収入の減少がないときの逸失利益
監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎
- Q事故後収入の減少はありません。逸失利益は請求できますか?
- A事故後の収入の減少がないときも逸失利益は賠償対象です。次のような事情を考慮して金額を決めます。
①今後の減収の見込み
②昇進や昇給等の不利益
③業務への支障
④退職や転職の可能性
⑤勤務先の規模や存続可能性
⑥本人の努力
⑦勤務先の配慮
⑧生活上の支障
―――― 目次 ――――
逸失利益とは
逸失利益とは事故によって今後減少するであろう収入のことです。
事故により発生する収入減は2種類あります。休業損害と逸失利益です。
- 休業損害 症状固定前に発生する収入減
- 逸失利益 症状固定後に発生するであろう収入減
症状固定までは休業損害、症状固定後は逸失利益となります。逸失利益は後遺障害が認められたときに発生します。
収入の減少がないときも逸失利益は賠償対象
逸失利益とは事故によって今後減少するであろう収入のことです。では、事故による実際の収入の減少がないときも逸失利益は賠償対象になるでしょうか?
事故による実際の収入減がないときも、逸失利益は賠償対象となります。
逸失利益は将来の収入減の賠償です。現在の収入減はなくても将来の収入減の可能性はあります。そのため、現在の収入減がなくても逸失利益は賠償の対象です。
具体的には、次のような点を考慮して逸失利益の金額を決めます。
- ①今後の減収の見込み
- ②昇進や昇給の不利益
- ③業務への支障
- ④退職や転職の可能性
- ⑤勤務先の規模や存続可能性
- ⑥本人の努力
- ⑦勤務先の配慮
- ⑧生活上の支障
①今後の減収の見込み
今後の減収の見込みがあるときは、現在の減収がなくても逸失利益が認められやすいです。
他方、今後の減収の見込みもないときは、逸失利益は認められにくいです。
②昇進や昇給の不利益
昇進や昇給で不利益になっているときは、現在の減収がなくても逸失利益が認められやすいです。
他方、昇進や昇給の不利益もないときは、逸失利益は認められにくいです。
③業務への支障
後遺障害が業務に支障を与えているときは、現在の減収がなくても逸失利益が認められやすいです。
他方、後遺障害が業務に支障を与えていないときは、逸失利益は認められにくいです。
④退職や転職の可能性
退職や転職の可能性があるときは、現在の減収がなくても逸失利益が認められやすいです。
他方、退職や転職の可能性もないときは、逸失利益は認められにくいです。
⑤勤務先の規模や存続可能性
勤務先の規模、業績、雇用環境や勤務先を取り巻く環境も重要な要素です。
同一内容の雇用が今後も続く可能性が低いときは、減収がなくても逸失利益が認められやすいです。
他方、同一内容の雇用が今後も続く可能性が高いときは、逸失利益が認められにくいです。
⑥本人の努力
本人の努力により減収を防いでいるときは、減収がなくても逸失利益が認められやすいです。
他方、本人の努力により減収を防いでいるといえないときは、逸失利益は認められにくいです。
⑦勤務先の配慮
勤務先の配慮により減収を防いでいるときは、逸失利益が認められやすいです。
他方、勤務先が配慮していないにもかかわらず減収がないときは、逸失利益は認められにくいです。
⑧生活上の支障
生活上の支障があるときは、現在の減収がなくても逸失利益が認められやすいです。
他方、生活上の支障がないときは、逸失利益は認められにくいです。
賠償対象とならないとき
では、収入の減少がないとき、逸失利益が賠償対象とならないことはあるのでしょうか?
収入の減少がないと逸失利益が賠償の対象とならないことはあります。特に、後遺障害の種類や程度から収入への影響が生じにくいときは、収入の減少がないと逸失利益が認められないことがあります。
たとえば、服を着れば見えない部分の傷跡の後遺障害のとき、収入の減少がないと逸失利益は認められにくいでしょう。
まとめ:収入の減少がないときの逸失利益
収入の減少がないときも逸失利益は賠償対象です。次のような事情を考慮して金額を決めます。
- ①今後の減収の見込み
- ②昇進や昇給の不利益
- ③業務への支障
- ④退職や転職の可能性
- ⑤勤務先の規模や存続可能性
- ⑥本人の努力
- ⑦勤務先の配慮
- ⑧生活上の支障
(監修者 弁護士 大澤 一郎)