適正な金額を示談交渉で受け取るための方法
監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎
- Q適正な金額を示談交渉で受け取るにはどうすればよいですか?
- A適正な金額を示談交渉で受け取るには、①損害賠償ルールの理解、②適切な方法での交渉、③妥当な通院期間や後遺障害申請が重要です。
具体的には、次のような点に注意しましょう。
- 事前に相場を把握する
- 漏れやすい項目に注意する
- 増額の可能性が高い項目に注目する
- 「論より証拠」で行動する
- 具体的な数字で交渉する
- 示談書作成前は慎重に検討する
- 弁護士に相談や依頼をする
- 適切な期間の通院を行う
- 後遺障害申請を行う
- 示談交渉でしてはいけないことに注意する
―――― 目次 ――――
- 1. 事前に相場を把握する
- 2. 漏れやすい項目に注意する
- 3. 増額の可能性が高い項目に注目する
- 4. 「論より証拠」で行動する
- 5. 具体的な数字で交渉する
- 6. 示談書作成前は慎重に検討する
- 7. 弁護士に相談や依頼をする
- 8. 適切な期間の通院を行う
- 9. 後遺障害申請を行う
- 10. 示談交渉でしてはいけないことに注意する
- 11. まとめ:適正な金額を示談交渉で受け取る方法
1. 事前に相場を把握する
示談交渉はある程度の相場があります。事前に相場を調べて理解しておきましょう。
特に、示談交渉で問題となることが多い入通院慰謝料や休業損害、通院交通費の相場を理解しておきましょう。
また、後遺障害になりそうなときは、後遺障害慰謝料や逸失利益の相場を理解しておきましょう。
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2. 漏れやすい項目に注意する
けがをした事故の損害項目
けがをした事故では次の損害項目などを請求できます。保険会社の示談案から漏れていないか確認しましょう。
① けがをした事故
治療費、(家族の)入院付添費、(家族の)通院付添費、入院雑費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料
② 後遺障害が残る事故
③ 重い後遺障害が残る事故
漏れやすい損害項目
けがをした事故では、漏れやすい損害項目に注意しましょう。具体的には①主婦の休業損害②有給休暇分の休業損害③通院付添費④逸失利益が漏れやすいです。
① 主婦の休業損害
主婦の休業損害とは、主婦としての仕事が事故によりできなかったことを理由をする休業損害です。保険会社の提示がゼロのことがありますので注意しましょう。
② 有給休暇分の休業損害
有給休暇分の休業損害とは、事故が原因で有給休暇を利用したことを理由とする休業損害です。被害者自らが請求しないとゼロになりますので注意しましょう。
③ 通院付添費
通院付添費とは、被害者の通院に付き添った費用の賠償です。被害者が重症のときや子供のとき等に請求できます。原則1日3300円です。保険会社の提示がゼロのことがありますので注意しましょう。
④ 逸失利益
逸失利益とは、後遺障害認定による今後の収入減の見込みへの賠償です。専業主婦などでは保険会社の提示がゼロのことがたまにありますので注意しましょう。
3. 増額の可能性が高い項目に注目する
示談交渉で増額の可能性が高い項目に注目しましょう。具体的には①入通院慰謝料②後遺障害慰謝料③主婦の休業損害④逸失利益です。
① 入通院慰謝料
入通院慰謝料には、自賠責保険の基準、任意保険の基準、裁判所の基準の3つの基準があります。
保険会社が示談交渉で提示するのは自賠責保険や任意保険の基準が多いです。被害者は、裁判所の基準に基づく金額を請求するようにしましょう。
② 後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料も入通院慰謝料と同じルールです。被害者は、裁判所の基準に基づく金額を請求するようにしましょう。
③ 主婦の休業損害
主婦の休業損害は、家事ができない期間や割合で金額が決まります。
炊事や洗濯、掃除など個別にどのような症状があってできないか具体的に主張しましょう。けがによる支障を書面にまとめて保険会社に送付するのも効果的です。
④ 逸失利益
逸失利益は、年収や年齢、後遺障害等級で金額が決まります。専門的な細かい計算が必要です。逸失利益の交渉が必要なときは弁護士に相談しましょう。
4. 「論より証拠」で行動する
示談交渉は論より証拠です。事故状況や負傷状況、損害額が争いになるときは証拠を集めましょう。たとえば、次のような証拠が重要です。
① 事故状況の証拠の具体例
- ドライブレコーダーの記録
- 実況見分調書などの刑事記録
- 第三者の目撃者の証言
② 負傷状況の証拠の具体例
