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当て逃げと慰謝料の請求方法

当て逃げと慰謝料の請求方法

最終更新日:2023年9月6日

監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 辻 佐和子

Q当て逃げで怪我をしました。慰謝料はもらえますか?
Aもらうことができます。ただし、犯人が見つからない場合、人身傷害保険、無保険車傷害保険、労災保険、政府保障事業などを利用する必要がある場合があります。
当て逃げの人身事故

当て逃げで怪我をした場合、相手に慰謝料を請求できるのでしょうか。相手方がその場を去ってしまったときはどうすればよいのでしょうか。

1. 「当て逃げ」とは

「当て逃げ」とは、交通事故が起こったときに、事故を起こした車の運転者が、警察への報告や負傷者の救護といった適切な対処をせずそのまま立ち去ってしまうことです。
当て逃げをした人は、民事責任のみではなく、刑事責任や行政責任を問われることになります。
 ※「当て逃げ」は怪我のない事故(物損事故・物件事故)のみを指して言うこともありますが、以下怪我をした事故(人身事故・人損事故)について解説します。

2. 当て逃げの犯人を見つける方法

車を特定

① ナンバープレートと車の特徴を目視で確認

まずは何よりも、事故を起こした車のナンバーを確認しましょう。できれば4桁の数字だけでなく、ひらがなまで覚えておけるとより良いです。忘れる前にできるだけ早くメモに残すか、周りの人に伝えて記録してもらうようにしましょう。

とっさのことだと難しいかもしれませんが、ナンバーがわかるとわからないとでは、犯人が見つかる可能性が大きく変わってきますので、何としても確認しておきたい事項です。

② ドライブレコーダーを確認

自分も車に乗っていた場合は、ドライブレコーダーに犯人の車が映っているかもしれません。ドライブレコーダーを取り付けていない方は、当て逃げされた場合にも備えて取り付けておくことをおすすめします。

③ 目撃者に話を聞く

事故現場を見ていた人がいる場合、その人に話を聞いて、車の特徴やナンバーを教えてもらうのも一つの手です。

警察に届け出る

警察に人損事故として届け出るとともに、逃げた車の特徴を伝えます。ドライブレコーダーのデータがあればそれも提出します。
あとは、捜査によって犯人が見つかるのを待ちます。

3. 犯人が見つからなかった場合の対応方法

もしも捜査によっても犯人が見つからなかったら、何の賠償も受けられないのでしょうか。
犯人が特定できない以上、犯人やその加入保険会社からの損害賠償は受けられませんが、他の方法で損害を填補できる可能性があります。

人身傷害補償保険を使う

人身傷害保険とは、自動車事故で自分やその家族、契約車両に乗っている人が死傷した場合に、過失割合に関係なく保険金額を上限として損害を補償してくれる任意保険の特約です。
相手がわからない場合や、無保険であった場合にも使うことができます。
人身傷害保険のみを使った場合、保険の等級が下がることは原則ありません。

無保険車傷害保険を使う

加害者が保険に無加入である場合や、当て逃げなどで加害者が分からない場合などに保険金を支払うという保険です。
補償内容は保険会社や契約内容ごとに異なりますので保険会社への確認をお勧めします。

労災保険を使う

労災保険とは通勤中の事故や業務中の事故に対して適用される保険です。
慰謝料は支払されませんが、治療費、休業損害の一部などが補償されます。

政府保障事業を使う

政府保障事業とは、「当て逃げ事故」や「無保険事故」といった自賠責保険の対象とならない事故の被害者に対して、法定限度額の範囲内で、損害を填補する制度です。損害保険会社(組合)の窓口で手続きをすることで、填補金を請求できます。

4. 犯人が見つかった場合に請求できる慰謝料

犯人が見つかると、その犯人に対して損害賠償を請求することができます。犯人が任意保険に加入していた場合には、その任意保険会社に保険金を請求することになります。請求できる損害賠償の項目には、「慰謝料」も含まれます。

一般的に請求できる慰謝料

以下は、一般的な交通事故でも請求できる慰謝料です。もちろん、当て逃げ事故の場合でも請求することができます。

① 傷害慰謝料

被害者が怪我をした場合に支払われる慰謝料です。原則として、入通院期間を基礎に金額が計算されます。

② 後遺障害慰謝料

被害者に、自賠責保険における後遺障害の等級が認定された場合に支払われる慰謝料です。等級によって、金額が決まります。

③ 死亡慰謝料

被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料です。 「一家の支柱」、「母親、配偶者」、「その他」のいずれに当たるかによって、目安となる金額が決まります。

当て逃げによる増額はある?

上記の慰謝料は、当て逃げによって増額されることがあるのでしょうか?
当て逃げは、裁判において慰謝料を決めるにあたり斟酌される事情であるとされています。つまり、当て逃げであったということで、そうでない場合よりも慰謝料が増額される可能性は十分にあるということです。特に被害者に何の落ち度もない場合には、ひき逃げ等の加害者の重過失によって慰謝料を増額している裁判例が多く見られます。

示談の場合も、慰謝料の金額の決定にあたっては裁判の相場に影響を受けるため、当て逃げという事情によって慰謝料が増額される可能性があります。

もちろん、慰謝料の金額を決めるにあたっては当て逃げ以外の事情も考慮されるため、他にも犯人の重過失等を基礎づける事情(信号無視、制限速度超過、飲酒運転の発覚を防ぐために事故後に飲酒、一度も謝罪が無い、など)がある場合には、具体的に主張していくことが重要になってきます。

5. 最後に

慰謝料には一応の基準がありますが、事情によっては基準から大きく外れた金額が裁判で認められることもあります。慰謝料増額のためには、できるだけ有利な事実を集めて、効果的に主張していくことが大事です。そのためにはまず、プロである弁護士の力を借りることが必要です。

交通事故に遭い、相手方保険会社から提示された示談金額に納得がいかないという方は、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。

(監修者 弁護士 辻 佐和子

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