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交通事故と物損Q&A

交通事故の物損に関してよくある質問をまとめました。
なお、物損のみのご相談は当事務所では現在お取り扱いしていませんのでご了承下さい。
(怪我もしている方の物損のご相談はお取り扱いしております。)

よつばの弁護士たちの打ち合わせ風景

交通事故の物損についてよくいただく質問

事故に遭って車が全損となり車を買い替えざるをえませんでした。諸費用としてどのような費用が請求できますか?(その1)
A登録手続関係費用の一部を損害として請求できます。

自動車を買い替えた場合に、買い替え費用の他にどのような費用がかかりますか?

車買い替え費用の他にかかる費用

車を買い替えた場合には、車本体の代金の他に、意外とたくさんの諸費用がかかります。

具体的には、自動車取得税(令和元年10月1日以降は環境性能割(地方税法145条1号及び146条、軽自動車につき同法442条1号及び443条 ))、自動車重量税、自動車税、自賠責保険料、登録手数料、車庫証明費用、車庫証明代行費用、納車手数料、廃車費用など多数の項目に上ります。

これらの諸費用のうち、損害として請求できるのはどれですか?

車を買い替えた場合の損害賠償請求

以下では、どの項目の費用がどれくらい認められるのか見ていきます。

①自動車取得税★

★(令和元年10月1日以降は環境性能割(地方税法145条1号及び146条、軽自動車につき同法442条1号及び443条 ))

自動車取得税(令和元年10月1日以降は環境性能割(地方税法145条1号及び146条、軽自動車につき同法442条1号及び443条 ))は、事故によって車を買い替えざるを得なくなり、買い替えに際して自動車取得税を支払ったときには、原則として損害として認められます。

ただし、自動車取得税の額について裁判例をみると、新車を購入した際の満額ではなく、事故当時の車と同程度の中古車を購入した場合にかかる自動車取得税の範囲に制限すべきとしているものもあるので、必ずしも満額認められるわけではないことに注意が必要です。

②自動車重量税

自動車重量税とは、自動車の重さに応じて課される税金のことをいいます。自家乗用車の場合、0.5トンごとに税額が増える仕組みになっています。また、新車時からの経過年数によっても税金が上がります。なお、軽自動車の税額は重さにかかわらず定額です。

この自動車重量税は新車を買えばかかりますが、中古車を購入する場合には購入時にはかからないことが多いです。

この自動車重量税については、損害として認められないとされていますが、自動車重量税の未経過分は損害として認められるとされています(平成28年損害賠償額算定基準上巻220頁))。たとえば、自動車重量税の未経過分を損害として認めた裁判例として次のようなものがあります。

①新車として購入時に15万円の自動車取得税を支出している場合に、現時点において被害車両と同等の中古車両を取得する際に要するであろう自動車取得税の限度(事故当時の時価の3%である7万0500円)で損害と認め、自動車重量税については、事故時における被害車両の車検の有効期間の未経過分に相当する金額の限度で損害と認めた事例(大阪地裁平成13年12月19日判決)(平成28年賠償額算定基準上巻220頁~221頁より引用)

②被害車両と同程度の中古車両を取得するのに要する自動車取得税、事故車両の自動車検査証有効期間の未経過部分に相当する自動車重量税…を損害と認めた事例(東京地裁平成15年8月4日判決)(同221頁より引用)

事故に遭って車が全損となり車を買い替えざるをえませんでした。諸費用としてどのような費用が請求できますか?(その2)
A登録手続関係費用の一部を損害として請求できます。

自動車税

自動車税

自動車税とは、毎年4月1日時点での自動車の車検証上の所有者に対して自動的にかかる税金のことをいいます。自家用乗用車の場合、排気量によって税金の額が設定されています。

新しく取得した車両の自動車税は損害として認められません。

自動車税は、廃車された場合には廃車した日の翌月から自動車税の還付を受けることができるため、損害にはならないのです。

自賠責保険料

自賠責保険料

自賠責保険とは、自動車やバイクを運行する際に、自動車損害賠償保障法によって加入が義務付けられている強制保険のことをいいます。

加入しないと罰則の対象となり、自賠責に加入せずに自動車やバイクを運転すると「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」の対象となります。行政処分としては「免許停止処分(違反点数6点)」になりますので、必ず加入しましょう。

通常は車両を購入した際に一緒に加入することが多いように思います。

新しく取得した車両の自賠責保険料は損害として認められません。

自賠責保険は廃車をする際に解約することができ、規定に従って保険料の返還を受けることができるため、損害とは認められないのです。

車庫証明料

車庫証明料

車庫証明とは自動車保管場所証明書のことです。

車両を保有する際は、管轄の警察署に申請を行い、自動車の保管場所の確認を取る必要があります。車庫証明がないと車両の登録ができず、車両を保有できません。

新しく取得した車両の車庫証明料は、損害として認められます。車両の買い替えがなければ発生しなかった費用ですので、損害として認められるのです。

納車費用、廃車手数料

納車費用

新たに取得した車両の納車費用は損害として認められます。これも車庫証明料同様、車両の買い替えがなければ払う必要のなかった費用になるため、損害として認められるのです。

また、全損になった車両の廃車手数料も損害として認められます。

これも事故によって全損にならなければかからなかった費用のため、損害として認められます。

代行手続費用

代行手続費用

新たに車両を購入する際、車庫証明の取得等の手続を販売業者に委託することがあります。この代行手続費用も損害として認められる場合が多いです。

自身で手続をする場合は、代行費用を支払う必要はありませんが、大多数が販売店に代行してもらっていることなどから損害として認められる場合が多いです。

消費税

消費税

新しく車両を取得するに際してかかった消費税も、損害として認められる場合が多いです。ただし、事故時の車両と同等の中古車を購入した場合にかかる消費税の範囲に限定される場合もありますので、注意が必要です。
買ったばかりの車をぶつけられてしまいました。車両の評価損を請求することはできますか?(その1)
Aぶつけられた車の初年度登録からの期間、走行距離、損傷の部位、車種等によりできる場合とできない場合があります。

評価損とは?

