温泉治療費
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎
温泉治療費は事故による補償の対象外となることがほとんどです。
この記事では交通事故の被害者にむけて、温泉治療費の補償ルールを交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
なお問題が発生しそうなときは、交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
―――― 目次 ――――
温泉治療とは
温泉治療とは温泉で治療をする方法です。医師の指示に基づき行います。
温泉の含有成分、入浴の温熱作用、周辺環境や気候などが総合的にはらたき、心理反応や生体反応を引き起こすことで効用を発揮します。
参考情報:温泉療養(環境省)
参考情報:温泉療法医(日本温泉協会)
参考情報:一般社団法人日本温泉気候物理医学会
温泉利用型健康推進施設を利用した場合、医療費控除を受けることができる可能性があります。
参考情報:温泉利用型健康増進施設とは(温泉利用型健康増進施設連絡会)
参考情報:温泉利用型健康増進施設の利用料金の医療費控除の取扱い(国税庁)
自賠責保険や裁判での温泉治療費の支払基準
では自賠責保険や裁判での温泉治療費の支払基準はどのようなものでしょうか?
自賠責保険では自賠責保険の支払基準の告示(金融庁)があります。
裁判では赤い本と青い本という裁判の基準をまとめた本があります。
赤い本の基準
- 医師の指示があるなど、治療上有効かつ必要がある場合に限り認められるが、その場合でも額が制限されるようである。
青い本の基準
- 医師の医療行為以外の症状改善の費用は、医師の指示・承認がない場合には否定的な取り扱いをされることが多いであろう。
- 完全に否定されない場合でも、現実の支払額の一定割合の範囲で賠償が認められることが多い。
基準の解説
温泉治療費が補償の対象となる確率は極めて低い
温泉治療費が補償の対象となる確率は極めて低いです。
温泉治療費は医師の指示がなければ補償の対象とはなりません。医師が温泉治療をあえて指示することはほぼないでしょう。
温泉治療費が認められた事案の解説
では温泉治療費が補償の対象となった事案はどのような事案でしょうか?
古い裁判例ですが、東京地方裁判所昭和53年3月16日判決の事案をご紹介します。
この事案は、医師から温泉をすすめられ複数回温泉に行き約20万円を支出した事案です。病名は胸部打撲、右肋骨骨折、右肺損傷、右血胸・気胸、左鎖骨骨折、左肋骨骨折です。
裁判の判決では、約20万円のうち60%の約12万円を温泉治療費の補償の対象としました。
ただし昭和53年と古い裁判例ですし、全額は補償の対象となっていません。そのため、温泉治療費を認める先例としての価値は乏しいでしょう。
まとめ:温泉治療費
温泉治療費は補償の対象外となることがほとんどです。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)