交通事故に遭いました。現在治療中です。物損については既に示談済みで,過失割合1対9で示談しました。過失割合について合意したのですから,人身損害についても1対9になることは既定と考えて良いのでしょうか?

2017年09月25日
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交通事故に遭いました。現在治療中です。物損については既に示談済みで,過失割合1対9で示談しました。

過失割合について合意したのですから,人身損害についても1対9になることは既定と考えて良いのでしょうか?




この場合,人身損害については1対9とは異なる過失割合が認定される可能性があります。




 過失割合 (物損事故と人身事故) 



◆物損部分と人身損害は,別に示談することが多い



交通事故で被害に遭ったら相手の保険会社に対して賠償金の請求を行いますが,物損と人身損害が発生していたら,その両方を支払ってもらう必要があります。

このとき,物損と人損については別々に示談を行うことが多く,物損に関する示談交渉が先行することが多いです。示談書も別に取り交わします。

ですので,通常は先に物損の示談を済ませて,後に症状固定となった後で人身損害についての示談交渉を開始します。




物損の示談と人身損害の示談は基本的に別の話合いなので,人身損害の示談における過失割合は,物損部分での示談内容に拘束されることはありません。

実際に,物損の示談時には,相手の保険会社が被害者側の過失割合を小さくしてくれても,人身損害の示談交渉をするときには,それより大きな過失割合を主張されてしまうケースはよくあります。

ただ,物損時には被害者対加害者が1対9だったものが,人損時には4対6になるなどの極端な違いが発生することは通常ありません。




物損の示談をするときにも,人身損害の示談をする場合に適用されるであろう割合を予想して,それと似通った数値を適用しますし,物損時の過失割合と人身損害時の過失割合が一致することも,もちろんありえることです。







◆保険会社が物損の過失割合を低くする理由


それでは,保険会社はどうして物損時の示談交渉をするとき,被害者の過失割合を小さくすることがあるのでしょうか?

1つには,物損の金額は人身損害に比べて少額になることが多いためです。もともとの金額が小さいので,被害者の過失割合を小さくしても,保険会社が負担する金額は大きく変化しません。

また,被害者の過失割合を小さくすると,被害者が納得して示談をしてくれやすいので,示談交渉にかける労力やコストを抑えることも可能です。




保険会社にしてみると,物損では被害者の過失割合を小さくして早期に示談を成立させ,後に高額な人身損害部分についての示談をするときには,被害者の過失割合を大きく主張して支払い額を減らすことに,合理性があるのです。







◆物損の示談における過失割合に拘束されるケース


以上に対し,物損の示談における過失割合が,人身損害の示談の過失割合を拘束する場合もあります。

それは,物損の示談書や免責証書において,人身損害部分も含めた過失割合を確認する条項が入っている場合です。

ただ,通常こうした条項が入っていることは少ないので,おそらく本件でも,人身損害の解決の際に過失割合が物損示談成立時の1対9の過失割合に拘束されることはないでしょう。




今回のご相談のように,物損の示談時には1割にしてもらえても,人身損害の示談時にはより大きな過失割合を主張されてしまう可能性があります。

逆に,物損の示談を成立させたときにはスピードを優先させたため,詳細な検討がなされずに過失割合が決められており,一方,人身損害の解決時には過失割合を詳細に検討した結果,物損解決時に合意した過失割合より被害者に有利になるという例も珍しくはありません。




対応に困ったときや納得できない場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。




▼参考記事
・物損の示談において気を付けるべきことは何ですか?
・ポイントを見極める!その3 示談交渉のポイント
・過失割合が争点となり,早期に証拠提出し交渉した結果,賠償金0円提示から240万円を獲得した解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故後の症状で歩行困難となっていましたが,治療中,階段で転んで落ちてしまい,怪我が重くなってしまいました。この場合,賠償はどうなりますか? 転倒したのが治療終了後のときと違いはありますか?

2017年09月22日
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交通事故後の症状で歩行困難となっていましたが,治療中,階段で転んで落ちてしまい,怪我が重くなってしまいました。この場合,賠償はどうなりますか? 転倒したのが治療終了後のときと違いはありますか?




