高次脳機能障害の感情や行動への影響
最終更新日:2025年01月23日
- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎
- Q高次脳機能障害は感情や行動に障害が起きることがありますか?
- 高次脳機能障害は感情や行動に大きな障害を及ぼします。たとえば、意欲の低下や脱抑制、易怒性、抑うつ、暴力行為などが発生します。
1. 高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは脳損傷による認知障害全般です。様々な認知障害だけではなく、行動障害や人格変化を伴うことが多いです。症状には記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。
2. 感情や行動の障害の具体例
高次脳機能障害を発症すると、感情や行動の障害が現れることがあります。たとえば、次のような症状です。
意欲の低下
何事にも意欲を持てず、生活意欲が減退して漫然とした時間を過ごすようになります。症状が重いと、本当に何もしない「無感情状態」になります。
意欲の低下は、前頭葉の損傷が原因で起こると考えられています。
脱抑制
社会生活を営むため、人間は適切な行動や態度を無意識に判断して生きています。
しかし、脱抑制の症状が現れると感情のコントロールができません。その場にそぐわない感情の露出を行うようになり、思ったことを平気で言ったり、すぐ感情が高ぶったりします。
易怒性(いどせい)
別人のように怒りっぽくなります。
怒る対象は家族だけではありません。町で交通ルールを守らずに走っている自転車の運転者に怒鳴りつけるなどの行動も現れます。
抑うつ
うつ症状があらわれ、ふさぎ込みます。
暴力行為
物を破壊する行動がしばしばみられます。人への暴力行為に至ることもあります。
3. 脳の損傷部位との関係
感情や行動の障害は、脳の損傷部位と関係します。
脳の右半球を損傷したときの精神や行動の障害
しばしば左半側空間失識を発症します。その他、飽きっぽくなる、せっかちになる、細かいことが気になるなどの症状が現れることがあります。特定のことが気になって同じ行動を何度も繰り返すこともあります。
同じく、右半球を損傷すると、多弁の症状が現れることがあります。
しゃべり続けますが、内容はどんどん変わり、深みのないとりとめのない会話が続きます。
相手の声の調子から相手の感情を読み取ることができなくなります。
脳の左半球を損傷したときの精神や行動の障害
脳の左半球を損傷すると、しばしば失語症や失行症を発症します。
思い込みが強くなり、行動が自己中心的になる傾向があります。リハビリ中に課題ができないと、感情を抑制できなくなることがあります。
両側性の脳損傷の精神や行動の障害
脳の両側を損傷すると、感情失禁の症状がしばしば現れます。
喜怒哀楽のコントロールができなくなります。ちょっとしたことですぐ泣いたり、おかしくない時に笑いだしたりと、社会的にそぐわない態度が目立ちます。
4. まとめ:高次脳機能障害の感情や行動への影響
高次脳機能障害は感情や行動に大きな障害を及ぼします。たとえば、意欲の低下や脱抑制、易怒性、抑うつ、暴力行為などが発生します。
- 監修者
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弁護士 大澤 一郎