交通事故の慰謝料が時効になる時期
監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大友 竜亮
- Q交通事故の慰謝料はいつ時効になりますか?
- A交通事故の慰謝料の時効は、原則として5年間です。ただし、例外もありますので早めに手続きを進めましょう。
―――― 目次 ――――
- 1. 慰謝料の時効は5年
- 2. 時効はいつからスタートする?
- 3. 時効の注意点
- 4. 時効が成立しないようにする方法
- 5. 加害者への請求ではないときの注意点
- 6. 物的損害の注意点
- 7. まとめ:交通事故の慰謝料が時効になる時期
1. 慰謝料の時効は5年間
交通事故の慰謝料の時効は、原則として5年です。
交通事故の慰謝料の請求は、いつまでも行えるものではありません。民法には、消滅時効という制度があります。一定期間が過ぎてしまうと、請求権が時効で消滅します。
民法では、慰謝料の請求の時効は原則として5年です。もっとも、当て逃げ事故やひき逃げ事故など、加害者が不明の交通事故の場合には、慰謝料の請求の時効は20年間です。
2. 時効はいつからスタートする?
では、どのタイミングから時効期間はスタートするのでしょうか?
時効期間は時効の起算点からスタートします。
時効の起算点
時効の起算点は、「損害及び加害者を知った時」の翌日です。一般的な交通事故の場合には、交通事故の日に加害者を知ることになりますので、事故の翌日から時効期間がスタートします。
他方、当て逃げ事故やひき逃げ事故など、事故の日に加害者が分からないような場合があります。そのような場合、警察の捜査などで加害者が判明した時の翌日から時効期間がスタートします。
なお、警察の捜査などでも加害者が判明しなかったような場合には、いつまでも時効が成立しないわけではありません。加害者が判明しなくても、事故の翌日から20年で時効となります。
損害及び加害者を知った日の翌日とは
では、時効の起算点である損害及び加害者を知った時の翌日とはいつでしょうか?
損害及び加害者を知った時の翌日は事故日の翌日であることが多いです。もっとも、後遺障害が残った事案のときは、損害及び加害者を知ったときの翌日は症状固定日の翌日です。
加害者が不明の事案のときは、損害及び加害者を知った日の翌日とは加害者を知った日の翌日です。
事故の種類 | 時効の起算点 | 時効期間 |
---|---|---|
物損事故 | 事故の翌日 | 3年間 |
人身事故 (傷害のみ) |
事故の翌日 | 5年間 |
人身事故 (後遺障害が残った) |
症状固定日の翌日 | 5年間 |
死亡事故 | 死亡日の翌日 | 5年間 |
加害者が判明しない事故 | 事故の翌日 | 20年間 |
後日加害者が判明した場合 ※いずれか早い方 |
加害者を知った日の翌日 | 5年間 |
事故の翌日 | 20年間 |
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3. 時効の注意点
時効の注意点は、期間が過ぎてしまうと一切請求ができなくなってしまうことです。
たとえば、100万円の権利があったとしても、時効の期間が過ぎてしまうと1円も請求できなくなってしまいます。
時効の期間が過ぎようとしていることを誰もわざわざ教えてはくれません。そのため、早めに手続きを進めることをおすすめします。
4. 時効が成立しないようにする方法
では、事故から期間が経過してしまったときに、時効を成立させないためにはどうすればよいでしょうか?
民法には、時効が成立しないようにする方法として、時効の更新と完成猶予の制度があります。
時効の更新
時効の更新とは、時効の期間をリセットすることです。時効の更新事由が認められると、更新事由が認められた時点から、再度ゼロから時効期間のカウントがスタートします。
時効の完成猶予
時効の完成猶予とは、時効期間の進行がストップすることです。時効の完成猶予事由が認められると、一時的に時効の完成を阻止できます。
時効の更新や完成猶予の具体的な方法
時効の更新や完成猶予の具体的な方法は、①裁判上の請求②催告③加害者の承認④協議する旨の合意などがあります。
①裁判上の請求
訴訟を提起すると、裁判が終わるまでは時効の完成が猶予されます。訴訟の結果、勝訴判決が出たときは、時効の更新が認められます。
②催告
催告とは、加害者に対して損害賠償金を支払うよう請求することです。催告があったときは、そのときから6カ月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予されます。
請求の有無がトラブルになることを防ぐため、催告は配達証明付き内容証明郵便で送ることが一般的です。
③加害者の承認
加害者が、被害者に対する損害賠償債務があることを認めるときは、時効が更新されます。
④協議する旨の合意
被害者と加害者の間で、損害賠償請求権について協議するとの書面による合意があったときは、次のいずれか早い時期までは時効の完成が猶予されます。
- 合意があった時から1年を経過した時
- 合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)
- 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6カ月を経過した時
5. 加害者への請求ではないときの注意点
加害者への請求の時効は原則として5年です。では、加害者への請求ではないときも時効期間は同じでしょうか?
加害者への請求ではないときは、時効期間が異なることがあります。たとえば、自賠責保険に請求するときは事故の翌日から3年が時効になることがあります。請求する相手により時効期間が異なります。早めに手続きを進めましょう。
6. 物的損害の注意点
同じ交通事故で生じた損害であっても、自動車、衣服、所持品などの物的損害の時効は、原則として事故の翌日から3年間です。早めに手続きを進めましょう。
7. まとめ:交通事故の慰謝料が時効になる時期
交通事故の慰謝料の時効は、原則として5年間です。ただし、例外もありますので早めに手続きを進めましょう。
(監修者 弁護士 大友 竜亮)