事故車

評価損とは、事故当時の車両価格と修理後の車両価格の差額のことをいいます。

一般的には評価損は、①車両を修理したとしても、技術上の限界から完全に修理できないため、車両の機能や外観に回復不可能な欠陥が残っているという技術上の評価損と、②修理は完全になされたものの、車両に事故歴があることによって当該車両が「事故車」として扱われ、その車両の市場での価値が下がるという取引上の評価損の2種類があるとされています。

なお、事故車とはフレーム、クロスメンバー、フロントインサイドパネル、ピラー、ダッシュパネル、ルーフパネル、トランクフロアパネルの修正、ラジエータコアサポートの交換をいうとされていますが、これに満たない修理であっても事故車として倦厭されることがありますので、上記②には、厳密な意味での事故車に含まれない事故車も入ることとなります。

具体的な裁判例

車をぶつけられた車両の評価損の裁判例

①登録後3年弱、走行距離4万3000㎞のトヨタセルシオについて、機能上の不具合があるとして166万円余りの修理費の2割相当33万円余の評価損を認めた事例(東京地裁平成10年10月14日判決)(平成28年損害賠償額算定基準上巻221頁)

②初年度登録約2年10ヶ月、走行距離3万8600㎞のホンダステップワゴンについて、修理見積額の約2割である16万5000円の評価損を認めた事例(岡山地裁平成18年1月19日)(平成28年損害賠償額算定基準上巻222頁)

③登録から4か月、走行距離2856㎞のメルセデスベンツについて、事故時に新車登録から4か月しか経過しておらず、走行距離2856㎞程度であったこと、損傷の程度も極めて大きく高額の修理費を要しているとして、車両修理費713万6800円の3割である214万1040円の評価損を認めた事例(東京地裁平成23年3月29日判決)(平成28年損害賠償額算定基準上巻222頁)

買ったばかりの車をぶつけられてしまいました。車両の評価損を請求することはできますか?(その2)
A買ったばかりの車をぶつけられてしまいました。車両の評価損を請求することはできますか?(その1)では、評価損の基本的な概念や裁判例の詳細をお伝えしました。そこで今回は、評価損の算定方法などをお伝えします。

評価損の算定方法は?

評価損の算定方法

評価損が発生しているとして損害賠償請求する側は、加害者の保険会社に対して、一般財団法人日本自動車査定協会による評価損の査定書を証拠として提出します。

これがあれば裁判所が評価損を認めてくれるというわけではないのですが、評価損の価格を決める一つの要素にはなります。

実際の裁判例上では、①事故前の時価から修理後の価値との差額を損害とする方法(この場合、上記査定書が差額を査定する根拠になる場合が多いです)、②事故時の車両時価の何パーセントかを損害とする方法、③修理費の何パーセントかを損害と認める方式、などが採用されています。

実際に車を買い替えない場合の評価損の査定方法

車を買い替えない場合の評価損の算定

評価損の損害賠償請求をすると、「買い替える予定がない場合は差額を請求できない」といった反論がなされることがあります。

確かに、買い替えない場合には実際の差額はわかりません。

しかし、将来的に買い替えるかもしれない場合もあるうえ、事故による損傷のため被害車両の価値が下がっていること自体は間違いありません。買い替えないからといって評価損が否定されるものではありません。

この場合は、上記の事故時の車両時価の何パーセントといった形で評価損の額を決めたり、修理費の何パーセントといった形で決めたりします。

評価損についての裁判所の判断の傾向

評価損についての裁判例

裁判においては、外国車または国産人気車種で初年度登録から5年以上(走行距離6万㎞以上)、国産車では3年以上(走行距離4万㎞以上)を経過すると、評価損が認められにくい傾向があるとされています(平成14年損害賠償額算定基準下巻299頁)

評価損が発生するかどうかわからなかったら・・・

評価損が発生するかわからない

被害車両の初年度登録からの年数や走行距離が微妙で、評価損が発生するかどうかがわからない場合でも、一度最寄りの一般財団法人日本自動車査定協会に電話してみることをおすすめします。

場合によっては、修理費の見積書等があれば、評価損が出そうかどうかあらかじめ相談にのっていただけたりもします。

また、実際に査定に出したとしても、査定料は1万円しないくらいですので、やってみる価値はあると思います。(※査定協会から被害車両所在地までの距離等によっても値段が異なりますので、費用については必ず査定協会にお問い合わせください。)

代車使用料が損害として認められるのはどのような場合ですか?
A代車使用の必要性がある場合に、相当期間の代車使用料が損害として認められます。

代車ってなに?

代車

代車代車とは、事故によって傷ついた車両を修理している間に、代わりに乗る車両のことをいいます。

代車といっても、レンタカーであったり、修理先から借りるものであったり、タクシーに乗る場合があったりなど、その形態はさまざまです。

代車使用料は交通事故の損害として認められるのか?

代車は交通事故の損害として認められるか

代車使用料が損害として認められるためには、代車使用の必要性があり、かつ、実際に代車を使用することが条件となります。

「代車使用の必要性がある」というのは、車を使わなければいけない事情があるということです。

つまり、公共交通機関等の代替手段が使用できる場合や、他にも車両を有していてそちらの車両を使えば足りる場合には、代車使用の必要性がない、と判断される可能性が高まります。

この点について、以下のような裁判例があります。

①原告は、本件ボルボを、母親であり身体障害者である●●の病院への送迎に利用していたことが認められるから、同女の入院時期については不明瞭な部分が見受けられるものの、代車の必要性を否定することはできない。(東京高裁平成27年5月20日判決)(自保ジャーナル1953号127頁)

②被害者が被害車両以外に2台の外国製車両を含む3台の自動車を所有していたことから、自動車を運転する家族と同居しており、居住地が駅や商業施設と離れていても、代車使用の必要性を認めなかった事例(東京地裁平成25年3月6日判決)(平成31年損害賠償額算定基準上巻243頁)

代車が認められる期間はどれくらい?

代車使用の必要性があるといえる場合であっても、いつまでも代車を使用していいわけではありません。一般的には、車両の修理にかかる期間は1週間から2週間と言われていますので、その修理にかかった期間の代車使用料は損害として認められます。

それに加え、修理開始までの見積り期間やアジャスター(事故車両の調査を行い、損傷の程度の確認や修理費の見積り等を行うものをいいます。)による車両の状態の確認期間中に代車使用料が発生した場合には、その期間が相当である限り、損害として認められる場合が多いように見受けられます。

また、事故車が全損の場合など、車両を買い替える場合には、修理費用を請求する場合よりも少し長い期間、代車使用を認めてもらえることが多いです。

高級外車に乗っていますが、この高級外車の修理中に同じメーカーの代車を出してもらうことはできますか?
A同じクラスの代車を必要とする特段の事情があれば認められます。

高級外車の代車

Q5で、代車使用料が損害として認められる場合について詳しく解説しました。
では、ベンツなどのいわゆる高級外車に乗っていた場合、その車両がぶつけられて修理をする間、同じくベンツ等の高級外車の代車を出してもらうことはできるのでしょうか。