治療中の転倒によって損害が拡大したとき,@事故との因果関係がない,またはA結果発生について被害者にも過失があったという理由で,転倒によって拡大した損害について賠償されなかったり,賠償金額が減らされたりする可能性があります。

治療終了後に転倒した場合,転倒による傷害は事故との因果関係が否定されるので賠償を受けることができませんが,相手に対する請求が減額されることはありません。




 過失相殺 (治療中,治療後) 



◆被害者側に過失があったら「過失相殺」される



交通事故の被害者は,加害者に対して賠償金の支払いを請求することができますが,必ずしも全額の支払をしてもらえるとは限りません。




交通事故には「過失相殺」という考え方があるためです。

過失相殺とは,損害の発生について被害者側に責任がある場合には,被害者の責任部分については請求金額を減額する,という考え方です。

過失相殺をするとき,通常は交通事故状況にもとづいて被害者と加害者双方の過失割合を決めて,自分の過失割合の分だけ損害額を減額することとなります。







◆治療中に悪化させる行為があっても,過失相殺の対象となる


過失相殺が行われるのは,事故時に過失があった場合だけではありません。

もともと,自分に責任のある被害者にはその分の負担をさせようという考え方ですから,事故後に被害者が損害を拡大させたときにも,同じように考えられることになります。

そこで,事故後の治療中,被害者の行動によって症状が悪化し,治療が長びいた場合には,被害者の過失が認められて過失相殺が行われ,相手に請求できる金額が減額されることがあります。

また,このように被害者の行動が介在した場合,事故と発生した損害との間の因果関係が否定されてしまう可能性もあります。




本件のご相談者の場合,転倒した状況にもよりますが,ご相談者様の不注意によって転倒して損害が拡大したのであれば,拡大した損害について過失相殺によって,賠償金額が減額される可能性がありますし,事故との因果関係がないとして賠償されないこともありえます。







◆治療後の事故の場合


それでは,もし治療終了(症状固定)後に転倒した場合であれば,異なってくるのでしょうか?

交通事故の治療費や入通院慰謝料などの賠償金は,原則として,症状固定時までの分が支払われます。
症状固定後の治療費は交通事故とは無関係なものと評価されますし,症状固定後の入通院については慰謝料も認められません。

そこで,治療終了後に転倒されたとしても,それについての損害は交通事故の損害と別扱いになりますから,相手に対して賠償請求することは基本的にできません。治療終了後の転倒事故は,交通事故とは因果関係がないということになります。




以上のように,交通事故には一般には分かりにくい色々な問題があります。また,一般論が常に妥当するとも限りません。悩んだときには、弁護士に相談してみましょう。




▼参考記事
・交通事故の過失相殺とは
・過失相殺で,当事務所の主張を立証し,解決金額が2倍になった交通事故解決事例
・過失割合について納得がいかないのですが,どうすればよいですか




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

会社役員が交通事故に遭った場合,後遺障害逸失利益はどうなりますか?

2017年09月21日
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会社役員が交通事故に遭った場合,後遺障害逸失利益はどうなりますか?

会社役員にも後遺障害逸失利益が認められますが,基礎収入の算定が問題となります。役員報酬を「労働対価部分」と「利益配当部分」に分けて,「労働対価部分」のみを基礎収入の算定対象とします。





 会社役員 後遺障害逸失利益 



◆会社役員にも後遺障害逸失利益が認められる



後遺障害逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残って労働能力が低下するために,本来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入のことです。

後遺障害逸失利益は,事故前に労働をして対価を得ていた人に認められます。そして,その計算は事故前の実際の収入を基礎とします。




そうなると,会社役員の場合にも事故前に役員の仕事をしていたのだから,当然後遺障害逸失利益が認められると考えられます。

ただ,会社役員が支給を受けているのは,労働者の「給料」とは性質が異なります。

役員報酬には,利益配当的な給付が含まれているためです。さらに,会社にお金を残さないために(法人の税務対策),あるいは同族経営の会社では人間関係から,役員報酬を高く設定するということもあります。役員報酬のうちこうした部分は労働対価とはいえないという理屈です。

しかし,会社役員であっても実際に会社に労働力を提供していることも多く,その場合には役員報酬の中に「労働対価部分」が含まれることも事実です。




そこで,会社役員の場合,役員報酬を「労働対価部分」と「利益配当部分」に分けて,「労働対価部分」についての後遺障害逸失利益を計算するというやり方が一般に行われています。







◆労働対価部分はどうやって計算するのか?


