将来介護費について教えてください。自宅介護と施設介護ではどのように異なりますか? 職業介護費用が認められる場合は,どのようなときですか?

 
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将来介護費について教えてください。自宅介護と施設介護ではどのように異なりますか? 職業介護費用が認められる場合は,どのようなときですか?

自宅介護の場合,自宅改装費用なども認められるため,施設介護よりも賠償金が高額になることが普通ですが,家族に介護の負担がかかります。

職業介護費用が認められるのは,医師の指示がある場合や,症状の内容程度からして特に必要があるケースです。




 将来介護費 



◆将来介護費とは


将来介護費とは,交通事故で被害者に重大な後遺障害が残り,日常で必要な動作をするために介助が必要になったときの将来の介護費用です。

たとえば,交通事故の後遺障害で遷延性意識障害になってしまった場合や身体に麻痺が残った場合,重度の高次脳機能障害になった場合などに認められます。




将来介護費用が認められるのは,原則として後遺障害の中でも,要介護の1級と2級のケースです。

ただし1級や2級に至らなくても,重度の高次脳機能障害が残ったときに認められるケースも珍しくはないです。







◆自宅介護と施設介護


将来介護費用を計算するときには,どのような介護を受けるのかが問題となります。

まず,自宅介護か施設介護かを決めなければなりません。

自宅介護とは,被害者を自宅で生活させて,近親者が自宅で介護する方法です。
これに対し,施設介護とは,被害者を施設入所させて,介護を施設に任せる方法です。




自宅介護の場合,自宅をバリアフリーにするための自宅改装費用や通院用の介護車両,介護用のベッドなどの介護用品などの費用も支払われるため,施設介護よりも将来介護費用が高額になります。ただ,自宅介護にすると近親者の負担は非常に重くなります。

これに対し,施設介護の場合には,金額的には自宅介護よりは少なくなることが多いですが,近親者の負担は軽いです。







◆職業介護費用と近親者の介護


自宅介護を行う場合,職業介護人を雇うのか,近親者が介護をするのかも問題となります。

職業介護人を雇う場合,相手に対して実費を請求できるので,1日あたり1万〜3万円程度の費用が認められます。これに対し,近親者が介護をする場合には,1日あたり8000円となり,金額が下がります。

また,介護を行うとき,できれば近親者がすることが望ましいという考えがあるため,どのような場合でも職業介護人による介護が認められるわけではありません。

自宅介護で職業介護人が必要であると判断されるのは,たとえば医師の指示がある場合や症状の程度が重くて(24時間監視が必要なケースなど)家族が対応できない場合,家族が仕事をしていて近親者による介護ができない場合,日中に介護できない場合などです。




このように,将来介護費用を請求するときには,「どのような介護体制を敷くのか」から検討しなければなりません。

自分たちでは適切に判断できないときには、弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事
・将来の介護費用について
・将来介護費について(裁判基準)
・将来介護費について主張・立証して解決した交通事故事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の被害者ですが,加害者からの謝罪がありません。相手の保険会社に加害者の謝罪を要請しましたが,状況は変わらず,,,どうしても謝罪してもらいたいのですが,どうすればよいですか?

 
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交通事故の被害者ですが,加害者からの謝罪がありません。相手の保険会社に加害者の謝罪を要請しましたが,状況は変わらず,,,どうしても謝罪してもらいたいのですが,どうすればよいですか?

相手に強制的に謝罪させる手段はありません。相手の刑事事件の捜査や起訴の手続が進むと、謝罪してもらえる可能性が上がります。




 加害者からの謝罪 



◆謝罪を強制させることはできない



交通事故に遭って,相手の態度が悪いと被害者としては「許せない」と感じるものです。

この場合,「どうしても謝罪してほしい」と考えることも多いでしょう。




ただ,法律上,制的に謝罪をさせる手段はありません。また,謝罪は気持ちがこもっていてこそ意味のあるものであり,強要して「すみませんでした」と言わせても,何の価値もないものです。

