学生の休業損害
最終更新日:2024年7月22日
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎
学生の休業損害は原則請求できません。ただし、アルバイトをしている場合、事故により学校の卒業や就職時期が遅れた場合は請求できます。
この記事では交通事故被害者にむけて、学生の休業損害が賠償対象となる場合や計算方法を交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
なお問題が発生しそうなときは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
―――― 目次 ――――
学生の休業損害とは
学生は仕事をしていないため、休業損害は原則発生しません。しかし、①アルバイトをしている場合、②事故により学校の卒業や就職時期が遅れた場合等は休業損害が発生することがあります。
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学生の休業損害の支払基準
では自賠責保険や裁判での学生の休業損害の支払基準はどのようなものでしょうか?
自賠責保険では自賠責保険の支払基準の告示(金融庁)があります。
裁判では赤い本と青い本という裁判の基準をまとめた本があります。
赤い本の基準
- 原則として認めないが、収入があれば認める。
- 就職遅れによる損害は認められる。
青い本の基準
- 生徒学生は、社会人として就労する前の地位であるから、本来ならば金銭収入は得ておらず、休業損害は発生しない。
- アルバイトをしている者については、現実のアルバイト収入を基礎として算定した休業損害が認められる。
- 一般の社会人のように安定した雇用関係とは言えないので、現実的な就労予定日数を認定して損害算定をする。
- 治療が長期にわたり、学校の卒業ないし就職の時期が遅延した場合は、就職すれば得られたはずの給与額が損害として認められる。
基準の解説
学生の休業損害が請求できるとき
学生の休業損害が請求できるのは次のようなときです。
- 学生ではあるものの、アルバイトをしていたとき
- 学生ではあるものの卒業後の就職が近く、事故の影響で卒業後の仕事ができなかったとき
学生の休業損害の金額
学生の休業損害の金額は次の通りです。
- 事故によりアルバイトができなった場合、アルバイトの減収分です。
- 事故により卒業後の仕事ができなかったとき、卒業後の仕事がでできなかった減収分です。内定先が決まっている場合は内定先の給与、内定先が決まっていない場合は平均的な初任給を元に決めることが多いでしょう。
学生の休業損害が賠償対象となった事例
では学生の休業損害が賠償対象となった事例にはどのようなものがあるでしょうか?代表的なパターンをご紹介します。
アルバイト分の減収の事例
次の理由で休業損害199万円が賠償対象となりました。
- 大学3年生の男性
- 就職活動のために直ちにバイトを自粛しなければならない状況ではない
- 事故前日までの102日間の実収入を参考に休業損害の日額を計算
- 症状固定まで384日間199万円が賠償対象
(名古屋地方裁判所平成23年2月18日判決)
卒業後の就労予定分の減収の事例
次の理由で休業損害989万円が賠償対象となりました。
- 事故時18歳の専門学校生の右目失明外貌醜状(後遺障害5級)
- 事故がなければ翌々年4月から就労開始予定
- 平均賃金を元に休業損害を計算
- 就労開始予定日から症状固定日まで40カ月で989万円
(大阪地方裁判所平成24年7月30日判決)
まとめ:学生の休業損害
学生の休業損害は、①アルバイトをしていた場合や②事故の影響で卒業後の仕事ができなかった場合などに請求できます。
卒業後の仕事ができなかった場合、内定先が決まっている場合は内定先の給与、内定先が決まっていない場合は平均的な初任給を元に金額を決めることが多いでしょう。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)