交通事故に遭う前から既往症がありました。このような場合,過失相殺されるのでしょうか?

2017年07月14日
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交通事故に遭う前から既往症がありました。このような場合,過失相殺されるのでしょうか?

既往症の内容や程度によっては,過失相殺と同様の考え方によって賠償金額が減額される可能性があります。




 既往症と過失殺傷 


◆既往症とは



交通事故被害者が怪我をすると,慰謝料をはじめとした損害賠償金を加害者に請求することができます。

ただし,被害者に既往症がある場合には,その既往症が考慮されることがあります。

既往症とは,被害者がもともと持っていた症状や持病のことです。

たとえば,もともとヘルニアの症状があった人が交通事故に遭ってむちうちになった場合,既往症による影響があったのではないかが問題になります。

この場合,被害者の既往症によって症状が悪化しているのであれば,満額の賠償金を認めるのは不公平であり,賠償金額を減額すべきではないかということが問題となります。




そして,被害者に既往症があり,交通事故の怪我の症状に影響していると判断されると,賠償金が減額されることもあります。







◆過失相殺と素因減額


被害者に既往症がある場合には,過失相殺と同様の考え方によって賠償金が減額されます。

過失相殺とは,交通事故の被害者に過失がある場合に,その割合によって賠償金を減額することです。たとえば,過失割合が30%の場合には,賠償金額が3割減額されます。

被害者に既往症がある場合,被害者側の事情も加わって損害が発生したという点で過失相殺と同様ですので,過失相殺と同様の考え方により,賠償金を減額します。

このように,既往症を理由として賠償金を減額することを,素因減額といっています。







◆素因減額が認められる事例


それでは,素因減額はどのようなケースで認められるのでしょうか?
この点については,最高裁判所の判例があります。

まず,交通事故被害が発生したときに,被害者の疾患の態様や程度などにより,加害者に全部の賠償をさせることが不公平な場合には,過失相殺と同様の考え方で賠償金を減額できるとされています(最判平成4年6月25日)。

一方,被害者が平均的な体格や通常の体質とは異なる身体的な特徴を持っていても,それが疾患や一般人とかけ離れた身体的特徴(極端な肥満など)ではなく,単なる身体的特徴にとどまるときは,それを理由に賠償金を減額することはできないとも判断されています(最判平成8年10月29日)。


これらの判例や,さらに他の裁判例もまとめると,被害者に何らかの既往症があり,それが「疾患」等といえるほどのケースにおいては素因減額が行われますが,年齢相応の状態にとどまるときや,そもそも単なる身体的な特徴にとどまるときは,素因減額は行われません。




保険会社と示談交渉をしていると,何らかの身体的特徴があるとすぐに「既往症減額」を主張されることが多いですが,減額すべきではないケースもあります。

減額すべきケースではないのに適正な解決ができなかったという事態を防ぐためには,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:医師を味方につけよう!
・交通事故HP:交通事故の過失相殺とは
・交通事故HP:交通事故と弁護士費用のすべて




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の慰謝料が増額される場合は,どのような場合ですか?

2017年07月13日
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交通事故の慰謝料が増額される場合は,どのような場合ですか?

交通事故で怪我をしたら,相手に対して慰謝料を請求することができます。
交通事故の慰謝料が増額されることはありますが,増額理由はケースによってさまざまです。


また,必ずしも増額されるというものでもありませんし,増額幅も一定ではありません。以下で,どのような場合に増額されることがあるのかを見てみます。





 慰謝料の増額 


◆交通事故の慰謝料には幅がある



交通事故の慰謝料には,入通院慰謝料と後遺障害慰謝料,死亡慰謝料の3種類があります。

@入通院慰謝料とは,交通事故によって入院や通院による治療が必要になったことに対する慰謝料です。
A後遺障害慰謝料とは,事故によって後遺障害が残ったことに対する慰謝料です。
B死亡慰謝料とは,交通事故で死亡したことに対する慰謝料です。



これらの慰謝料には,算定のための基準がありますが,ある程度の幅が設けられています。


たとえば,後遺障害1級の場合の後遺障害慰謝料は,標準額は2800万円となっていますが,2600万円〜3000万円程度の幅があり,事案に応じて適切な金額が適用されます。

死亡という結果や後遺障害等級が共通する場合でも,慰謝料額が一定とは限らないということです。







◆交通事故の慰謝料が増額される要素


それでは,交通事故の慰謝料が増額される要素としては,どのようなものがあるのでしょうか?