裁判をしても,相手に謝罪させる命令を出してもらうことなどは不可能です。謝罪請求権というものがありません。







◆加害者の態度が慰謝料の金額に反映される可能性がある


ただ,そうであっても加害者が「一切謝罪をしない」という不遜な態度が,損害賠償に影響する可能性があります。

具体的には,慰謝料が増額されることがあります。

慰謝料には相場はありますが,治療費のように固まっているものではありません。事案によってある程度柔軟に算定されます。

ここで,加害者に全く反省がなく謝罪も一切せず被害者が怒っても当然という場合,そのことによって慰謝料が増額されることがあります。







◆刑事事件と関連して謝罪を受けられる可能性がある


また,加害者が刑事事件の被疑者となって捜査が進んでいるときや,起訴されたときは,加害者の方から謝罪の申出をしてくることがあります。

交通事故が起こったとき,結果が重大な場合や被疑者に反省がない場合などには,検察官の判断で加害者を起訴して刑事裁判にすることがあります。検察官が起訴するか不起訴とするかについて,被害者感情も考慮に入れて判断します。

加害者が謝罪し,被害者がそれを受け入れたという事情があると,その判断に影響してきます。




刑事裁判になると,被告人となった加害者は,懲役刑となるおそれもあり,どうにかして刑を軽くしたいと考えます。ここでもっとも効果的な方法は,被害者と示談をすることです。

刑事裁判では,被害者と示談ができて示談金を支払った場合や,被害者から「加害者の刑を軽くしてください」という「嘆願書」が提出されると,加害者の刑を軽くする事情として考慮することがあるからです。

そこで,加害者が刑事裁判になると,相手の方から被害者に連絡をして謝罪をしてきて,「示談をして下さい」と言ってくるのです。

もちろんこうしたとき,示談を受け入れるかどうかは被害者次第ですから,応じなければならないということはありません。また,嘆願書についても,頼まれたからと言って書かなければならないものでもありません。




▼参考記事
・加害者の態度に納得できないのですが,どうすればよいですか?
・事故後の人生
・刑事裁判(手続)で意見を述べたい
・慰謝料・後遺症・増額事由について(裁判基準)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

夫が交通事故に遭いました。ひとまず命は取り留めましたが,自分で考えて判断することはできません。30年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。              子はなく,夫の両親も祖父母も既に他界しています。夫にはきょうだいやいとこもいるようですが,私は面識がなく,夫とも長年連絡を取ったことはないと思います。これから私が連絡を取るのは気が引けてしまいます。賠償についてはどうなりますか。

 
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夫が交通事故に遭いました。ひとまず命は取り留めましたが,自分で考えて判断することはできません。30年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。

子はなく,夫の両親も祖父母も既に他界しています。夫にはきょうだいやいとこもいるようですが,私は面識がなく,夫とも長年連絡を取ったことはないと思います。これから私が連絡を取るのは気が引けてしまいます。賠償についてはどうなりますか。




この場合,成年後見人の選任申立てをして,賠償請求を進めることをお勧めします。




 成年後見人制度 



◆判断能力がないとき,本人が請求することができない


ご相談のケースのように,交通事故が起こると,被害者が意識不明になってしまったり,自分で考えて判断をすることができなくなったりすることがあります。

交通事故の損害賠償請求は,原則的に被害者ご本人が行うべきものです(被害者が死亡したときは別です。)。




上記のように意識不明のときや判断能力が失われたときは,被害者が自分で損害賠償請求を行うことができません。

かといって,内縁の配偶者には示談交渉の代理権はありませんし,遠方の兄弟,従姉妹が見つかったとしてもやはり代理権があるものではないので,このままでは賠償金の請求ができなくなってしまいます。







◆成年後見人とは



成年後見人とは,判断能力が低下した(失われた)本人の代わりに財産管理をしたり,身上監護をしたりする職務を行う人です。認知症の高齢者のケースなどでよく利用されますが,それ以外でも本人の判断能力がなければ利用可能です。

成年後見人には,損害賠償請求権の行使についても本人の代理権が認められるので,選任したら本人に代わって成年後見人が損害賠償の請求を行い,賠償金の支払を受けることができます。

本件のように,本人に判断能力が失われたり低下したりして,適切に自分の財産管理や権利の行使ができなくなった場合「成年後見人制度」を活用する方法が効果的です。







◆成年後見人の申立て方法


成年後見人を選任するためには,家庭裁判所に「成年後見人の選任申立て」をしなければいけません。


手続としては,「成年後見人選任の申立書」を作成し,病院の診断書や戸籍謄本などの必要書類を揃えて,申立て費用の800円分の収入印紙を添えて家庭裁判所に提出したら,その後家庭裁判所で調査が行われて,要件が認められたら成年後見人を選任してもらうことができます。