確かに、普段ベンツやBMW等に乗っていて(私は乗ったことありませんが)、代車として軽自動車などを出されたら「ちょっと・・・」と思うかもしれませんね。また、お客さんを乗せる車だったりした場合には、代車のグレードによっては信用問題になりかねませんので、同じグレードの代車を出して欲しいとの要請が出ることはたまにあります。

裁判においては、どのような場合に同じクラスの高級外車を代車として使用することが認められるか明確には定まっておらず、ケースバイケースで判断されているようです。

ただ実際は、被害車両が高級外車である場合には、国産高級車の限度で代車料を損害として認めるものが多いとされています(増補版交通事故の法律相談265頁)

これは、通常、被害車両の修理期間が1週間から2週間程度と短く、代車が高級外車でなかったとしても支障が出ないこと、国産高級車でも車両の機能は満たしていることから、国産高級車の限度で代車料が損害として認められているものと思われます。

高級外車が被害車両になった場合で、国産高級車の限度で代車料を損害として認めた裁判例では以下のようなものがあります。

①キャデラックリムジンの代車使用料につき、被害車両を営業車として使用していた理由(安全で、ファックス等の備え付けがあり、多人数の乗用が可能)は、代車を必要とする期間が修理期間の短期間であることから、国産高級車で十分対応できるとし、実際に支出したキャデラックリムジンの代車使用料488万0,655円ではなく、日額2万5,000円で39日間の代車料97万5,000円を認めた事例(東京地裁平成7年3月17日判決)(平成28年度損害賠償額算定基準上巻225頁)

それでも、代車を高級外車とする必要性があった場合には、高級外車の代車料が損害として認められる場合もあります。

①被害者が、輸入車の販売の営業マンであり、輸入車の購入希望を有するお客さんからの希望があった場合には、自身の高級外車(ベンツ)にお客さんを乗せて営業していたという特殊な事案で、1日3万円のベンツの代車料を損害として認めた事例(東京地裁平成8年10月30日判決)(増補版交通事故の法律相談265頁)

②被害者が、証券会社の投資顧問会社に勤務しており、被害車両を通勤や営業の仕事に使用していた事例で、「普通のグレードの車に乗り換えると会社の営業不振を疑われるので、高級車に乗ることは営業に必要であることが認められる」として、1日3万円の代車料が認められた事例(東京地裁平成7年12月26日判決)(増補版交通事故の法律相談265頁)

このように、高級外車の代車料が損害として認められた事例もありますが、よっぽどのことが無い限り認められないことに注意が必要です。

愛車をぶつけられたことに対する慰謝料を請求したいです。できますか?
A特段の事情がない限り認められません。

大事な愛車が事故によって傷をつけられたら・・・

慰謝料

車を持っている方であれば、多かれ少なかれ自分の車に対する愛着を持っていると思います。特に、思い出のたくさんつまった車、やっとの思いで手にいれた車、クラシックカーのようにたくさんのメンテナンスをしてきた車だったりしたら、思い入れも強くなりますよね。

そのような大事な愛車が事故によって傷をつけられたら、慰謝料を請求したくなる気持ちも出ると思います。

では、法律的に、そのような請求はできるのでしょうか。

原則は認められません

ぶつけられた精神苦

事故によって車が傷ついた物損の場合、その損害が回復されれば、精神的損害も回復されたとみなされるとされています。

つまり、車の修理が完了すれば、「大事な愛車が傷つけられた!」という精神的ショックも回復したものと考えられているということです。

裁判例でも、財産的権利を侵害された場合に慰謝料請求をし得るには、被害者の愛情利益や精神的平穏を強く害するような特段の事情があることが必要とされています(東京地裁平成1年3月24日)(平成28年損害賠償額算定基準上巻235頁)。

例外として認められる場合があります

飲酒運転

上記のとおり、物損が生じたことを理由とする慰謝料請求はなかなか難しいものがありますが、100パーセントできないわけではなく、できる場合もあります。

慰謝料請求できる場合とは、「事案の内容に照らし、交通事故によって、財産権だけではなく、これとは別個の権利・利益が侵害されたと評価しうるような場合」に認められるとされています(交通損害関係訴訟240頁)。

では、その慰謝料請求できる場合とはどのような場合なのでしょうか。以下で具体的事例を見てみましょう。

①加害者が飲酒運転により駐車車両に衝突し、そのまま現場から当て逃げした事案につき、被害者が現場付近を捜索し、数百メートル離れた駐車場で加害車両を発見したこと等から10万円の慰謝料を認めた事例(京都地裁平成15年2月28日判決)(平成28年損害賠償額算定基準上巻235頁)

②投票日の2日前に交通事故に遭い、車両を利用した街宣活動が半日困難となって選挙活動が精彩を欠いたものになったケースで、原告車の修理代等の物損の補填によっては償いきれない有形無形の人格的利益の損害が生じたものと認めるべき特段の事情があるとした事例(大阪地裁平成5年5月13日)(交通事故の法律相談78頁)

このように、認められている事例では、車に傷ついたことそのものではなく、車が傷ついたことによって生じた支障や事故態様を理由として慰謝料を認めています。

他にも、車が家に突っ込んだり、車が墓地に突っ込んで墓石を損壊させたりした場合に慰謝料を認めた事案もあります。

事故後から車の修理が完了するまでレンタカーを使いました。このレンタカー代は全額損害として認められますか。
A認められない場合もあります。

レンタカーを代車として使用すること自体は認められる

代車としてのレンタカー

事故によって車が傷つき、その車の修理中、レンタカーを代車として使用すること自体は認められますし、実際にレンタカーを代車としている場合も多いです。

もちろんこれは前提として、代車を使用する必要性が認められることが必要です。

ずっとレンタカーを代車として使用することができるのか

レンタカーが代車として認められる期間

修理に必要な期間である場合には、ずっとレンタカーを代車として使用することも認められます。ただし、通常、被害車両の修理期間は1週間から2週間程度の場合が多いですので、使用できるとしてもその限度が一応の目安になります。

必要以上に修理期間が延びた場合はどうなるか

修理の期間が延びた時

(1)部品調達に長期間を要したり、営業車登録までに時間がかかったりしたケース

特殊な部品の調達に時間がかかり修理期間が延びたり、代車を営業車登録するのに時間を要したケースなどでは、期間が延びたとしてもその期間レンタカー代車を使用し続けることが認められる場合が多いです。

