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交通事故知識ガイド各損害の損害賠償基準の詳細解説

会社役員の逸失利益

最終更新日:2024年7月22日

監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎

会社役員の逸失利益
会社役員の逸失利益は、事故で将来の収入が減収するときに請求できます。

この記事では会社役員の交通事故被害者にむけて、会社役員の逸失利益の計算方法を交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

なお気になることがある場合、交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

会社役員の逸失利益とは

逸失利益とは事故により発生する将来の収入の減少です。後遺障害が認定されたとき、逸失利益を請求できます。
症状固定とは

逸失利益の計算は次の通りです。

基礎収入は事故時の職業により計算方法が大きく異なります。会社役員の基礎収入は事故前の役員報酬を基準にします。

会社役員の逸失利益の基礎収入の基準

では自賠責保険や裁判での会社役員の逸失利益の基礎収入の基準はどのようなものでしょうか?
自賠責保険では自賠責保険の支払基準の告示(金融庁)があります。
裁判では赤い本と青い本という裁判の基準をまとめた本があります。

赤い本の基準

  • 会社役員の報酬については、労務提供の対価部分は認容されるが、利益配当の実質をもつ部分は消極的である。

青い本の基準

  • 名目的な報酬額をそのまま基礎収入とするのではなく、労務対価部分の金額を適宜認定して基礎収入額とすることになる。

基準の解説

労務提供部分と利益配当部分

役員報酬には労務提供部分と利益配当部分があります。両者は個別事案ごとに実質的に判断します。労務提供部分が会社役員の休業損害の対象です。

  • 労務提供部分
    労務提供部分とは、実際に役員が働いたことの対価と評価できる部分です。たとえば、従業員ゼロのIT関連企業の株式会社の代表取締役が毎日実際に作業を行う場合、役員報酬は労務提供部分と判断されやすいでしょう。
  • 利益配当部分
    利益配当部分とは、会社の利益の一部を役員として受領していると評価できる部分です。たとえば、社長が運転をしない従業員200人の運送会社の代表取締役が年間7000万円の役員報酬を受領している場合、大部分は利益配当部分と判断されやすいでしょう。

労務提供部分と利益配当部分の判断基準

労務提供部分と利益配当部分を区別する一律の基準はありません。次のような事情を総合考慮して判断することが多いです。

  • ①会社の規模
  • ②会社の利益状況
  • ③役員の地位
  • ④役員の職務内容
  • ⑤役員の年齢
  • ⑥役員報酬の金額
  • ⑦他の役員や従業員との差
  • ⑧事故後の役員報酬額の推移
  • ⑨類似法人の役員報酬の支給状況

各項目の詳細は「会社役員の休業損害」で解説していますので、あわせてお読みください。

会社役員の逸失利益が賠償対象となった事例

では会社役員の逸失利益が賠償対象となった事例にはどのようなものがあるでしょうか?
代表的なパターンをご紹介します。

役員報酬全額が逸失利益の基礎収入となった事例

次の理由で年収1,080万円を基礎とした逸失利益が賠償対象となりました。

  • 印刷機器販売等会社代表取締役の71歳男性
  • 右上肢変形障害、右股関節神経症状、頭部神経症状(後遺障害併合11級)
  • 会社の従業員ゼロ
  • 親族が経理事務を手伝うほかは、本人が単独で印刷機器の販売を行う
  • 実際の役員報酬年額全額1080万円を逸失利益の基礎収入として算定
    (東京地方裁判所平成28年11月17日判決)

役員報酬の70%が逸失利益の基礎収入となった事例

次の理由で年収3,360万円の70%を基礎として逸失利益が賠償対象となりました。

  • スポーツ用品販売等の代表取締役の52歳男性
  • 頚部痛と腰部痛(後遺障害併合14級)
  • 役員報酬は7年前から定額
  • 事故前年は休業日数に応じた形で役員報酬減額
  • 決裁業務をはじめとして職責が大きい
  • 株主配当が行われていない
  • 症状固定後に為替差損による損害を理由に役員報酬減額
  • 役員報酬は必ずしも提供労務量に異例していない
  • 役員報酬3,360万円の70%である2,352万円が労務提供部分

まとめ:会社役員の逸失利益

会社役員の逸失利益は役員報酬を基準に計算します。役員報酬には労務提供部分と利益配当部分があります。労務提供部分が会社役員の休業損害の対象です。

労務提供部分と利益配当部分を区別する一律の基準はありません。①会社の規模、②会社の利益状況、③役員の地位、④役員の職務内容、⑤役員の年齢、⑥役員報酬の金額、⑦他の役員や従業員との差、⑧事故後の役員報酬額の推移、⑨類似法人の役員報酬の支給状況等の事情を総合考慮して判断することが多いです。

(監修者 弁護士 大澤 一郎

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