申立時に候補者を立てることができるので,もし夫の親族が了承をするのであれば,内縁の配偶者自身が自分を候補者として申立てをすることも可能です。候補者がいない場合や成年後見人の成り手について親族間で争いがある場合には,弁護士や司法書士などの専門職の人の中から後見人が選ばれることもあります。




ご相談者の場合にも,まずはお住まいの管轄の家庭裁判所宛に,成年後見人選任申立てをすることから始めることになります。成年後見人の役割は交通事故に関するものだけではないので,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・成年後見人に関してかかった費用は損害として認められますか?
・ご家族が成年後見人となり,成年後見人からの依頼を受けて解決した事例
・高次機能障害の場合,成年後見申立が必要ですか?




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

妻が交通事故で死亡しました。30年年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。子はなく,妻の両親も祖父母も既に他界し,妻にきょうだいはいません。賠償はどうなりますか?

 
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妻が交通事故で死亡しました。30年年連れ添ってきましたが,実は戸籍の届出をしないままでした。子はなく,妻の両親も祖父母も既に他界し,妻にきょうだいはいません。賠償はどうなりますか?

この場合,相手の保険会社に対し,扶養の利益を侵害されたことについて賠償金を請求することができますし,ご相談者の固有の慰謝料請求もできます。
また,相続財産管理人選任の申立てを行うことも考えられます。





 死亡事故 内縁の配偶者 



◆内縁の配偶者とは


本件のご相談者のようなケースを「内縁の配偶者」といいます。

内縁の配偶者とは,婚姻届出をしていない配偶者のことです。届けを出していないので,戸籍は別になっていますし名字も異なりますが,戸籍の点を除けば夫婦そのものです。「事実婚」ともいわれます。




事実婚であっても,戸籍の届出をした法律婚と同じ扱いを受けられることも多いです。

たとえば内縁の配偶者であっても遺族年金を受けとることができますし,内縁夫婦関係を解消するには法律婚の解消と同様に財産分与請求をすることもできます。







◆内縁の配偶者には相続権がない


しかし,交通事故で内縁の配偶者が死亡したときの内縁の配偶者の地位は,法律婚の配偶者と異なります。内縁の配偶者には,法律上の配偶者と異なり「相続権」がないためです。


死亡した配偶者の損害賠償請求権も相続することができないため,死亡した配偶者の逸失利益や慰謝料などを相手に請求することができません。







◆内縁の配偶者が相手に請求できる賠償金


そうなると内縁の配偶者の場合,相手に何の請求もできなくなってしまうのでしょうか?

実際には,そのようなことはありません。以下で請求できる権利についてご説明します。




【扶養請求権】
内縁関係にある場合,配偶者によって扶養されていることがあります。
その場合,交通事故で配偶者が死亡すると,扶養を受けられなくなります。

そこで,このように扶養を受けることができる利益を侵害されたことを理由に,加害者に対して損害賠償請求ができると判断した判例があります(最高裁平成5年4月6日)。

本件でも,ご相談者が妻に扶養されていた事情があれば,加害者に賠償請求できる可能性があります。




【慰謝料】
内縁の配偶者の場合,死亡した配偶者自身の慰謝料を相続することはできませんが,内縁の配偶者自身の固有の慰謝料が認められます。

民法では,不法行為によって被害者が死亡したときに配偶者の固有の慰謝料を認めていますが,内縁の配偶者もこれに準じて取り扱われるからです。裁判例にも,こういった内縁の配偶者の慰謝料を認めたものがあります(東京地裁平成18年2月7日、大阪地裁平成21年9月30日など)。

そこで,ご相談者の場合にも,加害者に対してご自身の慰謝料を請求することが可能です。










◆相続財産管理人制度の利用の可能性


御質問の事例では,被害に遭われた方には相続人がいないと思われます(本当にいないかどうかは別途調査が必要です。)。そうであれば,被害者自身の慰謝料や死亡逸失利益などを請求する権利を相続する人もいないことになります。


このように相続人が存在しないとき,死亡した人の財産(慰謝料請求権や死亡逸失利益請求権といった損害賠償請求権も財産です。)を管理する人を選任するという制度があります。相続財産管理人選任申立てという手続です。

