上腕骨遠位端骨折

最終更新日:2025年03月27日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

上腕骨遠位端骨折は、肘周辺の骨折です。

骨の折れ方によっては、肘関節の動く範囲の制限や痛みが残ることがあります。

この記事では、上腕骨遠位端骨折による後遺障害が残る被害者にむけて、種類と治療法、後遺障害の認定基準などを交通事故に詳しい弁護士が解説します。

上腕骨遠位端骨折の後遺障害は専門的な判断が必要です。気になることや悩みがある場合、まずはよつば総合法律事務所へお問い合わせ下さい。

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上腕骨遠位端骨折とは

上腕骨

上腕骨の遠位端骨折

上腕骨とは、肩と肘をつなぐ二の腕部分の太い骨です。
遠位とは、心臓から見て遠い方を意味します。

つまり、上腕骨遠位端骨折とは、上腕骨の肘側の端、肘関節周囲の骨折のことを意味します。

上腕骨は尺骨及び橈骨と、肘の部分でつながっています。
上腕骨と尺骨の関節を腕尺関節といい、上腕骨と橈骨の関節を腕橈関節といいます。

交通事故では、自転車やバイクに乗って転倒し、手をついたときの衝撃により、上腕骨遠位端骨折が発生することがあります。

子供や若い人によくみられる骨折です。

上腕骨遠位端骨折の種類

上腕骨遠位端骨折には、①上腕骨顆上骨折②上腕骨外顆骨折などがあります。
また、上腕骨遠位端骨折に合併して起こる重篤な障害として③フォルクマン拘縮があります。

上腕骨顆上骨折

正常時、上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆上骨折

・診断

上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)は、上腕骨の付け根部分、関節の外側の骨折です。

特に骨が成長過程で未熟な子供に見られることが多い骨折です。

肘関節の痛みや腫れが主な症状で、時間が経つにつれて腫れは増強していきます。

レントゲンで診断が可能ですが、亀裂骨折にとどまるときは発見できないこともあります。このような場合はCTを撮影して判断します。

・治療

徒手で整復を行い、骨折部位をギプスで固定する方法と、骨折した方の腕を上から垂直牽引(=上から引っ張る)による保存的治療があります。

どうしても骨が正常な位置に戻らない場合や血管神経障害が疑われる場合は、手術が行われることもあります。

垂直牽引垂直牽引

・合併症

上腕骨遠位端の周辺には血管や神経が通っています。

骨折の程度が大きいと、フォルクマン拘縮 という重篤な急性合併症が起こることがあります。

また、骨片による神経圧迫や骨のずれによる神経過伸展障害が生じると、橈骨神経麻痺正中神経麻痺が発生することがあります。

上腕骨外顆骨折

正常時、上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆上骨折

・診断

上腕骨外顆骨折(じょうわんこつがいかこっせつ)は、関節内の骨折です。
肘関節の痛みや腫れが主な症状で、レントゲン撮影で診断が可能です。

・治療

骨のずれのことを転位といいますが、転位が少ない場合は保存的治療を行います。ただし、時間経過とともに転位が広がることがありますので、経過観察を適切に行わなければなりません。

転位が大きい場合には手術を行います。キルシュナー鋼線やスクリューを用いて内固定が行われます。

転位が放置されたまま変形癒合してしまうと外反肘(腕を伸ばすと、肘が外側に過度に曲がる変形障害)となり、可動域の制限や尺骨神経麻痺の原因になります。

外反肘外反肘

フォルクマン拘縮

・診断

フォルクマン拘縮は、上腕骨顆上骨折などの場合の重篤な合併症です。

骨折時に血管が損傷したり圧迫を受けたりすると、前腕の筋肉組織内で阻血(血液が足りない状態)が起こり、筋肉内に浮腫(むくみ)が生じます。そして、静脈が閉鎖することによって筋肉内の圧力が高まり、さらに循環障害を来すという悪循環を生じ、筋肉への血液供給が極端に減少することで筋肉が壊死します。

筋肉壊死によって瘢痕や線維化が生じ、やがて手指や手関節が屈曲したまま拘縮する状態に至ります。

フォルクマン拘縮とは

フォルクマン拘縮が完成するとこのように鷲の爪のような変形を生じ、手指を動かせなくなります。

フォルクマン拘縮は次の5つのPの症状によって判断します。

  1. Pain(疼痛)
  2. Paleness(蒼白)
  3. Paresthesia(知覚障害)
  4. Paralysis(運動麻痺)
  5. Pulselessness(脈拍消失)

受傷から数時間して、(1)前腕部に腫れや痛みが生じる、(2)ほかの人が指を伸ばそうとすると痛みを訴えるために伸ばすことができない、(3)指がしびれる、などの症状が悪化していきます。

