健康保険を使うメリットとデメリット
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 松本 達也
- Q交通事故の被害者です。健康保険を使うメリットとデメリットは何ですか?
- A健康保険を使うメリットやデメリットは次の通りです。
- 健康保険を使うメリット
①病院窓口での負担額が減る
②自らに過失のある事案で賠償額が有利になる
- 健康保険を使うデメリット
①病院に事実上拒否されることがある
②窓口で治療費を負担することがある
③治療内容に制限がある
④書類集めが複雑になる
自らに過失が一定程度ある場合や、加害者が無保険の場合は健康保険の利用が望ましいでしょう。
- 健康保険を使うメリット
―――― 目次 ――――
交通事故でも健康保険の利用は可能
「事故の場合は健康保険は使えない」と医療機関が言うことがありますが、事実ではありません。
健康保険を使うメリット
では、健康保険を使うメリットは何でしょうか?
次のようなメリットがあります。
- ①病院窓口での負担額が減る
- ②自らに過失のある事案で賠償額が有利になる
①病院窓口での負担額が減る
健康保険を使う場合、診療報酬は1点10円で計算します。窓口負担は1割~3割です。
健康保険を使わない場合、診療報酬は1点20円程度で計算します。窓口負担は10割です。
たとえば、100点分の診療報酬で考えてみましょう。
健康保険を使う場合、病院窓口での患者負担は100円~300円です。
健康保険を使わない場合、病院窓口での患者負担は2000円です。
健康保険を使うと、病院窓口での負担額が減ります。
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②自らに過失のある事案で賠償額が有利になる
健康保険を使う場合、自らに過失のある事案で賠償額が有利になります。
たとえば、100点分の診療報酬、窓口負担3割、自らの過失が4割とします。
健康保険を使う場合、120円が最終的に自己負担となります。
健康保険を使わない場合、800円が最終的に自己負担となります。
健康保険を使うと、自らに過失のある事案で賠償額が有利になります。
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まとめ:健康保険を使うメリット
健康保険を使うと次のようなメリットがあります。
- ①病院窓口での負担額が減る
- ②自らに過失のある事案で賠償額が有利になる
健康保険を使うデメリット
では、健康保険を使うデメリットは何でしょうか?
次のようなデメリットがあります。
- ①病院に事実上拒否されることがある
- ②窓口で治療費を負担することがある
- ③治療内容に制限がある
- ④書類集めが複雑になる
①病院に事実上拒否されることがある
交通事故でも健康保険は使えます。しかし、病院によっては健康保険の利用を事実上拒否することがあります。
②窓口で治療費を負担することがある
健康保険を使う場合、窓口で一度治療費を自己負担することが多いです。立て替えした金額を保険会社に請求します。
③治療内容に制限がある
健康保険を使う場合、健康保険の範囲内の治療しか行えません。治療内容に制限がある可能性があります。
④書類集めが複雑になる
診療報酬明細書(レセプト)や後遺障害診断書など、交通事故の賠償に必要な書類集めが複雑になることがあります。特に、病院が書類作成や収集に協力してくれないことがあります。
まとめ:健康保険を使うデメリット
健康保険を使うと次のようなデメリットがあります。
- ①病院に事実上拒否されることがある
- ②窓口で治療費を負担することがある
- ③治療内容に制限がある
- ④書類集めが複雑になる
健康保険の利用が望ましい場合
では健康保険の利用が望ましいのはどのような場合でしょうか?
次のようなときは健康保険の利用が望ましいです。
- ①自らに過失が一定程度あるとき
- ②加害者が無保険のとき
①自らに過失が一定程度あるとき
自らに過失が一定程度あるときは健康保険の利用が望ましいでしょう。健康保険を使うことで受領金額を増やすことが可能です。
具体的に何割の過失があるときに健康保険の利用が望ましいかは専門的な判断が必要です。悩むときは交通事故に詳しい弁護士へのご相談をおすすめします。
②加害者が無保険のとき
加害者が無保険のときは健康保険の利用が望ましいでしょう。加害者が無保険だと治療費の全部又は一部が自己負担となる可能性が高いです。
健康保険を使うと総額の治療費を減らすことができます。健康保険を使うことで自己負担額を減らすことが可能です。
健康保険を使えない場合
労災事故の場合、健康保険は利用できません。
また、被害者の故意による事故や法令違反の行為による事故の場合、健康保険を使えない可能性があります。
まとめ:健康保険を使うメリットとデメリット
健康保険を使うメリットやデメリットは次の通りです。
- 健康保険を使うメリット
①病院窓口での負担額が減る
②自らに過失のある事案で賠償額が有利になる
- 健康保険を使うデメリット
①病院に事実上拒否されることがある
②窓口で治療費を負担することがある
③治療内容に制限がある
④書類集めが複雑になる
自らに過失が一定程度ある場合や、加害者が無保険の場合は健康保険の利用が望ましいでしょう。
(監修者 弁護士 松本 達也)