交通事故の加害者が逃げてしまいました。加害者が誰であるか分かりません。何か方法はありますか?

2018年01月23日
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交通事故の加害者が逃げてしまいました。加害者が誰であるか分かりません。何か方法はありますか?

加害者が逃げて相手を特定出来ない場合,被害者が加入している自動車保険において,人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険,無保険車保険の適用を受け,保険金を受けとることができます。  また,そういった保険に加入していない場合や適用を受けられない場合,政府保障事業による支払を受けることも可能です。




 交通事故で加害者不明の場合



◆人身傷害補償保険,搭乗者傷害保険




通常,交通事故が起こったら,加害者に対して損害賠償請求をすることができます。

加害者が保険に入っていたら加害者の保険会社から賠償金が支払われますし,保険に加入していないケースでは,原則どおり,加害者本人が賠償義務を負います。

しかし,ひき逃げ事故の場合には,加害者を特定できないので,加害者の保険会社からも加害者本人からも賠償金の支払が行われません。




このようなとき,被害者自身が人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険に加入していたら,これらの保険から保険金を受けとることができます。

人身傷害補償保険も搭乗者傷害保険も,契約自動車に乗車していて事故に遭い,ケガをしたときに,自分が加入している自動車保険会社から保険金の支払を受けられる保険です。

契約自動車以外の別の自動車に乗車していた場合や,歩行中の事故であっても適用されるケースもあります。
ひき逃げ事故に遭ったら,まずはこうした保険の適用がないか,保険会社に問い合わせてみましょう。







◆無保険車傷害保険




ひき逃げ事故に遭ったときには,無保険車傷害保険という保険の適用を受けることもできます。

無保険車保険とは,交通事故の相手が任意保険に加入していなかったり,任意保険が適用されなかったりするケースで,自分の保険会社から損害賠償金に相当する金額の保険金を受けられるものです。

ただし,後遺障害が残った場合または死亡した場合に限られます。限度額は2億円となっており,特に大きな事故に遭った場合には助かります。

無保険車傷害保険にも,契約自動車に乗車中の場合のみ適用されるものもありますし,他の車両に乗車中のケースや歩行中の事故にも適用されるものもあります。







◆政府保障事業




記のような保険が適用されない場合には,「政府保障事業」によって,最低限の救済を受けることができます。

政府保障事業とは,ひき逃げや相手が自賠責保険にも加入していないケースにおいて,被害者に最低限度の救済を行うことを目的とした制度です。

申請をすれば,自賠責保険と同基準の「てん補金」というお金を受けとることができます。
お近くの損害保険会社が窓口になっています。


ひき逃げ事故に遭うと,十分な保障を受けられないのではないかと不安になるものです。
適切な対応方法がわからない場合,弁護士がアドバイスをいたしますので,お気軽にご相談ください。




▼参考記事
・警察や相手方との対応
・後遺症と保険について
・当事務所の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,完全看護体制の病院に入院しました。入院付添費は損害として認められないのでしょうか?

2018年01月22日
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交通事故に遭い,完全看護体制の病院に入院しました。入院付添費は損害として認められないのでしょうか?

完全看護体制の病院の場合,入院付添費が認められないことがありますが,認められる例もあるので,個別のケースによる検討が必要です。




 入院付添費 



◆入院付添費とは




交通事故の受傷が原因で入院をした場合には,入院付添費という費用を請求することができます。

入院付添費とは,親族が被害者に付き添って看護をしたときに認められる費用です。

弁護士基準の場合,入院1日について6500円程度となります。

入院すると,基本的に,入院した日数分の付添看護費用を支払ってもらうことができます。







◆完全看護体制の場合の入院付添費




ただ,入院先が完全看護体制の場合,入院付添費が認められない可能性があります。

完全看護体制ということは,病院の看護師が完全に看護をしてくれるということです。
それであれば,通常親族による看護が不要となります。

そこで,親族が看護をしても,入院付添費を認めないという扱いになります。

実際に,完全看護体制の病院に入院したケースで入院付添費を否定した裁判例もあります。
保険会社と示談交渉をするときにも,多くのケースで入院付添費の支払は拒絶されるでしょう。







