交通事故で高次脳機能障害を発症しました。治療と示談の板挟みで,これからどうすれば良いのでしょうか?

2017年08月02日
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交通事故で高次脳機能障害を発症しました。治療と示談の板挟みで,これからどうすれば良いのでしょうか?

交通事故により高次脳機能障害を発症すると,加療と示談交渉の板挟みで精神的に追い詰められます。弁護士に示談交渉を一任するなどして,治療に専念しましょう。




 高次脳機能障害での治療と示談 


◆その怪我は完治の見込みがない!


Dさんは,駅前の交差点で信号が青に変わるのを見て横断歩道を渡り始めましたが,黄色信号から赤信号に変わった反対車線から猛スピードで車が走ってきた車にはねられ,意識不明の状態のまま救急搬送されました。

怪我をするというだけで,精神的,肉体的に非常につらい思いをすることはむろんですが,Dさんには,さらなる試練が待ち受けていました。




Dさんは頭部を強打したことにより,脳組織の一部が損傷し,高次脳機能障害と診断されたことです。脳は,ひとたび壊れると再生しないというのが,現代医学における見解です。

つまり,Dさんの怪我は,痛みがあるなしにかかわらず,生きている限り完治する見込みがないのです。一般に治る見込みがない怪我は,後遺障害,後遺症などと呼ばれます。

足が不自由で歩行に支障をきたすような場合は,はたからみても、その人に障害があることがわかります。しかし,外見からは異常が認められないのが,高次脳機能障害の特徴です。

頭に打撲傷を受けた当時は,多少の擦過傷や出血などの外傷が認められることもありますが,やがて外傷が治れば,怪我などしていない健康な人のように見えるのです。




Dさんは,怪我の影響で記憶障害を発症し,仕事を辞めざるを得なくなりました。










◆次の難関は保険会社との交渉


完治しない病気であるにもかかわらず,見た目は健康そのもの・・高次脳機能障害になったDさんは,後遺障害があることを証明するために,非常な苦労をすることになりました。

Dさんは,人身事故の被害者として自動車保険会社の担当者と示談交渉をすることになりましたが,後遺障害を認めてもらうことがどれほど大変かということは,当事者になって初めてわかることだと思いました。




交通事故で被害者になり,相手方が任意自動車保険に加入している場合,治療にめどがついたら示談交渉を開始します。

しかし,Dさんは完治の見込みがない高次脳機能障害なので,完治を目標に治療を続けることは不可能です。

Dさんは,後遺障害の認定を受け,後遺障害が認められ,後遺障害等級を確定させることにより,障害等級に応じた損害賠償金を加害者に請求するつもりでした。

しかし,保険会社は,高次脳機能障害について否定的で,「後遺障害があると主張しているが,普通に生活している」「日常会話が滞りなくできるのに記憶障害があるとは思えない」などと,Dさんの高次脳機能障害についてことごとく反論してきます。










◆後遺障害をみとめてもらう最短・最速の方法 それは


Dさんは,自分だけで保険会社と交渉することに限界を感じ,高次脳機能障害に対する無理解に怒りを覚え,加害者との交渉を弁護士に一任することにしました。

弁護士費用は発生するものの,精神的な安堵感と交渉に費やす時間のロスを考えれば,計り知れないメリットがあります。

Dさんが全権委任した弁護士は,その後,粘り強く保険会社と交渉して,Dさんが予想していた金額を大きく上回る損害賠償金を保険会社が支払うことで和解が成立しました。

Dさんは、受け取った保険金を生活費に充てながら,社会復帰を念頭に高次脳機能障害のリハビリに専念しています。




▼参考記事
・交通事故と示談交渉のポイントについて
・弁護士に相談,依頼することのメリットを改めて考えてみると
・交通事故で怪我をした場合,いつ弁護士に相談すべきか?
・絶対失敗しない事務所の選び方




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故が原因で,高次脳機能障害になった夫と上手く会話するコツはありますか?

2017年08月01日
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交通事故が原因で,高次脳機能障害になった夫と上手く会話するコツはありますか?