(1)流産,中絶したケース
まずは,事故によって流産したり中絶したりしたケースです。
このような場合,母親の受けた精神的苦痛は甚大になることが多いので,母親の慰謝料が増額されやすいです。

(2)退職,廃業したケース
交通事故が原因で働けなくなり,会社員が退職を余儀なくされたり,自営業者が廃業せざるを得なくなったりするケースがあります。このような場合にも慰謝料の増額が認められやすいです。

退職したときの慰謝料増額については(事故によって退職を余儀なくされたかどうかの判断が先にされることになると考えられますが),被害者の年齢や勤続年数などが考慮されます。年齢が高く再就職が難しい場合などには,慰謝料は増額されやすいと考えられます。

会社員の場合には,昇進が遅れたり不可能になったりする場合にも慰謝料が増額されることがあります。自営業者が廃業した場合,年齢が高く再度の起業が難しい場合には慰謝料が高額になりますし,投下資本があったり事業のために借入をしていたりするようなケースでも,慰謝料が高額になる可能性があります。




(3)入学,留学できなくなったケース
さらに,子どもや学生が入学や留学できなくなったケースでも,慰謝料が増額される可能性が高いです。

(4)離婚したケース
交通事故が原因で家族関係が不和になり,離婚せざるを得なくなったケースでも,やはり慰謝料が増額されることがあります。

(5)悪質な加害者
飲酒運転,ひき逃げ,大幅なスピード違反などがあると,慰謝料増額の理由とされることがあります。

(6)危険な状態に陥った
一時生命の危険が生じるようなけがをしたときは,慰謝料増額を検討しなければなりません。




このように,慰謝料が増額される事由にはいろいろありますが,それぞれの事情があっても必ずしも慰謝料が増額されるとは限りませんし,増額される金額も一定ではありません。

慰謝料増額事由があるのに適正な解決ができなかったという事態を防ぐためには,交通事故問題に強い弁護士に相談することが大切です。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:慰謝料について増額される場合
・交通事故HP:交通事故と慰謝料のすべて
・解決事例:自営業者が左肩関節痛・左肩関節可動域制限により10級10号の認定を受け,3680万円を獲得した事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭った被害者本人だけではなく,家族の慰謝料が認められる場合はありますか?

2017年07月12日
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交通事故に遭った被害者本人だけではなく,家族の慰謝料が認められる場合はありますか?

家族の慰謝料が認められることはあります。死亡慰謝料の場合に認められやすいですが,重傷のケースでも家族の慰謝料が認められる可能性があります。




 家族の慰謝料 


◆交通事故の慰謝料と家族の精神的苦痛について


交通事故に遭って生命や身体に傷害が発生した場合,被害者本人には慰謝料が発生します。
交通事故の慰謝料は3種類あります。

(1)入通院慰謝料 :交通事故の怪我が原因で,入通院治療をした場合の慰謝料
(2)後遺障害慰謝料:交通事故による怪我が完治せず,後遺障害が残ったことに対する慰謝料
(3)死亡慰謝料  :交通事故が原因で死亡したことに対して,支払われる慰謝料

これら3つの慰謝料は,基本的には被害者本人のものです。
精神的苦痛を被るのは,被害者本人だからというのが,一応の理由です。

ただ,家族も精神的苦痛を被ることはあります。
特に死亡事案では,家族の精神的苦痛が強いので,家族の慰謝料が問題になることが多いです。
このような場合,一定のケースでは家族の慰謝料が認められます。







◆死亡慰謝料と家族の慰謝料


死亡事故の場合には,家族に固有の慰謝料が認められやすいです。

まず,自賠責保険の場合には,明確に家族の慰謝料が認められています。
具体的な金額は,以下になります。

・遺族が1人なら550万円,2人なら650万円,3人なら750万円
・被扶養者がいた場合には,遺族が1人なら750万円,2人なら850万円,3人なら950万円


これに対し,任意保険基準や弁護士・裁判基準の場合には,被害者本人の死亡慰謝料に基本的に家族の慰謝料も含まれると考えられています。

ただ,民法711条は,配偶者と子ども,親には固有の慰謝料を認めているため,配偶者や子ども,親の場合には,固有の慰謝料が認められ,本人の慰謝料とは別途認められるケースがあります。