◆完全看護体制でも入院付添費が認められるケース




ただし,完全看護体制だからといって,一律に入院付添費が否定されるとは限りません。

看護師がついているといっても,24時間ずっと付き添っているというわけにもいきませんし,被害者が寝たきりでほとんど動けないケースなどでは,親族による看護が必要になると言えるからです。




裁判例でも,完全看護体制の病院に入院していたケースで,入院付添費を認めているものがあります。傾向として,以下のようなケースでは,完全看護体制でも入院付添費を認めてもらいやすいです。

・被害者が低年齢(幼児や児童)
・被害者が高齢者
・被害者の怪我が重傷,危篤状態が続いている
・被害者が寝たきりなど,自力でほとんど何もすることができない



保険会社が入院付添費の支払いを否定してきても,あきらめる必要はありません。

完全看護体制の病院に入院しているときに,入院付添費を認めさせるためには,親族が具体的にどのような看護活動をしたのか,きっちり証明する必要があります。

また,親族による看護の必要性も,詳しく説明しなければなりません。
自主的に看護日誌を作って,日々の看護活動の内容を,きちんと書き留めておくようにしましょう。




このように,交通事故では,被害者本人だけではなく,看護を行う親族としても注意しておくべき点がいろいろとあるものです。適切な対応ができているか不安があるなら,お気軽に弁護士までご相談ください。




▼参考記事
・主婦の入通院付添費は,どのように計算されますか?
・入院付添費について(裁判基準)
・被害者が未成年で入院付添費,通院付添費を保険会社と争い,具体的な立証をし,請求額全額が賠償金として認められた解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の労災保険の障害認定手続について教えてください。不服があるときはどうしたらよいですか?

2018年01月19日
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交通事故の労災保険の障害認定手続について教えてください。不服があるときはどうしたらよいですか?

交通事故が労災になる場合には,労働基準監督署で,労災認定の申請を行いましょう。認定結果に不服がある場合には,都道府県の労災保険審査官や東京の労災保険審査会に不服申立てをすることができます。それでも認定が覆らない場合には,行政訴訟によって争うことが可能です。




 労災保険の障害認定手続



◆交通事故が労災になるケース




交通事故が,労災になるケースがあります。

たとえば,業務中に交通事故に遭ったり,通勤中に交通事故に遭ったりした場合です。

この場合,労災保険から給付金を受けとることができます。

労災保険にも,後遺障害の認定手続があります。交通事故の自賠責保険と同様の基準で,1級から14級までの等級があり,認定されるとそれぞれ労災給付を受けることができます。

後遺障害認定を受けるためには,労働基準監督署に対し,障害認定の請求を行います。







◆労災認定に対する不服申立の方法




しかし,労災で後遺障害の認定請求をしても,必ずしも認定を受けられるとは限りません。
その場合,不服申立ての手続が用意されています。




(1)審査請求

まずは,「審査請求」という手続があります。
審査請求は,都道府県ごとにもうけられている,労災保険審査官に対して行います。

口頭または文書にて申請することが可能ですが,通常は文書によって申立を行います。
審査請求ができる期間は,不認定の通知を受けとってから3ヶ月以内です。




(2)再審査請求

審査請求をしても,やはり認定を受けられないことがあります。その場合には,「再審査請求」をすることができます。

再審査請求は,文書で行うべきとされています。また,不認定の結果を受けとってから2ヶ月以内に,東京の労働保険審査会に対して行う必要があります。

再審査請求があると,労働保険審査会は,公開にて審理を開催します。審理には,当事者や代理人が出席して,意見を述べることが可能です。有利な認定を得るためには,しっかりと準備をして臨む必要があります。




(3)行政訴訟

また,審査請求や再審査請求をしても,労災認定を受けられない場合には,行政訴訟を起こし裁判所に判断をしてもらうこともできます。

行政訴訟を起こすときには,争いの対象にする審査請求や再審査請求の決定があってから6か月以内の間に,「労災不認定処分の取消訴訟」を提起します。




交通事故で後遺障害が残ると,日常生活でも仕事でも大きな支障が発生するため,労災でもきちんと後遺障害認定を受けるべき場合があります。弁護士に相談してみて下さい。




▼参考記事
・労災と自賠責で後遺障害等級が異なることはありますか。
・通勤中の交通事故にあった被害者が労災保険を使い,裁判を行わず裁判基準に近い水準で解決した事例
・後遺障害認定結果と不服の申立て談




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

自営業ですが,確定申告をしていませんでした。交通事故に遭った場合,逸失利益を請求することはできないのですか?

