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骨盤骨折

最終更新日:2024年8月19日

監修者:よつば総合法律事務所
弁護士 大澤 一郎

交通事故による骨盤骨折

骨盤骨折では①可動域制限の後遺障害②痛みの後遺障害③変形障害などになることがあります。

この記事では骨盤骨折の被害者にむけて、後遺障害の認定基準、認定のポイントなどを交通事故に詳しい弁護士が解説します。

骨盤骨折の後遺障害は専門的な判断が必要です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

1. 骨盤の構造

骨盤
骨盤

骨盤は仙骨、尾骨及び左右の寛骨によって構成されます。後方は仙腸関節、前方は恥骨結合で連結して骨盤輪を形成しています。

寛骨は、腸骨、坐骨及び恥骨が癒合してできています。

骨盤は、強靭な靭帯等の軟部組織により連結されています。通常体重の数倍の荷重が負荷されていますが、安定して体幹の姿勢を支え、身体の要となっています。

2. 骨盤骨折の後遺障害等級

骨盤骨折は、次のような後遺障害になることがあります。

可動域制限の機能障害

  • 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの(8級7号)
  • 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの(10級11号)
  • 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの(12級7号)

痛みの後遺障害

  • 局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)
  • 局部に神経症状を残すもの(14級9号)

人工骨頭置換術又は人工関節置換術を行った場合

  • 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの(10級11号)

変形障害

  • 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの(8級5号)
  • 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの(10級8号)
  • 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの(12級5号)
  • 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの(13級8号)

3. 腸骨翼骨折

骨盤
腸骨翼は、腰の両横にあって、皮下に触れることができる突出した部分です。

腸骨翼は、前方、後方または側方からの衝撃で骨折することがあります。骨盤輪の連続性を断たず出血を伴わないものは軽症例です。

急性期は入院下で安静が指示されます。もっとも、比較的早期に歩行器等を使用したリハビリが始まり、後遺障害を残すことなく治癒することが多いです。

4. 恥骨骨折や坐骨骨折

骨盤
恥骨骨折や坐骨骨折は、前方や下方からの外力で生じることが多いです。

交通事故では、出合い頭衝突で前方向から衝撃を受けたり、転落して坐骨が強打されたりして生じます。

片側の恥骨や坐骨の骨折であれば、骨盤輪の連続性が断たれない安定型骨折が多く、入院しても手術に至ることは少ないです。

比較的早期に歩行器を使用して短い距離を歩くリハビリが始まり、後遺障害を残すことなく治癒することが多いです。

ただし、恥骨骨折の場合、重傷だと膀胱損傷や尿道損傷を合併することがあります。坐骨骨折の場合、重傷だと骨折部は下方へ転位し、膝関節の屈曲や股関節の伸展が障害されることがあります。

5. 尾骨骨折造

尾骨骨折による屈曲変形
尾骨とは、仙骨の下についている骨です。尾底骨とも言います。

交通事故では、自転車やバイク等でお尻から転倒したときに尾骨骨折となることがあります。

尾骨は3個から5個の尾椎が融合したものです。つなぎ目があることや事故前から屈曲変形していることもあり、レントゲンでは骨折と判断することが難しいという特徴があります。

治療は、通常は保存的に安静が指示されます。後遺障害を残すことなく治癒することが多いです。

ただし、尾骨骨折により尾骨が屈曲変形をすると、女性の産道が確保できなくなることがあります。産道が確保できない場合、分娩が帝王切開となってしまいます。

6. 両側恥骨上下肢骨折やマルゲーニュ骨折

両側恥骨上下肢骨折とは、両側の恥骨と坐骨の骨折です。骨盤輪の連続性が損なわれています。straddle骨折とも言います。

straddle骨折

両側恥骨上下肢骨折(straddle骨折)

マルゲーニュ骨折とは、前方骨盤輪骨折と後方骨盤輪骨折が合併した骨折で垂直方向にずれているものです。安定性が失われ、骨盤片は下肢とともに情報に転位するため、下肢が短縮しているようにみえます。

骨盤複垂直骨折

7. 恥骨結合離開や仙腸関節の脱臼

恥骨結合離開と仙腸間接脱臼
左右の寛骨は、後方では仙腸関節及び仙骨、前方では恥骨結合を介して、骨盤輪を形成します。

骨盤輪内部の骨盤腔は内臓を保護し、力学的に十分荷重に耐え得る強固な組織となっています。

両側の恥骨は、骨盤前面の正中線で複数の靭帯で連結されています。

恥骨結合離開とは、この部分が離開し骨盤輪の前方が離断されたものです。軟骨部のみに起こることもありますが、骨軟骨境界部に起こることが多いです。

仙骨と腸骨も周囲の靭帯により強固に連結されています。仙骨と腸骨の関節を仙腸関節と言います。外力が直接腸骨の後方にはたらくと、腸骨が後方に転位し、仙腸関節が脱臼します。仙腸関節脱臼が単独に発生することはまれで、骨盤輪骨折と合併して発生することが多いです。

上のイラストのような不安定損傷になると、観血的に仙腸関節を整復固定すると共に、恥骨結合離開についてはプレートによる内固定または創外固定をします。

寛骨臼の損傷が激しいときは、骨頭の置換術に止まらず、人工関節の置換術に発展する可能性があります。

寛骨臼骨折

8. 骨盤骨折の後遺障害認定のポイント

骨盤骨折は骨折の内容により色々な後遺障害になることがあります。

骨盤輪の連続性が断たれない骨折

腸骨翼、恥骨、坐骨の単独骨折などの場合です。このような骨折では骨折部の3DCT画像にて、骨癒合状況を確認します。

画像で確認できる変形癒合の度合いにより、痛み等があれば次のような後遺障害になります。

  • 局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)
  • 局部に神経症状を残すもの(14級9号)

尾骨骨折で産道への影響があるとき

尾骨骨折で産道への影響があるときは、骨折部の3DCT画像を婦人科に持ち込み、正常産道が保たれているかを判断してもらいましょう。

「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」(11級10号)となることがあります。

重傷の骨盤骨折のとき

重傷の骨盤骨折では、次のような後遺障害になることがあります。

可動域制限の機能障害

  • 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの(8級7号)
  • 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの(10級11号)
  • 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの(12級7号)

痛みの後遺障害

  • 局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)
  • 局部に神経症状を残すもの(14級9号)

人工骨頭置換術又は人工関節置換術を行った場合

  • 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの(10級11号)

変形障害

  • 1下肢を5センチメートル以上短縮したもの(8級5号)
  • 1下肢を3センチメートル以上短縮したもの(10級8号)
  • 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの(12級5号)
  • 1下肢を1センチメートル以上短縮したもの(13級8号)

9. まとめ:骨盤骨折

骨盤骨折では①可動域制限の後遺障害②痛みの後遺障害③変形障害などになることがあります。

骨盤骨折の後遺障害は専門的な判断が必要です。悩んだら、交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。

(監修者 弁護士 大澤 一郎

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