この手続をすると,相続財産管理人が被害者の損害賠償請求権を行使して賠償金を受けます。相続財産管理人の業務が終了したとき,相続財産管理人の手元に残った財産は国に納めるのが原則です。




しかし,特別縁故者に対する財産分与の申立てという制度があります。

これは,相続人なくして死亡した人と特別の関係にあった人が,相続財産管理人の手元に残った財産を自己に分与することを求める手続です。

家庭裁判所が特別縁故者であると認めれば,ある程度の財産の分与が認められます(事故による賠償金が全て分与されるとは限りません。)。内縁の配偶者ではありませんが,この方法によったのではないかと思われる裁判例が公表されています(大津家審昭和52年9月10日家裁月報30巻2号141頁)。

死亡事故における相続財産管理人制度の利用の例はあまりないようです。




このように,交通事故で被害者が死亡したとき,内縁の配偶者であっても何の請求もできないということはないので,諦める必要はありません。まずは弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・相続人以外の同居親族もいた死亡事故の解決事例
・死亡事故の無料法律相談Q&A
・死亡事故被害者の救済




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,保険金の手続きをしたいのですが,加害者の任意保険と,私の人身傷害保険の関係はどうなりますか?

 
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交通事故に遭い,保険金の手続きをしたいのですが,加害者の任意保険と,私の人身傷害保険の関係はどうなりますか?

人身傷害保険から先に支払を受けた場合には,その分相手に請求できる損害賠償金から減額されます。ただし,その場合,まずは被害者の過失割合に相当する分に充当されるため,被害者の損害をすべて回収できます。

一方,加害者の任意保険から先に支払を受けたときは,被害者が受けとる人身傷害保険金が減少することがあります。





  人身傷害保険と相手の任意保険から受ける金額の関係



◆損益相殺とは


交通事故には,損益相殺という考え方があります。

損益相殺とは,交通事故を原因として何らかの利益を受けた場合,その利益分を相手に請求できる賠償金の金額から差し引くことです。




たとえば,自賠責保険や無保険車傷害保険,労災保険や政府保障事業によるてん補金などは,損益相殺の対象となり,これらから受領した金銭があれば,その分相手に請求できる金額が減ります。

ただし,どの程度減少するかの考え方は複雑なので,きちんと専門家にチェックしてもらうのが良いです。







◆人身傷害保険とは


では,人身傷害保険とは,どのようなものかを確認しておきましょう。

これは,自動車保険の特約の1つです。

交通事故で人身損害が発生したときに,保険契約者の治療費や逸失利益,精神的損害(慰謝料)などについて計算をして,算出された損害額についての支払いを受けることができます。

契約者の過失の有無を問わず,契約者の受け取る保険金は同一です。ただし,その金額は,保険契約の約款に定められた金額になります。







◆人身傷害保険を先に受けとった場合の問題点


人身傷害保険についても損益相殺の対象になります。
これを先に受けとったら,どのような計算方法によって相手の任意保険から支払われる賠償金が減額されるのかが問題です。これについては,つい最近までいくつかの考え方が対立していました。

代表的なものは,絶対説と訴訟基準差額説です。

絶対説は,過失相殺を行った後の賠償金額から人身傷害保険の金額を差し引きます。

これに対し,訴訟基準差額説の場合,過失相殺前の賠償金額に人身傷害保険の金額を充当します。そこで,被害者は自分に過失があっても,過失相殺された以上の金額を人身傷害保険と相手の保険会社から受けとることができて,被害者が受けとる金額は高額になります。




たとえば,総損害額が4000万円,人身傷害保険金が1000万円、被害者の過失割合が10%のケース(400万円)を見てみましょう。この場合,被害者が相手の保険会社に請求できる金額は3600万円です。

絶対説の場合,人身傷害保険金が3600万円から引かれるので,被害者が相手に請求できる金額は2600万円となります。被害者が受けとる合計金額は3600万円(1000万円+2600万円)です。人身傷害保険に加入した意味はほとんどありません。

これに対し,訴訟基準差額説の場合,人身傷害保険金が4000万円から引かれるので,被害者が相手に請求できる金額は3000万円となります。被害者が受けとる金額の合計額は4000万円(1000万円+3000万円)です。

