5. よりよい解決に向けた知識や経験の習得
医学知識を備えた弁護士(弁護士 大友 竜亮)
弁護士が医学知識を備える必要性
適正な損害賠償請求を行うためには、怪我の状態を正確に把握し、そのとおりの損害を認定してもらうことが重要です。交通事故が原因で、全く同じ症状を持った人がいたとしても、正確に怪我の状態を把握し、そのとおり損害が認定されないと、賠償額に非常に大きな差異が生じてしまいます。同じ症状なのに賠償額が異なってしまうのは許せるものではなく、適正な損害賠償を行うためには、医学知識を備えた弁護士に相談する必要があります。
医師による画像の見方の勉強会
当事務所では、勉強会を数多く開催しています。MRIやレントゲンなどの画像診断については、毎月1回、整形外科の医師にご来所いただき、当事務所で扱っている案件の画像を用いて画像診断のやり方や後遺障害の基礎的な医学知識について教わっています。
この勉強会により、後遺障害の認定などについて、医学的な主張をすることができるようになりました。
医師による事例検討会
また当事務所では、医師にご来所いただき、具体的な案件について医学的なご意見を伺うといった事例検討会も定期的に行っております。交通事故による症状について、専門家から正しいご意見を伺うことは、後遺障害の認定において非常に役立つことが多く、日々学ぶことが多いです。
交通事故分野の所内勉強会
よつば総合法律事務所は、交通事故チームを作っており、交通事故に遭ってしまった方々の救済に力を入れています。当事務所では、二か月に一回、弁護士が集まる勉強会も開催しています。この勉強会では、毎回担当の弁護士が、他の弁護士にも参考になる交通事故に関するテーマについて調査報告を行っています。また、自分が担当した案件を持ち寄り、案件の見通しや進め方について、参加した弁護士で議論を行っています。
適正な賠償請求のために、医学知識を備えた弁護士に
今後も、勉強会や検討会を継続して、最善の事案解決を図ってまいります。
(文責:弁護士 大友 竜亮)
画像読影について(弁護士 川﨑 翔)
特に画像読影(MRI画像が多いですね)では、症状を他覚的に立証できるかについて時間をかけて検討しています。
整形外科の先生方は日常の業務が忙しく、個々の患者さんの画像読影にかけられる時間はどうしても限られてしまいます。
また、病院によっては、画像読影は放射線科医の先生がおこなっているという場合も多いです。
そして何よりも、医師の「治療という観点」と弁護士の「後遺症の立証という観点」では着目する点がやや違います。
したがって、交通事故賠償においては「後遺症の立証という観点」から読影を行うことが極めて重要になってきます。
例えば、治療において外傷性であるか否かはほとんど問題になりません。医師としては現状の症状への対応が最優先であって、症状が外傷に由来するものであるかどうかは治療方針とほとんど関連しないからです。
(外傷性の椎間板ヘルニアであっても、経年性の椎間板ヘルニアであっても、治療に変化はないのです。)
一方で、交通事故賠償においては外傷性であるかどうかは、因果関係を判断する上で重要です。被害者側の弁護士はこのギャップを埋める努力をする必要があります。
また、「外傷性所見がない」ということは必ずしも「外傷によるものではない」ということとイコールではありません。
骨挫傷や浮腫といった外傷性所見がなければ、画像診断上は「外傷性所見なし」となります。
しかし、受傷からある程度の期間が経過してしまうと外傷性の所見が残っていないこともありますし、そもそも外傷性の所見が描出されなかったということも十分に考えられます。
重要なのは、事故態様や画像を総合的にみて、外傷性の症状と考えられるかどうかという点です。
今では弁護士向けの交通事故セミナーで読影に関する基本的な講演をしたり、医師との交通事故外傷のセミナーでパネリストとして登壇することはできるくらいになりました。
それでも、私だけではすべての傷病に対応することはできていません。今後も勉強と医師との連携を進めていきたいと思います。
(文責:弁護士 川﨑 翔)
交通事故の周辺知識の習得(弁護士 今村 公治)
所内での研鑽
交通事故によって重大な後遺障害がのこってしまう事案では、将来の介護費用など、重要な法律問題が多くあるため、日々最新の情報を取り入れていく必要があります。
そこで、交通事故専門チームでは、定期的に交通事故分野に関する勉強会を開催したり、最新裁判例の検討などを行っています。
自保ジャーナルという交通事故訴訟判決を多く掲載している雑誌を所内で購読しています。
また、交通事故の難しい案件に関する情報を、所内で共有するようにしています。
外部研修への参加
当事務所では、私を含めて複数の弁護士が日本交通法学会に参加しています。
