示談交渉を依頼して弁護士・裁判基準を適用させなければなりません。




▼参考記事
・交通事故HP:交通事故と慰謝料のすべて
・解決事例:相手保険会社と公証して示談金額を大幅に増額した事例(14級9号)
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:賠償の大きな要素 慰謝料について

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の死亡逸失利益の計算における生活費控除率とは何ですか?

2017年07月07日
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交通事故の死亡逸失利益の計算における生活費控除率とは何ですか?

生活費控除率とは,死亡逸失利益の計算のときに,被害者の生活費として必要だった金額を差し引くための割合のことです。




 生活費控除率 

◆生活費控除率とは


交通事故で死亡すると,相手に対して逸失利益を請求することができます。

逸失利益とは,死亡したことにより,将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入のことです。逸失利益を計算するときには,就労可能年数に対応する収入の計算をします。

しかし,死亡すると,本来かかるはずだった生活費が不要になります。

そこで,逸失利益からは,この不要になった生活費の分を差し引かなければなりません。そのために生活費控除を行います。そして,生活費控除率とは,この生活費の控除を行うための計算割合です。




死亡逸失利益を計算するときには,
基礎収入×就労可能年数に対応するライプニッツ係数×(1−生活費控除率)で計算します。

そこで,生活費控除率が多ければ多いほど,死亡逸失利益の金額は減ってしまうことになります。







◆生活費控除率の割合


次に,生活費控除率の割合を見てみましょう。
これについては,自賠責保険基準と任意保険基準,弁護士・裁判基準で異なる割合が採用されています。

(1)自賠責基準
自賠責基準での生活費控除率は,以下のとおりです。被害者に被扶養者がいるかいないかで区別されます。
・被害者に被扶養者がいる場合 35%
・被害者に被扶養者がいない場合 50%





(2)任意保険基準
次に,任意保険基準による生活費控除率を見てみましょう。
これについては各任意保険会社によっても異なりますが,概ね次のような数字が採用されています。

任意保険基準では,被害者に被扶養者がいたかどうかや,被扶養者の人数によって生活費控除率が異なります。

・被害者に被扶養者が3人以上いる場合 30%
・被害者に被扶養者が2人いる場合 35%
・被害者に被扶養者が1人いる場合 40%
・被害者に被扶養者がいない場合 50%




(3)弁護士・裁判基準

それでは,慰謝料が最も高額になる弁護士・裁判基準ではどのようになるのでしょうか?

弁護士・裁判基準では,被害者が一家の大黒柱であったかなかったかによって,異なる割合が採用されています。また,任意保険基準と同様,被扶養者の有無や数によっても生活費控除率が異なります。

《被害者が一家の大黒柱であったケース》
・被扶養者が1人 40%
・被扶養者が2人以上 30%



《被害者が一家の大黒柱ではなかったケース》

・女性の場合 30%
・男性の場合 50%





以上のように,生活費控除率が大きくなると逸失利益が半額になることもあるので,生活費控除率がどのくらいになるかは重大な問題です。

弁護士・裁判基準を使うと被害者にとって有利になるケースが多いので,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:死亡事故の場合における生活費控除率
・解決事例:死亡された方の解決事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:交通事故被害がない社会




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)
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