(2)修理前の交渉期間

通常の修理の流れだと、事故車両をいきなり修理するのではなく、保険会社のアジャスターと呼ばれる人が、修理車両を確認し、保険会社の担当者と修理箇所や修理方法について交渉を行います。そして、交渉がまとまったら修理工場にて修理が開始されます。

この交渉に要する期間についても、被害者が代車を使用することが認められるのが一般的です。

ただし、被害者が過剰な修理を要求してなかなか交渉がまとまらずに時間が経ってしまった場合などは認めらませんので注意が必要です。

(3)保険会社側の対応で交渉・修理期間が延びたケース

保険会社の担当者が、被害者に修理内容について説明し交渉に時間を要し、結果として代車の使用期間が延びたとしても、それが合理的期間内にとどまる限りは、代車料全額が損害として認められます。

ただし、これも上記記載の過剰な修理要求と同様、単に被害者がごねて修理に着手できなかったなどといった場合には認められません。

このように、修理が延びたことに対する合理的理由があれば、その全期間レンタカーの代車を使用していたとしても、レンタカーを借りるのにかかった費用を相当期間分、損害として請求することができます。

ぶつけられた車を修理しようとしたら、保険会社から「全損だから時価までしか出せません。」と言われました。これはどういうことですか?
A全損の場合には、事故当時の被害車両の時価額の補償が原則になります。

全損とは?

全損車

車が事故によってペチャンコになってしまったなど、物理的に全損になった場合はともかく、一見すると修理可能なように見えるけど全損と判断される場合があります。

それは、経済的全損の場合です。経済的全損とは、修理額が、車両時価額(消費税相当額を含む)及び買い替え諸費用の合計額を超える場合をいいます。

全損の場合の賠償の範囲

全損の賠償

交通事故の物損における損害賠償は、「車両の損傷を現状に回復するために相当かつ必要な費用」に限られます。つまり、修理費が車の時価を超えているにもかかわらず修理をしたような場合、その修理費は「相当かつ必要な範囲」を超えているとされてしまうのです。

そのため、全損の場合には、事故当時の被害車両の時価額の限度でしか補償がなされないのが原則的な扱いとなります。

時価はどうやって決めるのか?

全損の時価

被害車両の時価額は、中古車市場における価格のことをいいます。

この点、最高裁判所の判例でも、「中古車が損傷を受けた場合、当該自動車の事故当時における取引価格は原則として、これと同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するのに要する価格によって定める」とされています。

中古車市場における価格って具体的に何をみて判断するの?

裁判において中古車市場における価格は、オートガイド自動車価格月報(いわゆるレッドブック)を見て判断される場合が多いです。また、その他には、gooなどの中古車取引サイトでの取引価格を参考にしたり、減価償却の方法を使って価値を算定したりもします。

また、保険会社との交渉においても、だいたい裁判所と同様、レッドブックやインターネットの取引サイトの価格を参考として、時価額についての交渉が行われます。

例外的に時価額を超える修理費が損害として認められる場合

時価額を超える修理費

なお、例外的に、時価額を超える修理費を損害として認められる場合があります。

裁判例においても、①被害車両と同等同種の自動車を中古車市場において取得することが至難であり、あるいは、②被害者が被害車両の代物を取得するに足る価格相当額を超える高額の修理費を投じても被害車両を修理し、これを引き続き使用したいと希望することを社会観念上是認するに足る相当の事由が存する場合などの特段の事情がある場合、に認められるとされています(大阪高裁平成9年6月6日判決交民集30巻3号659頁)

つまり、主観はともかくとして客観的に見てもどうしてもどうしてもどうしてもその車ではないとダメ、というよっぽどの場合には認められるということですね。

車をぶつけられて、車に積んでいた荷物も壊れてしまいました。これら壊れた物の費用も請求できますか?
A原則としてできます。ただし、壊れた品物の状態等によって、減額されることがあります。

積荷損害はよくある

積荷損害

車に乗っている方であればだれしも、車の後部座席やトランクに何らかの品物を積んでいると思います。

そのような場合、他の車と衝突すると、車そのものだけではなく、車の中に積んでいた積荷まで破損してしまう場合があります。

積荷が破損してしまうケースは実際にはよくあるのですが、これら破損された積荷の費用も損害として加害者に請求できるのでしょうか。

交通事故で壊れたものであれば原則としてできる

積荷損害としての請求

交通事故によって積荷が壊れた場合には、それを損害として加害者に請求することは原則としてできます。

このような場合、加害者の保険会社から、積荷や身の回り品の破損についての申告書を提出するよう言われることが多いので、事故後すみやかに申告書を提出しましょう。また、事故によって積荷が破損した場合には、事故直後にそれらの写真を証拠として撮っておくと、後で、「最初から壊れていたのではないか?」「事故後別の原因で壊れたのではないか?」などという疑いを払しょくできる可能性が高くなります。

逆に、申告等が遅れてしまうと、事故と破損の因果関係が争いになり、補償されない可能性が高くなりますので注意が必要です。

損害として請求できるとして満額請求できるの?

積荷損害の満額請求

積荷が破損したことを損害として加害者に請求することが原則としてできるとして、積荷の価格を満額損害として認めてもらうことはできるのでしょうか。

新品の場合はもちろん認められますが、問題は中古品の場合です。

中古品の場合には、その購入時期や品物の状態に応じて、購入価格の○○%といった形で減額される場合がほとんどです。

高額なものが破損した場合も損害として請求できるの?

高額な積荷の請求

一般の車両に予想もつかない高額なものが積まれている場合はあまりないケースですが、トラック等の営業用車両には時には高額な積荷が積まれていることがあります。

そのような積荷が破損された場合に、「そのような高額な商品が積まれていることを予見できなかった」として損害に含まれるのか争われる場合が稀にあります。

交通事故のような不法行為の場合、損害として認められるためには、「予見可能性」が必要です。そのような損害が出るとは思わなかったという場合(予見可能性がない場合)、損害として認められなかったり、損害の範囲を限定されたりします。

この点が争われた裁判例で以下のようなものがあります。

普通貨物トラックが大型貨物トレーラーに追突し、トレーラーの積荷(おむつ製造機2台、新規製作価格1億1679万円余)が損傷したことにより運送保険契約に基づき保険金を支払った保険会社が、加害者に対して保険代位による請求をした事案で、トレーラー等の荷台に1億円を超える大型の機械設備等が積載されていることは一般人の社会通念から通常予見できないものではないとして求償を認めた事例(大阪地裁平成23年12月7日判決)(平成28年損害賠償額算定基準上巻232頁)