また,内縁の配偶者や兄弟姉妹の場合にも,固有の慰謝料が認められることが比較的よくあります。







◆重度の後遺障害事案と家族の慰謝料


近親者の固有の慰謝料が認められるのは,基本的には死亡事案のみですが,それにとどまりません。


重度な後遺障害が残ったケースでも,家族が重大な精神的苦痛を被ることが考えられます。



たとえば,被害者の意識が回復しないままの状態になってしまったら,やはり家族は苦しむことになります。
このような場合も,家族の慰謝料が認められる可能性があります。

最高裁判所の判例は,「死亡にも匹敵するような精神的苦痛」を被った場合には,家族も慰謝料を請求しうるとしています。

被害者の意識が回復しないケース,重度な高次脳機能障害になったケース,重度な麻痺が残ったケースなど,家族による介護が必要になる事案で認められやすいです。




家族の慰謝料の金額算定においては,後遺症の等級,被害者の関係や今後予想される介護状況,被害者本人の慰謝料額等が考慮されます。慰謝料の金額としては,被害者本人に認められる慰謝料の10〜30%が目安となっているようです。




▼参考記事
・解決事例:横断歩道上で発生した死亡事故について4400万円の賠償が認められた事例(遺族固有の慰謝料の請求)
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:死亡事故による慰謝料
・交通事故HP:交通事故と慰謝料のすべて




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い後遺障害等級が認定された場合,慰謝料はいくらもらえるですか?

2017年07月11日
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交通事故に遭い後遺障害等級が認定された場合,慰謝料はいくらもらえるですか?

後遺障害が認定されると,認定された等級によって後遺障害慰謝料の支払を受けることができます。
後遺障害慰謝料は,認められた等級によって金額が変わってきます。また,採用する慰謝料の基準によっても金額が変わってきます。





 後遺障害慰謝料 


◆後遺障害慰謝料とは


交通事故に遭って怪我をした場合,治療を継続しても症状が完治しないことがあります。

その場合,残ってしまった症状のことを,後遺症と呼んでいます。その後遺症が,後遺障害に認定されるかどうかが問題となるわけです。




交通事故で後遺障害が残った場合には,事故の相手に対し,後遺障害慰謝料の支払を請求することができます。後遺障害慰謝料とは,交通事故により後遺障害が残ったことで発生する精神的損害に対する賠償金のことです。

後遺障害慰謝料の金額は,認定された等級によって異なります。後遺障害には重い方から1級〜14級までの等級がありますが,後遺障害慰謝料は,1級の場合に最も高額となり,だんだんと低い金額となって,14級の場合に最も低額となります。










◆等級ごとの後遺障害慰謝料


後遺障害慰謝料の計算基準には,自賠責基準と任意保険基準,弁護士・裁判基準の3種類があります。
自賠責基準の場合には最も低額となり,任意保険基準は中間値,弁護士・裁判基準なら最も高額になります。

以下で,等級ごとで認められる後遺障害慰謝料の金額を確認しましょう。



このように,弁護士・裁判基準を採用すると,他の2つの基準を使う場合よりも大幅に後遺障害慰謝料の金額が上がります。2倍以上になることが多く,3倍以上になっていることもあります。

適正な後遺障害慰謝料を受けとるためには,弁護士・裁判基準を使って計算することが必要であることがわかります。










◆高額な後遺障害慰謝料を受けとる方法


交通事故で後遺障害が残ると,多大な精神的苦痛を被るものです。
お金を支払ってもらっても健康が戻ってくるものではありませんが,せめて適正な慰謝料を受けとることが被害者の救済となります。


交通事故で高額な後遺障害慰謝料を請求するには,弁護士・裁判基準で慰謝料を計算することが必要です。そのためには,弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。被害者が自分で示談交渉をすると,任意保険会社は低額な任意保険基準で慰謝料を計算するので,金額を下げられてしまうからです。

交通事故で後遺障害が残ったら,適正な賠償金を受けとるために,交通事故問題に強い弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・交通事故HP:交通事故による後遺障害の解説
・交通事故HP:後遺症(後遺障害)
・解決事例:会社員が腰痛により8級相当の認定を受け1080万円を獲得した事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:賠償の大きな要素 慰謝料について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で,入通院したことに対する慰謝料はいくらもらえますか?

2017年07月10日
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交通事故で,入通院したことに対する慰謝料はいくらもらえますか?

入通院したことに対する慰謝料を入通院慰謝料といいますが,入通院慰謝料は,入通院期間に応じて計算されます。




 入通院慰謝料 


◆入通院慰謝料とは




交通事故に遭って怪我をすると,入通院による治療が必要になることが多いです。

交通事故によって入通院した場合には,入通院慰謝料という慰謝料が発生します。

入通院慰謝料の金額は,入通院した期間によって変わってきます。入通院期間が長くなればなるほど,慰謝料の金額が上がります。
また,通院期間よりも入院期間の方が慰謝料の金額が高額になることが多いです。







◆入通院慰謝料の計算基準


では,入通院慰謝料は,具体的にどのくらい支払われるのでしょうか?