高次脳機能障害の家族による理不尽な言動に困らされても,いったんは相手を肯定した上でさりげなくこちらの意見を伝えることで,人格を尊重しつつ感情爆発を防げます。




 高次脳機能障害患者と家族 


◆今までどおりの会話は通じない


夫が交通事故で頭を激しく打ったことが原因で,高次脳機能障害になりました。

それまで高次脳機能障害という病名を聞いたことがなかったので,とりあえず脳に関する病気だということだけはわかりましたが,それ以外のことは医師の説明を聞いてもなかなか理解できませんでした。




でも,一つだけはっきりしていることがありました。
それは,高次脳機能障害になる前となった後で,夫のふるまいやしゃべり方がガラッと変わったことです。

あまり無駄口を聞かず,必要なことだけしゃべっていたのに,交通事故に遭ってからというもの,やたらとペラペラしゃべります。しかも,話題が次から次へと変わって付いていくのが大変です。

その上,会話に疲れて私が黙り込むと,無視されたと怒り出すので,相手をするのが大変です。
かといって,私が問いかけると,質問に対してほとんど何も考えずに適当な答えをするのです。




後になって,これらの症状は高次脳機能障害に特有な感情の障害で,原因は前頭葉の損傷によるものだと判明しました。

夫の人格が激変したのではなく,前頭葉に傷が付いたので以前と性格が変わったのだと思うようにして,夫の今の人格を受け入れるように努めました。







◆高次脳機能障害患者の家族は心理学の達人


私が特に気を付けたのは,夫の言動に対して真向から否定的な態度を取らないということです。

何をしゃべってるのかわからないとか,話し方がおかしいよなどと,夫がすることを否定すると夫の感情が高ぶって,さらにおかしな行動を誘発しかねないということが,私が失敗を重ねた上に学んだ教訓です。

そうだね,その通りだね。と相づちを打って相手を肯定する。その後で,それならこういう考えもあるね,質問に対する答えをもっと聞かせてほしいなどと,会話をより深めていくよう努めます。

相手の言動を否定しないことで,激しい感情の起伏が起きるのを防ぐように努めたのです。




これは心理学の応用だそうですが,高次脳機能障害患者の家族は,毎日のように心理学を実践していると言えるかもしれませんね。

むろん,私もごく普通の人間ですから,時には夫の理不尽なものの言いように腹が立つこともあります。そういう時は,10・9・8・・と1まで逆に数えることで自分の気持ちをなだめました。

これは、夫が入院している時にリハビリテーションを担当していたセラピストから教わったテクニックです。

ささやかな体験ですが、高次脳機能障害がご家族にいる方の参考になれば幸いです。




▼参考記事
・高次脳機能障害と家族の会
・高次脳機能障害の後遺障害の認定基準
・高次脳機能障害を負われた方の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で高次脳機能障害を発症しました。急性期のリハビリテーションが重要と言われましたが,なぜですか?

2017年07月31日
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交通事故で高次脳機能障害を発症しました。急性期のリハビリテーションが重要と言われましたが,なぜですか?

高次脳機能障害は発病直後がもっとも症状が重いという特徴がありますが,可能な限り早い時期に適切なリハビリテーションを始めることで,症状の改善が期待できます。




 高次脳機能障害:急性期 



◆一番具合が悪いのはいつ?


高次脳機能障害は,交通事故などで頭部に強い衝撃を受けて脳の組織が傷つけられたことで発症する病気で,発病の原因となった強い衝撃を受けた直後が,もっとも症状が重いという特徴があります。


がんのような病気は,がん細胞が増殖し,そのままにしておけば症状が進行して悪化します。

それと比較すると,高次脳機能障害は「病気になった時が一番悪いときで,その後は安定した状態に向かう病気」なのです。




高次脳機能障害にかかったら,一生病気と付き合わなければならないと,暗い気持ちでいるとしたら,気持ちを切り替えましょう。

今より悪くはならない,いや,むしろ症状が改善する可能性がある病気なのだと思えば,これまでよりも高次脳機能障害の治療に対して,より積極的な気持ちを持てるのではないでしょうか?

