帰国費用やその他費用
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎
事故が原因の損害は多種多様です。たとえば、帰国が必要になる費用やその他費用は賠償の対象となります。
この記事では交通事故の被害者にむけて、事故によるその他費用の損害賠償のルールや過去の具体的な事例を交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
なお問題が発生しそうなときは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
帰国費用やその他費用とは
事故が原因の損害は多種多様です。治療費や休業損害、入通院慰謝料、通院交通費など多くの交通事故で発生する損害があります。他方、頻度は少ないものの発生する損害もあります。
たとえば、発生する確率は低いものの、次のような損害が事故により発生します。
- 海外からの帰国費用
- 海外からの被害者の搬送費用
- 渡航費用
- 旅行のキャンセル料
- 就学資金の返還
- ペットの飼育費用
- 親族の治療費
- 刑事捜査や刑事裁判に関する費用
- 被害者が経営する会社の清算費用
- 被害者の住宅の引上引越費用
自賠責保険や裁判での帰国費用やその他費用の支払基準
では自賠責保険や裁判でのその他費用の支払基準はどのようなものでしょうか?
自賠責保険では自賠責保険の支払基準の告示(金融庁)があります。
裁判では赤い本と青い本という裁判の基準をまとめた本があります。
赤い本の基準
- 海外からの帰国費用などが認められています。
青い本の基準
- 海外からの帰国費用などが認められています。
基準の解説
その他費用の賠償には一律の基準はありません。帰国費用が具体例となっているのは、事故によって海外から帰国するのが比較的わかりやすい損害だからです。
帰国費用以外には次のような損害が賠償の対象となります。
- 海外からの被害者の搬送費用
- 渡航費用
- 旅行のキャンセル料
- 就学資金の返還
- ペットの飼育費用
- 親族の治療費
- 刑事捜査や刑事裁判に関する費用
- 被害者が経営する会社の清算費用
- 被害者の住宅の引上引越費用
帰国費用やその他費用が賠償対象となった事例
では家屋や自動車の改造費が賠償対象となった事例にはどのようなものがあるでしょうか?代表的なパターンをご紹介します。
海外からの帰国関連費用が賠償対象となった事例
次の理由で海外からの帰国関連費用68万円が賠償対象となりました。
- 83歳の男性被害者の入院付添や施設入所等の環境調整が必要
- 長男が駐在先のタイから帰国
- 回数11回
- 帰国関連費用でかかった金額は68万円
(東京地方裁判所平成31年3月1日判決)
海外からの患者の搬送費用が賠償対象となった事例
次の理由で海外からの搬送費用829万円が賠償対象となりました。
- アメリカで交通事故の被害に息子があう
- 父親は日本の外科医
- アメリカの医療費は高額
- 被害者が民間機での輸送に耐えられない重篤な症状
- 特別に仕立てたチャーター機を利用して日本に搬送
- 飛行機の費用が829万円
(岡山地方裁判所平成12年1月25日判決)
海外への渡航費用が賠償対象となった事例
次の理由で海外への搬送費用30万円が賠償対象となりました。
- アメリカで交通事故の被害に息子があう
- 重症
- 母親がアメリカまで飛行機で移動
- 飛行機の費用が30万円
(岡山地方裁判所平成12年1月25日)
旅行費用のキャンセル代が賠償対象となった事例
次の理由で旅行費用などのキャンセル代約41万円が賠償対象となりました。
- 子供が死亡
- 両親が海外旅行中
- 両親が海外旅行を途中で中止して帰国
- 支払済の旅行費用でまだ行っていない部分が40%で約11万円
- 旅行代金に含まない帰国のための飛行機費用が約30万円
(東京地方裁判所平成31年3月6日判決)
就学資金が賠償対象となった事例
次の理由で就学資金の一部の37万円が賠償対象となりました。
- 膝関節の疼痛の持続により事故後2年経過段階で病院を退職した看護師
- 退職した場合は看護高等学校の費用の一部を返還することを病院と看護師の間で約束
- 返還した費用が37万円
(大阪地方裁判所平成4年8月28日判決)
ペットホテルの費用が賠償対象となった事例
次の理由でペットホテルの費用約32万円が賠償対象となりました。
- 飼犬を128日間ペットホテル業者に預けた
- 発生した費用が約32万円
(大阪地方裁判所平成20年9月8日判決)
家族の心療内科の通院費用が賠償対象となった事例
次の理由で家族の心療内科への通院費用約22万円が賠償対象となりました。
- 14歳の子供が死亡
- 父母が精神的な衝撃からうつ病等に罹患
- 通院に関して発生した費用が22万円
(横浜地方裁判所平成23年10月18日判決)
捜査に協力した費用が賠償対象となった事例
次の理由で警察への往復費用として1日分16,790円が賠償対象となりました。
- 捜査で警察に協力するために警察に行った
- 実際に16,790円の費用が発生した
(大阪地方裁判所平成31年2月27日判決)
会社を清算する費用が賠償対象となった事例
次の理由で有限会社の清算費用約22万円が賠償対象となりました。
- 有限会社を経営する60歳男性が事故により死亡
- 事故直後から清算手続を開始して会社を清算
(京都地方裁判所平成30年11月26日判決)
学生寮からの荷物引き上げ費用が賠償対象となった事例
次の理由で学生寮からの荷物引き上げ費用5万円が賠償対象となりました。
- 大学生の18歳の死亡事故
- 学生寮から荷物を引上する作業を行う費用として5万円が発生
(名古屋地方裁判所令和3年1月13日判決)
まとめ:帰国費用やその他費用
その他費用の賠償には一律の基準はありませんが、次のような損害が賠償の対象となります。
- 帰国費用
- 海外からの被害者の搬送費用
- 渡航費用
- 旅行のキャンセル料
- 就学資金の返還
- ペットの飼育費用
- 親族の治療費
- 刑事捜査や刑事裁判に関する費用
- 被害者が経営する会社の清算費用
- 被害者の住宅の引上引越費用
(監修者 弁護士 大澤 一郎)