交通事故に遭い、車が壊れてしまいました。加害者に車の修理費を請求したいのですが、どういった手続をとればいいですか?(その1)
A加害者に請求するためには、交渉、調停、裁判等の手続があります。また、加害者が自動車保険に入っているか否か、被害者側に過失があるか否かによっても請求手続の流れが変わります。

加害者が自動車保険に入っており、修理に自動車保険を使う場合で、こちらに過失がない場合、まず、事故の事実を被害者が被害者加入の保険会社に伝える

事故の事実を被害者が被害者加入の保険会社に伝える

まず、事故の事実を被害者が被害者加入の保険会社に伝える

追突や相手のセンターラインオーバーの場合、被害者に過失はありませんが、被害者であっても、自身が加入している保険会社に連絡をしましょう。

被害者に過失がない事故の場合、被害者が加入している保険会社が示談を代行することはできません。示談の代行とは保険会社があなたの代わりに相手方や相手方の保険会社とやり取り・交渉を行ってくれることです。

しかし、保険会社に連絡をしておけば、一般的な流れや注意点などを教えてくれる場合が多いので、聞いておきましょう。

被害者のもとに加害者の保険会社の担当者から連絡がくる場合がほとんど

加害者の保険会社の担当者から被害者への連絡

加害者が自身の入っている自動車保険の会社に連絡をしていれば、被害者のもとに、加害者の保険会社の担当者から連絡がくる場合がほとんどです。挨拶から始まり、今後の流れの説明、必要な書類の案内等があります。

ごくまれに連絡をしてこない担当者がいるため、事故があったその場で加害者に加害者が入っている自動車保険の会社名を聞いておきましょう。

事故車両を修理屋さんに持って行く

事故車両を修理屋さんへ

事故で車両が破損している場合には、原則として修理をしなければなりません。

そのため、自走できる場合には、車両を修理工場に持って行きましょう。

なじみの修理工場があればそこに持って行けばいいですし、ない場合には、保険会社が修理工場を指定してくれますのでそこに持って行きます。

自走できない/自走できるかどうかわからない場合には、レッカーを使います。レッカー使用については、あらかじめ相手方保険会社の担当者に承諾を得ておくと後でレッカー代について揉めずに済みます。

修理費の査定が始まる

修理費の査定

被害車両が持ち込まれたら、修理費の査定がスタートします。

これは相手方保険会社が用意したアジャスターと呼ばれる人が、修理屋さんの見積書を審査する手続です。アジャスターとは保険事故に関して、事故の原因から損傷部位を特定し、修理箇所、修理の方法、修理費の妥当性について調査確認業務を行う専門職の事です。

修理費が高額になりすぎていないか、破損箇所と見積りの修理箇所が合っているかなどをチェックし、必要に応じて修理工場や保険会社に意見を言います。

アジャスターのゴーサインが出れば、修理開始です。

承諾書のやり取りで終了

示談書

修理がすべて終わると、相手方保険会社から承諾書という示談書が送られてきます。内容を確認して誤りがなければ署名押印し、これで物損の示談成立ということになります。

交通事故に遭い、車が壊れてしまいました。加害者に車の修理費を請求したいのですが、どういった手続をとればいいですか?(その2)
A加害者が自動車保険に入っていなかった等の場合は、まずは修理見積を取得し、加害者本人に送付の上修理費を請求することが一般的です。

前回の質問では、加害者が保険に入っているパターンを紹介しました。今回の質問では、そもそも加害者が自動車保険に入っていなかった場合を紹介したいと思います。なお、前回のパターンでも、「修理内容について相手方保険会社の提示に納得できない」とか「修理内容について合意できない」といった場合には、今回のパターンの調停、裁判以降と同じ流れになります。

自賠責では物損は補償されない

自賠責では物損は補償されない

加害者が保険未加入であった場合、示談代行を行う保険担当者などはいませんので、被害者が直接加害者と被害車両の修理について折衝をしなければなりません。
アジャスターも入らないことが多いですが、まずは自身で修理工場に修理費の見積もりを依頼し、加害者に送付の上修理費を請求しましょう。なお、全損の場合(修理費が車両時価額を上回る場合)は、法律上は修理費を請求できず、車両時価額を請求できることになります。

但し、加害者にその額を支払ってもらおうとしても、加害者があれこれ文句をつけてきて合意ができないといったパターンは残念ながら散見されます。全く回答がない場合もありますし、お金がない加害者もいます。修理の妥当性を争う場合もありますし、全損だと主張して時価額を争うケースもあります。

何度か折衝しても妥協点が見いだせない場合、話合い(交渉)による解決はできないということになります。

交渉がだめなら調停や裁判へ

加害者に車の修理費を請求するための調停、裁判

話し合いによる解決ができないとなると、第三者を交えた場での解決しかありません。次のステップとして考えられるのは、裁判所で行う調停が考えられます。調停とは、裁判所の「調停委員」という第三者が間に入り、加害者と被害者の間を取り持って話合いをするシステムのことをいいます。

調停は裁判とは異なり柔軟な手続なので、調停を始める前に膨大な資料を用意せず、比較的簡単に使える手続です。そのため、被害者本人が弁護士を立てずに使うのに比較的適しています。

しかし、調停の場合、あくまでも裁判所を挟んだ話し合いにすぎませんので、そこでもお互いの主張が平行線であれば、話合いがまとまらない場合があります。

そうすると、解決のためには裁判しか方法がありません。裁判の場合、(先の調停と異なり)書面や証拠の出し方にルールがありますので注意が必要です。また一般的には1年~2年以上の時間を要することが多いです。

裁判の場合、最後は裁判官が「判決」を出してくれますので、「話合いがまとまらずに解決できない」という事態はありません。結果は裁判所に委ねられますが、白黒決着をつけることが出来る。これが裁判の最大のメリットです。

交通事故に遭って私の車が壊れてしまいました。加害者に修理費を請求したいのですが、どのような証拠があれば良いでしょうか。
A交通事故証明書、物件事故報告書、事故現場の写真、衝突した状況の写真、加害車両・被害車両の写真などがあった方がいいです。

交通事故証明書ってなに?

