外側側副靱帯損傷
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外側側副靱帯損傷の解説
右膝関節です。
外側側副靭帯は、大腿骨と腓骨を結ぶ、膝関節外側を走行する靭帯です。膝が内側に曲がらないように制御し、膝関節外側の安定性を保っています。
外側側副靭帯が単独で損傷するということはほとんどありません。
外側側副靭帯は、ほかの膝関節の靭帯(前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯)に比較すると、損傷する頻度は少ないのですが、交通事故においては、膝の内側からの打撃が加わったときや、膝を内側に捻ったときに断裂することがあります。前十字靭帯損傷、後十字靱帯損傷や腓骨神経麻痺を合併することもあり、重篤な後遺障害が残ってしまうこともあります。
参考:前十字靭帯損傷の後遺障害の解説
参考:後十字靱帯損傷の後遺障害の解説
外側側副靭帯損傷では、靭帯が断裂または引き伸ばされることにより、膝外側部の疼痛や、外側半月板周囲の膝の激痛や運動制限などが生じることがあります。
膝を内側にひねったときの不安定感を伴うこともあります。
【参考】靭帯損傷の分類
第1度靱帯損傷(最小限度の断裂) | 少ない数の線維の断裂を伴う局所的な損傷 |
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第2度靱帯損傷(部分断裂) | 多くの線維の損傷によって靱帯に弛緩があり、軽度から中程度の不安定性がある。 |
第3度靱帯損傷(完全断裂) | 靱帯の完全断裂により高度の不安定性がある。 |
第1度の単独損傷にとどまったときは、保存療法が行われます。 しかし第2度以上の場合は、現実には十字靭帯損傷も併発していて膝関節が大変不安定な状態になっていることが多く、修復術または再建術が行われることもあります。
外側側副靭帯損傷は、徒手検査で外側不安定性を認めることで、診断可能です。
さらに、ストレスXP撮影で、その度合いを判別することができます。
MRIでは、骨挫傷、軟骨損傷、その他の靭帯や半月板損傷などの合併損傷がないかまで検証します。
特に、後十字靭帯損傷を合併していることが多く、第2度靭帯損傷(部分断裂)以上の不安定性を認めるときは、MRI検査で、他の靭帯を確認するのが望ましいようです。
外側側副靱帯損傷の後遺障害認定のポイント
1)外側側副靭帯が単独で損傷しているときは、第1度の損傷にとどまっているため、通常、後遺症は残りません。痛みが続くようですと、「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)の後遺障害の可能性があります。
2)外側側副靱帯損傷以外の靭帯の損傷を合併したときについては、下肢の動揺関節による後遺障害として、8級7号、10級11号、12級7号の後遺障害となる可能性があります。詳細は複合靭帯損傷の後遺障害の解説をご参照下さい。
【参考】下肢の動揺関節による後遺障害等級
8級7号 | 常時硬性補装具の装着を必要とする程度のものは、8級7号「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」に準ずる関節の機能障害として取り扱う。 |
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10級11号 | 動揺関節により労働に支障があるが、常時硬性補装具の装着を必要とするわけではなく、ときどき必要とする程度のものは、10級11号「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」に準ずる関節の機能障害として取り扱う。 |
12級7号 | 動揺関節で通常の労働には固定装具の装着の必要があるわけではないが、重激な労働等に際してのみ必要のある程度のものは、12級7号「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」に準ずる関節の機能障害として取り扱う。 |