高次脳機能障害の社会的行動障害
監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎
- Q高次脳機能障害の社会的行動障害とは何ですか?
- A社会的行動障害とは、社会生活に大きく影響する問題行動が発生する障害です。
すぐ怒る、1つのことにこだわる、抑うつなどの症状があります。
―――― 目次 ――――
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは脳損傷による認知障害全般です。様々な認知障害だけではなく、行動障害や人格変化を伴うことが多いです。症状には記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。
関連情報
社会的行動障害とは
社会的行動障害とは、社会生活に大きく影響するような問題行動が発生する障害です。たとえば、次のような症状です。
- すぐ他人を頼る
- 子供っぽくなる
- 無制限に食べる
- 無制限にお金を使う
- すぐ怒る
- すぐ笑う
- 感情を爆発させる
- 相手の立場や気持ちを思いやることができず、よい人間関係が作れない
- 1つのことにこだわって他のことができない
- 意欲の低下
- 抑うつ
「すぐ怒る」という症状で見てみましょう。
つい怒りたくなる場面には誰でも遭遇します。しかし、ほとんどの人は自分の感情を抑え、怒らずに対処しようと努力します。
社会的行動障害が原因で怒る人は、我慢せず突然怒り出します。しかも、手加減せずに激情をぶつけるため、相手はとまどい悲しい気持ちになります。
友人が去っていく、職場で立場が悪くなる、家族関係が悪化するなど、高次脳機能障害が原因の社会的行動障害は、人間関係に深刻な危機を招きかねません。
社会的行動障害の原因
社会的行動障害は、前頭葉の損傷により発生することが多いです。記憶障害や注意障害、遂行機能障害の影響の結果、二次的に社会的行動障害が発生することもあります。
治療方法
社会的行動障害の治療方法は個別の状況により異なります。たとえば、薬物療法やリハビリなどです。
薬物療法は問題行動が減る可能性があります。他方、様々な刺激に対する反応が低下し、意欲の低下や抑うつ症状になる可能性もあります。
リハビリは、本人に病気という認識があれば効果が出る可能性が高いです。他方、本人に病気という認識がないと効果がないときもあります。
本人に病識がないとき
では、本人に病識がないときはどうすればよいでしょうか?
本人に病識がないと障害の改善が難しいです。本人に病識がないときは、次のような対応が望ましいです。
- 本人のプライドに配慮しながら、不適切な行動や間違いを指摘・修正します。
- 行ったテスト結果や検査結果は自分で採点してもらいます。
- グループ活動の中で、他人の失敗をみて自らの障害を理解してもらいます。
社会的行動障害と後遺障害
交通事故の頭部外傷で高次脳機能障害の社会的行動障害になったとき、どのような後遺障害の可能性があるでしょうか?
交通事故の後遺障害は1~14級まであります。画像所見や障害が生活に及ぼす程度などを考慮し後遺障害等級が決まります。
等級 | 認定基準 |
---|---|
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
まとめ:高次脳機能障害の社会的行動障害
高次脳機能障害の社会的行動障害とは、社会生活に大きく影響する問題行動が発生する障害です。すぐ怒る、1つのことにこだわる、抑うつなどの症状があります。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)