このように,訴訟基準差額説なら,損益相殺が行われてもなお,全ての損害を回収することができます。







◆加害者の任意保険から先に受けとった場合の問題点


同じように,総損害額が4000万円,人身傷害保険金が1000万円,被害者の過失割合が10%のケース(400万円)を想定します。加害車の任意保険からは3600万円を回収した後,過失分の400万円を人身傷害保険から回収できるとも考えられます。


ところが,この場合,人身傷害保険に対して保険金請求をすると,加害者の任意保険から受けた賠償額は,差し引かれてしまいます。

人身傷害保険金1000万円から,加害者の任意保険からの支払額である3600万円が差し引かれます。マイナスです。つまり,人身傷害保険金からは1円も支払われません。

しかし,加害者の任意保険から3600万円を受け取ったのが示談交渉によってではなく,判決によって先に受け取ったのであれば,人身傷害保険金額は過失分の400万円となります。この場合は,被害者は損害をすべて回収することができたことになります。




人身傷害保険と相手の任意保険から受ける金額の関係については,非常に理解しにくいところです。保険会社担当者も,きちんと理解しているとは限りません。人身傷害保険会社の約款によって異なることもあります。

専門家の力を借りて進めるのが一番良いです。




▼参考記事
・人身傷害保険を利用し,損害金を増額して解決した事例
・人身傷害保険について
・弁護士 川ア 翔の交通事故に対するスタンス




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

夫の運転する自動車に乗車していて,出会頭の交通事故に遭いました。私が運転していたわけではないのに,過失相殺されるのですか?

 
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夫の運転する自動車に乗車していて,出会頭の交通事故に遭いました。私が運転していたわけではないのに,過失相殺されるのですか?

この場合,過失相殺されるのが原則です。




 同乗者の過失相殺 



◆過失相殺とは


交通事故に遭うときは,被害者が運転しているとは限りません。夫や家族,友人などが運転している車に乗っていて,交通事故に遭うこともあります。

その場合,自分がけがをして被った損害などについては,事故の相手に賠償請求をすることができますが,そのとき相手から「過失相殺」を主張されることがあります。

過失相殺とは,交通事故の結果について責任がある場合,その責任の度合いに応じて損害賠償金額が減額されることです。

交通事故の場合,どちらかが完全に100%悪い,という場合ばかりではありません。
どちらにも過失が認められる場合もあり,そのときは,過失の割合に応じて過失相殺が行われます。







◆好意同乗とは


過失相殺は過失割合に応じて行われるので,運転者に認められるのは納得しやすいですが,単なる同乗者にも過失相殺が行われてしまうのでしょうか?


ここで問題になるのは,好意同乗という考え方です。

これは,運転者の好意により,無償で車に乗せてもらっていた場合,同乗者も事故の結果について責任を持つべきだというものです。

事故の相手にしてみると,運転車も同乗者も「被害者側」の人であることに変わりありません。そこで、運転車であろうと同乗者であろうと,被害者側の過失は負担すべきだという考え方です。




一般的には,単に好意同乗であることのみを理由としては,過失相殺をしたり減額したりはしません。同乗者が運転車の危険な運転を煽っていた場合や,危険な状況を知りながらあえて同乗していたような場合は,減額されることがあります。

たとえば,同乗者が運転車にしつこく話しかけて気をそらした場合や,運転車が飲酒していると知りながら同乗していたような場合です。







◆被害者側の過失


ただし,運転者が同乗者と特別な関係がある場合には,同乗者本人には過失がなくても,過失相殺が行われます。

最高裁判所の判例は,「身分上または生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者」の過失を考慮することができるとしています。


つまり,運転者と同乗者との関係がこのような関係であれば,過失相殺をされることになります。

具体的には,運転者と同乗者が夫婦など極めて近い親族関係・同居関係にある場合には,原則として同乗者の損害に関しても過失相殺されます。夫婦の関係が既に破綻に瀕しているといった事情があれば,過失相殺されないこともありえます。




以上のように、夫が運転する車に乗っていれば,過失相殺されるのが原則にはなります。
過失割合に疑問をお持ちになったときは、交通事故問題に強い弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。




▼参考記事
・過失割合について納得はいかないのですが,どうすれば良いですか?
・同乗者9名の交通事故,保険会社の過失相殺の主張に惑わされず解決した事例
・交通事故の過失相殺とは?
・交通事故ブログ「好意同乗とはなんですか?」