交通事故証明書

交通事故証明書とは、交通事故が起きた日時、場所、事故の当事者等を証明する書類のことをいいます。

警察に届け出られた事故については、この事故証明書を発行してもらうことができます。なお、事故があったにもかかわらず警察に届け出ていない場合には発行してもらえません。

交通事故証明書は、自動車安全運転センターにおいて発行してもらえます。また、警察署などに置いてある申請書で行うこともできます。

自動車安全運転センターの窓口で発行してもらうこともできますし、申請書を用いて郵便振替にて発行してもらうこともできます。いずれも手数料は600円です。(※2019年10月1日より料金改定があり交通事故証明書は600円になりました。)

物件事故報告書ってなに?

物件事故報告書

物件事故報告書とは、物件事故(物損事故)扱いになった交通事故について、事故の概要や事故当事者等が記された、警察官の作成する報告書のことをいいます。

人身事故の場合は、警察官が事故現場において実況見分を行いますが、物損事故の場合、事故状況や事故概要をごく簡単に記載するのみで事件処理は終了します。

このようにごく簡単に記載されたものであったとしても、一応事故状況の証拠として用いることもできますし、裁判においては、提出を求められる場合も多いです。

物件事故報告書は捜査資料ですので、一般への開示は行われていません。

弁護士からの弁護士法23条の2に基づく照会や、裁判所の照会があった場合に開示されることがある書類となります。

事故現場の写真

事故現場の証拠写真

事故現場の写真は残しておくと良いと思います。

事故現場を見ないと事故状況が良くわからない場合も多いためです。

また、事故直後に被害車両と加害車両を動かしていないといった場合には、その衝突したままの状況を写真に残しておくと良いでしょう。加害車両が被害車両にどの角度でぶつかっているか、加害車両と被害車両のどこがぶつかっているか等、事故状況を推察するのに役に立ちます。特に、後に事故状況について加害者が争ってきた時に役に立ちます。

他にも、道路にスリップ痕が残されている場合、車両の破片等が残されている場合にもそれらの写真を撮っておいた方が良いでしょう。

被害車両の写真

被害車両の証拠写真

事故直後の被害車両の写真も撮っておいた方が良いです。

事故直後の写真を撮っておくことによって、後日、加害者が「こんなところに傷はなかった」と言ってきても、写真で反論することができます。加害者が事故後にいろいろごねだすことはよくあるので、それらに備えてきちんと証拠の確保をしておくことが大切です。

物損の示談において気を付けるべきことは何ですか?(その1)
A他に請求できる損害がないかの確認及び物損で前提にした過失割合が事実上人身損害の部分にも影響を与える可能性など示談の効果をよく理解しておく必要があります。
以下で詳細を説明します。

示談の意味

示談書

交通事故においては「示談」という言葉を耳にすることも多いと思います。

でもその示談っていったいどういうものなのでしょうか。

法律の世界において示談とは、裁判など手続を利用せず、事故の当事者間において損害賠償についての合意をすることをいいます。

辞書で示談を調べると、「話し合いで決めること。特に、民事上の紛争を裁判によらず当事者の間で解決すること。」とされています。(デジタル大辞林から引用)

示談がもたらす法律上の効果

示談の法律上効果

一度示談をすると、同じ事項について再度の請求は原則としてもうできなくなります。

例えば、交通事故の物損において、「修理費10万円を支払う」という内容の示談をした場合には、後日、「やっぱり他にも壊れている箇所があったからもう10万円払って。」とは言えないのです。逆に支払う側からしてみると、「よくよく考えたら修理に10万円もかからなかったはずだから、お金返して。」とも言えなくなるのです。

つまり、示談をするとその件についてはもう請求できないのです。示談がそういう意味とは知らなかったという場合でも通用しません。

そのため、示談をする場合には、他に請求できる損害がないのか等をよく考える必要があります。

過失割合

交通事故の過失割合

交通事故によって身体に怪我を負った場合でも、物損があれば、物損の示談を先に行うことが多いです。

車の修理が完了したら、保険会社から「承諾書」という示談書が送付されてくることがあります。

他方、身体の怪我の場合、怪我はそんなに早く治りませんので、怪我の治療がすべて終わってから示談という流れになります。

この先行する物損の示談で気を付けなければいけないのが、「過失割合」です。

双方に過失がある事故の場合、物損の示談においても、過失割合が定められます。ただ、示談書に過失割合が記載されているわけではなく、示談書には過失相殺後の金額しか載っていない場合がほとんどです。

そのため、特に何も気にせずに示談書に署名押印してしまう方も多いでしょう。

しかし、その物損での過失割合は、人身損害部分の請求の際に影響を与える可能性があります。

人身損害の場合、等級によっては損害額が一千万円単位になる場合もありますので、過失割合は、手元に残る損害額を左右する重要な要素になります。

1つの事故である以上過失割合も1つであるのが原則ですので、人身損害の請求の際に「やっぱり過失割合に納得がいかない」と思っても、相手方から「物損ではこの過失割合で合意している」などと反論されて、不利な状況になる可能性があるので、注意しましょう。

物損の示談において気を付けるべきことは何ですか?(その2)
A物損の示談において気を付けるべきことは何ですか?(その1)では物損の過失割合に注意をしましょうという話を述べました。
今回はそれ以外の示談における注意点を述べたいと思います。

全損の場合の時価額の評価

全損の時価額の評価

交通事故によって車が全損になった場合(経済的全損の場合も含みます)、事故当時の被害車両の時価額を限度として、賠償が行われます。

この時価額の評価方法がやっかいなのですが、①レッドブックという自動車価格月報をもとに算出する方法、②gooなどのインターネット中古車サイトにおける取引価格をもとに算出する方法、③減価償却をもとに算出する方法などがあります。

保険会社は①の方法を取ってくる場合が多いのですが、レッドブックに載っている時価とgooなどのサイトに載っている時価に少なくない金額の差がある場合があります。また、付属品の有無(カーナビ等)によっても価格が変わってきます。

レッドブックによる査定では時価額が不当に低くなる場合には、インターネットサイトでの時価額にするよう粘り強く交渉しましょう。

買い替え諸費用は入っているか

買い替え諸費用

全損になった場合で車両を買い替える場合、買い替え諸費用の一部も損害として認められます。

この点、保険会社は、買い替えが発生した場合にも事故当時の被害車両の時価額しか補償できないなどと言ってくる場合が多いですが、きちんと買い替えにかかった諸費用も請求しましょう。

修理費は妥当か

修理費が妥当かどうかの確認

保険会社指定の修理工場で修理をしている場合、修理箇所が必要以上に抑えられていたり、修理方法を安価なもので済ましている場合があります。

修理費の見積書は専門的なものでよくわからない場合が多いですが、そこはがんばって一度検討しましょう。また、なじみの修理屋さんなどがある場合には、そちらに修理してもらった方が「こんなはずじゃなかった!」というのを防げます。

