素因減額
監修者:よつば総合法律事務所
代表弁護士 大澤 一郎
- Q素因減額とは何ですか?
- A素因減額とは、身体的要因や心因的要因を理由とする損害賠償額の減額です。
身体的要因の場合、身体的特徴に留まるときは素因減額の対象ではありません。疾患に至るときは素因減額の対象です。
心因的要因の場合、次のような場合は素因減額の対象です。
①原因となった事故が軽微で、通常人に対し心理的影響を与えるものではないとき
②愁訴に見合う他覚的な医学的所見を伴わないとき
③一般的な加療相当期間を超えて加療を必要としたとき
―――― 目次 ――――
素因減額とは
素因減額とは、身体的要因や心因的要因を理由とする損害賠償額の減額です。
身体的要因とは身体の特徴、心因的要因は精神の特徴です。一定の特徴があるときに損害賠償額が減額となるのが素因減額です。
身体的要因が素因減額の対象になるとき
では、身体的要因が素因減額の対象になるのはどのような場合でしょうか?
身体的要因が身体的特徴に留まるときは素因減額の対象ではありません。身体的要因が疾患に至るときは素因減額の対象です。
身体的要因が問題となりやすいのは、後縦靭帯骨化症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症などです。
頚椎後縦靭帯骨化症
後縦靭帯骨化症とは、背骨の後ろを縦に走る後縦靭帯が骨に変化し、脊髄や神経を圧迫する病気です。
手や足のしびれや痛み、運動障害などを引き起こします。
後縦靭帯骨化症は素因減額の対象となることが多いです。20~30%の減額が多いですが、50%前後の減額もありえます。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアとは、背骨の骨の間にある椎間板が飛び出すことによって周りの神経を圧迫し、さまざまな症状が現れる病気です。
力が入らない、箸が使いにくい、ボタンがかけにくいなどの症状が出ることもあります。腰やお尻部分に痛みが生じるほか、太ももやふくらはぎまで痛みやしびれが広がったり、足に力が入らなくなったりすることもあります。
椎間板ヘルニアは素因減額の対象となることが多いです。20~30%の減額が多いですが、50%前後の減額もありえます。
脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症とは、神経の通る脊柱管が狭くなって、神経が圧迫を受け、神経の血流が低下して様々な症状が現れる病気です。
腰や足の痛み、しびれなどの症状が起こります。
脊柱管狭窄症は、素因減額される場合とされない場合があります。たとえば、事故前から通院治療していると、素因減額の可能性が高まります。
素因減額の割合は個別事案により異なります。
骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、骨密度の低下により骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。
高齢の被害者のときは素因減額の可能性は低いです。他方、若年の被害者のときは素因減額の可能性が高いです。若年の骨粗しょう症は珍しいためです。
若年の骨粗しょう症の場合、減額の割合も高めとなることが多いです。
心因的要因が素因減額の対象になるとき
では、心因的要因が素因減額の対象になるのはどのような場合でしょうか?
心因的要因が素因減額の対象となるのは次のようなときです。
①原因となった事故が軽微で、通常人に対し心理的影響を与えるものではないとき
②愁訴に見合う他覚的な医学的所見を伴わないとき
③一般的な加療相当期間を超えて加療を必要としたとき
減額の割合は個別事案によります。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
まとめ:素因減額
素因減額とは、身体的要因や心因的要因を理由とする損害賠償額の減額です。
身体的要因の場合、身体的特徴に留まるときは素因減額の対象ではありません。疾患に至るときは素因減額の対象です。
心因的要因の場合、次のような場合は素因減額の対象です。
①原因となった事故が軽微で、通常人に対し心理的影響を与えるものではないとき
②愁訴に見合う他覚的な医学的所見を伴わないとき
③一般的な加療相当期間を超えて加療を必要としたとき
素因減額は複雑です。悩んだら、まずは交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
(監修者 弁護士 大澤 一郎)