日本交通法学会とは、交通と交通災害に関連する法律の研究を行う団体で、交通事故の法律問題についての研修会等が開催されることがあります。
弁護士一人の活動、一つの事務所の活動だけでは、得られる知識、経験には限界があると思いますので、所外で開催されている交通事故分野の研修にも積極的に参加するようにしています。
また、依頼者に適正な後遺障害等級が認定されるための活動をするためには、法律の側面だけではなく、医学的な知識も必要になってきますので、医学分野も含めた後遺障害に関する知識習得のために日々勉強しています。
たとえば、後遺障害認定の実務に特化した研修を受けています。過去には、頭部外傷や、下肢・膝関節の怪我に特化した研修等を受講しました。交通事故分野に熱心に取り組んでいる弁護士が全国から集まって事例を検討したり、脳神経外科専門医などの専門の医師を招いて後遺障害を医学的側面から解説してもらったりして、とても勉強になりました。
たとえば高次脳機能障害のように、重大な後遺障害をのこしてしまった事案については、適正な後遺障害等級の認定を受けるためには高度な知識と経験が要求されますので、自分が担当する案件だけでなく、外部の研修に参加して、多くの事例に触れることが重要だと思います。
医師との連携
当事務所では、交通事故による傷病に詳しい整形外科医を事務所に招いて、MRI画像や診断書をみながら、個別案件の検討会を行っています。
専門の医師から医学的な見解を定期的に教えてもらうことで、後遺障害に関する知識を深めています。
事件が裁判になりますと、医学的な意見書の作成を医師にお願いすることがありますが、弁護士の側が医学的な基礎知識をもっているほうが、医師に対して質問しやすいですし、より突っ込んだ回答を求めることができると思います。
(文責:弁護士 今村 公治)
交通事故事案に弁護士がかかわる意味(弁護士 佐藤 寿康)
適正な損害賠償
(もちろん、そんな制度が非現実的であることはいうまでもありません。)
事案ごとに損害額の算定をしなければなりません。
損害の算定に用いられている基準には、大きく分けて、自賠責の基準、任意保険会社の基準、訴訟での基準の3つがあります。裁判所が基準を公開しているというわけではありませんが、実際には「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(いわゆる「赤い本」)という文献に損害額算定方法が記載されており、これが一般の訴訟事件では用いられています。自賠責保険は被害者の最低限度の損害填補を図るためのもので、3つの基準の中では1番低いです。
1番高額なのは、訴訟での基準です。裁判所が用いている基準が適正でないはずはありませんから、適正な損害額を算定するためには、訴訟での基準を用いなければなりません。
ところが、実際には、任意保険会社は、被害者に対して、任意保険基準を用いて算定した損害額を賠償案として提示します。もちろん、他に適正な基準があることは御存じないまま、合意書面に署名押印してしまっている例が大多数です。
このようにして、大多数の被害者の方が、適正でない損害賠償を受けています。
弁護士が交通事故案件にかかわる意味の大きなものとしては、適正な損害賠償を受けて頂くことにあります。
これは、裁判所に持ち込まなければ実現できないというものではありません。 実際に御依頼を受けました件についてはもちろん適正な賠償を受けて頂くべく尽力するわけですが、それにとどまらず、1人でも多くの被害者の方にこのことを知っていただきたいと考えています。このようにホームページに記載するのは、そうした思いからです。
適正な後遺障害認定
治療はけがを治すために行うものです。その結果完治するのが何よりです。
しかし、常にそうなるわけではありません。 治療をきちんと行ったにもかかわらず、治療が終了したときに症状が残った場合、その後遺症が後遺障害として認定されるべきものであれば、そのようにきちんと評価されるべきです。
ところが、実際には、必要なときに必要な検査をしていなかったり、治療の経緯がよくなかったりといったことが原因で、等級認定されなかったり、あるべき等級より低い等級での認定にとどまったりすることが、残念ながらよくあります。
実際には後遺障害に該当すべき後遺症が残ったのに、このような理由で後遺障害であると評価されないことを防ぐということも、交通事故案件に弁護士がかかわる意味の大きなものだと考えています。被った損害は、適正に回復しなければなりません。
(文責:弁護士 佐藤 寿康)
所内における勉強会(弁護士 前田 徹)
交通事故に関する勉強会の必要性
これらは1つだけでも、その範囲は広く、量は膨大になります。そこで、当事務所では、専門的に、かつ、効率的に研鑽を積めるよう、以下のような勉強会を所内で開催しております。
医師による症例検討会