評価損は入っているか

車の価値が下がる

比較的新しい車が被害にあった場合、事故当時の被害車両の価格と修理後の被害車両の価格に差が生じることがあります。事故車で牽引されたり、躯体まで損傷が及んでいたりする場合にはその車の価値が下がってしまうのです。

それを評価損といいます。比較的新しい車であれば評価損が発生する可能性がありますので、評価損が補償の中に入っているかきちんと確認しましょう。

以上が物損の示談における見落としがちな点です。

後で「しまった!」にならないようにきちんと確認してから示談しましょう。

営業車が事故で稼働できませんでした。その分の損害の賠償は出来ますか(休車損害)。
A出来ます。ただしその要件については検討が必要です。

営業車が稼働できない場合

営業車稼働不可

営業車が事故に遭い、稼働できない場合については、その間、事故車両を使った営業が出来ないことになります。

そこで、事故車両が修理・買替等により稼働できない期間、稼働していれば得られたであろう利益については、休車損害として、賠償を請求することが出来ます(最判昭和33年7月17日)
もっとも、この休車損害が認められるためには、以下のとおり、幾つかの要件や、裁判例がありますので注意が必要です。

休車損害を請求するための要件

休車損害請求の要件

まず、休車損害を請求するためには、当該事故車を使用する必要性があること、代車を容易に調達することができないこと、代替して稼働することができる予備の車両(遊休車)が存在しなかったこと、などが要件として必要であると考えられます。

代車を容易に調達することができない場合

代車

例えば、営業用自動車(緑ナンバー)であれば、陸運局の許可の問題があるので、簡単には代車を調達できません。そのため、代車を容易に調達することができないことの要件を満たしやすくなるものと考えられるでしょう。(もっとも、緑ナンバーでなくとも、特別な設備を搭載している等して代車が調達できない、といった事態は考えられます。)

遊休車が存在しない場合

遊休車

遊休車が存在するかどうかは、簡単に判断できるものではありません。裁判になった場合、遊休車の有無は、保有車の台数に対する稼働車の台数の比率(実働率)、保有台数と運転手の数との関係、運転手の勤務体制、営業所の配置及び配車数、仕事の受注体制などの諸事情を総合的に考慮したうえで、判断されることになります。裁判では、休車損害を請求する方が遊休車の不存在を証明する必要があります。そのため、遊休車が存在しないことについての資料を十分に準備できない場合や実働率との関係で他の車両で十分に賄えると判断された場合には、休車損害は否定される傾向にあります。

このように、遊休車の有無は、諸事情を考慮したうえで判断されるものであり、遊休車が存在しないと証明することは大変になることが多いのが実情です。

休車損害の損害はどうやって算定するのですか。
A事故車両の1日当たりの利益に休車期間(日数)を乗じることで算出されます。

休車損害の算定方法

休車損害

休車損害は、事故車両の1日当たりの利益に休車期間(日数)を乗じることで算出されます。

具体的な算出方法としては、例えば、自営業であれば確定申告書やその他の資料をもとに、1日当たりの利益を算出し、保有車両台数で除することで、保有車両1台当たりが1日に生み出す利益が算出されます。もっとも、当該事故車の利益を算出する方法がある場合には、こちらによる方がより正確であるといえるでしょう。

経費の控除

修繕費、燃料費、通行料、運転手の乗務手当

休車損害を算定するためには、上記1日当たりの利益から、稼働しないことによって支出を免れた経費を控除しなければなりません。具体的な控除すべき経費は、燃料費、修繕費、通行料、運転手の乗務手当などが考えられます。

この考え方によれば、稼働しないことによって支出を免れた経費とはいえないもの、例えば減価償却費、保険料、税金等は控除すべきではありません。

以上より、休車損害の算定は

休車損害=(事故車両1日当たりの利益-経費)×休車期間

という計算式によることになります。

売り上げの減収がない場合

休車による売り上げの減収

休車損は、営業車が事故のために破損し、その買替えあるいは修理のための期間中、当該車両による営業ができなかった場合、営業を継続していれば得られたであろう利益を損害として請求するものです。

しかし、実際には、当該期間の売り上げが減収していないなどの場合も多くあるようです。休業損害や逸失利益の議論とも重なるところですが、このような場合であっても、例えば売り上げ維持のために、多く販促費を計上するなど被害者自身の営業努力、または本来の需要増などを理由として、減収がないと認められる場合には、やはり適切な賠償を受ける必要があるでしょう。

保有車両を活用した場合に生じた損害

他の保有車両を活用

事故車両の修理期間、他の保有車両を活用して、優先的に事故車両の業務の遂行に充てるなどの工夫をすることもあります。これによって当該保有車両自体が本来行うべき業務が妨げられた場合には、これに伴う損害も認められます。

車両保管料を損害として請求できますか。
A必要な期間の保管料であれば請求することが出来ます。

保管料が認められる場合

修理に備える保管

全損交通事故に遭った場合、車を一時的に保管して、修理に備えたり、買替を検討することがあります。

事故車両の修理費の見積もりを算出したり、時価額を検討するためには一定の時間を要しますので、その間、事故車両を修理工場等に保管しておいた場合、保管料がかかります。

この、事故車を廃車にするか否かを考慮するのに必要な期間の保管料は、原則として加害者が賠償すべき損害として認められます。

必要な期間を超えた保管料は賠償の対象とならない可能性がある

車の保管に関する裁判例

もっとも、判断をするのに必要な期間を超えた部分の保管料は否定されることがあるので注意が必要です。

例えば判例(大阪地判平成10年2月20日)で、事故車を廃車にするか否かを考慮するのに必要な相当の期間内の保管料は事故と相当因果関係があるとした上で、「原告車が全損になった旨主張している本件においては、事故と相当因果関係がある保管料として認められる範囲は、特段の事情のない限り、原告車につき、これを廃車にするか否かを考慮するのに必要な相当の期間内のものに限られるというべき」と判断したものがあります。

なおこの判例では、月額3万5千円、合計45万5,000円(約1年分)の保管料請求に対し、裁判所は、おおむね2週間程度で判断できたとして、1万7,500円の保管料のみを認めました。

賠償金の不払いを理由とする保管

保険会社が保険金を支払わないことを理由として保管期間が長くなってしまうケース

では、保険会社が保険金を支払わないことを理由として、車両を修理も買替もせず、保管していた場合はどうでしょうか。時価額などに争いがあり、保管期間が長くなってしまうケースもあると思います。

