慰謝料が減ってしまう場合
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 小林 義和
- Q慰謝料が減ってしまうのはどのようなときですか?
- A本来もらえるはずの慰謝料がもらえなかったり、慰謝料が減ってしまったりするのは次のようなときです。
- ①裁判基準で計算しなかったとき
- ②怪我の症状等にかんがみて通院が長期にわたるとき
- ③軽傷であるとき
- ④症状固定の時期が変わるとき
- ⑤後遺障害が認定されなかったとき
- ⑥過失相殺があるとき
- ⑦素因減額があるとき
- ⑧加害者が無保険のとき
―――― 目次 ――――
- 1. 慰謝料とは
- 2. 慰謝料の種類
- 3. 慰謝料の算定基準
- 4. 慰謝料が減ってしまうとき
- 5. まとめ:慰謝料が減ってしまう場合
1. 慰謝料とは
慰謝料とは、交通事故により被害者が受けた苦痛などの精神的損害への賠償金です。民法第709条・第710条は、不法行為を行った者は財産以外の損害に対しても賠償責任を負うと定めています。
2. 慰謝料の種類
慰謝料の種類は3種類です。①入通院慰謝料 ②後遺障害慰謝料 ③死亡慰謝料です。
①入通院慰謝料は入院や通院したことへの慰謝料です。②後遺障害慰謝料は後遺障害が認定されたことへの慰謝料です。③死亡慰謝料はお亡くなりになったことへの慰謝料です。
3. 慰謝料の算定基準
慰謝料は被害者の精神的苦痛等を金銭で賠償するものです。しかし、精神的苦痛を金銭に換算することは難しいです。そのため、慰謝料額の算定には一定の基準があります。
算定基準は3種類です。①自賠責基準②任意保険基準③裁判基準です。①自賠責基準が一番低く、③裁判基準が一番高くなることが多いです。
4. 慰謝料が減ってしまうとき
では、本来もらえるはずの慰謝料がもらえなかったり、慰謝料が減ってしまったりするのはどのようなときでしょうか?
次のようなときは、本来もらえるはずの慰謝料がもらえなかったり、慰謝料が減ってしまったりすることがあります。
- ①裁判基準で計算しなかったとき
- ②怪我の症状等にかんがみて通院が長期にわたるとき
- ③軽傷であるとき
- ④症状固定の時期が変わるとき
- ⑤後遺障害が認定されなかったとき
- ⑥過失相殺があるとき
- ⑦素因減額があるとき
- ⑧加害者が無保険のとき
①裁判基準で計算しなかったとき
裁判基準とは、裁判所での慰謝料の基準です。交渉では裁判基準満額にならないことも多いですが、裁判基準に近い金額で合意できることもあります。
そのため、裁判基準で計算しないと、本来もらえるはずの慰謝料がもらえないことがあります。
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②怪我の症状等にかんがみて通院が長期にわたるとき
入通院慰謝料は、症状固定 までの総日数を基礎として算定するのが原則です。
しかし、通院が長期にわたる場合、症状、治療内容、通院頻度等によっては、症状固定までの総日数ではなく実通院日数の3.5倍程度の日数を基礎として計算することがあります。
症状固定までの総日数と実通院日数の3.5倍を比べると、実通院日数の3.5倍が少ないことが多いです。
そのため、怪我の症状等にかんがみて通院が長期にわたるとき、慰謝料が減ってしまうことがあります。
③軽傷であるとき
むち打ち症で他覚所見がない場合は、赤い本別表Ⅰ より金額が低い赤い本別表Ⅱ に基づき慰謝料を計算します。軽い打撲や軽い挫創・挫傷も同様です。
また、むちうち症で他覚所見がない場合等は、通院が長期にわたる場合には、症状、治療内容、通院頻度等をふまえ、症状固定までの総日数ではなく、実通院日数の3倍程度の日数を基礎として計算することがあります。
そのため、軽傷であるときは慰謝料が減ってしまうことがあります。
④症状固定の時期が変わるとき
怪我の程度や治療内容、通院頻度等によっては、医師が認定した症状固定日よりも前が慰謝料算定の基準となる症状固定日となることがあります。
症状固定日が前になると、慰謝料算定の基礎となる期間や日数が短くなり、慰謝料が減ってしまいます。
⑤後遺障害が認定されなかったとき
後遺障害が認定されたときは、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料も請求できます。しかし、通院状況や書面の記載内容等が不十分であるような場合は、後遺症が残存していても適切な後遺障害等級が認定されないことがあります。
適切な後遺障害等級が認定されないと、本来もらえるはずの慰謝料がもらえなくなってしまいます。
⑥過失相殺があるとき
被害者に過失があるときは、過失分は相手に請求できません。過失相殺といいます。過失相殺があるときは、慰謝料が自らの過失分減ってしまいます。
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⑦素因減額があるとき
素因減額とは、身体的要因や心因的要因を理由とする損害賠償額の減額です。素因減額があるときは、慰謝料が自らの素因分減ってしまいます。
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⑧加害者が無保険のとき
加害者が無保険のときは、加害者に直接請求をします。しかし、保険に入っていない加害者はお金を十分に持っていないことも多いです。
そのため、加害者が無保険のとき、本来もらえずはずの慰謝料がもらえないことがあります。
5. まとめ:慰謝料が減ってしまう場合
本来もらえるはずの慰謝料がもらえなかったり、慰謝料が減ってしまったりするのは次のようなときです。
- ①裁判基準で計算しなかったとき
- ②怪我の症状等にかんがみて通院が長期にわたるとき
- ③軽傷であるとき
- ④症状固定の時期が変わるとき
- ⑤後遺障害が認定されなかったとき
- ⑥過失相殺があるとき
- ⑦素因減額があるとき
- ⑧加害者が無保険のとき
(監修者 弁護士 小林 義和)