後遺障害逸失利益の計算式は,以下の通りです。
事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数


そこで,後遺障害逸失利益を計算するときには,被害者の事故前の基礎収入を明らかにしなければなりません。

役員報酬の場合「労働対価部分」がいくらになるのかが問題です。もちろん,会社の役員報酬規程などに「労務対価部分は●●円,利益配当部分は●●円」と書いてあるわけはありません。仮に書いてあったとしても,その記載だけで決まるとは考えられません。




これについては、個別のケースに応じて具体的に計算する必要があるのですが、以下のような要素を考慮して決定します。

会社の規模 , 同族会社か否か , 会社の利益状況 , 被害者の地位・ 職務内容 , 被害者の年齢 , 被害者の役員報酬の金額 , 他の役員や従業員の職務内容と報酬や給料の金額
同族会社の場合:親族役員と非親族役員の報酬額の差異 , 事故後の被害者と他の役員の報酬額の推移 , 類似会社における役員報酬の支給状況






◆実際の役員の後遺障害逸失利益についての裁判例


裁判例では,事故当時に63歳であった会社代表取締役の基礎収入として,事故前の月収の6割を認めたものなどがあります(大阪地裁平成13年9月18日)。

また,小規模な会社で社長が他の従業員と同様の労働をしている場合や役員が会社の中心的な研究者であった場合などには,全額を基礎収入とするものもあります。(東京地裁八王子支部平成16年3月25日、大阪地裁平成12年9月7日、東京地判平成23年3月24日など)

御質問とは離れますが,被害者が死亡したときの逸失利益については,死亡とともに役員の地位を失うわけですから,役員報酬全てを基礎収入とすべきだとの見解もあります。




以上のように,会社役員でも後遺障害逸失利益を請求できますし,減額をされないケースもあるので,弁護士に相談することをお勧めします。




▼参考記事
・会社役員の交通事故の解決事例
・逸失利益と後遺障害
・休業損害・逸失利益について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の相手方が,対物全損時修理差額費用特約に加入していました。この特約の内容は何ですか?

2017年09月20日
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交通事故の相手方が,対物全損時修理差額費用特約に加入していました。この特約の内容は何ですか?

対物全損時修理差額費用特約は,相手の車の修理費が相手の車の時価を超えるとき,50万円を限度として修理費の補償を相手方が受けることができる特約です。

相手の車が古い場合や,特殊な車両で修理費用が高額なケースなどで役に立ちます。




 対物全損時修理差額費用特約 



◆対物全損時修理費用特約とは


「対物全損時修理費用特約」と聞いたとき,あまり耳なじみがないと感じられるかもしれません。

これは,交通事故の相手の車の修理費用が車の時価額を超えるとき,その修理費用を補償してもらえる保険です。


相手の車の修理費用は,基本的には対物賠償責任保険から支払われます。
そうだとすると,これを無制限にしておいたら,対物全損時修理費用特約をつけておく必要はないとも考えられます。

しかし,対物賠償責任保険は,法律上の支払義務がある範囲までしか補償されません。


修理費が車両時価を超えるとき,対物賠償責任保険からは車両時価までの支払しかされません。そのため,相手の車が古かったり特殊な仕様であったりして,修理費用が時価を超える場合には経済的全損の扱いとなって,修理費用は認められなくなります。





このとき,加害者が対物全損時修理費用特約に加入していたら,被害者は,車両時価額に加え,実際の修理費用の差額を支払ってもらうことができます。

この場合、修理費と車両時価との差額に加害者の過失割合を乗じた額と限度額のいずれかの低いほうの金額が支払われます。

ただし,事故後一定の期間内に実際に修理をしなければならないなどの必要な条件があることがあるので,注意が必要です。







◆対物全損時修理費用特約の補償範囲


対物全損時修理費用特約をつけていても,無制限に差額が認められるものではありません。
多くの場合,限度額が30万〜50万円となります。

よって,対物全損時修理費用特約をつけていても,必ずしも修理代金の全額が補償されるわけではなく,加害者が相手方に限度額を超えて相手に支払いをする場合には,自己負担となります。

