交通事故の休業損害|1日にもらえる金額の計算方法
最終更新日:2025年03月13日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
- Q交通事故の休業損害は1日いくらで計算しますか?
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休業損害の日額は、適用される基準によって異なります。最低6,100円から、場合によっては数万円まで認められる可能性があります。
保険会社が提示する金額が適正かどうか判断するのは難しいことも少なくありません。不安な場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談し、適正な賠償を受けるためのアドバイスを受けることをおすすめします。


1. 休業損害は1日の金額×期間で計算
交通事故によって仕事を休まざるを得なくなった場合、その間の収入減少を補填するのが休業損害です。
休業損害は、基本的に「1日あたりの収入×休業日数」という計算式で算出されます。
しかし、適用される基準や職業によって計算方法が異なるため、単純な計算だけでは正しい賠償額が導き出せないことがあります。
日額の基準は3つ(自賠責保険・任意保険・裁判所の基準)
休業損害の日額は、①自賠責保険基準、②任意保険基準、③裁判所の基準の3つの基準により異なります。
基準 | 1日あたりの金額の目安 | 計算方法 |
---|---|---|
自賠責保険基準 | 6,100円~19,000円 | 6,100円(上限19,000円) ×休業日数 |
任意保険基準 | 非公開 (自賠責基準より高め) |
非公開 (自賠責基準より高め) |
裁判所の基準 | 実際の収入に応じて変動 | 実際の収入を基に計算 |
① 自賠責保険基準(最低限の補償)
自賠責保険は、すべての自動車や原付バイクに加入が義務付けられている強制保険です。
この保険は、事故の被害者を救済するために作られたものですが、補償内容は最低限に設定されています。対人賠償のみが対象で、車やバイクの修理費などの物損は補償されません。また、支払われる金額には上限があり、実際の損害をすべて補えるとは限りません。
休業補償は1日6,100円~最大19,000円までですが、収入がそれ以上でも上限を超える補償は受けられません。治療費や慰謝料も限度額があるため、実際にかかった費用を全額カバーできないことが多いです。
そのため、適正な賠償を受けるには、自賠責保険だけでなく任意保険や弁護士基準での請求も検討する必要があります。
② 任意保険基準(やや高額)
任意保険基準は、任意保険会社が独自に設けている基準です。
自賠責基準と違って限度額がないため、おおむね自賠責基準と裁判所の基準の中間が多いです。
あくまで保険会社が設けている基準であり、根拠があるものではありません。
③ 裁判所の基準(最も高額)
裁判所の基準とは、裁判になった場合に認められる基準で、3つの基準の中で最も高額になることが多いです。
裁判所の基準では、事故によって実際に休んだ分の収入が賠償されます。そのため、自賠責保険や任意保険の基準より多くの賠償を受けられる可能性があります。
弁護士は、裁判所の基準で損害額を請求します。そのため、保険会社の提示額が低いと感じた場合は、弁護士に相談することで適正な金額を請求しやすくなります。
休業損害と慰謝料の違い
休業損害と慰謝料は、どちらも交通事故の被害者が請求できるものですが、目的が異なります。
休業損害は、事故の影響で仕事を休み、収入が減った分を補償するものです。実際に得られたはずの収入をカバーするための賠償です。
一方、慰謝料は、事故によるけがや後遺症が原因で受けた精神的な苦痛に対する賠償です。仕事を休んだかどうかに関係なく、けがの程度や治療の期間に応じて金額が決まります。
休業損害と休業補償の違い
休業補償とは、仕事中の事故や業務が原因の病気で働けなくなったときに、労災保険から支給される給付金です。加害者がいるかどうかに関係なく、一定の条件を満たせば、労働基準監督署を通じて国に請求できます。
一方、休業損害は交通事故による収入の減少を賠償するもので、加害者に対して請求します。これは仕事中や通勤中の事故に限らず、プライベートでの交通事故でも請求できです。
たとえば、通勤中に交通事故で受傷して働けなくなった場合、労働基準監督署に休業補償を請求することもできますし、加害者に休業損害を請求することもできます。
休業損害と逸失利益の違い
交通事故の損害のひとつに「逸失利益」というものがあります。
逸失利益とは、後遺症が残ったことで労働能力が低下し、将来的に得られるはずだった収入が減少する場合の補償です。後遺障害逸失利益とも言います。後遺障害の等級に応じて労働能力の喪失率が設定され、その割合を基に算定されます。
一方で、休業損害は、事故によって仕事を実際に休んだことで生じた収入の損失を賠償するもので、事故発生から完治または症状固定までの期間が対象です。
つまり、休業損害は実際に起きた治療期間中の短期間の収入減を賠償するのに対し、逸失利益は将来の収入減を賠償するという違いがあります。

