後遺障害の併合
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 松本 達也
- Q後遺障害の併合とは何ですか?
- A後遺障害の併合とは、系列の異なる後遺障害が2つ以上ある場合、1つの等級にまとめることです。
後遺障害の併合のルールは次の通りです。
- ①後遺障害5級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を3級繰り上げる
- ②後遺障害8級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を2級繰り上げる
- ③後遺障害13級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を1級繰り上げる
―――― 目次 ――――
後遺障害とは
事故による治療を一定期間続けて、状況が一進一退になると事故による治療は終了します。
事故による怪我が残っていても、必ず後遺障害となるわけではありません。正式な後遺障害認定を受けた場合だけが「後遺障害」です。
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後遺障害の併合とは
後遺障害の併合とは、系列の異なる後遺障害が2つ以上ある場合、1つの等級にまとめることです。
交通事故では体の複数の部位に後遺障害が残ることがあります。後遺障害が2つ以上ある場合に最終的な等級を決めるルールが後遺障害の併合です。
後遺障害の併合のルールは次の通りです。
- ①後遺障害5級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を3級繰り上げる
- ②後遺障害8級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を2級繰り上げる
- ③後遺障害13級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を1級繰り上げる
後遺障害の併合の具体例
では、具体例で後遺障害の併合をみていきましょう。
頭部外傷による高次脳機能障害で「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(5級2号)に認定されます。
あわせて、片手が動かなくなり「1上肢の用を全廃したもの」(5級6号)に認定されます。
この場合、5級以上の後遺障害が2つありますので、後遺障害が3級繰り上がり併合2級となります。
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」(5級2号)と「1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」(8級6号)だったときは、後遺障害等級が2級繰り上がり併合3級となります。
では、別の例もみてみましょう。頚椎捻挫で「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)、腰椎捻挫で「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)とします。この場合、14級が2つですので最終的な等級は併合14級のままです。
後遺障害の併合と逸失利益
では、後遺障害が併合となったとき、逸失利益はどうなるでしょうか?
後遺障害が併合となったときは、併合後の後遺障害等級表の労働能力喪失率を使うのが一般的です。たとえば、併合2級であれば100%、併合14級であれば5%です。
ただし、併合の後遺障害等級の場合、等級表の労働能力喪失率と実際の減収割合がかけ離れていることがあります。差が大きいときは、個別の事案により労働能力喪失率を決めます。
後遺障害の併合と後遺障害慰謝料
では、後遺障害の併合のとき、後遺障害慰謝料はどうなるでしょうか?
後遺障害の併合のときは、併合後の後遺障害慰謝料が基準となります。裁判基準だと併合2級のときは2370万円、併合14級のときは110万円です。
ただし、後遺障害の箇所が複数だと苦痛も大きいです。そのため、後遺障害が複数あるときは、個別の事案により後遺障害慰謝料が増額となることがあります。
まとめ:後遺障害の併合
後遺障害の併合とは、系列の異なる後遺障害が2つ以上ある場合、1つの等級にまとめることです。
後遺障害の併合のルールは次の通りです。
- ①後遺障害5級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を3級繰り上げる
- ②後遺障害8級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を2級繰り上げる
- ③後遺障害13級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を1級繰り上げる
(監修者 弁護士 松本 達也)