一般に,事故で自動車が損傷したとき,修理費用が車両時価を上回る場合は,被害者が納得しにくいため,トラブルが発生することが多いです。




加害者側の視点からみると,この特約があれば,被害者との示談交渉中,「加害者はここまで譲る」というカード(交渉材料)を用意することができて,円満解決に持ち込みやすくなります。

また,刑事手続の関係で早期に示談を成立させたいときは,法律的に差額の支払義務がなくても,加害者が修理費用を全額負担すると話がしやすいです。




このようなとき,対物全損時修理差額費用特約があると,その特約の範囲内ではありますが,差額を自己負担しなくて良いので助かります。対物全損時修理費用特約をつけても,年間の保険料は数百円しか上がりません。

特に頻繁に運転をする方の場合,備えとして加入しておくのが良いと考えています。




▼参考記事
・交通事故と物損Q&A
・損害賠償額の基準に注意!
・当事務所の交通事故解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭いました。私は,搭乗者傷害保険に加入していますが,どのような補償が受けれますか?

2017年09月19日
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交通事故に遭いました。私は,搭乗者傷害保険に加入していますが,どのような補償が受けれますか?

搭乗者傷害保険とは,保険の契約車両に乗っていた人が交通事故で死傷したときに補償を受けられる保険です。

実際に発生した損害額に関わりなく定額が支払われることが普通であり,人身傷害保険など他の保険の支払いがあっても,減額されないので加入するメリットがあります。





 搭乗者傷害保険 



◆搭乗者傷害保険とは


搭乗者傷害保険は,任意保険に加入する際に選べる保険の1つで,交通事故に遭ったとき,契約車両に乗っていた人が補償を受けられる保険です。


交通事故に遭ったとき,事故車両に乗っていた人がケガをしたり死亡したりすると,自分が加入している自動車保険から定まった保険金の支払いを受けることができます。

相手の保険会社と示談交渉が成立しなくても,早期にまとまった補償を受けることができますし,支払いを受けた場合に自動車保険の等級が下がることもありません。

もしものときに,入っていると安心です。







◆搭乗者傷害保険で支払われる保険金


搭乗者傷害保険で支払われるのは,以下のような保険金です。(一例です)


●死亡事故

搭乗者が死亡したケースで,満額の保険金が支払われます。


●シートベルト装着者特別保険金

死亡事故で,搭乗者がシートベルトをつけていた場合,死亡保険金とは別途,その30%に相当する金額が上乗せされます。


●後遺障害が残ったケース

交通事故によって搭乗者に後遺障害が残った場合,後遺障害の程度によって保険金の4%〜100%が支払われます。


●重度後遺障害特別保険金・重度後遺障害介護費用保険金

重度の後遺障害が残り,介護が必要な場合,後遺障害保険金と別に支払われます。


●医療保険金

搭乗者が交通事故の受傷によって入通院をしたとき,定額計算で支払われます。





◆人身傷害補償保険との違い


搭乗者傷害保険は,人身傷害補償保険とよく似ていますが,以下のような違いがあります。


●補償対象が異なります。
搭乗者傷害保険:契約車両に乗車していた場合にのみ適用
人身傷害補償保険:契約者やその家族が,契約車両以外の車に乗っていた場合にも適用

●補償内容も異なります。
搭乗者傷害保険:死亡事故の場合〇円,後遺障害〇級の場合〇円,入院1日〇円などの定額計算
人身傷害補償保険:実際に発生した損害を計算


このことにより,複雑な計算が不要な搭乗者傷害保険の方が,スムーズに支払いを受けられますが,搭乗者傷害保険だけでは,補償額が不十分になる可能性があります。

また,人身傷害補償保険は損益相殺の対象になりますが,搭乗者傷害保険は対象になりません。




以上のように,搭乗者傷害保険と人身傷害補償保険は似ているけれども異なる点があり,両方加入するメリットもあります。交通事故に万全の備えをするためには、両方加入しておくのが良いです。




▼参考記事
・後遺症と保険について
・当事務所の交通事故解決事例
・動画でみる交通事故の解説




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)



交通事故に遭った時は無職でした。その場合,後遺障害逸失利益は認められますか?認められるとしたら,それはどのような場合ですか?