2018年01月18日
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自営業ですが,確定申告をしていませんでした。交通事故に遭った場合,逸失利益を請求することはできないのですか?

その場合,実際には収入があったことを確定申告書以外の資料で証明すれば,逸失利益を請求できる可能性があります。




  自営業 : 逸失利益




◆自営業者の基本的な逸失利益計算方法




交通事故で後遺障害が残ったら,労働能力喪失率に応じて逸失利益を請求することができます。

自営業者の場合にも,事故前に収入があったのですから,逸失利益が発生します。




一般的なケースでは,事故の前年度の確定申告書の記載にもとづいて,基礎収入を算定し,逸失利益を計算します。

ところが,確定申告をしていない場合,この方法によって基礎収入を算出することができなくなってしまいます。







◆確定申告していない場合の考え方




確定申告をしていない場合,自営業者には逸失利益が認められないのでしょうか?

この点,法律上では,たとえ確定申告をしていないとしても,実際に働いて収入を得ていたのであれば,逸失利益が認められるべきであると考えられています。

そこで,本当に働いて収入を得ていたことを確定申告書以外の方法で証明できれば,逸失利益が認められる可能性があります。

確定申告していない自営業者の場合,基礎収入の金額は,平均賃金を基本として,それを何割か減じた数値にすることが多いです。具体的に何割減じるかについては,事業内容や収入の立証の程度などに応じて,ケースバイケースで決定します。







◆確定申告していない場合の立証方法




確定申告をしていない場合,平均賃金の数割減にして逸失利益が認められることがあるのは事実ですが,簡単には認められません。

そもそも確定申告書という資料がないわけですから,それとは別の方法で,実際に収入があったことを証明する必要があります。

このとき,入金のあった通帳のみを提出する方がいますが,それだけでは不十分です。
個人事業を営む場合,売上げだけではなく経費もかかっているはずだからです。

逸失利益を請求するためには,きちんと会計帳簿などを提出する必要があり,日々の収入と経費をこと細かに立証していくことを求められるでしょう。

また,確定申告していない場合,経費についても「過少申告しているのではないか?」という疑いの目で見られることがあり,認定が厳しくなる傾向もあります。




以上のように,確定申告をしていなくても,自営業者の逸失利益が認められる可能性はありますが,その判断は厳しくなることが多いです。確定申告をして税金を納めるのは国民の義務ですから,日頃からきちんと会計処理をして,申告と納税をしておきましょう。

交通事故に遭ったときに,確定申告していないので逸失利益を請求できない状態になってしまったら,弁護士のサポートにより結論が変わるかもしれません。一度ご相談に来て下さい。




▼参考記事
・逸失利益・事業所得者について(裁判基準)
・自営業の被害者の損害額を計算する際に,収入金額に固定経費等の金額を加えて基礎収入金額を算定するなどの工夫をし,裁判基準に近い水準で解決した事例
・逸失利益の計算について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故での紛争処理機構の手続きについて教えてください。

2018年01月17日
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交通事故での紛争処理機構の手続きについて教えてください。

紛争処理機構とは,「一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構」のことです。自賠責保険や共済についてのADR機関です。自賠責による決定に不服がある場合,紛争処理機構を利用して,決定内容を変更させることができる可能性があります。




 紛争処理機構



◆自賠責保険・共済紛争処理機構とは




自賠責保険・共済紛争処理機構とは,自賠責保険や共済がした決定内容についてのトラブルを解決するための機関です。

自賠責保険や自賠責共済に対し,保険金や共済金の請求をしたときに,行われた決定に対して不服があるなら,利用することができます。




紛争処理機構に申立をすることができるのは,以下のようなケースです。

・自賠責保険や自賠責共済が,保険支払を拒絶したケース
・重過失減額されたが,不満があるケース
・後遺障害の認定が行われなかったケース
・後遺障害の等級に不服があるケース場合
・任意保険が事前認定を行ったが,結果に不満があるケース


自賠責紛争処理機に持ち込むことができるのは,自賠責保険や共済がした決定に対する不服の事案に限られます。何の決定も行われていない状態で,いきなり自賠責紛争処理機構に決定を求めることはできません。

