後遺障害診断書と異なる症状固定日となるとき
監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎
- Q後遺障害診断書に症状固定日の記載があります。症状固定日が後日変わることはありますか?
- A保険会社が争ってきたときは、後遺障害診断書に記載された症状固定日と異なる日が症状固定日になることがあります。症状固定日が変わると①治療費②休業損害③入通院慰謝料④時効などに影響します。
―――― 目次 ――――
後遺障害診断書とは
後遺障害診断書 とは、怪我を治療しても体の状態が良くならず、後遺症として残ったとき、残った症状を後遺障害として認定してもらうため必要な診断書です。主治医が作成します。
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症状固定とは
症状固定とは治療を継続しても効果が見込まれず、症状の改善がない状態のことです。
事故から一定の期間で症状固定になります。後遺障害診断書には、症状固定日を主治医が記載します。
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症状固定日が後日変わる場合
では、後遺障害診断書に記載された症状固定日が後日変わることはあるでしょうか?
後遺障害診断書の症状固定日を保険会社が争わないときは、後遺障害診断書に記載された日が症状固定日になります。
保険会社が争ってきたときは、症状固定日が後日変わることはあります。争うときは「後遺障害診断書記載の日より前が症状固定日である」と保険会社は主張します。保険会社と見解が一致しないとき、最終的には裁判所で症状固定日を決めます。
保険会社が症状固定日を争ってきやすいのは、通院期間が標準より長いときです。個別の怪我の状況によりますが、打撲や挫傷は1~3カ月、捻挫は3~6カ月、骨折は6カ月~が症状固定の目安です。
怪我の種類 | 治療期間の目安 |
---|---|
打撲・挫傷 | 1~3カ月 |
捻挫 | 3~6カ月 |
骨折 | 6カ月以上 |
症状固定日が変わる影響
では、症状固定日が変わるとどのような影響があるのでしょうか?
症状固定日が変わると、次のような影響があります。
- ①治療費の負担者が変わる
- ②休業損害が変わる
- ③入院や通院の慰謝料が変わる
- ④時効期間が変わる
①治療費の負担者が変わる
症状固定日までの治療費は原則保険会社負担です。症状固定日以降の治療費は原則自己負担です。そのため、症状固定日が前になると、自己負担の治療費が増えます。
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②休業損害が変わる
症状固定日以降は休業損害の支払はありません。症状固定日以降に仕事への影響がある場合、休業損害ではなく逸失利益の賠償となります。そのため、症状固定日が前になると、休業損害が減る可能性があります。
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③入院や通院の慰謝料が変わる
症状固定日までの入通院の期間や回数を元に入通院慰謝料は決まります。そのため、症状固定日が前になると、入通院慰謝料が減ります。
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④時効期間が変わる
交通事故で問題となる時効期間とは、一定の期間が経過すると請求が認められなくなってしまう期間です。症状固定日から計算する時効期間の場合、症状固定日が前になると、時効になる時期が早くなってしまいます。
まとめ:後遺障害診断書と異なる症状固定日となるとき
保険会社が争ってきたときは、後遺障害診断書に記載された症状固定日と異なる日が症状固定日になることがあります。症状固定日が変わると①治療費②休業損害③入通院慰謝料④時効などに影響します。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)