事例157左膝前十字靭帯断裂・左膝内側側副靭帯損傷
会社役員が、左膝靭帯損傷後の左膝動揺関節の症状について、12級7号の認定を受け、人身傷害保険金のほか、約970万円を獲得した事例
最終更新日:2023年02月08日
文責:弁護士 佐藤 寿康
保険会社提示額 : 515万円
- 解決額
- 970万円
- 増額倍率 :1.8倍
- 怪我の場所
-
- 足・股・膝
- 後遺障害等級
-
- 12級
事故発生!自転車対自動車の事故
平成22年某月、入来さん(仮名・千葉県我孫子市在住・30代・男性・会社役員)が、自転車に乗って進行していたところ、側方から来た自動車に衝突され転倒するという事故に遭いました。
相談から解決まで
入来さんは、頭部打撲、胸部打撲、右肘靭帯損傷、左膝前十字靭帯断裂、左膝内側側副靭帯損傷、左膝内側半月板損傷の傷害を負いました。満足に歩くことができず、事故後半年間はほぼ寝たきりの状態でした。左膝前十字靭帯の再建手術を行い、可動域確保などのため懸命のリハビリに励まれましたが、左膝関節が安定しない状態が残り、動揺関節として12級7号の後遺障害に認定されました。
その後保険会社から示談の提案がありましたが、その内容が適切かどうか確認したいということで、当事務所に相談されました。
当事務所が代理し、紛争処理センターを利用して任意保険会社との示談交渉を行うのと並行して、人身傷害保険会社との協議も行いました。その結果として、任意保険会社とも人身傷害保険会社とも合意を成立させ、最終的に合計約1,280万円を受領する内容の解決となりました。
当事務所が関わった結果
解決のポイントは以下の点です。
1紛争処理センターの利用
当事務所が代理した後、相手方保険会社と協議しましたが、後遺障害逸失利益の点で開きが大きく、合意を成立させることはできませんでした。
たしかに、入来さんの会社では会計上役員報酬を計上していませんでしたが、だからといって労働能力喪失期間が30年余りとなる後遺障害逸失利益を低額に抑えられるのも納得できる話ではありません。
紛争処理センターを利用し、それなりに納得のできる案が示され、合意に至らせることができました。
2人身傷害保険会社との協議
この事故には人身傷害保険が使えました。しかし、この人身傷害保険は、相手方から支払われる賠償額が妥当であると人身傷害保険会社が認めた場合に、初めて支払われる仕組みになっていました。先に人身傷害保険金を受け取るというやり方は困難です。
人身傷害保険における損害額の算定基準は、いわゆる赤い本基準ではなく、保険会社の基準で算定されますが、後遺障害逸失利益算定の際に用いる基礎収入の面に限っては、被害者に有利になっており、そのため、算定損害額全体も大きくなっていました。
一般的に、人身傷害保険金を先に受領するほうが被害者の全損害を填補できる可能性が高く(人傷先行)、相手方保険会社からの賠償を先に受けるときは、訴訟を行わなければなりません(賠償先行)。しかし、この件では、訴訟を行うと、かえって後遺障害逸失利益について厳しい結論となることが予想されました。他方、人身傷害保険会社の基準で算定した損害額は、後遺障害逸失利益の点で被害者のメリットが大きく、人身傷害保険会社の基準のほうが訴訟を行うより損害額が高くなると判断しました。
そこで、あえて訴訟手続によらない賠償先行とすることとし、紛争処理センターを利用して賠償交渉を行う一方、その交渉での推移を人身傷害保険会社担当者にも伝えました。
その結果、最終的に、人身傷害保険会社から、紛争処理センターから出された案が妥当なものと認められ、入来さんの過失分も含めて満足できる結果とすることができました。
依頼者様の感想
ありがとうございました。
※プライバシー保護のため、地名については実際にお住まいの場所の近隣ですが実際とは異なる場所を記載してあることがあります。
文責:弁護士 佐藤 寿康
本事例へのよくある質問
- 人身傷害保険と加害者任意保険はどちらを先に利用した方がよいですか?
- 過失が一定程度以上ある場合、人身傷害保険を先に利用した方が一般的にはよいでしょう。
- 過失が一定程度ある場合、人身傷害保険を先に利用すると、結果的に過失相殺がなかった時と同じ解決ができるときがあります。
- ただし、人身傷害保険と加害者任意保険は賠償基準が異なります。そのため①過失有、かつ②人身傷害保険有の事案の場合、どのような順序で合意するか難しい判断が必要なこともあります。示談の前には交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。
- 会社役員の逸失利益の損害賠償基準はどのような基準ですか?
- 会社役員の逸失利益については、労務提供の対価部分は認められます。他方、利益配当の実質をもつ部分は認められないことが多いです。
- 会社役員の場合、通常の労務対価以上の報酬をもらっていることもあります。そのような場合、逸失利益の算定において役員報酬全額を基礎として逸失利益が認められないことがあります。詳細は、役員報酬の逸失利益の基礎収入の解説をご参照下さい。