実際には,自賠責紛争処理機構が利用されている件数の9割近くが後遺障害に関するものです。被害者請求のケースでも事前認定のケースでも利用できます。

そこで,後遺障害の等級認定請求や異議申立をしても,納得のいく結果が出なかった場合には,紛争処理機構の利用が有効となる可能性があります。







◆自賠責保険・共済紛争処理機構の手続き




自賠責保険・共済紛争処理機構の手続きを利用したいときには,まずは申請書を作成して,紛争処理機構に提出します。すると「調停」が始まります。

ただ,自賠責紛争処理機構の「調停」は,裁判所などの「調停」とは異なり,話合いの手続きではありません。

基本的に書面審査となり,当事者が期日に出席して意見を述べたり,何らかの主張や立証活動を行ったりすることもありません。話合いのあっせん手続もありません。

当事者が提出した書類内容にもとづいて,紛争処理委員会が「裁定」という決定を下します。




自賠責保険や共済は,紛争処理機構が出した裁定結果に拘束されますが,申立人である被害者は拘束を受けません。不服があるなら,裁判で争うことも可能です。




また,自賠責紛争処理機構の利用は一回切りです。再度,紛争処理申請をすることはできません。

紛争処理機構の利用料は無料ですから,後遺障害等級認定に不満がある場合などには,利用してみるのも一つの方法です。ただし,最後の手段ですから,慎重に検討する必要があります。

当事務所でも,紛争処理機構の利用をサポートしていますので,是非とも一度,ご相談ください。




▼参考記事
・会社役員の交通事故で後遺障害逸失利益での合意ができず,紛争処理センターを利用した結果,人身傷害保険金のほか,約970万円を獲得した事例
・示談交渉のポイント
・後遺障害等級認定の異議申立て




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

開業準備中に交通事故に遭いました。休業損害や後遺障害逸失利益における基礎収入はどう考えればよいですか?

2018年01月16日
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開業準備中に交通事故に遭いました。休業損害や後遺障害逸失利益における基礎収入はどう考えればよいですか?

開業準備中の場合,開業の蓋然性や被害者の年齢,これまでの経歴,事故前の実際の収入などを参考にして,平均賃金などを基準に,基礎収入を算定します。




 開業準備中の交通事故 : 休業損害と後遺障害逸失利益



◆開業準備中の個人事業者にも,休業損害や逸失利益が認められる




交通事故に遭うと,治療のために仕事を休まなければならないケースがあります。

その場合,休業損害が発生します。また,事故の受傷によって後遺障害が残ると,その影響によって労働能力が低下するので,後遺障害逸失利益が発生します。

これらの休業損害や後遺障害逸失利益は,被害者が,事故前に収入を得ていたことが前提となる損害です。




仕事をしていない人の場合には,休業しても損害は発生しませんし,労働能力が低下しても,逸失利益が発生しないためです。

しかし,被害者が個人事業者として開業準備中に交通事故で怪我をしたというケースがあります。

この場合,まだ実際には収入を得ていませんが,交通事故がなかったら無事に事業を開業して,収入を得ていたはずですから,休業損害や逸失利益が認められる余地があります。

開業準備中の休業損害や逸失利益が認められるためには,開業をしていた蓋然性が高いことが必要です。

たとえば事業所を借りたり備品を購入したり,広告を作成したりしていたなど,開業準備を相当具体的に行っていたことを証明する必要があります。







◆開業準備中の場合の基礎収入




次に,開業準備中の場合,被害者の基礎収入をどのように計算すべきかが問題となります。

既に開業して実績のある個人事業者の場合には,前年度の確定申告書をもとに収入額を明らかにすることができますが,開業準備中の場合,そうした資料もありません。まだ実際に収入を得ていないので,売上げや経費に関する帳簿などの資料も存在しないためです。




このようなケースでは,被害者の年齢や開業する事業内容,これまでの職歴,過去の実際の収入状況などを参考にして,平均賃金をもとに,基礎収入を決定することができます。

たとえば東京地裁平成21年11月12日では,そば屋の開業を準備していた被害者の事案でしたが,被害者がこれまでそば屋の従業員として10年以上働いてきたという事情や被害者が具体的に開業準備を進めていたこと,被害者の実際の前年度や前々年度などの給与所得額などをもとに,平均賃金の7割程度の収入を,基礎収入として算定しています。




