有給休暇の休業損害
最終更新日:2024年7月22日
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎
有給休暇分の休業損害は、事故が原因で有給休暇を利用したときは賠償対象となります。休業損害証明書を職場に作成してもらい証明します。
この記事では交通事故被害者にむけて、有給休暇分の休業損害を請求できるときや証明する方法を交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
なお問題が発生しそうなときは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
―――― 目次 ――――
有給休暇の休業損害とは
有給休暇の休業損害とは、事故が原因で有給休暇を利用したときの休業損害です。
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有給休暇の休業損害の支払基準
では自賠責保険や裁判での有給休暇の休業損害の支払基準はどのようなものでしょうか?
自賠責保険では自賠責保険の支払基準の告示(金融庁)があります。
裁判では赤い本と青い本という裁判の基準をまとめた本があります。
赤い本の基準
- 現実の収入減がなくても、有給休暇を使用した場合は休業損害として認められる。
青い本の基準
- 表面上は減収がないようにも見えるが、被害者の有給休暇請求権の不本意な行使という犠牲によるものであるから、損害算定される扱いである。
基準の解説
事故が原因で有給休暇を利用したときは休業損害の賠償対象となります。休業損害証明書を職場に作成してもらいましょう。事故による欠勤で将来の有給休暇が認められなくなったときも休業損害の賠償対象となることがあります。
関連情報
休業損害1日の金額は、事故前3カ月の額面給与を勤務日数で割ることが多いです。たとえば、額面給与50万で事故前3カ月の勤務日数合計60日のときは次の計算です。
【計算式】 3カ月の給与150万÷勤務日数60日=日額25,000円
有給休暇の休業損害が賠償対象となった事例
では有給休暇の休業損害が賠償対象となった事例にはどのようなものがあるでしょうか?
代表的なパターンをご紹介します。
取得した有給休暇分の休業損害が賠償対象となった事例
次の理由で有給休暇分の休業損害約18万円が賠償対象となりました。
- 左手関節神経症状の会社員の43歳(後遺障害等級14級)
- 有給休暇を12日使用
- 事故前3カ月の給与合計105万円を稼働日数である67日で割った日額15,672円が1日の休業損害
(大阪地方裁判所平成30年6月22日判決)
事故による欠勤で付与されなかった有給休暇分の休業損害が賠償対象となった事例
次の理由で翌年度と翌々年度各10日分の休業損害が賠償対象となりました。
- 右足関節用廃の34歳男性(後遺障害併合5級)
- 事故による293日の休業のため出勤日数が全労働日の80%未満
- 事故翌年度と翌々年度の有給休暇が発生しなかった
- 事故翌年度と翌々年度の発生しなかった有給休暇分が休業損害
(大阪地方裁判所平成20年9月8日判決)
よくあるQ&A
- Q事故とは無関係な有給休暇は賠償対象ですか?
- A賠償対象ではありません。事故が原因で有給休暇を取得したことが必要です。
- Q事故から相当期間が経過してから有給休暇を取得しました。休業損害を請求できますか?
- A請求できないことが多いです。事故から相当期間経過していると、事故が原因の有給休暇の取得と証明できないことが多いです。
- Q代休は休業損害を請求できますか?
- A代休とは土日などに出勤をした代わりに平日に休むような場合です。代休は勤務日の変更です。休業損害は請求できません。
まとめ:有給休暇の休業損害
有給休暇分の休業損害は、事故が原因で有給休暇を利用したときは賠償対象となります。休業損害証明書を職場に作成してもらい証明しましょう。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)