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)


交通事故での示談交渉で,私が普段やり取りしている保険会社の担当者はどこの保険会社ですか?病院の人は「自賠責の人」と呼んでいます。

 
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交通事故での示談交渉で,私が普段やり取りしている保険会社の担当者はどこの保険会社ですか?病院の人は「自賠責の人」と呼んでいます。

ご質問者様がふだんやり取りしている人は,任意保険会社の人なので,自賠責保険会社の人とは異なります。




 任意保険と自賠責保険の違い 



◆交通事故の2種類の保険



交通事故に遭ったら,相手の保険会社の担当者と話合いをして,賠償金額を決定します。

このときの相手は,「自賠責保険」とは異なります。
事故後,被害者が示談交渉をする相手となるのは,加害者が加入していた任意保険の保険会社です。




交通事故の自動車保険で,加害者が加入しているものは,自賠責保険と任意保険の2種類があります。

病院対応をしたり被害者が示談交渉をしたりするのは任意保険の担当者であり,自賠責保険と示談交渉をすることはありません。







◆自賠責保険とは


まず,自賠責保険とはどのような保険なのかを見てみましょう。

これは,交通事故の被害者が,最低限度の補償を受けるための保険です。

自賠責保険は,自動車を所有する人なら全ての人が加入しなければならない,強制加入の保険です。自賠責保険に加入せずに自動車を運転すると,違法です。




このように,加入を強制することにより,交通事故が起こったとき,最低限自賠責保険からは保険金が支払われるようにして,被害者を守ろうとしています

そして,交通事故被害者の治療費は損害の一部ですから,自賠責保険による支払対象となります。ですが,自賠責保険は示談交渉の窓口にはなりません。







◆任意保険とは


次に,任意保険についてご説明します。

任意保険は,車の所有者やドライバーが,自賠責保険のほかに,任意に加入する保険です。法律上は加入するもしないも自由で任意なので,任意保険と呼ばれます。

任意保険に加入するのは,自賠責保険だけでは交通事故の損害賠償に足りないことが多いためです。

たとえば,死亡事故が起こった場合には1億円以上の損害が発生することもありますが,自賠責の限度額は3000万円なので,それを超過する費用については,加害者が自己負担しないといけません。

そのようなことになると大変なので,多くの人は自己判断で任意保険に加入しています。







◆任意保険は示談交渉を代行する


それでは,被害者がどうして任意保険の担当者と示談交渉をするのでしょうか?

これは,任意保険に示談代行サービスがついているからです。

任意保険会社は,被害者に対する賠償金の金額が決まったら,その賠償金の支払をしますので,賠償金がいくらになるかについて,利害関係を持ちます。そこで,任意保険は,加害者の代わりに被害者との示談交渉を行います。

また,任意保険は自賠責保険の分も一旦支払い,後に自賠責保険分を自賠責保険会社から回収するということも行います。そこで,被害者は,任意保険と示談交渉をすると,自賠責保険の負担分についてもまとめて任意保険会社から受けとることができます。

病院職員の方の中には,このような区別を意識せず,自賠責保険の担当者とやり取りしているという言い方をする方もいらっしゃいます。




任意保険会社と示談交渉をするとき,相手は賠償金の減額のためにいろいろな主張をしてくるものです。対応に困ったときには弁護士に相談しましょう。




▼参考記事
・保険会社との示談交渉で,賠償金0円提示→704万円を受け取った解決事例
・保険会社の思うツボにはならない!
・保険会社の助言




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,病院で治療していたら,お医者さんから「あなたは普通の人より首が長いから症状が重いのかもしれない。」と言われました。賠償に影響がありますか?

 
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交通事故に遭い,病院で治療していたら,お医者さんから「あなたは普通の人より首が長いから症状が重いのかもしれない。」と言われました。賠償に影響がありますか?

