刑事事件の嘆願書
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 佐藤 寿康
- Q死亡事故の被害者遺族です。嘆願書を作成して欲しいと加害者側がお願いしてきました。嘆願書とは何ですか?
- A嘆願書とは、加害者への寛大な刑事処分を求めるようお願いする被害者作成の書面です。嘆願書を作成すると加害者の刑事処分が軽くなります。皆様の気持ち次第で嘆願書を作成するかは決めましょう。
―――― 目次 ――――
嘆願書とは
嘆願書とは、加害者への寛大な刑事処分を求めるようお願いする被害者作成の書面です。
嘆願書の宛先は、裁判所や検察庁が多いです。
嘆願書には、次のような文面が入っていることが多いです。
- 今回に限り寛大な処罰を望みます
- 寛大な処罰でも構いません
- 軽い刑事処分でも問題ありません
- 重い処分は求めません
- 通常の処分で構いません
- 刑事処分を求めません
上申書、和解書、合意書、示談書、確認書等の名前の書面に類似の内容が入っていることもあります。書類の題名より記載内容が重要です。
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嘆願書の効果
では、嘆願書はどのような効果があるでしょうか?
被害者による嘆願書があると、加害者の刑罰が軽くなることが多いです。
被害者の処罰感情は、加害者である被告人の情状に影響します。
被害者が厳罰を望んでいたら、刑罰は重くなる傾向になります。被害者が加害者を許していたら、刑罰は軽くなる傾向になります。
「加害者の罪を軽くして下さい」と被害者が望んでいる場合、単に加害者を許している状態より被害感情が薄いことになります。そのため、加害者には非常に良い情状となります。
たとえば、刑務所に行く懲役刑の実刑相当の場合でも、嘆願書があると執行猶予となる可能性があります。懲役刑ではあるものの執行猶予相当の場合、嘆願書があると罰金刑となる可能性があります。
嘆願書は損害賠償請求とは無関係
では、嘆願書を書くと損害賠償請求に影響するでしょうか?
嘆願書を作成しても、損害賠償請求への影響は原則ありません。
刑事手続と民事手続はまったく別の手続です。そのため、加害者の刑が軽くなっても賠償額が低くなることはありません。
嘆願書の作成に悩むとき
では、嘆願書の作成に悩むときはどうすればよいでしょうか?
皆様の気持ちを第一に考えるのがよいでしょう。
加害者を許せないと考える場合、絶対に嘆願書を作成すべきではありません。他方、加害者の態度が誠実だった場合、嘆願書の作成を検討してもよいでしょう。
死亡事故のご遺族は、刑事事件対応、民事事件対応など複雑な問題が多く発生します。判断に迷うことも多いです。悩んだら弁護士へのご相談をおすすめします。
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加害者の厳罰を望むとき
では、加害者の厳罰を望むときはどうすればよいでしょうか?
加害者の厳罰を望む場合、嘆願書の作成をしてはいけません。
加害者の厳罰を望む場合、次のような対応をしましょう。
- ①警察官や検察官に自らの処罰感情を証拠と共に伝える
- ②刑事裁判に被害者参加する
- ③お金に関する交渉は刑事裁判の確定後に行う。示談交渉をすると刑事裁判では加害者に有利に働くことがあります。
まとめ:嘆願書
嘆願書とは、加害者への寛大な刑事処分を求めるようお願いする被害者作成の書面です。嘆願書を作成すると加害者の刑事処分が軽くなります。皆様の気持ち次第で嘆願書を作成するかは決めましょう。
(監修者 弁護士 佐藤 寿康)