2017年09月15日
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交通事故に遭った時は無職でした。その場合,後遺障害逸失利益は認められますか?認められるとしたら,それはどのような場合ですか?

無職の場合,基本的には後遺障害逸失利益が認められませんが,労働能力と労働意欲があって,就労の蓋然性がある場合には,認められる可能性もあります。




 後遺障害逸失利益 



◆基本的には,無職の人には認められない


後遺障害逸失利益とは,交通事故の後遺障害によって労働能力が低下して,得られなくなってしまった将来の収入のことです。

後遺障害が残ると身体が不自由になるため,それまでと同じようには働けなくなり,本来得られるはずだった収入が失われてしまうという考え方です。

後遺障害逸失利益は,就労可能年齢である67歳までの分が認められるのが一般的です。




このようなことから,後遺障害逸失利益は,交通事故前に現実に働いて収入があった人に認められるのが基本です。

無職無収入の人には当然認められませんし,収入があっても株式や不動産収入だけで生活している人は,後遺障害が残って労働能力が下がったとしても,将来の減収が生じるとは考えられないので,認められません。







◆無職者でも後遺障害逸失利益が認められるケース


それでは,交通事故当時に無職だったなら,どのような場合でも後遺障害逸失利益を支払ってもらうことができないのでしょうか?

無職といっても,いろいろな状態があります。はじめから働く意欲がない人,働く能力が無い人などもいますが,たまたま失業中だったということもありますし,就職活動中であったり既に内定していたりすることもあります。




このように,「実際に就労意欲があって就労する能力がある人」についてまで,一律に「後遺障害逸失利益は認めない」とするのは不合理です。

そこで,以下のようなケースでは事故当時無職であっても,後遺障害逸失利益が認められます。

・就労意欲がある ・就労能力がある ・事故当時において、実際に就労する蓋然性があった

たとえば,たまたま失業中で就職活動中だったケース,すでに内定をもらっていたケースなどでは,無職者であっても後遺障害逸失利益を払ってもらいやすいです。





◆基礎収入の考え方


無職者が後遺障害逸失利益を請求するとき,「基礎収入」をどのように計算すべきかが問題です。実際に働いていた人であれば,事故前の実収入を基礎としますが,無職だった人にはそのような収入がないからです。

この場合,失業者であれば失業前の収入を基準としますし,そうでない場合には賃金センサスの平均賃金を用いて計算することが多いです。

また,平均賃金を使って計算するとき,就労の蓋然性の証明の程度によっては,平均賃金の100%ではなく,8割や7割などに減額されることもあります。




以上のように,無職者であっても後遺障害逸失利益が認められる可能性があります。
相手から「支払いができない」と言われて納得できないと感じているなら,弁護士に相談することをお勧めします。




▼参考記事
・失業中の交通事故。交渉の結果,休業損害が認められた解決事例
・休業損害・逸失利益について
・休業損害・無職者について(裁判基準)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

将来介護費について教えてください。自宅介護と施設介護ではどのように異なりますか? 職業介護費用が認められる場合は,どのようなときですか?

2017年09月14日
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将来介護費について教えてください。自宅介護と施設介護ではどのように異なりますか? 職業介護費用が認められる場合は,どのようなときですか?

自宅介護の場合,自宅改装費用なども認められるため,施設介護よりも賠償金が高額になることが普通ですが,家族に介護の負担がかかります。

職業介護費用が認められるのは,医師の指示がある場合や,症状の内容程度からして特に必要があるケースです。




 将来介護費 



◆将来介護費とは


将来介護費とは,交通事故で被害者に重大な後遺障害が残り,日常で必要な動作をするために介助が必要になったときの将来の介護費用です。

たとえば,交通事故の後遺障害で遷延性意識障害になってしまった場合や身体に麻痺が残った場合,重度の高次脳機能障害になった場合などに認められます。




将来介護費用が認められるのは,原則として後遺障害の中でも,要介護の1級と2級のケースです。

ただし1級や2級に至らなくても,重度の高次脳機能障害が残ったときに認められるケースも珍しくはないです。







◆自宅介護と施設介護


将来介護費用を計算するときには,どのような介護を受けるのかが問題となります。

まず,自宅介護か施設介護かを決めなければなりません。

自宅介護とは,被害者を自宅で生活させて,近親者が自宅で介護する方法です。
これに対し,施設介護とは,被害者を施設入所させて,介護を施設に任せる方法です。




自宅介護の場合,自宅をバリアフリーにするための自宅改装費用や通院用の介護車両,介護用のベッドなどの介護用品などの費用も支払われるため,施設介護よりも将来介護費用が高額になります。ただ,自宅介護にすると近親者の負担は非常に重くなります。

