家屋や自動車の改造費
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎
重度の後遺障害のときは家屋や自動車の改造費が賠償の対象となります。
この記事では交通事故の被害者にむけて、家屋や自動車の改造費の損害賠償のルールや過去の具体的な事例を交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
なお問題が発生しそうなときは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
家屋や自動車の改造費とは
家屋の改造費とは介護仕様に家屋を改造するための費用です。自動車の改造費とは介護仕様に自動車を改造するための費用です。
自賠責保険や裁判での家屋や自動車の改造費の支払基準
では自賠責保険や裁判での家屋や自動車の改造費の支払基準はどのようなものでしょうか?
自賠責保険では自賠責保険の支払基準の告示(金融庁)があります。
裁判では赤い本と青い本という裁判の基準をまとめた本があります。
赤い本の基準
- 被害者の受傷の内容、後遺症の程度内容を具体的に検討し、必要が認められれば相当額を認める。
- 浴室や便所の出入口、自動車の改造費などが認められている。
青い本の基準
- 家の出入口、風呂場やトイレなどの設置や改造費、ベッドや椅子などの調度品購入費、自動車の改造費などにつき実費相当額。
基準の解説
家屋の改造費
家屋の改造費は重度の後遺障害が残ったときに賠償の対象となります。たとえば、次の後遺障害などです。
- 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの(後遺障害1級1号)
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの(後遺障害1級1号)
- 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの(後遺障害2級1号)
- 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの(後遺障害2級1号)
ただし、後遺障害3級以下でも症状や必要性により家屋改造費が賠償の対象となることはあります。
家屋の改造費が賠償対象となる場合、改造費全額が賠償対象となるとは限りません。
改造の必要性や支出額の相当性、被害者以外の家族が改造により事実上享受する便益などを考慮して、現実に支出した費用のうち一部が賠償対象となることが多いです。
自動車の改造費
自動車の改造費も重度の後遺障害が残ったときに賠償の対象となります。家屋の改造費と同じく、後遺障害1~2級のときは賠償対象となりやすいです。3級以下のときでも症状や必要性により賠償の対象となることはあります。
介護仕様の新車を購入した場合、購入価格の全額が賠償対象にはなりません。通常の新車と比べて介護仕様で増加した追加費用分が賠償対象です。
家屋や自動車の改造費が賠償対象となった事例
では家屋や自動車の改造費が賠償対象となった事例にはどのようなものがあるでしょうか?代表的なパターンをご紹介します。
後遺障害1級で自宅改造費が賠償対象となった事例
次の理由で自宅改造費合計1,267万円が賠償対象となりました。
- 完全対麻痺、膀胱直腸障害の50歳(後遺障害1級)
- 旧宅をリフォームして車いすで生活できるようにするのは困難
- 建物を新築
- 新築代金のうち、福祉設備にかかった費用や設計費用、旧宅解体工事費用、測量費用、擁壁工事費用合計1,267万円
(横浜地方裁判所令和2年1月19日判決)
後遺障害6級で建物改装費用が賠償対象となった事例
次の理由で建物改装費用と原状回復費用の合計26万円が賠償対象となりました。
- 左下肢のRSDの43歳(後遺障害併合6級)
- 手すり設置、段差解消のための改装を実施
- 賃貸住宅明渡の際は原状回復費用が必要
(千葉地方裁判所令和2年9月10日判決)
車両改造費が賠償対象となった事例
次の理由で車両改造費として購入5回分合計257万円が賠償対象となりました。
- 四肢麻痺及び高次脳機能障害の54歳(後遺障害1級)
- 福祉仕様と通常仕様の車両差額78万円
- 耐用年数は6年で今後5回購入が必要
(名古屋地方裁判所令和2年11月20日判決)
まとめ:家屋や自動車の改造費
家屋や自動車の改造費は、被害者の受傷の内容、後遺症の程度・内容を具体的に検討し、必要があれば相当額が賠償の対象となります。
具体的には後遺障害1~2級など重度の後遺障害が残ったときに賠償の対象となります。3級以下のときは症状や必要性により賠償の対象となることがあります。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)