半側空間無視
監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎
- Q半側空間無視とは何ですか?
- A半側空間無視とは、損傷した脳の反対側について、何かを発見して報告したり、反応したり、その方向を向いたりすることが障害される病態です。
―――― 目次 ――――
半側空間無視とは
半側空間無視(はんそくくうかんむし)とは、損傷した脳の反対側について、何かを発見して報告したり、反応したり、その方向を向いたりすることが障害される病態です。
半側空間無視の症状
半側空間無視では次のような症状が発生します。
- (多くは)右側ばかりを探索しようとする。
- 食事の際にテーブル左側のおかずに気がつかなかったり、食べ残す。
- お皿の内容の右半分だけに手を付け、左半分を残す。
- 車いすの操作で左のブレーキを解除せずに動かそうとする。
- 移動が可能な場合、左側のものにぶつかる。
- 着衣が困難になる。
半側空間無視の原因
大脳を出た神経はすべて交差して反対方向へ伸びる
人間の脳の大部分を占める大脳は、右半球と左半球に分かれています。脳梁(のうりょう)が橋のように2つをつないでいます。
右半球から出た神経は左側へ、左半球から出た神経は右側へと、1回交差して体の各部へと伸びています。
神経の交差に例外はなく、すべての運動神経や感覚神経は、右半球から出たら体の左側へ、左半球から出たら体の右側につながっています。
このように神経が1回クロスしているため、左半球は体の右側の運動、感覚、視覚などの情報を担当します。右半球は、体の左側の運動、感覚、視覚を担当します。
半側空間無視で片側の情報が入ってこない理由
半側空間無視の症状は、大脳が右と左に分かれていることと関係があります。
半側空間無視は、体の片側にあるものを認識できない症状です。特に左側にあるものを認識できないことが多いです。自分の左側に置かれた食べ物だけ残したり、廊下で左側にぶつかるなどの動作が現れます。
左半側空間無視の症状が現れる高次脳機能障害の人は、大脳右半球に損傷を受けたと考えられます。
右脳には視覚をつかさどる神経があります。右脳は両眼の視覚を担当しており、他の神経と同じように右脳を出ると1回交差して体の左側に伸びていき、左側の感覚を支配します。そのため、大脳右半球に問題があると自分の左側を認識できなくなります。
◆右脳と左脳は独立しているわけではない
感覚的な活動は右半球が、理論的な活動は左半球が行うという話をよく聞きます。しかし、2つの大脳半球は独立して情報処理を行っているわけではありません。
太い神経線維の束である脳梁は、2つの大脳半球をつないで反対側の脳と連絡を取り合うシステムになっています。
高次脳機能障害で半側空間無視の症状が出た場合でも、認識できない側への注意をうながす、正しい動作のための声かけをするなどのリハビリを行います。その結果、症状が改善することもあります。
交通事故で半側空間無視となったときの後遺障害等級
半側空間無視は高次脳機能障害の1つの病態です。高次脳機能障害は1~14級までの後遺障害の可能性があります。画像所見や具体的な生活への支障の程度などを考慮し後遺障害等級が決まります。
等級 | 認定基準 |
---|---|
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
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まとめ:半側空間無視
半側空間無視とは、損傷した脳の反対側について、何かを発見して報告したり、反応したり、その方向を向いたりすることが障害される病態です。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)