以上のように,開業準備中の休業損害や逸失利益については,認められないケースもありますし,認められるとしても,基礎収入の算定が困難です。

自分で対応していても,適切な賠償を受けにくいので,困ったときには交通事故に強い弁護士にご相談下さい。




▼参考記事
・失業中に交通事故に遭った被害者,労働意欲・就労の蓋然性があったとして4か月分の休業損害が認められた解決事例
・休業損害・逸失利益について
・逸失利益の算定について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故での減収がなくても,後遺障害逸失利益が損害として認められますか?

2018年01月15日
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交通事故での減収がなくても,後遺障害逸失利益が損害として認められますか?

実際の減収がなくても,減収が発生しないように本人が特別の努力をしているケースや,将来における不利益が予想されるケースなどでは,後遺障害逸失利益が認められる可能性があります。




 減収がない場合の後遺障害逸失利益



◆減収がないと,後遺障害逸失利益は認められないことが原則




後遺障害逸失利益とは,交通事故の受傷によって後遺障害が残ったときに,労働能力が低下することにより,得られなくなってしまった将来の収入のことです。

後遺障害が残ると,身体のいろいろな箇所に不調が発生するので,労働能力が低下します。
それまでとは同じように働けなくなるので,減収が発生するはずです。

その減収分のことを,後遺障害逸失利益といいます。




ところが,ケースによっては,後遺障害が残っても,減収が発生しないことがあります。

たとえば,会社員や公務員,会社役員などの場合,「労働能力が低下して仕事内容が変わっても,給料は同じ」ということも多いです。

このような場合,加害者側の保険会社からは,後遺障害逸失利益を否定されることがよくあります。

最高裁も,昭和42年11月10日の判決において,「後遺障害逸失利益は,実際の減収を前提とする」という判断をしています。







◆減収がなくても,後遺障害逸失利益が認められるケース




しかしその後,最高裁において,上記の判断に追加的な修正が加えられています。

最判昭和56年12月22日においては,後遺障害逸失利益が減収を前提とすることを踏襲しつつも,「後遺症が,被害者に経済的不利益を与えるといえる特段の事情」がある場合には,後遺障害逸失利益を認めると判断しているからです




このような特段の事情が認められるのは,具体的には,以下のようなケースです。



・減収が発生しないように,本人が特別の努力をしている場合(本人の特別の努力がなければ,実際の減収が発生している場合)

・被害者の職業の性質からして,将来の昇給や転職などに際し,不利益を受けるおそれがある場合





これをふまえて,実際の減収がないケースで後遺障害逸失利益を認める判断がたくさん出ています。



たとえば,被害者が公務員のケースで,後遺障害が残っても減給はなかったものの,将来の昇給などが期待できなくなったとして,70%の労働能力喪失を認めたケースがあります(札幌地裁平成7年10月20日)。

また,看護師の女性について,実際に現時点における減収は発生していないけれども,将来にわたって仕事を継続できない可能性があることを考慮して,20%の労働能力喪失を認めたケースもあります(大阪地裁平成11年12月2日)。





以上のように,実際には減収が発生していなくても,後遺障害逸失利益が認められるケースはあります。
相手の保険会社から逸失利益を否定されても,あきらめずにまずは弁護士にご相談下さい。




▼参考記事
・ひとりひとりに合った適切な解決方法をご提案
・逸失利益・基礎収入について(裁判基準)
・当事務所の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で妻が遷延性意識障害になり,私が仕事をやめて在宅介護をしています。私が収入を得られなくなったことについては損害として賠償の対象になりますか?

2018年01月12日
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交通事故で妻が遷延性意識障害になり,私が仕事をやめて在宅介護をしています。私が収入を得られなくなったことについては損害として賠償の対象になりますか?

