差額ベッド代
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎
医師の指示があるときや重症のときなどは差額ベッド代が補償対象となります。
この記事では交通事故の被害者にむけて、差額ベッド代の賠償のルールを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
なお問題が発生しそうなときは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
差額ベッド代とは
差額ベッド代とは入院時に個室を利用するときなどにかかる費用です。正式には「特別療養環境室料」といいます。
自賠責保険や裁判での差額ベッド代の支払基準
では自賠責保険や裁判での差額ベッド代の支払基準はどのようなものでしょうか?
自賠責保険では自賠責保険の支払基準の告示(金融庁)があります。
裁判では赤い本と青い本という裁判の基準をまとめた本があります。
赤い本の基準
- 医師の指示ないし特別の事情(症状が重篤、空室がなかった等)があれば認める。
青い本の基準
- 特別室料(個室料・差額ベット代等)は通常の大部屋でも治療が可能である場合には相当性が否定されることが多い。特別室を使用しなければならないほど症状が重篤あるいはその他の必要性があれば認められる。
- 基本的には個室等を利用した方が治療面でよい効果が期待できる(あるいはそうしないと症状を悪化させる)という事情が必要だろう。
基準の解説
個室料や差額ベッド代などの特別室料は補償の対象とならないことが多いです。
ただし医師の指示があるときは補償の対象となります。
また次のようなときは例外的に補償の対象となることがあります。
- 症状が重篤だったり感染防止のため必要があったりするとき
- 空き部屋がなかったとき
- 同室の他の患者に迷惑をかける可能性が高いとき
差額ベッド代が補償対象となった事例
では差額ベッド代が補償対象となった事例にはどのようなものがあるでしょうか?
代表的なパターンをご紹介します。
医師の指示がある事例
次の理由により42万円が補償対象となりました。
- 骨盤骨折による右股関節の可動域制限の81歳女性(後遺障害12級)
- 車いす生活で日常生活動作全般に介助を要する状態
- 看護師のサービスステーション近くの差額部屋に入院
(名古屋地方裁判所令和2年7月1日判決)
症状が重篤な事例
次の理由により1,425,000円が補償対象となりました。
- 右上腕骨骨幹部骨折、脳挫傷等から右上肢変形障害(8級8号)、右股関節神経症状(12級13号)、頭部神経症状(12級13号)、併合7級の後遺障害
- 症状の内容や程度が重い
(東京地方裁判所平成28年11月17日判決)
部屋に空きがなかった事例
次の理由により、入院期間434日のうち個室しか空いていなかった期間の室料差額378,000円が補償対象となりました。
- 骨盤骨折、股関節脱臼骨折等(後遺障害併合4級)
- 通常の部屋に空きがない時期があった
(東京地方裁判所平成20年11月12日判決)
同室の他の患者に迷惑をかける可能性が高かった事例
次の理由により11万円が補償対象となりました。
- 高次脳機能障害(後遺障害9級)
- 入院期間に苛立って周囲を怒鳴るなどの症状
(神戸地方裁判所令和3年1月15日判決)
症状固定日以降の差額ベッド代
では症状固定日以降の差額ベッド代は補償の対象となるでしょうか?
症状固定とは治療を継続しても効果が見込まれず、症状の改善がない状態です。
治療費は症状固定日までが補償の対象となり、症状固定日以降は補償の対象とならないのが原則です。
もっとも重症のときは症状固定日以降の差額ベッド代が補償の対象となることがあります。
特に医師の指示により個室を利用するときは、症状固定後の差額ベッド代が補償の対象となる確率が高いでしょう。
まとめ:差額ベッド代
差額ベッド代は次のようなときは補償の対象となります。
- 医師の指示があるとき
- 症状が重篤だったり感染防止のため必要があったりするとき
- 空き部屋がなかったとき
- 同室の他の患者に迷惑をかける可能性が高いとき
(監修者 弁護士 大澤 一郎)