後遺障害の異議申し立て
監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎
- Q後遺障害の認定結果への異議申し立てはどう進めればよいですか?
- A後遺障害等級の認定結果に納得できないとき、異議申し立てができます。次の3つの方法があります。
①自賠責保険への異議申し立て
②自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立て
③民事裁判での異議申し立て異議申し立てのポイントは「論より証拠」です。①主治医の診断書や意見書、医療照会結果②カルテ③症状固定後の通院に関する資料④画像鑑定の報告書⑤事故車両の写真や修理代の資料⑥実況見分調書などの刑事記録など、有利になる資料を提出しましょう。
異議申し立ては手続きや内容が難しいです。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
―――― 目次 ――――
後遺障害とは
事故による治療を一定期間続けて、状況が一進一退になると事故による治療は終了します。
事故による怪我が残っていても必ず後遺障害となるわけではありません。正式な後遺障害認定を受けた場合だけが「後遺障害」です。
後遺障害の申請は事前認定と被害者請求の2つの方法があります。
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後遺障害等級の異議申し立ての3つの方法
後遺障害等級の認定結果に納得できないとき、異議申し立てができます。では、後遺障害等級の異議申し立てにはどのような方法があるでしょうか?
後遺障害等級の異議申し立ては、次の3つの方法があります。
- ①自賠責保険への異議申し立て
- ②自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立て
- ③民事裁判での異議申し立て
①自賠責保険への異議申し立て
後遺障害の認定結果に納得できないとき、一番最初に検討するのは自賠責保険への異議申し立てです。自賠責保険への異議申し立ては何回でも可能です。
自賠責保険の異議申し立ては定型の書式はありません。通常は次のような事項を異議申立書に記載します。
- ①宛先の自賠責保険会社名
- ②申立書作成日
- ③申立人
- ④住所
- ⑤電話番号
- ⑥加害者の自賠責保険の証明書番号
- ⑦事故発生年月日
- ⑧異議申し立ての趣旨
- ⑨異議申し立ての理由
- ⑩添付資料名
①宛先の自賠責保険会社名⑥加害者の自賠責保険の証明書番号は、交通事故証明書を見ればわかります。
⑧異議申し立ての趣旨⑨異議申し立ての理由⑩添付資料名は、個別の状況により記載内容が変わります。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士へのご相談をおすすめします。
②自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立て
自賠責保険・共済紛争処理機構とは、自動車損害賠償責任保険や自動車損害賠償責任共済からの支払いに関する紛争の公正かつ適確な解決による被害者の保護を図るための事業を行う一般財団法人です。紛争処理機構ともいいます。
紛争処理機構への異議申し立ては一度しかできません。
紛争処理機構の申請は紛争処理申請書で行います。具体的な理由の記載と添付資料が重要です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士へのご相談をおすすめします。
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③民事裁判での異議申し立て
民事裁判を起こすと、最終的には裁判所が後遺障害等級を決めます。民事裁判は最後の手段です。裁判は弁護士への依頼がよいでしょう。
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異議申し立ての方法の選び方
後遺障害認定に納得できないとき、まずは自賠責保険への異議申し立てを検討しましょう。事案に応じて、紛争処理機構や民事裁判を選びましょう。
紛争処理機構は自賠責保険の審査ルールの中で適切な後遺障害等級にしたいときに望ましい方法です。民事裁判は自賠責保険の審査ルールの中では認められにくい後遺障害について、実態に合致した後遺障害等級にしたいときに望ましい方法です。
どの方法で異議申し立てをするかは専門的な判断が必要です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
異議申し立てのポイント
では、異議申し立てのポイントは何でしょうか?
異議申し立てのポイントは「論より証拠」です。次のような有利になる証拠を準備して提出しましょう。
- ①主治医の診断書や意見書、医療照会結果
- ②カルテ
- ③症状固定後の通院に関する資料
- ④画像鑑定の報告書
- ⑤事故車両の写真や修理代の資料
- ⑥実況見分調書などの刑事記録
①主治医の診断書や意見書・医療照会結果
主治医の診断書や意見書、医療照会結果は異議申し立ての重要な証拠です。
異議申し立てをしたい事項や症状により、必要な書類が変わってきます。
たとえば、頚椎捻挫や腰椎捻挫であれば①症状の推移について 、②神経学的所見の推移について などの書類が重要です。
②カルテ
診療内容が分かるカルテは異議申し立ての重要な証拠です。初回の後遺障害認定結果はカルテの内容を反映していないことがほとんどのためです。
カルテは被害者に有利な事情も不利な事情も記載があります。被害者に有利な事情があるときは、カルテを追加で証拠提出するとよいでしょう。
③症状固定後の通院に関する資料
症状固定とは治療を継続しても効果が見込まれず、症状の改善がない状態のことです。事故から一定の期間で症状固定になります。
症状固定後も治療やリハビリのための通院を続けている場合、症状が残っていることや症状が重いことの証拠となります。
そのため、病院の領収書など症状固定後の通院に関する資料を出すと、被害者に有利になることがあります。
④画像鑑定の報告書
MRI画像、CT画像、レントゲン画像などを画像鑑定専門医にみてもらい、異常がある部分を医師の報告書として作成していただく方法です。
画像は異議申し立ての重要な証拠です。もっとも、画像は医師によって解釈が異なることがあります。自らに有利な医師の画像鑑定の報告書を出すと、被害者に有利になることがあります。
⑤事故車両の写真や修理代の資料
事故車両の写真や修理代の資料は異議申し立ての重要な証拠となることがあります。事故の衝撃が強かったこと、事故による負傷が自然であることなどを示せます。
事故車両の写真や修理代の資料を出すと、被害者に有利になることがあります。
⑥実況見分調書などの刑事記録
実況見分調書とは、事故の当事者や参考人の立会いのもとで現場の状況や事故の発生状況の調査を行い、調査結果を警察官がまとめた書類です。
事故の衝撃が強かったこと、事故による負傷が自然であることなどを証明できれば、被害者に有利になることがあります。
まとめ:後遺障害の異議申し立て
後遺障害等級の認定結果に納得できないとき、異議申し立てができます。次の3つの方法があります。
①自賠責保険への異議申し立て
②自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立て
③民事裁判での異議申し立て
異議申し立てのポイントは「論より証拠」です。①主治医の診断書や意見書、医療照会結果②カルテ③症状固定後の通院に関する資料④画像鑑定の報告書⑤事故車両の写真や修理代の資料⑥実況見分調書などの刑事記録など、有利になる資料を提出しましょう。
異議申し立ては手続きや内容が難しいです。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)