この場合,相手の保険会社から「素因減額」を主張されて,賠償金の減額を主張される可能性があります。ただ,首が長いというだけでは賠償金の減額は行われません。




 素因減額 



◆素因減額とは


交通事故でけがをして示談交渉をしているとき,相手の保険会社から「あなたは首が長いから,症状が悪化している」などと言われることがあります。

首が長い以外にも,手足が短いとか,目が大きいとか,持病があるとか,高血圧などと指摘されることもあり得ます。




このような場合,相手の保険会社は「素因減額」を主張してくる可能性があります。

素因減額とは,被害者側に何らかの要因があり,その要因によって交通事故の損害が拡大していると認められる場合,支払われる賠償金が減額されることです。

被害者側の事情によって損害が拡大している以上,被害者も結果について責任があるといえるので,その分賠償金を減らすべきだという考え方に基づきます。法律構成としては,過失相殺の規定の類推適用です。







◆身体的素因と心因的素因


素因減額が行われる場合,身体的素因に基づくケースと,心因的素因に基づくケースがあります。

身体的素因とは,被害者の身体的な特徴や持病の素因のことです。
たとえば,もともとヘルニアや腰痛などがあったために,むちうちの症状が悪化して,回復が遅れたケースなどで身体的素因による減額が問題となります。

これに対し,心因的素因とは,被害者の精神的な事情による素因のことです。
たとえば,もともとうつ病であった人や,治療に対する意欲が著しく欠けるため,通常よりも明らかに治療期間が長くなった場合などで心因的素因による素因減額が問題となります。





本件のように「首が長いという素因」は,身体的素因による素因減額が問題になるパターンです。







◆首が長い程度では,賠償金は減額されない


それでは,首が長いという素因があることによって,賠償金が減額されることがあるのでしょうか?



首が長いことによって相手が賠償金減額を主張してくるのは,通常むちうちなどになったケースです。
ただ,このような場合,判例は素因減額を認めていません。

平成8年10月29日における最高裁の判決では,「通常一般の人とは違う,特殊な身体的特徴があったとしても,それが疾患に該当しない限り,特段の事情がなければ,その身体的特徴によって,素因減額することができない」と判断して,首が長い人がむちうちの被害を受けたケースでの素因減額を否定しています。


持病とはいえない,単なる身体的な特徴があるだけでは,身体的な素因減額は認められません。本件で,保険会社が「あなたは首が長いから,賠償金を減額する」と言ってきても,応じる必要はありません。

相手の保険会社からしつこく減額を主張されて困っているなら,まずは弁護士に相談しましょう。




▼参考記事
・保険会社から素因減額を主張された解決事例
・所内における勉強会
・医学知識の習得(交通事故における素因減額問題)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で通院中ですが,症状固定とはなんですか?

 
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交通事故で通院中ですが,症状固定とはなんですか?

症状固定とは,交通事故のけがの治療が終了し,それ以上けがの状態の改善が期待できない状態のことです。症状固定時は,交通事故の損害賠償金計算の基準になる重要な時点です。




 症状固定 



◆症状固定とは


症状固定とは,それ以上治療を続けてもけがの状態の改善が期待できなくなった状態のことです。

交通事故後の入通院による治療は,症状固定時まで行われます。

交通事故の入通院治療は,症状固定するまで継続する必要があります。







◆症状固定は誰が決めるのか


症状固定したかどうかについては,誰がどのようにして決めるのでしょうか?

これについては,基本的には,病院の担当医師が,医学的な観点から決定します。

交通事故後,通院治療が長引いてくると,相手の保険会社から「そろそろ症状固定です」などと言われて,通院をやめるように言われることがありますが,相手の保険会社が症状固定したかどうかを判断する権限を持つわけではないので,相手からこのようなことを言われても,通院をやめる必要はありません。

症状固定前に通院をやめると,適切な治療を受けられなくなるだけでなく,相手から支払を受けられる賠償金の金額が大きく減って,賠償面でも不利益を受ける可能性が高いです。

仮に通院をやめるとしても,必ず病院の医師に「症状固定したかどうか」を確認し,医師が「症状固定した」と判断してからにするのが原則です。







◆症状固定時までの治療費が支払われる


症状固定は,交通事故の治療の節目になる重要な時点ですが,損害賠償金の計算の基準時にもなります。

事故後の治療に関しては,治療費や通院付添費,通院交通費などの費用を支払ってもらうことができますが,これらの費用の支払は,原則として,症状固定時の分までしか受けられません。