これに対し,施設介護の場合には,金額的には自宅介護よりは少なくなることが多いですが,近親者の負担は軽いです。







◆職業介護費用と近親者の介護


自宅介護を行う場合,職業介護人を雇うのか,近親者が介護をするのかも問題となります。

職業介護人を雇う場合,相手に対して実費を請求できるので,1日あたり1万〜3万円程度の費用が認められます。これに対し,近親者が介護をする場合には,1日あたり8000円となり,金額が下がります。

また,介護を行うとき,できれば近親者がすることが望ましいという考えがあるため,どのような場合でも職業介護人による介護が認められるわけではありません。

自宅介護で職業介護人が必要であると判断されるのは,たとえば医師の指示がある場合や症状の程度が重くて(24時間監視が必要なケースなど)家族が対応できない場合,家族が仕事をしていて近親者による介護ができない場合,日中に介護できない場合などです。




このように,将来介護費用を請求するときには,「どのような介護体制を敷くのか」から検討しなければなりません。

自分たちでは適切に判断できないときには、弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事
・将来の介護費用について
・将来介護費について(裁判基準)
・将来介護費について主張・立証して解決した交通事故事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の被害者ですが,加害者からの謝罪がありません。相手の保険会社に加害者の謝罪を要請しましたが,状況は変わらず,,,どうしても謝罪してもらいたいのですが,どうすればよいですか?

2017年09月13日
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交通事故の被害者ですが,加害者からの謝罪がありません。相手の保険会社に加害者の謝罪を要請しましたが,状況は変わらず,,,どうしても謝罪してもらいたいのですが,どうすればよいですか?

相手に強制的に謝罪させる手段はありません。相手の刑事事件の捜査や起訴の手続が進むと、謝罪してもらえる可能性が上がります。




 加害者からの謝罪 



◆謝罪を強制させることはできない



交通事故に遭って,相手の態度が悪いと被害者としては「許せない」と感じるものです。

この場合,「どうしても謝罪してほしい」と考えることも多いでしょう。




ただ,法律上,制的に謝罪をさせる手段はありません。また,謝罪は気持ちがこもっていてこそ意味のあるものであり,強要して「すみませんでした」と言わせても,何の価値もないものです。

裁判をしても,相手に謝罪させる命令を出してもらうことなどは不可能です。謝罪請求権というものがありません。







◆加害者の態度が慰謝料の金額に反映される可能性がある


ただ,そうであっても加害者が「一切謝罪をしない」という不遜な態度が,損害賠償に影響する可能性があります。

具体的には,慰謝料が増額されることがあります。

慰謝料には相場はありますが,治療費のように固まっているものではありません。事案によってある程度柔軟に算定されます。

ここで,加害者に全く反省がなく謝罪も一切せず被害者が怒っても当然という場合,そのことによって慰謝料が増額されることがあります。







◆刑事事件と関連して謝罪を受けられる可能性がある


また,加害者が刑事事件の被疑者となって捜査が進んでいるときや,起訴されたときは,加害者の方から謝罪の申出をしてくることがあります。

交通事故が起こったとき,結果が重大な場合や被疑者に反省がない場合などには,検察官の判断で加害者を起訴して刑事裁判にすることがあります。検察官が起訴するか不起訴とするかについて,被害者感情も考慮に入れて判断します。

加害者が謝罪し,被害者がそれを受け入れたという事情があると,その判断に影響してきます。




刑事裁判になると,被告人となった加害者は,懲役刑となるおそれもあり,どうにかして刑を軽くしたいと考えます。ここでもっとも効果的な方法は,被害者と示談をすることです。

刑事裁判では,被害者と示談ができて示談金を支払った場合や,被害者から「加害者の刑を軽くしてください」という「嘆願書」が提出されると,加害者の刑を軽くする事情として考慮することがあるからです。

