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腰椎捻挫(外傷性腰部症候群)の後遺障害

最終更新日:2023年10月16日

監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 粟津 正博

「腰の痛みやしびれが治らない」
「後遺障害が認定されるか心配」
「症状があるのに後遺障害認定されなかった」

この記事では腰椎捻挫となった交通事故の被害者にむけて、後遺障害になる場合とならない場合、12級や14級の認定ルールなどについて、交通事故に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

なお、後遺障害になるかによって賠償額が大幅に変わります。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

腰椎捻挫(外傷性腰部症候群)とは?

腰椎ヘルニア

腰椎捻挫とは、腰に無理な衝撃が加わったことが原因で発生する腰のけがです。外傷性腰部症候群、腰部挫傷などともいいます。

むちうちで負傷した被害者の50%ほどが腰痛も発症するといわれています。

腰椎捻挫の症状

腰の痛みや動きの悪さ、足のしびれ、感覚障害などの症状が現れます。太ももやすね、足に症状が出るのは、これらを支配する神経が腰を通っているためです。

腰の構造と症状の原因

腰には5つの骨があり腰椎といいます。各腰椎には番号がついており、上からL1、L2…L5と呼びます。

腰椎は、いずれも椎間板、靭帯、筋肉によってつながっており、重い上半身を支える大事な役割を果たしています。

腰椎捻挫は、追突事故などで外部からの衝撃が腰部に加わったり、不自然な態勢になってしまったりしたときに、椎間板・靭帯・筋肉などの軟部組織の損傷を原因として発症します。

腰椎捻挫の中で、最も多いのが腰椎の一番下(L4/L5)の椎間板や周囲の組織を損傷するタイプです。おしりから太ももの横、すねの外側、足の甲に痛みやしびれを発症します。

脊椎の一番下は重圧がかかりやすいです。しかも、腰を曲げるときに一番収縮する部分です。そのため、いたみやすいといわれています。

腰椎捻挫の症状と検査

MRI検査
腰椎捻挫は、腰部そのものの痛みや動きにくさを訴えるときが多いです。また、腰椎を通る脊髄の神経の根っこである神経根が圧迫や障害されると、神経が支配する領域と一致する下肢の部位に放散痛やしびれ、知覚障害が生じます。

神経根の障害があると、筋力低下や筋委縮があるほか、ラセーグ・SLR・FNSテストなどの神経根症状の誘発テストで陽性反応があります。深部腱反射検査では、減弱・消失傾向の異常を示します。MRIによる画像診断も有効です。

ラセーグテスト

仰向けになり、股関節と膝をそれぞれ90度に曲げます。その状態からゆっくりと膝を伸ばしていき、坐骨神経(仙髄神経(S1、S2、S3)及び腰髄神経(L4、L5))を圧迫します。

神経根が障害され、痛みが生じたことが確認されると陽性と判断されます。なお、仙髄神経とは腰椎のさらに下にある、お尻の中を通っている神経のことです。

SLRテスト

仰向けになり、膝を伸ばしたまま足を上げていき、坐骨神経(仙髄神経(S1、S2、S3)及び腰髄神経(L4、L5))を圧迫します。

神経根が障害され、痛みが生じたことが確認されると、痛みが生じた角度とあわせて記録されます。足が上がる角度が低いほど程度が重いものと評価されます。

FNSテスト

うつ伏せになり、手で臀部を抑えながら、膝を90度曲げます。その状態から足を持ち上げて股関節を伸ばしていきます。

高位の腰髄神経(L2、L3、L4)に障害があると、痛みが生じ陽性と判断されます。

深部腱反射テスト

腰椎捻挫の神経根障害を調べる深部腱反射テストには、アキレス腱反射テストと膝蓋腱反射テストの2種類があります。

膝蓋腱反射テストは、膝下あたりにある膝蓋腱をゴムハンマーでたたきながら、反応を確認します。正常な場合は大腿四頭筋が収縮して、足が上がります。

腰髄(L2,L3,L4)の神経根に異常が認められるときは反応が鈍くなるか(低下)、反応が見られません(消失)。

アキレス腱反射テストは、アキレス腱をゴムハンマーでたたきながら、反応を確認します。
正常な場合は,足首を伸ばしてつま先立ちになるような状態になります。

仙髄(S1、S2)の神経根に異常が認められるときは,反応が鈍くなるか(低下)、反応が見られません(消失)。

その他の神経学的検査

その他の神経学的検査には、徒手筋力検査、筋委縮検査、知覚検査などがあります。
様々な神経学的検査のうち、もっとも後遺障害認定において重視されるのは、深部腱反射テストです。

腰椎捻挫(外傷性腰部症候群)の後遺障害認定基準は?

一定期間治療しても、腰椎捻挫が完治しないことがあります。完治しないときは、後遺障害の申請ができます。

後遺障害は1~14級まであります。第三者機関である自賠責調査事務所が判断します。

腰椎捻挫では、次の後遺障害の可能性があります。

腰椎捻挫の後遺障害
14級9号 局部に神経症状を残すもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの

後遺障害14級9号になるには?

後遺障害認定のためには、症状が残っているだけでは足りません。症状の裏付けとなる客観的な所見、将来にわたり症状が残ることの医学的所見が必要です。

しかし、腰椎捻挫は神経学的検査をし行っても異常がないことが多いです。レントゲンやMRI画像で異常がないことも多いです。腰椎捻挫の症状の多くは軟部組織の異常が原因であるため、軟部組織の異常は、検査や画像ではわからないことが多いためです。

しかし、神経学的検査や画像所見の異常がなくても、14級9号の後遺障害となる可能性はあります。

「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)の後遺障害が認定されるのは、受傷時の状態や治療の経過を踏まえて症状の連続性・一貫性が認められ、将来にわたって症状が残存することが医学的に説明可能な状態であるときです。

受傷時の状態とは

「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)の後遺障害が認定されるのは、受傷時の状態や治療の経過を踏まえれば症状の連続性・一貫性が認められ、将来にわたって症状が残存することが医学的に説明可能な状態であるときです。

では、受傷時の状態とはどのような意味でしょうか?