症状固定後は治療してもけがの状態の改善が期待できないので,症状固定後の治療は交通事故との因果関係がないと考えられているためです。

症状固定後に治療を受ける場合,その治療費は賠償の対象とならず,自己負担になるのが原則です。







◆症状固定時の症状が後遺障害等級認定審査の対象となる


症状固定は後遺障害とも密接な関係があります。

症状固定とは,それ以上治療を継続しても症状の改善が期待できない状態なので,その時点で残っている症状が後遺障害として認定されるかどうかが審査されます。




そして,後遺障害の等級認定を受けるためには,症状固定まで通院治療を継続する必要があります。この意味でも,交通事故後,症状固定時まで確実に入通院による治療を継続することが大切です。治療を途中でやめると,後遺障害の等級認定も受けられなくなるおそれがあります。

本来であれば適切に後遺障害が認定されて後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できたかもしれないのに,これらが賠償の対象となる余地がなくなってしまいます。後遺障害が認定されたときとそうでないときとでは,賠償金に大きな差が出てきます。




以上のように,症状固定は交通事故の治療や損害賠償金計算において非常に大きな意味を持つ時点です。医師が症状固定と判定する前に治療終了と言われて困っているなら,弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事

・ポイントを見極める! その1【通院のポイント】
・症状固定・後遺障害の等級認定
・交通事故問題解決の流れ




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で入院しました。付添看護費用とは何ですか?

 
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交通事故で入院しました。付添看護費用とは何ですか?

付添看護費用とは,入通院で必要になる看護師や近親者による看護に対して認められる費用です。職業看護師による付添のケースと近親者による付添のケースで,認められる金額が変わります。




 付添看護費用 


◆付添看護費用とは


付添看護費用とは,交通事故後の治療において,看護人による看護を受けたときに認められる費用です。

交通事故に遭って病院に入通院すると,看護が必要になることが多いです。入院すると,基本的に毎日看護を受けることになりますし,通院においても付添人が必要になるケースがあります。また,自宅療養のケースであっても付添看護が必要なケースが存在します。




このように,付添看護が必要になったときに付添看護費用が損害として認められ,加害者から支払を受けることができます。







◆入院付添費


付添看護費用には,入院付添費があります。
入院付添費は,基本的に入院中に付添看護が行われると,その日数分認められます。

金額は,職業看護人がつく場合と近親者がつく場合とで異なり,職業看護人がつく場合には実費が損害となりますが,近親者がつく場合には,1日あたり6500円(裁判基準)として計算されます。自賠責基準や任意保険の基準では1日あたり4100円です。




被害者が自分で示談交渉をしていると,相手の保険会社は入院付添費を含めずに示談金を計算してくることが多いので,注意が必要です。示談をするときには,必ず入院日数分の入院付添費が入っているかどうか確認し,入っていないときは,入院付添費が計上されていない理由を聞く必要があります。

といいますのは,付添いの必要性があったかが問題となるからです。医師の指示の有無,受傷の程度,被害者の年齢等により,付添いの必要性があると認められれば,損害として計上できるということになります。







◆通院付添費


付添看護費用には,通院付添費があります。
これは,被害者の通院に付き添った場合に認められる費用です。通院付添費も,必要性があるときのみ認められます。

通院付添費が認められるのは,被害者が1人で通院することが困難なケースです。
たとえば,被害者が高齢者や幼児などの子どもである場合や,被害者のけがの程度が激しく1人で通院ができない場合などが該当します。


通院付添費の金額は,職業看護人を雇った場合には実費となり,近親者が付き添った場合には,1日あたり3300円(裁判基準)となります。自賠責基準,任意保険基準では1日当たり2050円です。







◆自宅付添費


交通事故後,自宅療養する場合でも付添看護費が認められるケースがあります。

これが認められるのは,要介護状態になった場合や,被害者の手の届かない部位にガーゼの交換を行う必要性があった場合など,特にその必要性があるときです。

金額は,職業看護人を雇った場合には実費となり,近親者が付き添う場合,裁判基準では「必要かつ相当な額」がケースに応じて認定されます。自賠責基準や任意保険基準では,1日あたり2050円となります。




以上のように,交通事故で被害に遭ったら,付添看護費用の請求漏れがないようにしなければなりません。自分でうまく対処できない場合には,弁護士に相談しましょう。




▼参考記事
・主婦の入通院付添費は,どのように計算されますか?
・通院付添費について(裁判基準)
・入院付添費について(裁判基準)
・学生・生徒・幼児の学習費・保育費・通学付添費について(裁判基準)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)
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