損害賠償金は非課税
交通事故の損害賠償金は、基本的に課税対象になりません。これは、損害を補填する目的で支払われるため、新たな所得とはみなされないからです。
ただ、例外もありえますので、不安な場合は、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
2. 職業により1日のもらえる金額の計算方法は異なる
休業損害は、裁判所の基準で計算するのが最も高額になりやすく、適正な賠償を受けるためにはこの基準を適用することが重要です。
裁判所の基準では、事故前の収入を基に1日あたりの損害額を算出し、休業期間に応じた金額を請求します。
ただし、この1日あたりの金額(基礎収入日額)は、職業ごとに異なる計算方法を使います。それでは、裁判所の基準での職業別の休業損害の計算方法を詳しく見ていきましょう。
3. 会社員・アルバイトなどの給与所得者
給与所得者(会社員・アルバイト)は、事故前の給与を基に計算します。基本給のほか、通勤手当や残業手当なども含めて計算するため、給与明細や源泉徴収票の準備が重要です。
【計算式】
休業損害=(事故前3か月の給与合計÷90日または勤務日数)×休業日数
なお、ボーナスが事故の影響で減額された場合、別途請求が可能なケースもあります。また、有給休暇を使った場合、収入の減少はありませんが別途請求が可能です。
4. 自営業者・個人事業主・フリーランス
自営業者は、前年の申告所得を基準に計算します。
【計算式】
休業損害=(事故前年の申告所得÷365日)×休業日数
また、事業継続に必要な固定費(賃料・リース料・従業員給与など)を考慮し、適正な請求を行うために確定申告書や取引記録などの収入の証明書類を準備することが重要です。
5. 会社役員
会社役員の役員報酬には、「労働対価」と「利益配当」の2つの要素があります。
労働対価とは、役員が経営や業務に従事したことに対する報酬であり、従業員の給与と同様に、実際に働いた対価として支払われるものです。
一方、利益配当は、会社の利益に応じた報酬であり、株主配当と似た性質を持ちます。利益配当は業務の有無にかかわらず支給されることがあるため、休業損害の計算には含まれません。
そのため、会社役員の休業損害を算出する際は、役員報酬のうち労働対価の部分のみを基準とし、利益配当分は除外する必要があります。
【計算式】
休業損害=(役員報酬年収-利益配当分)÷365日×休業日数
役員報酬の「労働対価部分」と「利益配当部分」の割合は明確な基準がないため、会社の規模や役職、業務内容などを総合的に判断する必要があります。また、「会社役員の休業損害は一律支払わない」「会社が役員報酬は払っており減収していないので払わない」と保険会社が主張してくることもあります。
適正な賠償を受けるためにも、専門家に相談することをおすすめします。
6. 専業主婦・兼業主婦などの家事従事者
家事労働も経済的価値があると認められるため、休業損害を請求できます。主婦の休業損害の計算は厚生労働省の賃金センサス(女性の全年齢平均賃金)を使います。
賃金センサスとは、厚生労働省が毎年発表する「賃金構造基本統計調査」のデータをもとに、労働者の平均賃金を算出したものです。業種や職種、性別、年齢別の賃金水準が載っており、労災や交通事故などで休業損害を算定する基準として使います。
家事労働についても経済的価値があるため、専業主婦や家事従事者が休業損害を請求する場合、この賃金センサスの「女性の全年齢平均賃金」を基準にします。
【計算式】
休業損害=(女性の全年齢平均賃金÷365日)×休業日数
事故による影響がどの程度あったかが争点になりやすいため、適正な請求をするためには慎重な準備が必要です。
7. 無職や失業中
無職や失業中の人は、基本的に休業損害を請求できません。なぜなら、休業損害は「事故が原因で仕事ができなくなり、収入が減った場合」に認められるものだからです。
しかし、次のようなケースでは、休業損害を請求できる可能性があります。
- 事故前に就職の内定があった場合
- 内定はなかったが、求職活動をしており、近いうちに就職できる見込みがあった場合
【計算式】
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内定があった場合休業損害=(内定先の推定年収÷365日)×休業日数
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求職活動中の場合休業損害=(想定される就職先の平均年収÷365日)×休業日数
内定がある場合は休業損害が認められやすいですが、求職活動中だった場合は否定されることが多いです。
そのため、「事故がなければ就職していた可能性(蓋然性)」を証明するために、就職活動の記録や職業紹介の証明書などを準備することが重要です。適正な請求をするためにも、弁護士に相談することをおすすめします。
8. 学生
学生が休業損害を請求できるのは、「アルバイト収入があった場合」または「就職予定だった場合」です。
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アルバイトをしていた場合
アルバイトをしていた学生は、事故前の収入を基に休業損害を計算できます。
【計算式】
休業損害=(事故前3か月の給与合計÷稼働日数)×休業日数
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就職予定だった場合
事故によって留年や長期療養が必要となり、就職の時期が遅れた場合も休業損害を請求できます。
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内定があった場合休業損害=(内定先の推定年収÷365日)×休業日数
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内定はないが、就職の可能性が高かった場合休業損害=(賃金センサスの平均年収÷365日)×休業日数
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アルバイト収入があった学生は比較的認められやすいですが、就職予定だった場合は、証拠が必要になることが多いです。内定通知や就職活動の記録を準備しておくことで、休業損害の請求がスムーズになります。

