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交通事故知識ガイド下肢及び足指

膝関節後外側支持機構損傷

膝関節後外側支持機構損傷

膝関節-膝関節後外側支持機構損傷

この図で「PLS」と書いてあるのが、膝関節後外側支持機構です。
膝関節後外側支持機構は、外側側副靱帯、膝窩筋腱、膝窩筋腱腓骨靱帯、弓状靭帯、大腿二頭筋腱、腓腹筋外側頭などから構成されています。
膝関節後外側支持機構は、主に膝の外側の安定性、外旋安定性に寄与している靱帯と腱の複合体でして、重要な役割を担っています。

膝関節後外側支持機構損傷は、膝の靱帯損傷の中では少ない症例ですが、交通事故外傷で起こるときは、単独で損傷することは少なく、特に、後十字靱帯損傷や膝関節の脱臼を併発したときは、膝窩動脈損傷、腓骨神経断裂などの血管損傷や神経損傷も起きていないかの注意が必要です。

参考:後十字靱帯損傷の後遺障害の解説
参考:膝窩動脈損傷の後遺障害の解説

急性期の膝関節外側支持機構損傷は、膝外側部に圧痛が生じ、広範な腫れと皮下血腫を認めます。
後十字靭帯損傷や半月板損傷を合併しているときは、関節内血腫を伴います。

参考:半月板損傷の後遺障害の解説

膝関節後外側支持機構損傷では、内反動揺性(膝が内側に曲がる)と回旋動揺性(脛骨が大腿骨に対して回る)のいずれか、あるいは両方が見られます。

内反ストレステストは、仰臥位で、膝関節完全伸展位(ベッドで仰向け)と30度の屈曲位(ベッドの横から足だけおろす)で行います。下腿の外側から内側へ力を加えます。
30度の軽度屈曲位のみで弛みがみられれば外側側副靭帯損傷が単独で生じていることが疑われます。

参考:外側側副靭帯損傷の後遺障害の解説

完全伸展位でも内反ストレステストが陽性のときは、膝関節後外側支持機構の広範な損傷や十字靭帯の損傷を疑うことになります。

膝関節後外側支持機構損傷でも、脛骨外側部に剥離骨折があるときは、スクリューによる固定をすることがあります。
靭帯実質部での断裂があるときは、外側側副靱帯の縫合術が行われることもあります。
実際のところ、膝関節後外側支持機構損傷が単独で起こることは稀で、腸脛靭帯や広範な関節包の断裂を伴うことが多く、損傷した靭帯に対しては、速やかに修復術を行い、剥離骨片を伴うときは、骨接合術が併せて用いられます。

【参考】靭帯損傷の分類

第1度靱帯損傷(最小限度の断裂) 少ない数の線維の断裂を伴う局所的な損傷
第2度靱帯損傷(部分断裂) 多くの線維の損傷によって靱帯に弛緩があり、軽度から中程度の不安定性がある。
第3度靱帯損傷(完全断裂) 靱帯の完全断裂により高度の不安定性がある。

膝関節後外側支持機構損傷の後遺障害認定のポイント

1)膝関節後外側支持機構損傷が単独で生じたときは、その損傷は第1度または第2度にとどまっており、そのときは、膝外側または後外側部の疼痛が生じます。高度の不安定性が残ることもあり、このときは、動揺関節について後遺障害等級の認定がされることもあります。

2)痛みについては「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)、「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)の後遺障害の可能性があります。

3)動揺関節については8級7号、10級11号、12級7号の後遺障害の可能性があります。

8級7号 常時硬性補装具の装着を必要とする程度のものは、8級7号「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」に準ずる関節の機能障害として取り扱う。
10級11号 動揺関節により労働に支障があるが、常時硬性補装具の装着を必要とするわけではなく、ときどき必要とする程度のものは、10級11号「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」に準ずる関節の機能障害として取り扱う。
12級7号 動揺関節で通常の労働には固定装具の装着の必要があるわけではないが、重激な労働等に際してのみ必要のある程度のものは、12級7号「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」に準ずる関節の機能障害として取り扱う。

4)膝関節後外側支持機構損傷が第3度にまで達したときは、それが単独で損傷していることは稀で、通常は十字靭帯損傷も同時に起きています。この場合については、複合靭帯損傷の解説をご参照下さい。

参考:複合靭帯損傷の後遺障害の解説

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