後遺障害・慰謝料など交通事故は実績豊富な弁護士事務所にご相談下さい
メニュー
交通事故知識ガイド下肢及び足指

膝窩動脈損傷

膝窩動脈損傷の解説

膝窩動脈

膝窩動脈損傷

鼠蹊部から膝上部まで走行する大腿動脈は、膝窩を通るところで膝窩動脈(しつかどうみゃく)と名を変えます。
※膝窩とは、膝の後ろのくぼんだ部分、○印です。

膝窩動脈のあるところ

膝窩動脈損傷は、バイクと自動車の衝突で多く発生します。

大腿骨顆部骨折、膝関節脱臼、脛骨・腓骨開放骨折といった膝関節周辺の骨折・疾患を伴うことが多く、血行再建が遅れると、肢切断となる重症例です。
とりわけ、膝関節は相当の外力が加わらないと脱臼しないので、膝関節脱臼が発生したときは、同時に膝窩動脈を損傷することが多いです。

交通外傷による膝窩動脈損傷では、虚血症状が遅発性に発症することが多く、まず、可及的速やかに膝窩動脈損傷を診断し、整復術に先行して血行再建術を行うことが重要とされています。

血管損傷の解説

  • 整形外科領域における血管損傷は動脈損傷が多く、静脈損傷の修復が必要な外傷は限られています。そして、血管損傷に至るのは交通事故、労働災害、医療事故などが多いとされています。
  • 血管損傷の局所症状としては、①出血、②内出血、③腫脹などがあるとされています。
  • 血管損傷の抹消症状としては、①動脈拍動の消失又は減弱、②蒼白、③疼痛、④感覚異常、⑤麻痺があるとされています。
  • その他、四肢抹消のチアノーゼがみられるとされています。
  • 特に、膝窩動脈が閉塞すると40%の確率で抹消部の壊死をきたすと言われています。そして、膝簡潔脱臼に伴う膝窩動脈損傷は抹消部の壊死が生じやすい典型例と言われています。

膝関節脱臼との関係

膝関節脱臼の場合、動脈損傷や神経損傷が伴うことが多いです。膝関節脱臼をした場合、足を失ってしまうことも多いため特に要注意です。

血管損傷の治療

  • 全身の管理をまずは優先すべきとされています。出血創があれば、圧迫・挙上を行います。
  • 動脈損傷で抹消の拍動が消失している場合、全身麻酔下で損傷血管の修復・血行再建を行うとされています。動脈損傷の血行再建可能な時間的限界は常温下で6時間から8時間とされています。

医療事故でも発生する可能性

東京地方裁判所平成20年1月21日判決損害賠償請求事件(東京地方裁判所平成17年(ワ)第24889号)では以下の判断がされています。

・事案の概要
病院の担当医師には,人工膝関節置換術,血栓摘除術,バイパス術等において注意義務違反があり,その結果,原告は左大腿切断に至ったと主張して,約5000万円の損害賠償を請求した事案です。
・結論
被告病院の担当医師の各注意義務違反と左大腿切断との間に因果関係があるとは認められない。他方、注意義務違反により左大腿切断に至らなかった相当程度の可能性を侵害されたことに対する慰謝料440万円が認められる。
・解説
医師の過失と大腿切断との間の因果関係は否定されました。
他方、大腿切断を回避できる相当程度の可能性があったとして慰謝料の支払が認められました。
膝窩動脈損傷の手術は非常に難易度の高い手術です。少なくとも交通事故の場面では医師の過失という側面からの検討ではなく、適切な後遺障害等級認定を受けるという観点からの検討が必要です。
【参考】東京地方裁判所平成20年1月21日判決

膝窩動脈損傷の後遺障害認定のポイント

1)膝窩動脈損傷にて下肢を膝関節以上で失ってしまった場合、「一下肢をひざ関節以上で失ったもの」(4級5号)に該当します。

2)下肢を失わなかった場合でも、可動域制限で8級、10級、12級の可能性があります。また、痛みで12級、14級の可能性があります。具体的には以下の可能性があります。

  • 「一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」(8級7号)
  • 「一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級11号)
  • 「一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの」(12級7号)
  • 「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)
  • 「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)

参考リンク