そこで,加害者が刑事裁判になると,相手の方から被害者に連絡をして謝罪をしてきて,「示談をして下さい」と言ってくるのです。

もちろんこうしたとき,示談を受け入れるかどうかは被害者次第ですから,応じなければならないということはありません。また,嘆願書についても,頼まれたからと言って書かなければならないものでもありません。




▼参考記事
・加害者の態度に納得できないのですが,どうすればよいですか?
・事故後の人生
・刑事裁判(手続)で意見を述べたい
・慰謝料・後遺症・増額事由について(裁判基準)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

夫が交通事故に遭いました。ひとまず命は取り留めましたが,自分で考えて判断することはできません。30年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。              子はなく,夫の両親も祖父母も既に他界しています。夫にはきょうだいやいとこもいるようですが,私は面識がなく,夫とも長年連絡を取ったことはないと思います。これから私が連絡を取るのは気が引けてしまいます。賠償についてはどうなりますか。

2017年09月12日
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夫が交通事故に遭いました。ひとまず命は取り留めましたが,自分で考えて判断することはできません。30年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。

子はなく,夫の両親も祖父母も既に他界しています。夫にはきょうだいやいとこもいるようですが,私は面識がなく,夫とも長年連絡を取ったことはないと思います。これから私が連絡を取るのは気が引けてしまいます。賠償についてはどうなりますか。




この場合,成年後見人の選任申立てをして,賠償請求を進めることをお勧めします。




 成年後見人制度 



◆判断能力がないとき,本人が請求することができない


ご相談のケースのように,交通事故が起こると,被害者が意識不明になってしまったり,自分で考えて判断をすることができなくなったりすることがあります。

交通事故の損害賠償請求は,原則的に被害者ご本人が行うべきものです(被害者が死亡したときは別です。)。




上記のように意識不明のときや判断能力が失われたときは,被害者が自分で損害賠償請求を行うことができません。

かといって,内縁の配偶者には示談交渉の代理権はありませんし,遠方の兄弟,従姉妹が見つかったとしてもやはり代理権があるものではないので,このままでは賠償金の請求ができなくなってしまいます。







◆成年後見人とは



成年後見人とは,判断能力が低下した(失われた)本人の代わりに財産管理をしたり,身上監護をしたりする職務を行う人です。認知症の高齢者のケースなどでよく利用されますが,それ以外でも本人の判断能力がなければ利用可能です。

成年後見人には,損害賠償請求権の行使についても本人の代理権が認められるので,選任したら本人に代わって成年後見人が損害賠償の請求を行い,賠償金の支払を受けることができます。

本件のように,本人に判断能力が失われたり低下したりして,適切に自分の財産管理や権利の行使ができなくなった場合「成年後見人制度」を活用する方法が効果的です。







◆成年後見人の申立て方法


成年後見人を選任するためには,家庭裁判所に「成年後見人の選任申立て」をしなければいけません。


手続としては,「成年後見人選任の申立書」を作成し,病院の診断書や戸籍謄本などの必要書類を揃えて,申立て費用の800円分の収入印紙を添えて家庭裁判所に提出したら,その後家庭裁判所で調査が行われて,要件が認められたら成年後見人を選任してもらうことができます。

申立時に候補者を立てることができるので,もし夫の親族が了承をするのであれば,内縁の配偶者自身が自分を候補者として申立てをすることも可能です。候補者がいない場合や成年後見人の成り手について親族間で争いがある場合には,弁護士や司法書士などの専門職の人の中から後見人が選ばれることもあります。




ご相談者の場合にも,まずはお住まいの管轄の家庭裁判所宛に,成年後見人選任申立てをすることから始めることになります。成年後見人の役割は交通事故に関するものだけではないので,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・成年後見人に関してかかった費用は損害として認められますか?
・ご家族が成年後見人となり,成年後見人からの依頼を受けて解決した事例
・高次機能障害の場合,成年後見申立が必要ですか?




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

妻が交通事故で死亡しました。30年年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。子はなく,妻の両親も祖父母も既に他界し,妻にきょうだいはいません。賠償はどうなりますか?

2017年09月11日
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妻が交通事故で死亡しました。30年年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。子はなく,妻の両親も祖父母も既に他界し,妻にきょうだいはいません。賠償はどうなりますか?