当事務所では、毎月1回、懇意にしている整形外科の医師に来所していただき、具体的な案件について、画像診断のやり方や医学的な基礎知識についてご意見をうかがうといった検討会を行っております。
医学書を見れば一般的な知識の勉強はできます。
しかし、当然ながら被害者の方の症状は千差万別であり、医師から実践的なご意見をうかがわないと、問題の解決に繋がらないことが多くあります。
この勉強会を通じて、後遺障害の認定や訴訟における医学的な主張に自信を持てるようになりました。
弁護士による意見交換会
当事務所では、2ヶ月に1回、弁護士が他の弁護士にも参考になる自分の案件を持ち寄り、意見交換会を行っております。
そこでは、過失割合が争いになった訴訟において、どのような立証活動を行い成功したかといったことや、後遺障害等級認定の申請において、どのような資料を準備するとよいか、といったことなど、実践的な情報の交換を行っております。 また、保険会社各社の対応の傾向や、近隣の病院の情報交換も行っております。
弁護士1人では情報の蓄積には限界がありますが、当事務所には交通事故を数多く扱う弁護士が多数所属するため、数倍もの情報の蓄積があります。
特に、地元である千葉県内の病院や保険会社の情報は、他の事務所に比べて非常に多いと思います。
専門家による勉強会の開催
保険や社会保障制度については、専門家を事務所にお招きし、勉強会を行いました。特に、社会保障制度については、障害年金のプロフェッショナルの社会保険労務士の先生に来ていただき、実践的なお話しを聞かせていただきました。
勉強会終了後は、実際にその先生と連携し、被害者の方によりよい情報を提供できる体制となっております。
また、過失割合が争いになるケースで、事故状況の調査や分析をやっていただく調査会社の担当者の方にもお越しいただき、どのような視点から調査を行うとよいか、などをご教示いただきました。
さらに、重度の障害を負い、自宅の改造が必要となった場合に、福祉の観点からどのような改造工事を行うことが望ましいか、どのような介護用具を利用できるかという点について、福祉用具の専門家にお越しいただき、お話しをうかがいました。
研究と実践
今後も、所内における勉強会を継続し、各弁護士が研鑽を重ね、各自の事案解決に役立てて参ります。
(文責:弁護士 前田 徹)
医学知識の習得(弁護士 川﨑 翔)
どのような治療が適切か、どのような後遺症が残る可能性があるのか、後遺症を証明するために必要な検査は何か、事故態様からして見落とされている傷害はないかなど、あらゆる医学知識が必要になります。主治医の先生に適切な診断書を書いていただいたり、意見書を作成していただく際にも被害者側弁護士に正確な知識がなければ、十分な立証ができないことになってしまいます。必要とはわかっていても、医学知識(理系の知識)というと弁護士(文系)からするとどうしても苦手意識をもってしまいがちです。正直なところ、私もきちんと勉強するまでは苦手意識を持っていました。
幸い、私の家族には医療関係者が多く医学知識の習得が容易だったという点は恵まれていたと思います。(父、弟、義兄、義妹が医師、母がカウンセラー、叔父が歯科医、伯母が看護師です。)
最初のうちは、基本的な医学書(医学生が読むテキストも教えてもらってよみました)や画像読影の入門書を読み、交通事故外傷への知識習得に努めました。
しかし、座学で理解していても、実践的なことが理解できておらず、十分な立証には結びついていないと感じていました。
やはり、後遺症の立証のためには、実践的な医学知識が必要であると思い、協力医を探しました。なかなか、被害者側の弁護士を支援してくれる医師は見つかりませんでしたが、現在では複数の医師が、当事務所の協力医に就任して下さっています。
協力医の先生には定期的に画像読影を含めた症例検討会を開いていただいたり、分野ごとの講義をしていただいたりしています。
特に画像読影に関しては、何度もMRIやCTを診ながら医師に教えてもらうことで、ある程度の読影ができるようになってきたと自負しています。
医学の勉強をしていく中で、交通事故損害賠償における素因減額に関する書籍の執筆に参加する機会も得ました。
素因減額とは、被害者の既存症が後遺症の発生や拡大に寄与した場合、損害をどのように評価すべきかという問題です。今まで、素因減額を専門的に扱った書籍は無く、執筆者一同で判例の調査や医学的知識の整理から始め、時間をかけて書籍化しました。(「交通事故における素因減額問題」(保険毎日新聞社、2014))
知識を習得しながらの執筆作業は難航しましたが、とてもいい勉強になったと思っています。
試行錯誤を繰り返し、ようやくある程度の医学知識が身についてきたなと感じています。
それでも、被害者の後遺症を立証していくためには日々勉強が欠かせないと思っています。
(文責:弁護士 川﨑 翔)