昨日より今日,今日より明日は症状が良くなっていく・・そう思えば,徐々に体を蝕む病気になったのとは違うのだという希望を持つことができるでしょう。

もっとも,漠然と日々過ごしているだけで回復に向かうわけではありません。
高次脳機能障害になったにもかかわらず,症状が改善して社会復帰できた人には,ある一つの共通点があります。







◆できるだけ早い時期にリハビリテーションを始める


頭を打ったら,体を動かさず安静にすることと教わりませんでしたか?でも,頭を打ったことが原因で高次脳機能障害になった人は,考え方を変えてください。

高次脳機能障害は,可能な限り早い時期にリハビリテーションを開始した方が,より速やかな回復が期待できるのです。


入院して間もない時期は病名を受け入れることすら辛く,リハビリテーションプログラムを組まれても,参加する意欲がわかないかもしれません。しかし,早い時期に無理のないリハビリテーションをすることで,高次脳機能障害の症状が緩和されるというのが、専門家の意見です。

怪我をしたから,病気だからと,安静にして何もしないでいると,脳への刺激が少なくなり,損傷した脳が行っていた活動を補おうとする他の部位の活動が不活発になります。




健康な人でも,一日中外に出ないで家の中で何もしないでいると,頭がぼうっとしてきたり,十分睡眠を取ったのに眠くなったりするでしょう?

脳は,仕事を見つけて活発に活動するほど,その能力をいかんなく発揮するのです。高次脳機能障害で脳の一部を損傷したとはいえ,脳細胞の大部分は残っていてこれまで通り活動しています。

リハビリテーションは身体に負荷をかける作業で,時として単調で苦痛を伴うことがあるかもしれません。

でも,それを続けていくことで慢性期に入った頃,見違えるほど高次脳機能障害の症状が緩和されている自分に気付くことができるとすれば,リハビリテーションをするモチベーションを持ち続けることができるのではないでしょうか?




▼参考記事
・交通事故問題解決の流れ(治療・リハビリについて)
・高次脳機能障害を負われた方の解決事例
・重度の後遺障害と示談交渉について(よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

高次脳機能障害の治療と交通事故の話し合いを両立させるのは大変なのでしょうか?

2017年07月28日
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高次脳機能障害の治療と,交通事故の話し合いを両立させるのは大変なのでしょうか?

交通事故で高次脳機能障害になった人が,病気の治療をしながら加害者と話し合いをするのは精神的な負担が多いですが,弁護士を委任すれば加害者との交渉を任せられます。




 高次脳機能障害:治療をしながら相手と交渉 



◆あれもこれも,,,やることが一杯の交通事故被害者


独身で一人暮らしの38歳OLです。
仕事に生きがいを感じている今の生活に満足していました,交通事故に遭うまでは・・。

休日にスポーツジムに行こうと近所の住宅道路を歩いていたら,ハンドル操作を誤った車にはねられて激しく転びました。



頭を強く打ったので救急病院で検査を受け,そのまま入しました。

集中治療室で治療を受ける間は,私物は不要ですが,3日後に一般病棟に移ってからは,入院に必要なこまごまとしたものを揃えるのに苦労しました。パジャマや着替え,タオル,洗面具などの用意は自分でしなければなりません。

一人暮らしなので家族に家から持ってきてもらうこともできず,気安く頼み事をできる友達もいません。結局,会社の同僚に家の鍵を預けて必要なものを持ってきてもらったり,買い物を頼みました。




人間,一人で生きているような気がしても,必ず誰かの世話になったり互いに助け合って暮らしているのですね,一人暮らしの不自由さが今回ほど身に染みたことはありません。







◆保険会社との話し合いがストレスに


頭部のCTスキャンをしたところ,損傷が疑われる箇所があったので,MRIでさらに精密な画像を撮影した結果,高次脳機能障害と診断されました。

ごく一般的な知識ですが,いったん壊れた脳細胞は再生しないので,脳を傷つけると一生そのままで,傷付いた脳が行っていた機能は失われてしまうと聞いていました。

いつまで入院すれば良いのか,退院後の生活は・・?これからのことを考えると暗澹とした気持ちになりました。




入院費用は,事故の被害者ということで健康保険を使わないため自分のお金を使わなくて良いのですが,加害者が加入していた自動車保険の事故担当者から,何度も連絡があることも精神的に疲れました。

どうやら保険会社は,できるだけ早く示談交渉を始めたいようなのです。でも,私は病気が治っていないし,治療費は今後もかかります。どこかの時点で賠償金額を決めたあとでさらに高額な治療費がかかったらと思うと,示談に応じる気にはなれません。

