物損と人損の過失割合が異なるとき
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 佐藤 寿康
- Q物損と人損の過失割合が異なるときはありますか?
- A物損と人損が異なる過失割合となることはあります。ただし、多くの事案では物損と人損は同じ過失割合です。
物損の過失割合を合意するときは、人損の過失割合も同じになるかもしれないことを踏まえつつ慎重に検討しましょう。
―――― 目次 ――――
過失割合とは
過失割合とはどの程度どちらが悪いという責任の割合です。「10対0」「7対3」「80対20」などと言います。過失があると相手に請求できる金額が減ってしまいます。
関連情報
物損と人損とは
物損とは物的損害です。たとえば、車両、自転車、着衣などの損害です。
人損とは人的損害です。たとえば、治療費、休業損害、慰謝料などの損害です。
物損と人損の過失割合のルール
では、物損と人損の過失割合は同じでなければいけないのでしょうか?
物損と人損の過失割合は多くの事案では同じになります。しかし、物損と人損の過失割合が異なる事案もあります。
物損と人損が同じ過失割合になりやすいのは次のようなときです。
- ①通常の交渉のとき
- ②10対0が明らかなど事故状況からして過失割合の交渉の余地が少ないとき
- ③双方に過失割合の争いがないとき
物損と人損が異なる過失割合になりやすいのは次のようなときです。
- ①お互いの意見の対立が大きいとき
- ②物損は交渉で決めたものの、人損は裁判所で決めるとき
- ③物損のみ被害者に有利な過失割合を保険会社が提示していたとき
物損と人損が同じ過失割合になりやすいとき
①通常の交渉のとき
物損と人損の両方があるとき、物損の交渉を先行することが多いです。治療が終わらないと最終的な人損の交渉ができないためです。
物損で一度過失割合を決めたとき、通常はお互い納得した割合です。そのため、人損でも同じ過失割合での賠償が多いです。
②10対0が明らかなど事故状況からして過失割合の交渉の余地が少ないとき
事故状況からして過失割合の交渉の余地が少ない事故があります。たとえば、後ろからの衝突事故の場合、通常の過失割合は10対0です。
過失割合の交渉の余地が少ないときは、物損も人損の同じ過失割合が多いです。
③双方に過失割合の争いがないとき
双方に過失割合の争いがないときは、通常は合意した過失割合で決着します。
物損と人損が異なる過失割合になりやすいとき
①お互いの意見の対立が大きいとき
お互いの意見の対立が大きいとき、物損と人損は異なる過失割合になりやすいです。
物損の合意の時点で判明していた情報と、人損の合意の時点で判明している情報は異なります。人損の合意の時点の方が情報量は多いです。
そのため、お互いの意見の対立が元々大きかった場合、人損の示談交渉で対立が発生しやすいです。結果として物損と人身で異なる過失割合になりやすいです。
②物損は交渉で決めたものの人損は裁判所で決めるとき
裁判所での判断は、客観的な証拠と過去の裁判例を踏まえて決まります。当事者が物損で合意した内容に拘束されません。そのため、裁判所で決めるときは物損と人損が異なる判断になりやすいです。
③物損のみ被害者に有利な過失割合を保険会社が提示していたとき
物損の早期解決のため、物損のみ被害者に有利な過失割合を保険会社が提示することがあります。物損で被害者に有利な過失割合を提示していたとき、人損で異なる過失割合を保険会社は提示することがあります。
物損合意時の注意点
物損と人損の過失割合が同じとは限りません。しかし、物損と人損の過失割合が同じになることは多いです。
そのため、物損の過失割合を合意するときは、人損の過失割合も同様かもしれないことを踏まえつつ慎重に検討しましょう。
まとめ:物損と人損の過失割合が異なるとき
物損と人損が異なる過失割合となることはあります。ただし、多くの事案では物損と人損は同じ過失割合です。
物損の過失割合を合意するときは、人損の過失割合も同様かもしれないことを踏まえつつ慎重に検討しましょう。
(監修者 弁護士 佐藤 寿康)