医師への謝礼
最終更新日:2024年7月22日
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎
医師への謝礼が補償対象となることは少ないです。
この記事では交通事故の被害者にむけて、医師への謝礼の損害賠償のルールを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
なお問題が発生しそうなときは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
医師への謝礼とは
医師への謝礼とは、医師に支払うお金のことです。医師ではなく看護師などへ支払うこともあります。一律の基準はありませんが3~10万円が多いようです。
自賠責保険や裁判での医師への謝礼の支払基準
では自賠責保険や裁判での医師への謝礼の支払基準はどのようなものでしょうか?
自賠責保険では自賠責保険の支払基準の告示(金融庁)があります。
裁判では赤い本と青い本という裁判の基準をまとめた本があります。
赤い本の基準
- 社会通念上相当なものであれば、損害として認められることがある。
- 見舞客に対する接待費、快気祝等は道義上の出費であるから認められない。
青い本の基準
- 最近の傾向としては医師謝礼を認定した例はあまりない。
基準の解説
医師への謝礼が賠償対象となるとき
医師への謝礼が社会通念上相当なときは賠償対象です。ただし治療費とは別に医師に謝礼を支払うという習慣は減ってきています。
そのため、医師への謝礼が賠償対象となるのは次のようなときに限られるでしょう。
- 重症の手術を行ったとき
- 治療に適切な医療機関を尽力して探してもらったとき
賠償対象となる金額
医師への謝礼全額が賠償対象とは限りません。支払った謝礼額が多いときは一部の謝礼額のみが賠償対象となります。
医師への謝礼が賠償対象となった事例
では医師への謝礼が賠償対象となった事例にはどのようなものがあるでしょうか?
全額が賠償対象の事例、一部が賠償対象の事例、賠償が否定された事例をご紹介します。
全額が賠償対象の事例
次の理由で12万円が賠償対象となりました。
- 多数の骨折等重篤な受傷
- 入院303日、通院期間2年8カ月
- 救急搬送時に重篤な症状
- 複数回の手術を受けた
(仙台地方裁判所平成24年3月27日判決)
一部が賠償対象の事例
次の理由で27万円の謝礼のうち10万円が賠償対象となりました。
- 右大腿骨骨折、右膝関節内骨折、右下腿骨骨折等の43歳(後遺障害併合4級)
- 担当医師へ謝礼として27万円を支払
- 謝礼金の性質からして相当なのは10万円の範囲内
(東京地方裁判所平成21年2月26日判決)
賠償が否定された事例
次の理由で医師への謝礼は賠償対象となりませんでした。
- 右下腿解放骨折、右足関節外果骨折の34歳
- 医師や看護師に対する謝礼として30万円を支払
- 受傷の内容、経過に照らし謝礼が当然に社会的相当性を有するものではない
(大阪地方裁判所平成20年9月8日判決)
国公立病院の医師へ謝礼を渡してはいけない
国公立病院の医師へ謝礼を渡してはいけません。収賄罪 や贈賄罪 という犯罪の可能性があります。
まとめ:医師への謝礼
医師への謝礼が賠償対象となることは少ないです。賠償対象となるのは次のようなときに限られるでしょう。
- 重症の手術を行ったとき
- 治療に適切な医療機関を尽力して探してもらったとき
(監修者 弁護士 大澤 一郎)