例えば判例では、保険金を支払わなくても事故車の修理・処分は可能であるとして全期間の保管料の必要を認めず、これを否定したものがあります(東京地判平成26年3月27日)。

もっとも、相手方保険会社が事故車が全損か否か等について連絡を怠っていた、交渉を怠っていた等の場合には、どこまでが判断に必要な期間として考えられるのか、検討の余地があると思われます。

証拠保全を理由とする保管

証拠保全を理由とする保管

例えば、過失割合について争いになっており、後々紛争となることが予想される場合などは、事故車両の損傷態様が極めて重要な証拠となる場合があります。

しかし、修理又は解体処分をしてしまうと、証拠としての車両そのものが消えてしまいます。では、このような証拠の保全を理由として、保管をする場合、必要な期間と評価できるでしょうか。

この点、裁判例(東京地判平成13年5月29日)では、通常は写真をもって、車両の破損状態を保全すれば足りるとして、車両の保管料は車両自体が事案の解明に不可欠であるような特段の事情のない限り、事故と相当因果関係のある損害とは認められないとしたものがあります。

実際工学鑑定等を行う場合には、写真よりも事故車両そのもののほうが証拠としての価値が高い場合もあると思われます。ですので、写真をもって、車両の破損状態を保全すれば足りると一概にはいえないような気がします。

まとめ

以上、保管料は、事故車を廃車にするか否かを考慮するのに必要相当な期間であれば、賠償の対象となる一方、これを超える期間のものになると否定される可能性がありますので注意が必要です。

保管の必要性の有無の判断は、難しいケースもありますので、そのような場合は専門家にお問い合わせください。

所有権留保特約付き車両の損害賠償請求は誰が出来ますか。
A買主が請求することが出来ると考えられます。

所有権留保特約

所有権留保特約

損害賠償請求車を割賦販売(オートローン)等で購入した場合、月々の購入費用を完済するまで、購入した車を担保に入れ、車の所有権を売主に留保しておくという形態がとられることがあります。買主は代金完済時に、車の完全な所有権を取得します。買主が代金の支払いを滞納すると、せっかく買った車は引きあげられてしまうことになります。実際には、車そのものは買主に契約日から引き渡され、これに乗ることができるので、外見上は通常の売買と何ら変わらないかもしれませんが、車検証などにはこのことがわかるように必ず記載されています。

この場合も、リース契約と同様に車両の所有者が買主ではなく、売主にあるため、誰が修理費用等の損害賠償請求ができるかということが問題となります。

すなわち、車両の所有権を侵害されたことを理由とする、不法行為に基づく損害賠償請求が可能なのは、当該車両の所有者、すなわち買主ではなく売主ではないかという点が問題になるのです。

修理費を損害賠償請求できるのは

車の修理

もっとも、結論から言えば、所有権留保特約付き車両について生じた損害の賠償請求をできるのは、買主である可能性が高いでしょう。

例えば、京都地判平成24年3月19日判決は、「この場合、債権者に留保された所有権の実体は担保権であり、A車の実質的な所有権は原告に帰属すると解することができ、原告は、第三者の不法行為により同車を損傷された場合、同社に対する完全な支配を回復するため、当該第三者に対し、不法行為による損害賠償として修理費相当額を請求できると解すべきである」と判断しました。

また、東京地判平成15年3月12日判決は、「買主は、条件成就によって所有権を取得する期待権を有するとともに、当該車両の利用権を有するのであり、毀滅に至らない程度の損傷を受けた場合は、買主ないしはその意思に基づいて使用する者が、その利用権を侵害されたことを理由として、実際に支出したか、あるいは支出を予定する修理費の賠償を求めることができる」と判断し、実際に修理をしていなくても、利用権の侵害を理由に、修理費の賠償を求めることが出来ると判断しました。

代車使用料の請求をできるのは

代車使用料

所有権留保車両が使用できなくなった場合、その間車両を使用し得るのは買主であると考えられますので、代車の使用料を請求できるのは、買主であると考えられます。

一方で、評価損(格落ち)等の車両そのものの損害賠償請求権は、所有者である売主に帰属するものと考えられます。

廃車費用、車両処分費用は請求できますか。
Aできる可能性が高いです。

廃車費用

廃車費用

事故車両が全損となり、買い替えを選択せざるを得ない場合、自動車リサイクル料金(平成17年2月以降車検を通している場合には既に徴収されており廃車時には費用が発生しない場合もあるようです)、廃車手続き(登録抹消)をするための費用等の廃車手続き上の費用が掛かる場合があります。

そして、事故により廃車とする場合、そのための廃車費用も事故と相当因果関係のある損害として認められます。

なお、廃車手続きをディーラーに頼んだ場合であっても、判例(東京地判平成26年3月27日)は、「廃車手続きをディーラーに依頼するのは一般に行われていることであり、この場合の廃車費用としては2万円と認めるのが相当である」と判断して、ディーラーに依頼する場合の手数料を損害に含まれるものとしました。

被害車両処分費用

被害車両処分

また、事故車両が全損となった場合、事故車両を解体して処分しなければなりません。この解体等の車両処分費用・解体費用も事故と関係のあるものとして損害と認められることが多いようです。

なお、処分費用は、いずれ支出を余儀なくされる(車両を処分する時期が来る)ため、事故と関係のないものと主張されることもあるようです。この点、裁判例(大阪地判平成16年2月13日)では、「原告は、本件事故により損傷した原告車の修理費見積を業者に依頼し、その費用三万円を支払ったこと及び全損となった原告車の解体等費用として四万七二五〇円を支払ったことが認められ、これらの費用合計七万七二五〇円は、賠償されるべき損害と認められる。…被告は、廃車費用は、廃車時期を早めたことに対する損害であり、相当因果関係を欠くと主張するが、原告車は本件事故により全損となり、現実に廃車を余儀なくされるに至ったのであり、原告車が本件事故前から近々廃車される予定であったという事情も見当たらないから、上記解体等費用は、本件事故との間に相当因果関係を有する損害というべきであり、被告の上記主張は採用できない」と判断しており、車両処分費用・解体費用も事故と関係があるものと判断しています。

また、この判例では、修理見積の取得に関する費用についても、仮に加害者側から見積が提示していた状況であっても、事故と関係のある損害として認定しました。

まとめ

以上、全損となる場合、事故車両は廃車とせざるを得ないため、廃車費用、車両処分費用は事故と関係のある損害として認められるものと考えられます。

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