家族がいればこういう時に相談できるのでしょうが,相談相手がいないというのは本当に心細いものです。







◆治療に専念してくださいと弁護士に励まされ


一人で加害者と交渉しながら,高次脳機能障害の治療を続けることにほとほと疲れた私は,「私の代わりに弁護士に交渉してもらったら楽になるのでは」と思い立ちました。

なにもかも一人でやるのはもう限界です。

病室でタブレットを使って見つけた,高次脳機能障害に詳しい弁護士とメールでやり取りした結果,病室に会いに来てくれることになりました。その後,正式に委任契約を結び,事故の加害者との交渉はすべて弁護士が行うことになりました。

弁護士から「治療に専念するのがあなたの仕事,一日も早く健康を取り戻してください」という言葉に救われました。




▼参考記事
・交通事故HP:交通事故問題解決の流れ
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:保険会社の思うツボにはならない!(ストレスなく治療に専念できる環境作り)
・当事務所の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で生活が一変。。まさか自分が高次脳機能障害になるとは,これからどう生活していけば良いのでしょうか?

2017年07月27日
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交通事故で生活が一変。。まさか自分が高次脳機能障害になるとは,これからどう生活していけば良いのでしょうか?

交通事故による高次脳機能障害は,頑張ってリハビリすれば症状を改善することができます。




 高次脳機能障害と向き合う 


◆交通事故で人生のどん底に


28歳の会社員です。
独身ゆえの身軽さで,仕事が休みの日は仲間とオートバイツーリングをしたり,婚約中の彼女とデートしたりして過ごしています。

この春に昇進して係長になり,社長の信頼も厚く,仕事もプライベートも充実した生活を送っていました。




生活が一変したのは,ツーリング中の交通事故です。
山道を走行中,センターラインをはみ出して走ってきた乗用車と衝突,オートバイから投げ出されて全身を強く打ち、そのまま救急搬送されました。

自分としては,治療のために入院している間,会社の仕事が滞ることが心配でした。
医師から高次脳機能障害という,傷病名を聞かされてもピンときません。手足の骨折のようにギプスをはめるわけではなし,数日したら退院して出社できるだろうと思っていました。




リハビリテーションが始まりましたが,医者は僕の退院を認めません。
僕は道具の使い方がわからなかったり,単語がすぐに出てこず会話がスムーズに行かないなどの症状を指摘されており,もっとリハビリテーションを続けなければ,職場に戻ってから苦労するだろうというのです。

仕事を再開するどころか,退院のめどもたたず,気持ちは落ち込みました。
僕が,歯ブラシの使い方がわからなくて逆さまに持ったり,ハサミを見て,何に使う道具だろうと考えこむのは,典型的な高次脳機能障害の症状だそうです。




なかなか症状が改善しないことに嫌気がさして,リハビリテーションに対する熱意も失せました。







◆高次脳機能障害が治ると知って気持ちが明るくなった


婚約中の彼女が,リハビリテーションをさぼりがちな僕のことを心配して,もっと一生懸命リハビリしなければ病気が治らないと僕のことをとがめます。僕は「不治の病をリハビリで治せるわけがない」と反論し,けんかになりました。




それから1週間してお見舞いに来た彼女は,たくさんの本を抱えていました。
高次脳機能障害が本当に治らない病気かどうか知りたくて,本屋さんで目に付いた医学書をかたっぱしから買って読みあさった結果,彼女は僕の病気が絶対に治ると確信したそうです。

その理由は,脳の壊れた組織はもとには戻らないけれど,訓練によって失われた機能を補うことができる柔軟性を人間の脳は持っているからだと彼女に教えてもらいました。




それからというもの,張り切ってリハビリテーションに励むようになりました。
単調な動作の繰り返し,昨日と同じ訓練・・でも,リハビリテーションにはっきりした目的意識をもっていれば,つらくありません。

彼女と共に高次脳機能障害という病気を理解した結果,誤認や錯語などの症状が改善され,退院して社会復帰するめどが付きました。高次脳機能障害という病気を正しくしり,治ると信じたことが健康回復につながったと思います。




▼参考記事
・解決事例:バイクの交通事故の解決事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:交通事故と生命保険
・解決事例:バイクの交通事故で高次脳機能障害を発症した解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

高次脳機能障害を若年性認知症と誤解されかけました。症状は似ているものなのでしょうか?

2017年07月26日
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高次脳機能障害を若年性認知症と誤解されかけました。症状は似ているものなのでしょうか?

