股関節中心性脱臼
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股関節中心性脱臼の解説
股関節中心性脱臼とは、股関節内方脱臼ともいいます。
大腿骨頭が骨盤内部に向かって転位するものです。
交通事故においては、後方脱臼骨折がダッシュボード損傷で生じることが多いのと異なり、股関節中心脱臼は、大転子部に対する外力、つまり側方からの力が加わることによって発生することが多いです。 自転車・バイクVS自動車の衝突で、自転車・バイクの運転者に生じてしまうことが多いです。
関節包が敗れることは少ないのですが、大腿骨頭を介して寛骨臼蓋底が骨折し、大腿骨頭が臼底を破って、大腿骨転子部まで骨盤内部に陥没します。
一般的な治療としては、大腿骨の遠位部または大転子部に鋼線を刺入してそこを力点とし、直達牽引を行います。
膝付近の大腿骨に鋼線を刺入してその部分に力を加える方法により牽引をしています。
これにより、大腿骨を臼蓋底から引っ張りだし、臼蓋底骨折部が自然に癒合するのを待ちます。関節面が正しく整復されたものであれば、7週間~9週間牽引して骨癒合を待ちます。
その後、リハビリテーションに移行します。
その後、リハビリテーションに移行します。
- Q股関節の脱臼にはどのような脱臼がありますか?
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- ①後方脱臼、②前方脱臼、③中心性脱臼があります。
【解説】
- ①後方脱臼は、走行中の自動車の座席に座っていて正面衝突した際、膝が強くダッシュボードに打ちつけられたような場合に起こるとされています。
参考:股関節後方脱臼の後遺障害の解説 - ②前方脱臼は、転落した際に大腿のみが何かにひっかかった場合などに起こるとされています。
- ③中心性脱臼は、打撲などによって大転子部に外力が加わった場合などに起こるとされています。
- Q股関節の脱臼で多いのはどの脱臼ですか?
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- 後方脱臼が多いとされています。
- Q股関節の脱臼や骨折の治療で注意すべき点は何ですか?
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- 1つの症状のみではなく、他に合併損傷を生じていることが多いとされています。
- Q脱臼と並んで発生することが多い股関節の骨折にはどのような骨折がありますか?
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- ①大腿骨頭骨折、②大腿骨頚部骨折、③大腿骨転子部骨折、④大腿骨転子下骨折などがあります。
【解説】
- 骨折や脱臼が複数発生する可能性がありますので要注意です。
股関節中心性脱臼の後遺障害認定のポイント
1 直達牽引により、臼蓋底骨折部の骨癒合が良好に推移すれば、骨頭壊死に至る可能性は低く、予後は良好です。後遺障害に至ることもあまりありません。
2 骨頭壊死に至る可能性は低いものの、将来、変形性股関節症や骨化性筋炎に至ることが考えられます。
そうなったときは、股関節中心性脱臼の治療中の3DCTやMRI画像を用いる必要性が生じることもありえます。そのため、受傷時だけでなく、治療中や癒合状況の撮影も行ったほうが良いです。
3 骨癒合の状況が悪い場合、関節の可動域制限の後遺障害や痛みの後遺障害が認定される可能性もあります。
具体的には、以下の後遺障害が認定される可能性があります。
・可動域制限の機能障害
「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」(8級7号)
「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」(10級11号)
「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級7号)
・痛み
「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)
「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)