入通院慰謝料の金額の計算方法には,自賠責基準と任意保険基準,弁護士・裁判基準の3種類があり,それぞれによって計算金額が異なります。以下で,順番に見てみましょう。




【自賠責基準】
自賠責基準による入通院慰謝料は,4200円×治療日数となります。
治療日数は,以下の2つのうち,少ないほうを採用します。


・治療期間
・実通院日数×2


たとえば,治療期間が3ヶ月(90日)の場合,実通院日数が35日であれば,35日×2=70日の方が小さくなるので,こちらが治療日数として採用されます。
このケースで認められる入通院慰謝料の金額は,4200円×70日=294000円となります。







【任意保険基準】
任意保険基準による入通院慰謝料は,任意保険会社によって多少異なりますが,だいたいの相場があります。

入通院の日数に応じて入通院慰謝料が定められていて,入院の方が通院より慰謝料が高額になります。たとえば通院3ヶ月の場合には,多くの場合,378000円となるようです。







【弁護士・裁判基準】
弁護士・裁判基準による入通院慰謝料も,入通院の期間に応じて定められます。
弁護士・裁判基準の場合,むち打ち症で他覚所見がない場合等とそれ以外のケースによって,入通院慰謝料の金額が異なります。




むち打ち症で他覚所見がない場合等のほうが,それ以外のケースよりも入通院慰謝料が低額になります。しかしむち打ち症で他覚所見がない場合等においても,任意保険基準や自賠責基準より高額になります。

治療機関が長くなると慰謝料が高額になりますし,通院期間よりも入院期間のほうが,その期間が同じであれば,慰謝料の金額は上がります。弁護士・裁判基準による入通院慰謝料の金額は,表になってまとまっているので,それを確認して各事案に適用します。




たとえば通院3ヶ月の場合には,むち打ち症で他覚所見がない場合等で53万円,それ以外の場合には73万円となります。自賠責基準では294000円(実通院日数が35日の場合),任意保険基準では378000円だったので,弁護士・裁判基準にすると,大幅に慰謝料の金額が上がっていることがわかります。




交通事故で怪我をして,適正な入通院慰謝料を受けとるためには,弁護士に示談交渉を依頼して弁護士・裁判基準を適用させなければなりません。




▼参考記事
・交通事故HP:交通事故と慰謝料のすべて
・解決事例:相手保険会社と公証して示談金額を大幅に増額した事例(14級9号)
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:賠償の大きな要素 慰謝料について

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の死亡逸失利益の計算における生活費控除率とは何ですか?

2017年07月07日
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交通事故の死亡逸失利益の計算における生活費控除率とは何ですか?

生活費控除率とは,死亡逸失利益の計算のときに,被害者の生活費として必要だった金額を差し引くための割合のことです。




 生活費控除率 

◆生活費控除率とは


交通事故で死亡すると,相手に対して逸失利益を請求することができます。

逸失利益とは,死亡したことにより,将来得られるはずだったのに得られなくなってしまった収入のことです。逸失利益を計算するときには,就労可能年数に対応する収入の計算をします。

しかし,死亡すると,本来かかるはずだった生活費が不要になります。

そこで,逸失利益からは,この不要になった生活費の分を差し引かなければなりません。そのために生活費控除を行います。そして,生活費控除率とは,この生活費の控除を行うための計算割合です。




死亡逸失利益を計算するときには,
基礎収入×就労可能年数に対応するライプニッツ係数×(1−生活費控除率)で計算します。

そこで,生活費控除率が多ければ多いほど,死亡逸失利益の金額は減ってしまうことになります。







◆生活費控除率の割合


次に,生活費控除率の割合を見てみましょう。
これについては,自賠責保険基準と任意保険基準,弁護士・裁判基準で異なる割合が採用されています。

(1)自賠責基準
自賠責基準での生活費控除率は,以下のとおりです。被害者に被扶養者がいるかいないかで区別されます。
・被害者に被扶養者がいる場合 35%
・被害者に被扶養者がいない場合 50%





(2)任意保険基準
次に,任意保険基準による生活費控除率を見てみましょう。
これについては各任意保険会社によっても異なりますが,概ね次のような数字が採用されています。

任意保険基準では,被害者に被扶養者がいたかどうかや,被扶養者の人数によって生活費控除率が異なります。

・被害者に被扶養者が3人以上いる場合 30%
・被害者に被扶養者が2人いる場合 35%
・被害者に被扶養者が1人いる場合 40%
・被害者に被扶養者がいない場合 50%




(3)弁護士・裁判基準

それでは,慰謝料が最も高額になる弁護士・裁判基準ではどのようになるのでしょうか?