高次脳機能障害は,記憶障害などの症状が現れると若年性認知症と間違われかねないことがあります。頭を打ったら自覚症状がなくても,MRIなどの精密検査を受けましょう。




 高次脳機能障害の症状(若年性認知症) 



◆検査で異常は見つからず,2週間で仕事再開



Rさん(45歳女性)は,仕事一筋で働いてきた独身のキャリアウーマンです。

Rさんは,夏休み中に趣味のロードバイクで走っている時,自転車を追い越したトラックに接触されて転倒し,頭を打って入院しました。

ヘルメットをかぶっていましたが,交通事故で頭に受けた衝撃はかなり強かったため,精密検査を受け入院しました。

しかし,特に目立った症状はなく,理学療法によるリハビリテーションを受ける毎日は単調で,やりかけの仕事が気になってしかたないRさんは,主治医に退院したいと訴え,2週間後に退院を許可されました。




通院によりリハビリテーションを続けることと,少しでも体調がおかしいと感じたらすぐ受診することが,退院の条件でした。






◆仕事でミスが増え再受診


Rさんは,はりきって仕事を再開しましたが,メールの返答忘れ,部下のレポート読み忘れ,回覧の回し忘れなどのうっかりミスが増えたことを,自分でも自覚していました。
ミスに気付くのは,後で同僚や部下から問い合わせがあってからで,業務をこなす自信を失いかけていました。

ある日,給湯室の前を通りかかった時,中の話し声が聞こえてきました。

「Rさん、毎日のように、今日はなん日だっけ?って聞くの」,「そうそう、同じことを何度もたずねるのよね」,「物覚えが悪くなったのは歳のせい?」,「若年性認知症だったりして」


Rさんは,自分が日付をしょっちゅう人に質問していることを意識していなかったのでショックを受けました。

それに加えて,最近増えているケアレスミス・・もしかしたら,自分は本当に若年性認知症なのかもしれないとRさんは思いました。頭を打ったことが原因で若年性認知症になるのだろうか? 




Rさんは不安を抱えて次の週末に病院を訪れました。主治医は,物忘れがひどくなったというRさんの主訴を聞いて,MRI検査を行いました。

その結果,前頭葉に小さな損傷が見つかり,高次脳機能障害による記憶障害と診断されました。
Rさんは,認知症ではないと告げられて,将来に希望を持つことができました。







◆高次脳機能障害による記憶障害に対するちょっとした工夫


Rさんのリハビリテーションを担当する作業療法士さんは,記憶障害によるトラブルを回避する方法をいろいろ提案してくれました。

トラブル回避のカギは,日常生活の決まり事をシンプルにすることだそうです。


たとえば,ビジネスランチは,食事をすることと仕事の話をすると,2つのことを同時に行わなければいけないので,どちらかがおろそかになるか,どちらもきちんとできない可能性がある。

このように,複数の物事を同時に行うような仕事の進め方は避けるようにしましょう。とアドバイスしてくれました。

Rさんは,スマートフォンのカレンダーにスケジュールを書き込み,それぞれアラームを設定して,イベント開始時刻とイベント開始1時間前の2回鳴るようにしました。
デスクのかたわらにスマートフォンを置いているので,うっかり忘れている仕事があってもアラームが鳴って画面を見るとやるべきことを思い出せます。




Rさんの仕事上のミスは激減し,周囲の評価も上々です。
高次脳機能障害と診断された後も仕事に励み,若年性認知症と間違えられそうになったのがウソのように部下の信頼も厚いRさんです。




▼参考記事
・解決事例:自転車の交通事故の解決事例
・高次脳機能障害の解決事例:被害者のリハビリテーションの努力で,症状を改善できた事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:事故後の人生




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故に遭い,高次脳機能障害と診断されました。事故後,認知症に似た症状が現れたりすることはありますか?

2017年07月25日
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交通事故に遭い,高次脳機能障害と診断されました。事故後,認知症に似た症状が現れたりすることはありますか?

