主婦が14級9号の認定となり、裁判により388万円を獲得した事例

最終更新日:2019年10月21日

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士
辻 佐和子
当初の提示額
157万円
最終獲得金額
389万円
2.5 増額
千葉県柏市・30代・女性・専業主婦
病名・被害
頚椎捻挫・両肩両上肢挫傷
けがの場所
手・肩・肘
最終獲得金額
389万円
後遺障害等級
14級
事例の特徴
むちうち(首・腰)

事故の状況

主婦の松本さん(仮名)は自動車を運転していました。青信号に従って交差点を進行していたところ、赤信号を無視した自動車に右から衝突されるという事故にあいました。

松本さんには、腰や首、腕の痛みといった症状が出ました。

ご相談内容

松本さんのケガは、頚椎捻挫、両肩や両上肢挫傷でした。松本さんは約6カ月間の治療を受けましたが、ケガは完治せず症状固定となりました。

そこで、後遺障害の申請をしたところ「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)が認定されました。

後遺障害等級の認定後、保険会社からは賠償として157万3420円を支払うとの提案がありました。

金額に納得がいかなかった松本さんはよつば総合法律事務所の弁護士に相談し、保険会社との交渉と裁判の手続きを依頼することにしました。

松本さんのご相談内容のまとめ

  1. 適切な休業損害逸失利益を得たい
  2. 弁護士費用特約を使って弁護士に依頼したい

事故の後遺障害による両肩の痛み

弁護士の対応と結果

弁護士は加害者の保険会社との交渉をスタートしました。しかし、交渉では話がまとまらなかったために裁判の手続きにうつることにしました。

弁護士は裁判において、休業損害と逸失利益の金額についての説得的な証拠を提出しました。すると、裁判所からは弁護士の主張をおおむね認める内容の和解の提案がありました。

そのため、松本さんが388万6932円を受け取るという有利な内容で和解を成立させることができました。保険会社のはじめの提案より231万3512円も増額したことになります。

弁護士の対応と結果のまとめ

  1. 裁判の手続きを行い、有利な証拠を裁判所に提出
  2. 388万6932円を獲得

解決のポイント

1. 休業損害と逸失利益の金額が高くなった

休業損害と逸失利益はそれぞれ賠償の項目です。

休業損害は、事故のせいで仕事を休んだことによって減ってしまった分の収入を賠償するものです。

逸失利益は、事故のせいで後遺障害が残った場合、その障害のせいで減ってしまう分の将来の収入を賠償するものです。

休業損害も逸失利益も、サラリーマンや事業者として働いていて実際に収入がある人の場合は、その収入の金額を使って計算します。

一方で、専業主婦の場合は計算の基礎にできる収入がありません。そのため。多くの場合は賃金センサスという統計資料の数値を使って休業損害と逸失利益を計算することになります。

専業主婦の場合に使う統計の数値は、賃金センサスの全年齢女性の平均賃金です。当時の統計で年収348万9000円です。

しかし松本さんの場合は、専業主婦ではあったものの、家族の介護等を行っていたという事情がありました。そのため、松本さんの現在の状況を細かくまとめた陳述書などを準備して、弁護士は松本さんの事情を主張立証しました。

その結果、全年齢女性ではなく35歳~39歳女性の平均賃金を使うことができました。当時の統計で年収381万4300円です。年収にして32万5300円も増加したことになります。

計算する年収が上がったため。休業損害と逸失利益の金額が高くなりました。

2. 弁護士費用相当額が上乗せになった

交通事故の賠償の項目として、弁護士費用相当額があります。

弁護士費用相当額とは、損害賠償を請求するためにかかった弁護士費用を賠償するというものです。

通常は、交渉で弁護士費用相当額が認められることはありません。しかし、裁判になると弁護士費用相当額は認められることがほとんどです。

判決で解決する場合は、認容額の約10%が弁護士費用相当額となることが多いです。一方で判決に至らずに裁判上の和解で解決する場合は10%より低い割合となることが多いです。

本件についても裁判となり、その後に和解で解決したため、認容額の約5%が弁護士費用相当額として認められました。

ご依頼者様の感想

本当にありがとうございました。

(千葉県柏市・30代・女性・専業主婦)

プライバシー保護のため、事案の趣旨を損なわない範囲で事案の内容を変更していることがあります。

本事例へのよくある質問

Q休業損害と逸失利益はどう違うのですか?

休業損害も逸失利益も、「仕事ができなくなった分に対する賠償」という意味では似ています。

しかし、休業損害はケガから症状固定までの期間を対象とした賠償です。逸失利益は症状固定から原則として67歳までの期間を対象とした賠償です。

Q休業損害の計算はどのようにしますか?

原則として、裁判基準では以下の式で計算されます。

休業損害=1日あたりの基礎収入×休業日数

1日あたりの基礎収入は、給与所得者については事故前の3か月の給与を勤務日数で割る方法で計算されるのが一般的です。

主婦については、賃金センサスという統計資料の全年齢女性の平均賃金を365で割って、1日あたりの平均賃金にした数値を1日あたりの基礎収入とします。

Q逸失利益の計算はどのようにしますか?

原則として、裁判基準では以下の式で計算されます。

逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入とは、事故前年度の年収です。

労働能力喪失率とは、後遺障害等級ごとに決まっている割合になります。

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数とは、適当な賠償金額を算出するために使われる中間利息控除を行う数値です。

Qなぜ本件では、全年齢女性ではなく35歳~39歳女性の平均賃金を使って計算することが認められたのですか?

介護など、通常の家事労働に比べて大変な労働を行っていることを弁護士が立証し、そのことが高い平均賃金を使って計算する根拠になると判断されたからです。

Q兼業主婦の場合は、実際の収入と統計資料のどちらを使って休業損害と逸失利益を計算するのですか?

実際の収入と賃金センサスの全年齢女性の平均賃金とを比較して、高いほうを使って計算します。

監修者
よつば総合法律事務所
弁護士
辻 佐和子

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