整骨院の施術費
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎
「整骨院に行ってよいのかわからない」
「整骨院通院は認めないと保険会社にいわれた」
「整骨院の費用が支払われない」
この記事では交通事故の被害者にむけて、整骨院の施術費の支払ルールを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
なお整骨院の施術費で問題が発生しそうなときは、交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
―――― 目次 ――――
自賠責保険や裁判での整骨院の施術費の支払基準
では自賠責保険や裁判での治療費支払の基準はどのようなものでしょうか?
自賠責保険では自賠責保険の支払基準の告示(金融庁)があります。
裁判では赤い本と青い本という裁判の基準をまとめた本があります。
赤い本の基準
- 症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは認められる傾向にある。
青い本の基準
- 医師の指示により受けたものであれば認められる。
- 医師の指示は積極的なものでなくても、施療を受けることによる改善の可能性が否定できないことからとりあえず施療を受けることを承認するという消極的なものも含まれる。
- 医師の指示承認がなくても、改善効果があれば賠償を認める例もある。
基準の解説
整骨院の費用が認められるには次の6つが原則必要です。
- ①医師の指示や同意があること
- ②施術に必要性があること
- ③施術に有効性があること
- ④施術内容に合理性があること
- ⑤施術期間が相当であること
- ⑥施術費が相当であること
特に医師の指示や同意は重要です。少なくとも整骨院に行くことを医師に説明し、同意をもらいましょう。
①「医師の指示や同意があること」とは?
医師の指示とは
医師の指示とは、医師が患者に整骨院での施術を受けるよう指示することです。
医師が整骨院での施術を受けるよう指示することは少ないです。
ただし提携している整骨院での施術のとき、整骨院の施術を受けるよう医師が指示することもあります。
医師の同意とは
医師の同意とは、整骨院での施術を受けることにつき医師が同意することです。
次の2つのパターンがあります。
- ①積極的に医師が同意しているとき
- ②消極的に医師が同意しているとき
①積極的に医師が同意しているとき
積極的に医師が同意しているのは次のようなときです。
- 整骨院に行くことを医師に伝えたところ、整骨院に通院してもよいと言われたとき
- 医師が診断書やカルテなどの書類に整骨院に通院していることを書いているとき
②消極的に医師が同意しているとき
消極的に医師が同意しているのは次のようなときです。
- 整骨院に行くことを医師に伝えたところ、特段意見がなかったとき
- 整骨院に行くことを医師に伝えたところ、整形外科でのリハビリを勧めてきたものの整骨院通院を否定まではされなかったとき
- 整骨院に行くことを医師に直接伝えていないものの、リハビリスタッフ経由の情報により整骨院通院を医師が知っているとき
医師の指示や同意は絶対必要ではない
医師の指示や同意がないと100%整骨院の施術費は認められないのでしょうか?
過去の経験では、医師の指示や同意なしでも施術費が認められた事案はあります。
しかし多くの事案では医師の指示や同意がないと整骨院の施術費は否定されます。
医師の対応 | 施術費支払の確率 |
---|---|
指示 | ◎極めて高い |
積極的な同意 | 〇高い |
消極的な同意 | △確率あり |
何もなし | ×低い |
注 医師の消極的な同意とは「医師に整骨院のことを話し明確に拒否されなかった」という程度です。
少なくとも医師の指示や同意を取得することが望ましい
では整骨院に通院したいときはどうすればよいでしょうか?
少なくとも医師に整骨院に通院することを伝えましょう。整骨院への通院を医師に伝えないと、医師の消極的な同意すらないことになります。施術費支払の確率が低くなります。
②「施術に必要性があること」とは?
施術の必要性とは、施術を行うことが必要な身体状態にあったことです。
次のようなときは施術に必要性があることが多いでしょう。
- 怪我をしていることが証明できているとき
- 医師の指示があるとき
- 医師の積極的な同意があるとき
次のようなときは施術に必要性がないことが多いでしょう。
- 怪我をしていることが証明できていないとき
- 施術は必要ではないという医師の明確な意見があるとき
③「施術に有効性があること」とは?
施術の有効性とは、施術を行った結果として具体的な症状の緩和がみられることです。
次のようなときは施術に有効性があることが多いでしょう。
- 施術により症状が改善していることが証明できるとき
- 医師の指示があるとき
- 医師の積極的な同意があるとき
次のようなときは施術に有効性がないことが多いでしょう。
- 施術をしても症状の改善がないとき
- 施術をしても症状が悪化しているとき
- 施術が有効ではないという医師の明確な意見があるとき
④「施術内容に合理性があること」とは?
施術内容の合理性とは、施術が受傷内容と症状に照らし、過剰・濃厚に行われておらず、症状と一致した部位につき適正な内容として行われていることです。
次のようなときは施術内容に合理性があることが多いでしょう。
- 施術回数が受傷後は多く、徐々に減っていくという自然な経過であるとき
- 施術の部位が受傷後は多く、徐々に減っていくという自然な経過であるとき
- 症状がある箇所と施術箇所が一致しているとき
次のようなときは施術内容に合理性がないことが多いでしょう。
- 施術回数が毎日など極端に多く、事故後一定の期間が過ぎても施術回数が減らないとき
- 施術の部位につき、事故後一定の期間が過ぎても減らないとき
- 症状がある箇所と施術箇所が一致していないとき
⑤「施術期間が相当であること」とは?
施術期間の相当性とは、受傷の内容、治療経過、疼痛の内容、施術の内容及びその効果の程度等から、施術を継続する期間が相当であることです。
次のようなときは施術期間が相当であることが多いでしょう。
- 症状に応じて3~6カ月の範囲内のとき
- 症状が軽い場合は3カ月以内で施術を終了しているとき
次のようなときは施術期間が相当ではないことが多いでしょう。
- 事故から6カ月以上施術をしているとき
- 症状が軽いにもかかわらず3カ月以上施術をしているとき
⑥「施術費が相当であること」とは?
施術費の相当性とは、報酬金額が一般社会の水準と比較して妥当なものであることです。
次のようなときは施術費が相当であることが多いでしょう。
- 整骨院一般の相場の範囲内であるとき
- 以前から保険会社が認めている料金体系を利用しているとき
次のようなときは施術費が相当ではないことが多いでしょう。
- 整骨院一般の相場の範囲を逸脱しているとき
- 以前に保険会社から否定された料金体系を利用しているとき
整骨院への通院は認めないと保険会社から言われました。どうすればよいですか?
まとめ:整骨院の施術費
整骨院の費用が認められるためには次の6つが原則必要です。
- ①医師の指示や同意があること
- ②施術に必要性があること
- ③施術に有効性があること
- ④施術内容に合理性があること
- ⑤施術期間が相当であること
- ⑥施術費が相当であること
特に医師の指示や同意は重要です。少なくとも医師に整骨院に行くことを説明し、同意をもらいましょう。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)