・治療

フォルクマン拘縮は動脈が閉鎖して、6時間から8時間が経過後から発生しますので、初期対応が非常に大切です。

まず、可能な限り骨折の整復やギプスで圧迫などの阻血の要因を取り除きます。それでも改善しないときは、緊急的に筋膜切開を行い、筋肉内の圧力を減少させます。

上腕骨遠位端骨折の後遺障害

上腕骨遠位端骨折で認定されうる後遺障害は、機能障害、変形障害、神経障害の3種類です。

機能障害
8級6号 1上肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
変形障害
12級8号 長管骨に変形を残すもの
神経障害
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

機能障害(肘関節の動く範囲の制限)

機能障害は、肘関節が動く角度を測定し、異常があるときの後遺障害です。動かない程度が大きいほど上位の等級になります。

8級6号 1上肢の三大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の三大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

肘関節の可動域制限の場合、原則として屈曲・伸展による運動を参照します。

可動域の測定にはルールがあります。詳細は関節可動域表示並びに測定法(日本リハビリテーション医学会)をご確認下さい。

単に数値上の基準を満たすだけではなく、そのような可動域の制限が生じることについて医学的な説明ができることが必要です。

「用を廃したもの」(8級)

「用を廃したもの」(8級)とは次のいずれかの場合です。

  1. 肘関節が全く動かない場合
  2. 肘関節の可能域が、負傷していない側の1/10以下に制限されている場合
  3. 人工肘関節置換術や人工骨頭挿入術を行い、可動域が負傷していない側の1/2以下に制限されている場合

著しい機能障害(10級)

「関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級)とは次のいずれかの場合です。

  1. 肘関節の可動域が、負傷していない側の1/2以下に制限されている場合
  2. 人工肘関節置換術や人工骨頭挿入術を行った場合

機能障害(12級)

「関節の機能に障害を残すもの」とは次の場合です。

  1. 肘関節の可動域が、負傷していない側の3/4以下に制限されている場合

変形障害(骨折部の偽関節や変形)

12級8号 長管骨に変形を残すもの

「長管骨に変形を残すもの」(12級)とは、上腕骨遠位端骨折の場合、以下の場合をいいます。

  • 上腕骨が15度以上屈曲して不正癒合したもの
  • 上腕骨の骨端部に癒合不全を残すもの
  • 上腕骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
  • 上腕骨が50度以上外旋又は内旋変形癒合しているもの

神経障害(肩周辺の痛み)

神経障害の後遺障害認定基準は次のとおりです。

12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの

上腕骨遠位端骨折後、痛みやしびれを残すときは12級か14級になることがあります。

12級は、画像から客観的に異常が分かり、痛みが残ることが医学的に証明できる場合です。
たとえば、骨が変形してあるいは不正に癒合して、これが原因で痛みが生じる場合です。

骨折に合併して神経麻痺を生じ、筋電図や神経伝導速度検査等により証明がなされる場合も、12級が認定されることがあります。

14級は、痛みが残ることが医学的に証明されているとまではいえないが、医学的に説明可能な場合です。

つまり、骨折部の癒合はうまくいっており、画像上の異常は明らかではないものの、当初の受傷態様や治療内容、症状の一貫性などから、将来にわたり痛みが残ることが医学的に説明できる場合です。

フォルクマン拘縮の後遺障害

フォルクマン拘縮の場合、肘周辺の可動域や感覚障害のみならず、手関節や手指の拘縮を生じます。

フォルクマン拘縮が完成し、肘や手首、手指の筋肉がカチカチに拘縮して動かなくなると、6級6号「1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの」及び7級7号「1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの」が認定されます。ただし、5級4号「1上肢を手関節以上で失ったもの」よりは重くないので、結論としては併合6級が認定されることになります。

当事務所の解決事例

よつば総合法律事務所が関与した、上腕骨遠位端骨折等による後遺障害の解決事例をいくつかご紹介します。

  1. 上腕骨顆上骨折後の疼痛により、14級9号となった解決事例です。交渉で312万円を獲得できました。続きを読む
  2. 上腕骨骨折後の関節の可動域制限により、10級10号となった解決事例です。交渉で1500万円を獲得できました。続きを読む

まとめ:上腕骨遠位端骨折

上腕骨遠位端骨折は、バイクや自転車で転倒し手をついたときに生じるよく起こる骨折です。上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆骨折などの種類があります。

上腕骨遠位端骨折の後遺障害は、機能障害・変形障害・神経障害があり、8級~14級まで等級があります。

上腕骨遠位端骨折の場合、後遺障害が残らない例も多いですが、関節内に及ぶ骨折であったり、骨がずれたままくっついたりした場合、可動域制限により12級6号が認定されることもあります。

また血管や神経を損傷し、神経麻痺やフォルクマン拘縮を生じるとさらに重篤な後遺障害となる可能性があります。

上腕骨遠位端骨折の後遺障害は専門的な判断が必要です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

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