前頭葉を損傷して高次脳機能障害になると認知症に似た症状が現れ,物忘れがひどくなったり意欲が低下することがあります。




 高次脳機能障害:認知症に似た症状 



◆自分がしたことを忘れがちになる



Dさん(52歳女性)は,趣味の早朝ウォーキング中に車にぶつかって転び,頭を強く打ちました。

交通事故で頭を打ったので,脳の検査を行った結果,前頭葉に損傷があるということで,高次脳機能障害と診断され入院して,高次脳機能障害の治療をすることになりました。


Dさんは,交通事故の後,性格やふるまいが大きく変わりました。



結婚するまで高校の英語教師をしていたDさんは,知的な女性で読書家でした。しかし,事故に遭って入院してからというもの,活字を読まなくなり,夫が差し入れた本や雑誌にも無関心です。

自分がしたことを忘れがちで,朝食を食べたにも関わらず,まだ朝食が来ないとナースコールを押して看護師を呼び苦情を言う,リハビリテーションの時間は毎日午後2時からと決まっているにも関わらず,毎朝「今日のリハビリは何時からですか?」とたずねるなどします。

医師が「今日は何月何日かわかる?」とたずねても「入院していてわかるわけない」と怒ります。
Dさんは、記憶障害を発症していた
のです。







◆認知症のような症状にとまどう家族


Dさんが入院して1カ月経ったある日,
Dさんの夫が見舞にきて,「きみが親しくしていたお隣りのJさんが来月引越しするそうだよ」と話しました。
すると,DさんはJさんのことをまったく知らない様子で,「Jさんとは誰ですか?」と夫にたずねました。Dさんの夫は,Dさんが認知症になったのではと疑いました。

実は,Dさんの母親が認知症で施設療養しているので,知っているはずのことを知らないと言ったり,同じことを何度も繰り返したずねる症状に覚えがあったのです。




Dさんの夫は,主治医との面談を求め,Dさんが認知症を発症しているのではないかという不安を打ち明けました。

主治医は,脳の前頭葉は,人間が情報処理をして必要な指令を出す,まさに人間の知性の中心部ともいえるところであり,Dさんはその部分を傷つけたことによって,高次脳機能障害を発症し情報処理に問題が起きているが,認知症ではないと説明しました。




リハビリテーションについては,運動や作業療法などによる反復訓練で脳に刺激を与えることにより,脳の他の場所が,損傷した脳の失われた機能を補おうとするという,最新の医学界の見解を教えてくれました。しかも,早い時期から積極的にリハビリテーションをするほど,脳の回復は期待できるのだそうです。

Dさんの夫は,妻が認知症ではなかったことに安堵し,リハビリテーションの効果に期待を持って妻の闘病生活を支えています。




▼参考記事
・解決事例:高次脳機能障害の解決事例(前頭葉底部脳損傷)
・解決事例:歩行者の交通事故の解決事例
・交通事故HP:事故直後・症状固定前から相談可




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故による高次脳機能障害:短期記憶障害でもできる仕事はありますか?

2017年07月24日
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交通事故による高次脳機能障害:短期記憶障害でもできる仕事はありますか?

交通事故による高次脳機能障害で短期記憶障害を発症すると,ついさっき起きたことを覚えられなくなりますが,仕事の内容と周囲の理解により職場復帰が可能です。




 短期記憶障害:仕事復帰 



◆物覚えが悪くなったのは頭を打ったせい?


Gさん(54歳男性)は,早期退職優遇制度を利用して55歳で早期退職して妻と自宅カフェを開業する予定でした。

しかし,Gさんの夢は,Gさんが交通事故に遭ったことで打ち砕かれました。

休日に夫婦で散歩に出かけたところ,見通しの悪い交差点で一旦停止義務を怠り走ってきた自動車にはねられたのです。Gさんの奥さんは軽傷でしたが,Gさんは頭を強く打ち,救急車で病院に運ばれました。


Gさんは,CT検査を受けた結果,下頭頂小葉(かとうちょうしょうよう)の損傷が発見され,高次脳機能障害と診断されました。




入院後,Gさんは物覚えが悪くなったと奥さんから言われました。


たとえば,病院の売店に二人で行き,奥さんが電話をかけたいのでその間にオレンジジュースを買っておいてと頼んだのに,戻ってきたらジュースは買わずスポーツ新聞を買っていました。オレンジジュースを買っていないと奥さんが文句を言うと,Gさんは,そんなことは頼まれていないと言い返すのでした。

Gさんに起きた高次脳機能障害の後遺症は,「記憶障害」でした。
特に,最近おきたばかりの出来事を覚えることができない,短期記憶に障害が起きていました。



Gさんが損傷したことが画像診断で明らかになった下頭頂小葉は,大脳の前頭葉,側頭葉,後頭葉に接している脳の中心部です。下頭頂小葉は,さらに縁上回(えんじょうかい)と角回(かくかい)に分かれていて,このうち、縁上回は短期記憶と密接な影響があり,Gさんは,ついさっき起きたことや聞いたことを覚えられなくなってしまったのです。




