肩鎖関節脱臼
最終更新日:2025年03月28日

- 監修者
- よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博
肩鎖関節脱臼は、肩甲骨と鎖骨の間にある関節の脱臼です。
脱臼の程度によっては、肩関節の動く範囲の制限や痛み、変形が残ることがあります。
この記事では、肩鎖関節脱臼による後遺障害が残る被害者にむけて、種類と治療法、後遺障害の認定基準などを交通事故に詳しい弁護士が解説します。
肩鎖関節脱臼の後遺障害は専門的な判断が必要です。気になることや悩みがある場合、まずはよつば総合法律事務所へお問い合わせ下さい。

目次
肩鎖関節脱臼とは
肩鎖関節
肩鎖関節(けんさかんせつ)は、肩甲骨上部の肩峰と鎖骨の間にある関節です。
肩鎖関節では、肩鎖靭帯や鳥口鎖骨靭帯が鎖骨からつながって、肩甲骨を引っ張り上げるように支えています。
肩鎖関節脱臼は、これらの靭帯を損傷して、関節がずれてしまうことです。肩外側の肩峰からの外力によるものがほとんどで、整形外科外来でよくある肩の外傷とされています。
交通事故では、自転車やバイクに乗って転倒し、肩をぶつけたときの衝撃により発生することがあります。
肩鎖関節脱臼の種類
肩鎖関節脱臼は、肩鎖関節を構成する肩鎖靭帯・烏口鎖骨靭帯の損傷の程度や鎖骨のずれの程度等に応じて、次の6つのグレードに分類します。
Ⅰ 捻挫 | 肩鎖靱帯の部分損傷です。烏口鎖骨靱帯や三角筋・僧帽筋は正常です。 XP(レントゲン)では、異常が認められません。 |
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Ⅱ 亜脱臼 | 肩鎖靱帯の損傷、断裂、烏口鎖骨靱帯は部分損傷が認められます。三角筋・僧帽筋は正常です。XPでは、関節の隙間が拡大し鎖骨遠位端が少し上にずれています。 |
Ⅲ 脱臼 | 肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに完全断裂し、三角筋・僧帽筋は鎖骨の端から外れていることが多く、XPでは、鎖骨遠位端が完全に上にずれています。 |
Ⅳ 後方脱臼 | 肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに完全断裂し、三角筋・僧帽筋が鎖骨の端から外れたものです。鎖骨遠位端が後ろにずれている脱臼です。 |
Ⅴ 高度脱臼 | Ⅲ型の程度の強いものです。肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂し、三角筋・僧帽筋は鎖骨の外側3分の1より完全に外れています。 |
Ⅵ 下方脱臼 | 鎖骨遠位端が下にずれたものです。極めて稀です。 |
大多数はグレードⅢ未満で、グレードⅥは、滅多に発生しないといわれています。
グレードⅠ・Ⅱでは保存的療法が選択され、グレードⅢでは保存的療法と観血的手術のいずれかが選択されます。
グレードⅣ・Ⅴ・Ⅵでは観血的手術が選択されます。
肩鎖関節脱臼の後遺障害
肩鎖関節脱臼のうちグレードⅠの捻挫は、治療経過が良好で、通常後遺障害となりません。
グレードⅡ以下の脱臼は、症状が残り、後遺障害が認定されることがあります。
肩鎖関節脱臼で認定されうる後遺障害は、機能障害、変形障害、神経障害の3種類です。
8級6号 | 1上肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの |
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10級10号 | 1上肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
12級5号 | 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
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12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
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14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
機能障害(肩関節の動く範囲の制限)
機能障害は、肩関節が動く角度を測定し、異常があるときの後遺障害です。動かない程度が大きいほど上位の等級になります。
8級6号 | 1上肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの |
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10級10号 | 1上肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級6号 | 1上肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
肩鎖関節脱臼の可動域制限の場合、原則として屈曲か外転・内転による運動を参照します。
可動域の測定にはルールがあります。詳細は関節可動域表示並びに測定法(日本リハビリテーション医学会)をご確認下さい。
認定のためには、単に数値上の基準を満たすだけではなく、そのような可動域の制限が生じることについて医学的な説明ができることが必要です。
「用を廃したもの」(8級)
「用を廃したもの」(8級)とは次のいずれかの場合です。
- 肩関節が全く動かない場合
- 肩関節の可能域が、負傷していない側の1/10以下に制限されている場合
- 人工肩関節置換術や人工骨頭挿入術を行い、可動域が負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
著しい機能障害(10級)
「関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級)とは次のいずれかの場合です。
- 肩関節の可動域が、負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
- 人工肩関節置換術や人工骨頭挿入術を行った場合
機能障害(12級)
「関節の機能に障害を残すもの」とは次の場合です。
- 肩関節の可動域が、負傷していない側の3/4以下に制限されている場合
変形障害(骨折部の偽関節や変形)
12級5号 | 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
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肩鎖関節周辺は筋肉が少なく、関節のズレが生じると、鎖骨が皮膚から盛り上がるように突出します。
特にグレード3以上の肩鎖関節脱臼では、鎖骨の突出による変形障害が認められるケースが多いです。
なお、変形障害は、裸になったとき、外から見て変形がはっきりとわかる場合に限ります。単純X線像やCT検査でしか確認できない程度の変形は認定されません。
神経障害(肩周辺の痛み)
神経障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
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14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
肩鎖関節脱臼後、痛みやしびれを残すときは12級か14級になることがあります。
12級は、画像から客観的に異常が分かり、痛みが残ることが医学的に証明できる場合です。
たとえば、骨が変形してあるいは不正に癒合して、これが原因で痛みが生じる場合です。
14級は、痛みが残ることが医学的に証明されているとまではいえないが、医学的に説明可能な場合です。
つまり、画像上痛みが生じる原因は明らかとはいえないものの、当初の受傷態様や治療内容、症状の一貫性などから、将来にわたり痛みが残ることが医学的に説明できる場合です。
通常肩鎖関節脱臼のみでは激しい痛みが残存するケースは少ないですが、靭帯の断裂等により、屈曲(前方挙上)や外転(側方挙上)により痛みを生じることがあります。
当事務所の解決事例
よつば総合法律事務所が関与した、肩鎖関節脱臼等による後遺障害の解決事例をいくつかご紹介します。
- 左肩鎖関節脱臼により、左鎖骨変形障害として12級5号が、左肩関節の可動域制限として12級6号が認定され、併合11級となった解決事例です。交渉で約2600万円を獲得できました。続きを読む
- 肩鎖関節脱臼による鎖骨の変形について12級5号が認定されました。交渉で約880万円を獲得できました。続きを読む
- 右肩鎖関節脱臼により、右鎖骨変形障害として12級5号が、右肩関節の可動域制限として10級10号が認定され、併合9級となった解決事例です。交渉で約1340万円を獲得できました。続きを読む
まとめ:肩鎖関節脱臼
肩鎖関節脱臼は、バイクや自転車で転倒し肩をぶつけたときに生じるよく起こる症状です。
肩鎖関節脱臼の後遺障害は、機能障害・変形障害・神経障害があり、8級~14級まで等級があります。
肩鎖関節脱臼で認定されることが多い後遺障害は、鎖骨の変形障害(12級5号)です。
肩鎖関節脱臼の後遺障害は専門的な判断が必要です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

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