この場合,近親者の介護費用として日額8000円程度の費用が認められる可能性がありますが,従前の収入からの減収分を,そのまま逸失利益として認められることは難しいです。




 近親者の介護費用 



◆近親者の介護費用について




交通事故で,被害者に介護が必要になったら,介護の費用が発生します。

このとき,近親者が介護を行う場合と,職業介護人が介護を行う場合があり,どちらを選択するかによって,実際に支払う費用が変わってきます。




同じように,交通事故の損害賠償においても,近親者が介護するときと,職業介護人をつけるときとで,介護費用の計算方法が異なります。

近親者が介護をする場合には,日額8000円と基準として計算しますが,職業介護人をつけた場合には,日額1万円〜2万円くらいの金額を認めてもらうことができます。

本件では,介護を行っているのは被害者の夫であり,近親者ですから,介護費用として認められるのは,日額8000円程度となります。







◆介護のために,退職まで必要と判断されることは少ない




しかし,本件のように,夫が仕事を辞めて在宅介護に専念するようになったとき,夫の減収分についてまで,逸失利益ないし休業損害として認めてもらえるのでしょうか?

実際には,このような場合,夫の減収分についての賠償請求は,認められないことが多いです。

なぜなら,まず,夫が会社を退職してまで介護を行う必要性が,裁判所によって認められにくいですし,夫が退職するよりも,職業介護人に依頼した方が良いのではないかと考えられることが多いからです。

そこで,本件でも,夫の減収分が評価されず,日額8000円の介護費用の限度にとどめられる可能性が高いです。







◆認められるとしても,職業介護人の費用を限度とされる可能性が高い




また,夫が退職して介護する必要性が認められたとしても,減収分を全額請求できるというわけではありません。

夫の収入が職業介護人を雇ったときの費用の金額を超える場合には,職業介護人の費用の限度に抑えられてしまうことが考えられます。

減収分が職業介護人の費用を超える場合には,仕事を辞める必要がなく,収入を維持したまま職業介護人を雇えば良かった,と判断されてしまうためです。




この考え方は,近親者が仕事を休んで付添看護をしたときの,近親者の休業損害と同じものです。

ただし,こういったケースでも,どうしても近親者が付添看護をしなければならないという特殊事情がある場合には,実収入を元とした計算方法が認められているので,介護の場合にも,同様の主張が認められるかもしれません。




以上のように,介護費用の考え方には,いろいろと難しい点が多いです。また,比較的新しい問題なので,整理されていないところもあります。

交通事故の後遺障害で介護が必要になったときには,交通事故に強い弁護士にご相談下さい。







▼参考記事
・主婦の入通院付添費は,どのように計算されますか?
・交通事故で遷延性意識障害になった被害者の将来介護費について裁判で争い解決した事例
・将来介護費について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で後遺障害等級3級以下で介護費が賠償の対象となることがありますか? あるとしたら,どのような場合ですか?

2018年01月11日
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交通事故で後遺障害等級3級以下で介護費が賠償の対象となることがありますか?あるとしたら,どのような場合ですか?


3級以下の後遺障害でも,介護費が賠償の対象となることはあります。多いのは高次脳機能障害のケースですが,脊髄損傷やCRPS等の神経症状においても,介護費用が認められる例があります。




 賠償の対象 : 後遺障害等級3級以下の介護費



◆要介護の後遺障害




交通事故でけがをすると,症状が回復せずに,自分では日常に必要な動作を行うことができなくなるケースがあります。

そのような場合には,介護が必要です。

後遺障害によって介護が必要になったケースでは,基本的に一生介護を受け続けなければなりません。




そこで,将来にわたる介護費用を,加害者に請求することができます。

そして,自賠責保険の後遺障害の等級認定表においては,「要介護」の後遺障害かどうかで大きく分かれています。要介護の後遺障害は,1級と2級しかありません。







◆3級以下でも介護費用が認められるケース




しかし,実際には,3級以下の後遺障害でも,介護が必要になるケースは多いです。
そこで,3級以下でも,介護費用の請求が認められることがあります。

3級以下で,将来介護費用が認められやすいのは,高次脳機能障害のケースです。

高次脳機能障害の場合,認知機能が低下するので,本人の身体が動く場合でも,事故防止のために監視が必要になることもあるためです。




たとえば,事例としては,以下のようなものがあります。



高次脳機能障害で,3級3号の後遺障害認定を受けた被害者のケースにおいて,随時介護までは必要としないものの,事故を防止するために監視が必要であるとして,日額3000円,平均余命51年分の将来介護費用が認められた事例(名古屋地裁平成12年5月29日)。