医師は,Gさんの奥さんに記憶障害について説明し,物忘れがひどいのは病気のためであることを理解するよう伝えました。







◆記憶障害で職務が果たせない


Gさんは1カ月後に退院し,会社勤めを再開しました。

しかし,復職してすぐ,高次脳機能障害の影響が仕事に現れるようになりました。



Gさんの職務は電話がかかってくることが多く,他の部署や同僚への伝言をメモして回覧するのもGさんの仕事です。ところが,Gさんは電話を受けて話をしているうちに,誰からの電話でどんな要件を受けたのか覚えられず,メモを取ることもできなくなりました。

電話で話している間は,ごく普通に会話できるのに,電話を切ると何をしゃべったか全く覚えていないのです。これでは仕事になりません。




短期記憶障害により,Gさんは現在の業務遂行が困難になりました。Gさんは,上司に高次脳機能障害の後遺症があることと,電話に出なくても良い事務作業を希望しました。その結果,Gさんは退職するまでメールセンターで郵便物の仕分けを担当することになりました。


同僚には,自分から短期記憶障害の説明をして,伝言がある場合はメモでほしいと頼みました。
メモを自分のデスクに貼っておけば,記憶が失われても伝言を再確認できるからです。



会社の理解と協力により,もうじきGさんは定年退職の日を迎えます。




▼参考記事
・解決事例:会社員が高次脳機能障害になり,解決した事例(被害者の努力と勤務先の配慮もあり,減収がある程度抑えられた事例)
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:重度の後遺障害と示談交渉について
・交通事故HP:交通事故と治療Q&A




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故による高次脳機能障害:左半側空間無視とリハビリテーション

2017年07月21日
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交通事故による高次脳機能障害:左半側空間無視とリハビリテーション

交通事故で頭を打ち,左半側空間無視という高次脳機能障害を発症しましたが,視線操作訓練などのリハビリテーションを行った結果,症状が改善して退院しました。




 左半側空間無視 



◆道順が覚えられない


Lさん(男性23歳)は,コンビニに買い物に行くために自転車で家を出て,交差点で自動車とぶつかり,頭を強く打って病院に運ばれました。


Lさんとその家族は,脳の画像診断を見せられて脳の一部が傷付いたことによる病気,高次脳機能障害を発症していると告げられました。



やがて,Lさんの家族はLさんの様子が交通事故に遭う前とは違うことに気付きました。

家族が面会に行くと,病室から団らん室に行きますが,団らん室は病室を出て廊下を左に曲がって15mほど行った左側にありますが,いつまでたっても団らん室への道順を覚えられないのです。病室を出ると廊下を右に曲がって,廊下を果てしなく歩き,すれ違った看護師さんが気づいて呼び止められるなどの問題が起きていたのです。

これは「道順障害」と呼ばれる脳の右半球の一部が傷付いたために起こる,高次脳機能障害の一種だったのです。




Lさんは,体の左側にあるものを無視するようになりましたが,これは右半球を損傷したことによる「左半側(はんそく)空間無視」と言う後遺症と診断されました。

Lさんは,左側に置かれた食べ物を食べ残し,新聞は右側のページしか読もうとしませんでした。
左半側空間無視により,病室を出て左側にある廊下を認知できないため,廊下を左に曲がるべきところを右に曲がってしまうので,道順障害が強く現れていました。

Lさんは,当面入院してリハビリテーションに専念することになりました。







◆リハビリテーションで症状の緩和を実感


LさんとLさんの家族は,はじめはリハビリテーションの効果について懐疑的でした。
というのは,医師から「高次脳機能障害は治らない病気」という説明を受けていたからです。

まだ20代のLさんにとって,病気が完治するかしないかは,これからの人生に大きな影響をもたらします。病気が完全に治るのなら頑張ってリハビリテーションに励むけれど,どうせ治らないのなら長期入院するよりも,早く家に戻りたいとLさんは思うのでした。




リハビリテーションスタッフは,リハビリテーションを行うことで,後遺症が完全に消えることはなくても,症状の改善が期待できること,たとえ後遺症が残っても,その症状に対してどう対処するか方法を覚えることができると,Lさんに説明してくれました。