③ 損害額の証拠の具体例
5. 具体的な数字で交渉する
保険会社との示談交渉は賠償金の交渉です。金額をめぐる交渉です。
そのため「慰謝料は〇〇円増額を要請する」というような具体的な交渉はスムーズに進みやすいです。
他方、次のような抽象的な交渉はスムーズに進みにくいです。
- 「加害者の態度に納得できない」
- 「保険会社の対応が悪い」
- 「とにかく増額を要求する」
具体的な数字をどのように交渉すればよいかわからないときは、各損害の損害賠償基準の詳細解説もあわせてご覧ください。
6. 示談書作成前は慎重に検討する
示談書を一度作成すると、示談のやり直しは原則できません。示談書の作成前は慎重に検討しましょう。
示談書作成前の注意点
示談書の作成前には、次の点を特に慎重に検討しましょう。
- ① 最終的にもらえる金額
- ② 既に保険会社が支払った金額
- ③ 過失割合や治療期間、後遺障害の等級などの事実の記載
示談書の書面のタイトルが違っても効果は同一
示談書のタイトルはさまざまです。
示談書というタイトルのこともありますが、合意書、免責証書、承諾書というようなタイトルのこともあります。
もっとも、タイトルは違っても基本的な効果は同じです。大きな問題はありません。
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7. 弁護士に相談や依頼をする
弁護士に相談すれば、保険会社の提示額が適切かどうかわかります。
また、弁護士に依頼すれば賠償額が増えることが多いです。裁判所の基準や過去の裁判事例に基づく高い金額で弁護士は請求するからです。
しかも、弁護士費用特約に加入していれば、実質的に自己負担なしで弁護士に依頼できます。
そのため、示談前には弁護士への相談をおすすめします。また、弁護士費用特約に加入しているときは弁護士への依頼をおすすめします。
8. 適切な期間の通院を行う
交通事故の入通院慰謝料は、事故日から最終通院日までの通院回数や期間で決まることが多いです。
そのため、治療に必要なら通院を継続することにより、慰謝料が増額する確率が高いです。
9. 後遺障害申請を行う
治療を継続しても効果が見込まれず、症状の改善がない状態になった場合、交通事故の治療は一度終了します。症状固定と言います。
症状固定後も症状が残っているときは、後遺障害の申請を検討しましょう。後遺障害になると、後遺障害慰謝料と逸失利益がもらえるため、賠償額が大幅に増えます。
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10. 示談交渉でしてはいけないことに注意する
示談交渉でしてはいけないことがあります。次のような点です。
- ① 感情的になってはいけません!
- ② わからないことに即答してはいけません!
- ③ 交渉経緯をわからなくしてはいけません!
- ④ 時効にしてはいけません!
① 感情的になってはいけません!
保険会社の担当者の対応が悪く感情的になることもあります。
しかし、感情的に反発してよい結果となることは経験上少ないです。保険会社の弁護士が出てきたり、保険会社が裁判所に申し立てをしたりと問題が複雑になります。
感情的にならず、冷静に対応しましょう。
② わからないことに即答してはいけません!
保険会社からの質問に即答する必要はありません。「事実と異なる回答」「不正確な回答」「自分の本意と異なる回答」をすると後悔することが多いです。
即答できなそうなときは「調べてから後で回答します」と伝えましょう。
③ 交渉経緯をわからなくしてはいけません!
交渉が続くと経緯がわからなくなることがあります。
しかし、保険会社は交渉経緯を記録に残しています。被害者だけ交渉経緯がわからないのは不利です。交渉記録を残しましょう。日時、話した内容、聞いた内容を記録するのがよいでしょう。
④ 時効にしてはいけません!
交通事故から一定の期間が過ぎると、賠償請求ができなくなることがあります。
解決まで数年単位でかかることは少ないため問題となる確率は低いものの、事故から年単位で時間が経過しているときは時効に注意しましょう。
11. まとめ:適正な金額を示談交渉で受け取る方法
適正な金額を示談交渉で受け取るには、①損害賠償ルールの理解、②適切な方法での交渉、③妥当な通院期間や後遺障害申請が重要です。
具体的には、次のような点に注意しましょう。
- 事前に相場を把握する
- 漏れやすい項目に注意する
- 増額の可能性が高い項目に注目する
- 「論より証拠」で行動する
- 具体的な数字で交渉する
- 示談書作成前は慎重に検討する
- 弁護士に相談や依頼をする
- 適切な期間の通院を行う
- 後遺障害申請を行う
- 示談交渉でしてはいけないことに注意する
(監修者 弁護士 大澤 一郎)