脳挫傷等の傷害を負い,高次脳機能障害となって4級の後遺障害認定を受けた被害者の事案で,日常生活において,被害者の妻による監視や声かけが必要であることが考慮されて,日額2000円,平均余命33年間分の将来介護費用が認められた事例(大阪地裁平成20年5月29日)。





高次脳機能障害以外でも,将来介護費用が認められるケースはあります。



たとえば,CRPS(複合性局所疼痛症候群)により,7級相当の後遺障害が残った被害者の事案において,被害者が,右腕で作業をすることが難しく,長距離の歩行が困難になったケースでは,被害者が,実際に,食事や排せつ,移動について介助を受けていたことを考慮して,平均余命までの間,日額3000円の将来介護費用が認められました(横浜地裁平成26年4月22日)。





以上のように,後遺障害の等級が3級以下でも,将来介護費用が認められる例は意外と多いです。
心当たりがある場合には,まずは是非とも一度,弁護士に相談してみてください。







▼参考記事
・交通事故で後遺障害等級3級3号が認定され,保険会社と将来介護費が争点になるも裁判を行わず交渉で比較的高めの水準で解決できた事例
・高次機能障害で将来介護費の請求は認められますか。
・将来介護費について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故で症状固定後の治療費が賠償の対象となることがありますか?

2018年01月10日
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交通事故で症状固定後の治療費が賠償の対象となることがありますか?

あります。たとえば,生命を維持するために治療の継続が必要なケース,症状の悪化を食い止めるために治療が必要なケースなどにおいては,将来治療費として賠償の対象となります。




 症状固定後の治療費



◆症状固定後の治療費は,原則的に賠償の対象にならない




交通事故でけがをすると,入通院によって治療を行わなければならないので,治療費が発生します。

治療費については,交通事故によって発生した損害といえるので,加害者に賠償請求することができます。

ただし,治療費を請求できるのは,原則的に「症状固定時」までです。




症状固定すると,それ以上治療をしても症状が改善されなくなるので,症状固定後の治療は意味のないものとなると考えられているからです。

意味のない治療は,交通事故によって発生した損害とはいえない(因果関係が認められない)という理屈で,賠償の対象にならず,請求しても支払われません。







◆例外的に,将来治療費が認められるケース




症状固定後の治療費であっても,例外的に賠償の対象になるケースがあります。

なかには,症状固定した後も,治療の継続が必要なケースがあるためです。
症状固定後も治療が必要な場合,症状固定後の治療費も,交通事故と因果関係のある損害として認定されます。

症状固定後の治療の必要性は,症状の内容や程度,治療内容や経過などを総合的に判断し,治療の必要性や相当性があると言える場合に認められます。

実際に,将来治療費として認められるのは,以下のようなケースです。



・治療の継続をしないと,症状が悪化してしまうので,現状維持のために治療を継続すべきケース

・遷延性意識障害となったため,生命を維持するために治療の継続が必要なケース

・強い身体的な苦痛が残っているので,苦痛を和らげるための治療を継続すべきケース





また,将来治療費の賠償が認められるときには,将来の付添看護費用や交通費などについても,同時に認められることが多いです。







◆将来治療費を認めてもらうための立証




上記のような例はありますが,将来治療費が認められるのは,あくまで例外的なケースです。

そこで,支払を受けるためには,将来治療の必要性について,被害者側が,積極的に医学的な立証を行うことが必要です。

具体的には,医師の診断書や意見書,診療記録や診療報酬明細書などの資料をもとに,将来治療費の支出が必要かつ相当であること,予想される支出額などを明らかにしなければなりません。




以上のように,将来治療費が認められる例もありますが,ケースとしては限定されていますし,立証も難しくなることが多いです。

請求を行う際には,弁護士によるサポートがあると心強いものです。お困りの場合,是非とも一度,よつば総合法律事務所へご相談下さい。




▼参考記事
・交通事故による怪我が治らない場合は,どうしたらよいですか。
・事故から20年後に人口関節置換術の手術が必要な被害者の代理をし,裁判をおこした結果,将来治療費が認定された解決事例
・交通事故で怪我をした場合,いつ弁護士に相談すべきか?




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)
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よつば総合法律事務所
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