内縁相手が死亡したときの賠償金
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 佐藤 寿康
- Q内縁の夫が交通事故で死亡しました。内縁の妻は賠償金をもらえますか?
- A内縁とは、結婚の意思で男女が同居しているものの、婚姻届を出していない状態です。
内縁の妻には相続権がありません。ただし、扶養請求権、固有の慰謝料、特別縁故者に対する相続財産分与申立などを内縁の妻は請求できる可能性があります。
―――― 目次 ――――
内縁とは
内縁とは、結婚の意思で男女が同居しているものの、婚姻届を出していない状態です。事実婚とも言います。婚姻届を出していないので、戸籍は別ですし名字も異なります。
内縁の相手方には相続権がない
内縁の相手方には相続権がありません。
そのため、交通事故で内縁の相手方が死亡したときの地位は、法律婚の配偶者と異なります。相続権がないため、死亡した本人の逸失利益や死亡慰謝料を請求できません。
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内縁の相手方が請求できる賠償金
では、内縁関係の場合には何も請求ができないのでしょうか?
内縁関係の相手方が交通事故で死亡した場合、次のような請求ができます。
- ①扶養請求権
- ②自分の慰謝料
扶養請求権
内縁関係にある場合、一方当事者が他方当事者を扶養していることがあります。
交通事故で一方当事者が死亡すると、扶養を受けられなくなります。
そこで、扶養を受ける利益の侵害を理由に、加害者に損害賠償を請求できることがあります。請求の可否や金額は個別の事案ごとの判断になるでしょう。
慰謝料
内縁相手を事故で失ったことを理由とする自分の慰謝料を請求できることがあります。請求の可否や金額は個別の事案ごとの判断になるでしょう。
相続人がいない場合
では、死亡した本人に相続人がいないときはどうなるでしょうか?
相続人がいない場合、相続財産清算人を選任し特別縁故者に対する相続財産分与申立をする方法があります。
相続財産清算人とは遺産を管理する人です。 相続財産清算人は、死亡した本人の債権者等に債務を支払うなどして清算を行い、清算後残った財産を国庫に帰属させます。
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特別縁故者とは、死亡した本人に法定相続人がいない場合、本人と特別親しい関係にあったことを理由に、遺産の全額または一部を取得できる人です。
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内縁関係にあった場合、特別縁故者となる可能性は高いです。そのため、特別縁故者に対する相続財産分与を申立し、損害賠償金を取得できる可能性があります。
損害賠償金の全部を取得できるか、損害賠償金の一部のみ取得できるかは個別の事案ごとの判断になるでしょう。
内縁関係を証明する方法
では、内縁関係を証明するにはどうすればよいですか?
次のような証拠を集めると、内縁関係が証明しやすいでしょう。
- 住民票
- 賃貸借契約書
- 健康保険証
- 遺族年金証書
- 給与明細(扶養に関する記載がある場合)
- 長期間の同居を示す証拠(家の状況や郵便物など)
- 親族や友人たちから夫婦として扱われていることを示す証拠(メールやLINE、年賀状など)
- 結婚式や披露宴を挙げたことがわかる書類や写真
まとめ:内縁相手が死亡したときの賠償金
内縁とは、結婚の意思で男女が同居しているものの、婚姻届を出していない状態です。
内縁の相手方には相続権がありません。ただし、扶養請求権、固有の慰謝料、特別縁故者に対する相続財産分与申立などを内縁の相手方は請求できる可能性があります。
内縁は権利関係が複雑です。悩んだときは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
(監修者 弁護士 佐藤 寿康)