受傷時の状態とは、受傷機転事故発生状況のことです。

受傷機転とは、腰椎捻挫に至った原因や経緯のことです。いつ、どこで、どのような経緯で、どのようにして、どのような作用が加わって外傷が発生したかという内容です。

たとえば、どのような姿勢を取っていたときに衝撃を受け、衝撃により体がどのような動きをしたかという内容です。受傷機転が自然だと後遺障害の認定で有利です。

事故発生状況とは交通事故の発生状況です。

たとえば、自動車の損傷が激しく修理額が大きい場合、事故発生状況は重大です。事故発生状況が重大だと、後遺障害等級認定で有利です。

治療の経過とは

「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)の後遺障害が認定されるのは、受傷時の状態や治療の経過を踏まえれば症状の連続性・一貫性が認められ、将来にわたって症状が残存することが医学的に説明可能な状態であるときです。

では、治療の経過とはどのような意味でしょうか?

治療の経過とは、通院の期間や病院に行った日数、治療の内容です。

たとえば、整形外科にたくさん通っているとき、長期間通っているときは後遺障害認定で有利です。

また、副作用のある薬を飲んでいるとき、ブロック注射を行っているときも症状が重いと評価できます。後遺障害認定で有利です。

連続性・一貫性とは

「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)の後遺障害が認定されるのは、受傷時の状態や治療の経過を踏まえれば症状の連続性・一貫性が認められ、将来にわたって症状が残存することが医学的に説明可能な状態であるときです。

では、症状の連続性・一貫性とはどのような意味でしょうか?

症状の連続性・一貫性とは、訴える症状が一貫して矛盾せず、治療のために継続的に真面目に通院していることです。

たとえば、次のようなときは一貫性や連続性があります。後遺障害認定で有利です。

  • 終始一貫して痛みやしびれを訴えているとき
  • 痛みやしびれの箇所が変わらないとき

他方、次のようなときは一貫性や連続性がないことが多いです。後遺障害認定で不利です。

  • 症状が重くなったり軽くなったりして症状の程度の変化が激しいとき
  • 右足がしびれていたり、左足がしびれてたりして部位が変わるとき
  • 寒いと痛い、雨の日は痛いなど条件付きの症状であるとき

まとめ:後遺障害14級9号になるには?

「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)の後遺障害が認定されるのは、受傷時の状態や治療の経過を踏まえれば症状の連続性・一貫性が認められ、将来にわたって症状が残存することが医学的に説明可能な状態であるときです。

後遺障害12級13号になるには?

「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)の後遺障害が認定されるのは、症状の裏付けとなる客観的な医学的所見が認められ、将来にわたって頑固な症状が残ることが医学的に証明されているときです。

12級13号になるには①神経学的検査、②画像所見、③自覚症状の一致が必要です。一致しないと12級13号の認定は難しいです。

神経学的検査・画像所見・自覚症状の一致とは

腰椎L1~L5
各領域の椎体には番号がついています。たとえば、腰椎の1番上がL1、2番目がL2です。腰椎には上からL1、L2…L5と番号がついています。

脊髄は椎体と椎体の間にできる空間である椎間孔を通って、身体の各抹消部分に枝分かれしています。

たとえば、L3とL4の間を通るL3/4の右側の神経根が圧迫されると、右太ももの前面やふくらはぎの内側にしびれが生じることが多いです。L4とL5の間を通るL4/5の右側の神経根が圧迫されると、右太ももの外側や外側のすね、足の甲にかけてしびれが生じることが多いです。

では、神経学的検査・画像所見・自覚症状の一致とはどういうことでしょうか?

次のようなとき、神経学的検査・画像所見・自覚症状は一致しています。

  • 自覚症状は右ふとももの外側にしびれがある
  • 右ふとももの外側のしびれに対応するL4/5の右側の神経根を圧迫しているというMRIの画像所見がある
  • 腱反射などの神経学的検査でL4/5領域に対応する異常がある

神経学的検査はいくつかの種類がありますが、腱反射が客観性が高いです。腰椎捻挫では、症状と一致する部位の腱反射が低下または消失している異常が必要です。障害がある神経根支配領域の筋力が低下し、筋委縮が生じることも多いです。

MRI検査の依頼

MRI検査は後遺障害申請では重要です。しかし、治療にはあまり必要ではないことが多いです。そのため、医師からの提案がないときは、被害者が医師に検査をして欲しいとお願いする必要があります。

まとめ:後遺障害12級13号になるには?

「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)の後遺障害が認定されるのは、症状の裏付けとなる客観的な医学的所見が認められ、将来にわたって頑固な症状が残ることが医学的に証明されているときです。

まとめ:腰椎捻挫(外傷性腰部症候群)の後遺障害

腰椎捻挫では、14級9号や12級13号の後遺障害の可能性があります。

  • 局部に神経症状を残すもの(14級9号)
  • 局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)

「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)の後遺障害が認定されるのは、受傷時の状態や治療の経過を踏まえれば症状の連続性・一貫性が認められ、将来にわたって症状が残存することが医学的に説明可能な状態であるときです。

「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)の後遺障害が認定されるのは、症状の裏付けとなる客観的な医学的所見が認められ、将来にわたって頑固な症状が残ることが医学的に証明されているときです。

腰椎捻挫の後遺障害認定は複雑です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

(監修者 弁護士 粟津 正博

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