死亡事故の年金分の損害賠償
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 松本 達也
- Q父は年金をもらっていましたが事故で死亡しました。年金分の損害賠償はできますか?
- A交通事故の死亡により年金が止まったとき、損害賠償できる年金とできない年金があります。
請求できる年金は①老齢基礎年金、②老齢厚生年金、③退職共済年金、④障害基礎年金などです。請求できない年金は①遺族年金、②老齢年金の加給年金、③障害年金の加給年金などです。
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死亡事故の損害
死亡事故は次のような損害が発生します。
将来の年金分の損害は逸失利益です。
逸失利益とは、事故によって今後減少するであろう収入のことです。死亡により今後もらえるであろう収入がもらえなくなる場合、逸失利益が賠償対象です。
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逸失利益と年金
では、死亡により年金が止まったとき、逸失利益は請求できるでしょうか?
年金には、逸失利益が賠償請求できる年金とできない年金があります。
逸失利益が請求できる年金は次の通りです。
逸失利益が請求できない年金は次の通りです。
自分で支払った保険料の対価分の年金は逸失利益を請求できる傾向にあります。他方、自分で支払った保険料の対価分ではない年金は逸失利益を請求できない傾向にあります。
逸失利益 | 年金の種類 |
---|---|
請求できる | 老齢基礎年金 老齢厚生年金 退職共済年金 障害基礎年金 |
請求できない | 遺族年金 老齢年金の加給年金 障害年金の加給年金 |
年金の逸失利益の計算方法
では、年金の逸失利益はどのように計算するでしょうか?
逸失利益の計算方法は次の通りです。
年収×収入が減るパーセント×収入が減る年数
収入が減る年数
収入が減る年数を労働能力喪失期間と言います。労働能力喪失期間は高齢者の場合、平均余命の2分の1で計算することが多いです。平均余命は簡易生命表(厚生労働省)を利用することが多いです。
収入が減るパーセント
死亡事故の場合、収入が減るパーセントは100%です。
ただし、死亡事故で逸失利益を計算するときは一定割合を引きます。死亡により今後の生活費が発生しないためです。この引く割合を生活費控除率と言います。
具体的な計算方法
では具体的に計算してみましょう。年金額は年間240万円、平均余命20年で考えてみます。
年金の場合、50~60%は本人の生活費に使う前提だったという判断が多いです。たとえば、60%を本人の生活費に使うという判断だった場合、実際には死亡しているので本人の生活費はかかりません。そのため、請求できる金額は40%分となります。
240万円×40%×8.5302=8,188,992円
8.5302は平均余命20年の半分の10年のライプニッツ係数 です。
ライプニッツ係数は逸失利益の計算で使う数字です。
逸失利益の計算方法は複雑です。特に死亡事故の逸失利益は複雑になることが多いです。交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。
まとめ:死亡事故の年金分の損害賠償
交通事故の死亡により年金が止まったとき、損害賠償できる年金とできない年金があります。
請求できる年金は①老齢基礎年金、②老齢厚生年金、③退職共済年金、④障害基礎年金などです。請求できない年金は①遺族年金、②老齢年金の加給年金、③障害年金の加給年金などです。
(監修者 弁護士 松本 達也)