Lさんは,理学療法士や作業療法士とリハビリテーションを開始しました。




左半側空間無視に対しては,視覚走査訓練,左側に置いたものを右側に移動するなどの作業を繰り返し行いました。「右側にエレベーターがあるから,ここを左に曲がって売店に行く」というように,声を出して自分の行動を確認するで,左側の空間を認識できないことを補いました。

道順が覚えられない道順障害は,左半側空間無視と密接な関係にあるので,左側の空間に対する注意喚起を行うリハビリテーションを繰り返し行いました。

リハビリテーションを繰り返し行った結果,道順障害の症状も徐々に緩和されていき,3カ月後,Lさんは無事退院しました。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:後遺障害認定から逆算して治療中からのフォローが大事な理由
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:膨大な過去事例の集積
解決事例:高次脳機能障害を負われた方の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で高次脳機能障害になったことに気が付くまで

2017年07月20日
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交通事故で高次脳機能障害になったことに気が付くまで

交通事故で頭を打ったので検査を受けても何ともなかったのに,やがて物忘れがひどくなり,1カ月後に再検査をしたところ,高次脳機能障害と診断されました。




 高次脳機能障害に気が付くまで,,, 



◆はじめは頭を打っただけだと思っていた



Pさん(男性35歳)は,休日に近所に買い物に出かけた折に,信号無視の車にはねられて転倒し,舗装道路に頭を激しくぶつけました。

意識ははっきりしており目立った外傷もありませんでしたが,打ったところが頭ということで念のために病院に行って診察をしてもらいました。


病院では,Pさんの頭部のレントゲン撮影とCT検査を行い高次脳機能障害の発病を疑うような異常な所見はないと診断されました。

Pさんは,念のために1カ月後にもう一度検査をすることと,体調に異変を感じたらすぐ受診するようにと言われ,帰宅しました。

Pさんは,会社の中間管理職で,仕事は多忙を極めています。
交通事故に遭った次の日,体調はいつも通りですし頭痛もしないので,いつも通り出社しました。







◆仕事のミスが増え,物忘れが目立つ


Pさんの仕事にミスが目立つようになったことに上司が気づいたのは,事故で頭を打って2週間後のことでした。

部内ミーティングがあることを忘れていて遅刻,レポート提出期限に気付かず準備をしていないなど,仕事の基本を守れないようになったのです。

これでは,中間管理職として部下を指導する立場として問題です。
上司はPさんを厳しく叱責しました。




一方,Pさんの奥さんも最近Pさんの物忘れがひどくなったことに気付いていました。
しかし,「あの人は昔からうっかり屋さんで,約束したことを忘れるのは今に始まったことではないから」と,さほど気にかけていませんでした。







◆致命的な仕事のミス,そして再受診


Pさんが仕事で大きなミスをしたのは,頭を打ってちょうど3週間後のことでした。

大きな商談がまとまる予定の日,得意先を午後2時に訪問する予定でしたが,Pさんは訪問予定を忘れ,別の得意先回りをしに出かけてしまったのです。約束の時間になってもPさんが現れないことに怒った得意先は,商談をなかったことにすると言い出し,会社は大混乱になりました。

ひたすら頭を下げて謝るPさんは,ようやく自分の物忘れが尋常ではないことを自覚しました。

そう言えば,病院を1カ月後に再受診するように言われていた・・Pさんは,再検査の必要性を感じ,翌日休暇を取って救急搬送された同じ病院で,頭部の再検査を受けました。




医師に物忘れがひどくなったこと,仕事でミスが多くなったことを伝えると,精密検査を勧められ,MRI検査の予約をしました。
翌週,
頭部のMRIの撮影をして,専門医が画像を診断したところ,脳の一部が損傷して高次脳機能障害を起こしていることが明らかになりました。

Pさんは会社に診断書を提出し,定期的にリハビリテーションに通っています。
病気の影響による仕事の誤りに対して会社が理解を示してくれたおかげで,Pさんは仕事と治療を両立させています。

あのまま再検査を受けずにいたら,高次脳機能障害を発症していることに気付かず,病気が進んでいただろう・・Pさんは,頭を打ったあとの再検査がいかに重要か痛感しました。




▼参考記事
・解決事例:高次脳機能障害を負われた方の解決事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:高次脳機能障害と家族の会
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:画像読影について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)
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