この場合,相手の保険会社に対し,扶養の利益を侵害されたことについて賠償金を請求することができますし,ご相談者の固有の慰謝料請求もできます。
また,相続財産管理人選任の申立てを行うことも考えられます。





 死亡事故 内縁の配偶者 



◆内縁の配偶者とは


本件のご相談者のようなケースを「内縁の配偶者」といいます。

内縁の配偶者とは,婚姻届出をしていない配偶者のことです。届けを出していないので,戸籍は別になっていますし名字も異なりますが,戸籍の点を除けば夫婦そのものです。「事実婚」ともいわれます。




事実婚であっても,戸籍の届出をした法律婚と同じ扱いを受けられることも多いです。

たとえば内縁の配偶者であっても遺族年金を受けとることができますし,内縁夫婦関係を解消するには法律婚の解消と同様に財産分与請求をすることもできます。







◆内縁の配偶者には相続権がない


しかし,交通事故で内縁の配偶者が死亡したときの内縁の配偶者の地位は,法律婚の配偶者と異なります。内縁の配偶者には,法律上の配偶者と異なり「相続権」がないためです。


死亡した配偶者の損害賠償請求権も相続することができないため,死亡した配偶者の逸失利益や慰謝料などを相手に請求することができません。







◆内縁の配偶者が相手に請求できる賠償金


そうなると内縁の配偶者の場合,相手に何の請求もできなくなってしまうのでしょうか?

実際には,そのようなことはありません。以下で請求できる権利についてご説明します。




【扶養請求権】
内縁関係にある場合,配偶者によって扶養されていることがあります。
その場合,交通事故で配偶者が死亡すると,扶養を受けられなくなります。

そこで,このように扶養を受けることができる利益を侵害されたことを理由に,加害者に対して損害賠償請求ができると判断した判例があります(最高裁平成5年4月6日)。

本件でも,ご相談者が妻に扶養されていた事情があれば,加害者に賠償請求できる可能性があります。




【慰謝料】
内縁の配偶者の場合,死亡した配偶者自身の慰謝料を相続することはできませんが,内縁の配偶者自身の固有の慰謝料が認められます。

民法では,不法行為によって被害者が死亡したときに配偶者の固有の慰謝料を認めていますが,内縁の配偶者もこれに準じて取り扱われるからです。裁判例にも,こういった内縁の配偶者の慰謝料を認めたものがあります(東京地裁平成18年2月7日、大阪地裁平成21年9月30日など)。

そこで,ご相談者の場合にも,加害者に対してご自身の慰謝料を請求することが可能です。










◆相続財産管理人制度の利用の可能性


御質問の事例では,被害に遭われた方には相続人がいないと思われます(本当にいないかどうかは別途調査が必要です。)。そうであれば,被害者自身の慰謝料や死亡逸失利益などを請求する権利を相続する人もいないことになります。


このように相続人が存在しないとき,死亡した人の財産(慰謝料請求権や死亡逸失利益請求権といった損害賠償請求権も財産です。)を管理する人を選任するという制度があります。相続財産管理人選任申立てという手続です。

この手続をすると,相続財産管理人が被害者の損害賠償請求権を行使して賠償金を受けます。相続財産管理人の業務が終了したとき,相続財産管理人の手元に残った財産は国に納めるのが原則です。




しかし,特別縁故者に対する財産分与の申立てという制度があります。

これは,相続人なくして死亡した人と特別の関係にあった人が,相続財産管理人の手元に残った財産を自己に分与することを求める手続です。

家庭裁判所が特別縁故者であると認めれば,ある程度の財産の分与が認められます(事故による賠償金が全て分与されるとは限りません。)。内縁の配偶者ではありませんが,この方法によったのではないかと思われる裁判例が公表されています(大津家審昭和52年9月10日家裁月報30巻2号141頁)。

死亡事故における相続財産管理人制度の利用の例はあまりないようです。




このように,交通事故で被害者が死亡したとき,内縁の配偶者であっても何の請求もできないということはないので,諦める必要はありません。まずは弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・相続人以外の同居親族もいた死亡事故の解決事例
・死亡事故の無料法律相談Q&A
・死亡事故被害者の救済




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)
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