ドライブレコーダーと過失割合の決定
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 佐藤 寿康
- Qドライブレコーダーは過失割合の決定に役に立ちますか?
- Aドライブレコーダーは過失割合の決定に役に立ちます。具体的には次のようなときに役に立ちます。
① 事故当事者の主張が食い違っており、見解の相違が埋まらないとき
② 被害者が事故状況を説明できないとき
③ 目撃者がいないとき
④ 相手が逃げたとき
⑤ 加害者が事故状況を説明できないとき
―――― 目次 ――――
- 1. 過失割合とは
- 2. ドライブレコーダーとは
- 3. ドライブレコーダーの映像が証拠として役に立つとき
- 4. ドライブレコーダーを選ぶポイント
- 5. ドライブレコーダーの注意点
- 6. まとめ:ドライブレコーダーと過失割合の決定
過失割合とは
過失割合とは、交通事故の当事者双方にどれぐらい責任があるかを数値で表したものです。
たとえば、自分が30%の過失、相手が70%の過失というように割合で表示します。次のように表現することもあります。
- 自分が3割、相手が7割
- 3対7
- 30対70
- 自分の過失が3割
- 自分の過失が30%
自分が30%の過失の具体例
では、自分が30%の過失、相手が70%の過失のとき、損害賠償はどうなるでしょうか?
- 被害者である自分は70パーセントの損害を加害者に請求できます。
- 加害者である相手は30パーセントの損害を被害者に請求できます。
過失割合は賠償の有無や金額に直結します。とても重要です。
過失割合の決定方法
過失割合は、実際に起きた事故態様をもとに、過去の事例を参考にしつつ、可能であれば協議で決めます。協議では、過去の裁判事例をまとめた別冊判例タイムズ38号を参考にすることが多いです。
事故態様に関する双方の主張が食い違っており、見解の開きが協議で埋められないときは、最終的には裁判所で過失割合を決めます。
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2. ドライブレコーダーとは
ドライブレコーダーとは、自動車に搭載する映像記録装置です。車載カメラといってもよいでしょう。
ドライブレコーダーがある自動車が交通事故にあい、事故当時の映像が記録されていれば、実際の事故態様がどのようなものだったか知ることができます。
たとえば、ドライブレコーダー搭載車の交差点進入時の対面信号の表示が何色であったかの記録があれば、過失割合が決まりやすいでしょう。
3. ドライブレコーダーの映像が証拠として役に立つとき
では、ドライブレコーダーの画像が証拠として役に立つのはどのようなときでしょうか?
次のようなときはドライブレコーダーの画像が証拠として役に立つでしょう。
- ① 事故当事者の主張が食い違っており、見解の相違が埋まらないとき
- ② 被害者が事故状況を説明できないとき
- ③ 目撃者がいないとき
- ④ 相手が逃げたとき
- ⑤ 加害者が事故状況を説明できないとき
① 事故当事者の主張が食い違っており、見解の相違が埋まらないとき
たとえば、交差点で双方が自分が青信号だと主張しているとき、ドライブレコーダーの記録映像が役に立ちます。
ほかにも、速度、合図の有無、衝突時の双方の位置関係等の主張が異なるときも、ドライブレコーダーが役に立ちます。
② 被害者が事故状況を説明できないとき
被害者が入院して外出もできない状況だったり死亡したりすると、被害者が事故現場において「この地点で初めて相手を見た」「この地点でブレーキを踏んだ」などと説明できません。
現場での説明をできるのが加害者だけになると、加害者の説明を元に実況見分調書ができます。
しかし、加害者の説明が正しいとは限りません。ドライブレコーダーの記録映像があると、客観的な事故状況がわかります。
③ 目撃者がいないとき
第三者の目撃者がいれば、事故当事者のどちらの言い分が正しいのか判明しやすいです。
しかし、目撃者がいないと事故状況がわかりにくいです。目撃者がいないとき、ドライブレコーダーの記録映像が役に立ちます。
④ 相手が逃げたとき
ひき逃げ、当て逃げで加害者がわからないことがあります。ドライブレコーダーに相手のナンバープレート、車種等が映っていれば、加害者の特定のために役に立ちます。
⑤ 加害者が事故状況を説明できないとき
加害者が入院したり死亡したりするなどして事故状況を説明できないとき、ドライブレコーダーの記録映像が役に立ちます。被害者の説明とドライブレコーダーの記録映像が一致していれば、被害者の説明が正しいことの裏付けになります。
4. ドライブレコーダーを選ぶポイント
では、ドライブレコーダーを選ぶポイントにはどのようなものがあるでしょうか?