9. 日額の交渉のポイント
では、実際に休業損害を請求する際に、日額の交渉をするポイントを見ていきましょう。
証拠をそろえて請求する
休業損害を適正に算定し、交渉を有利に進めるには、収入を証明する書類を準備することが重要です。収入の有無や職業によって日額の算定基準が異なるため、それに応じた証拠を揃えましょう。
休業損害の日額は、原則として事故前の収入を基準に算定します。ただし、職業や立場によって収入の計算方法が異なるため、それぞれに適した証拠が必要です。代表的な職業ごとの算定基準と証拠の例を見ていきましょう。
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会社員・アルバイトなどの給与所得者日額の算定基準:事故前3か月の給与の平均額を基に計算
証拠書類:源泉徴収票、休業損害証明書、給与明細(3か月分)、賞与減額証明書 -
自営業者・個人事業主・フリーランス日額の算定基準:前年の申告所得を365日で割って算出
証拠書類:確定申告書、売上帳、経費帳、銀行口座の入出金記録、請求書・領収書 -
会社役員日額の算定基準:役員報酬のうち「労働対価分」のみを考慮して計算
証拠書類:法人の決算書、役員報酬の支払い証明書、会社の議事録、法人税の申告書、他の役員や従業員との収入の違いがわかる資料 -
専業主婦・兼業主婦などの家事従事者日額の算定基準:賃金センサス(女性の全年齢平均賃金)を基に計算
証拠書類:賃金センサス(厚生労働省の統計データ)、家事負担の状況資料、医師の診断書 -
無職や失業中日額の算定基準:内定先の想定年収、または就職予定だった業種の平均賃金を基に計算
証拠書類:内定通知書、就職活動の記録(ハローワーク紹介状、応募履歴)、雇用保険の受給記録 -
学生日額の算定基準:アルバイト収入、または就職予定だった業種の平均賃金を基に計算
証拠書類:アルバイトの給与明細(3か月分)、内定通知書、就職活動の記録(エントリー履歴・面接記録)
収入を証明する書類が揃っていれば、休業損害の日額を正しく算定でき、適正な金額を請求しやすくなります。逆に、証拠が不足すると、実際の収入よりも低く見積もられる可能性があります。
裁判所の基準で交渉する
休業損害の請求では、裁判所の基準を用いることで、より高額な日額を主張できる可能性があります。裁判所の基準は、過去の裁判をもとにしたもので、自賠責保険基準や任意保険基準よりも高額になることが多いです。
保険会社は、自賠責基準や独自の任意保険基準で低めの日額を提示することが一般的です。
しかし、裁判所の基準では、実際の収入や経済的損害を反映した日額を算出できるため、より正当な賠償になる可能性が高まります。
ただし、裁判所の基準での請求を通すには、職業ごとに適切な証拠をそろえることが必要です。たとえば、会社員なら給与明細や休業損害証明書、自営業者なら確定申告書や売上帳、家事従事者なら賃金センサスなどが有効な証拠となります。
適正な休業損害を受け取るためには、証拠をそろえたうえで裁判所の基準による交渉をすることが重要です。
納得できなければ弁護士に相談する
保険会社から提示された休業損害の日額に納得できない場合は、弁護士に相談することで適正な金額を請求できる可能性があります。
保険会社は、できるだけ支払額を抑えようとするため、最低限の基準で計算した日額を提示することが多いです。しかし、これが本当に適正な金額とは限りません。提示額が低いと感じたら、そのまま受け入れるのではなく、裁判所の基準での計算と比較することが大切です。
また、保険会社の対応に不満がある場合や、書類の不備を理由に支払いを拒まれた場合なども、弁護士に相談することで解決できることがあります。特に、自営業者や主婦、失業中の人など、収入の証明が難しいケースでは、正しい日額を主張するために交渉の専門知識が必要になります。
適正な休業損害を受け取るためにも、保険会社の提示する日額に違和感を覚えたら、一度弁護士に相談し、請求額が妥当か確認することをおすすめします。

10. まとめ:1日にもらえる休業損害の計算方法
休業損害は、1日あたりの収入×休業日数で計算します。ただし、適用される基準や職業によって補償額は大きく異なります。
基準 | 日額の目安 |
---|---|
自賠責保険基準 | 6,100円(最大19,000円) |
任意保険基準 | 非公開 (自賠責保険基準より高め) |
裁判所の基準 | 実際の収入に基づく (最も高額になることが多い) |
職業 | 計算方法 |
---|---|
会社員・アルバイト | 事故前3か月の給与の平均額 |
自営業者・フリーランス | 前年の所得を365日で割った額 |
会社役員 | 役員報酬のうち「労働対価」のみ対象 |
専業主婦・兼業主婦 | 賃金センサス(厚生労働省の統計)を基準に算出 |
無職・失業中 | 内定先や就職予定の収入を基準に計算 |
学生 | アルバイト収入、または就職予定の職種の平均賃金 |
休業損害の金額は、適用する基準や職業、証拠資料の有無によって大きく変わります。適正な金額を受け取るためには、しっかりと証拠を準備し、裁判所の基準で交渉することが重要です。
もし保険会社から提示された金額が適正かどうかわからない場合や、交渉が難しいと感じた場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。相談を通じて、正当な賠償を受けるための方法を確認し、納得のいく解決をしましょう。

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博