せっかくドライブレコーダを設置したのに、役に立たないという事態は避けたいです。次のようなドライブレコーダーだと役に立つことが多いでしょう。
- ① 視野角が広い
- ② 解像度が高い
- ③ LED信号機も映せる
- ④ 前方のみでなく後方も記録できる
① 視野角が広い
視野角とは上下左右どこまで撮影できるかという性能の問題です。
録画可能な角度の外側で何が起こったかが重要であるケースだと、せっかく設置したドライブレコーダーが役に立ちません。
② 解像度が高い
解像度は撮影映像の画質に影響します。
たとえば、相手自動車が逃げたケースで相手自動車のナンバープレートが映っていたものの画質が粗く判読できないと、記録映像の役立つ度合いは大幅に下がります。
また、夜間やトンネル内などの暗い場所でもきちんと撮影できるものが望ましいです。
③ LED信号機も映せる
信号機には電球式とLED式の2種類があります。LED信号はドライブレコーダーに映りにくいです。
LED信号対応のドライブレコーダーなら、信号の色がドライブレコーダーに映っていなかったという事態を防ぎやすいです。
④ 前方のみでなく後方も記録できる
多くのドライブレコーダーは前方のみが撮影できます。後方も撮影できるカメラを設置しておくと、より望ましいです。
5. ドライブレコーダーの注意点
では、ドライブレコーダーの注意点にはどのようなものがあるでしょうか?
ドライブレコーダーには次のような注意点があります。
- ① 常に重要な事実を記録するとは限りません
- ② 放置すると上書きされることがあります
- ③ 相手方に提出を強制することはできません
- ④ 有利にも不利にも用いられます
① 常に重要な事実を記録するとは限りません
ドライブレコーダーの記録映像が、事故に至る経緯のうち重要な点を移しているとは限りません。
視野角の問題で重要な事実が記録されていなかったり、画質の問題で対面信号表示が確認できなかったりすると、記録映像が役立つ程度は乏しくなります。
② 放置すると上書きされることがあります
常時録画していくタイプのドライブレコーダーにおいて特に起こりがちなことですが、映像記録媒体を設置したままにした結果、後に事故時の映像が上書きされて消失するということがあります。
事故が起きたときは、記録映像のデータを保全しておくべきです。
③ 相手方に提出を強制することはできません
示談交渉の際にドライブレコーダーの記録映像を提出するかは所持者の任意です。提出を要求することはできます。しかし、提出を強制することは原則できません。
④ 有利にも不利にも用いられます
ドライブレコーダーの記録映像を提出することで、常に提出者に有利になるとは限りません。
自分は青信号で交差点に進入したと主張していても、ドライブレコーダーの記録映像を確認したら、交差点進入時の対面信号機は赤色かもしれません。
まとめ:ドライブレコーダーと過失割合の決定
ドライブレコーダーは過失割合の決定に役に立ちます。具体的には次のようなときに役に立ちます。
- ① 事故当事者の主張が食い違っており、見解の相違が埋まらないとき
- ② 被害者が事故状況を説明できないとき
- ③ 目撃者がいないとき
- ④ 相手が逃げたとき
- ⑤ 加害者が事故状況を説明できないとき
(監修者 弁護士 佐藤 寿康)