弁護士・裁判基準では,被害者が一家の大黒柱であったかなかったかによって,異なる割合が採用されています。また,任意保険基準と同様,被扶養者の有無や数によっても生活費控除率が異なります。

《被害者が一家の大黒柱であったケース》
・被扶養者が1人 40%
・被扶養者が2人以上 30%



《被害者が一家の大黒柱ではなかったケース》

・女性の場合 30%
・男性の場合 50%





以上のように,生活費控除率が大きくなると逸失利益が半額になることもあるので,生活費控除率がどのくらいになるかは重大な問題です。

弁護士・裁判基準を使うと被害者にとって有利になるケースが多いので,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:死亡事故の場合における生活費控除率
・解決事例:死亡された方の解決事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:交通事故被害がない社会




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で死亡した場合,逸失利益の計算方法はどうなりますか?

2017年07月06日
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交通事故で死亡した場合,逸失利益の計算方法はどうなりますか?

交通事故で被害者死亡による逸失利益は,以下のような計算方法となります。
 基礎収入×就労可能年数に対応するライプニッツ係数×(1−生活費控除率)





 死亡逸失利益


◆死亡逸失利益とは



交通事故が原因で被害者が死亡すると,逸失利益が発生します。

逸失利益とは,交通事故で死亡してしまって働けなくなったために,得られなくなってしまった収入のことです(年金を受け取ることができなくなったことによる逸失利益も考えられますが,ここではお書きしません。)。




事故前にもともと働いていた人は,労働によって収入を得ていましたが,事故で死亡すると,その収入が失われます。そこで,本来なら就労可能年数まで働いて得られたはずの収入は,損害として認められています。これが,死亡逸失利益です。

死亡逸失利益が認められるのは,基本的に事故前に働いていた人ですが,子どもや主婦の場合でも逸失利益が認められます。







◆死亡逸失利益の考え方


交通事故の死亡逸失利益は,どのようにして計算するのでしょうか?
まずは,被害者の基礎収入を算定します。その上で,就労可能年数分の収入を計算します。

ただ,実際に収入を得るときには,毎年少しずつお金を得ていくものですが,賠償金として支払われる場合には一括で受けとることになるので,その分の中間利息を控除しなければなりません。

また,被害者には生活費が必要だったはずですが,死亡すると生活費は不要になるので,その分も差し引く必要があります。



そこで,死亡逸失利益の計算式は,以下のようなものとなります。
事故前の基礎収入×就労可能年数に対応する中間利息控除指数(ライプニッツ係数)×(1−生活費控除率)




◆基礎収入とは


以下で,計算に用いられる要素をもう少し詳しく見てみましょう。

逸失利益の基礎収入は,原則的には交通事故前の現実の収入を基準とします。


たとえばサラリーマンや自営業者などの場合には,わかりやすいです。
被害者が子どもや主婦などであった場合には,賃金センサスの全年齢の男女や男性,女性の平均賃金を使って基礎収入を計算します。







◆ライプニッツ係数とは


ライプニッツ係数とは,中間利息を控除するための特殊な係数です。

中間利息控除とは,お金を先に受けとることによって運用利益を先に受けとってしまうことになるので,その分の利息を差し引くことです。

ライプニッツ係数については表にまとまっているので,その表に記載してある就労可能年数に対応する数字を使って計算します。







◆生活費控除率とは


生活費控除率とは,事故で死亡したことによって生活費がかからなくなる分を控除するときの割合のことです。

生活費控除率が高いと,受けとる逸失利益が少なくなります。
生活費控除率は,被害者がどのような属性の人であったかによって異なる数字が採用されるので,ケースバイケースの認定が必要です。







▼参考記事
・交通事故HP:死亡事故被害者の救済(解決事例含む)
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:被害者参加人の代理人として,刑事裁判に参加
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:死亡事故による慰謝料
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:死亡事故の場合における生活費控除率




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で醜状痕が残り,後遺障害の等級がつきました。醜状痕でも逸失利益は認められますか?

2017年07月05日
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交通事故で醜状痕が残り,後遺障害の等級がつきました。醜状痕でも逸失利益は認められますか?

交通事故の怪我が完治せずに醜状痕が残り,外貌醜状として後遺障害が認定されることがあります。外貌醜状だからという理由だけで逸失利益が認められないということはありません。




 醜状痕 逸失利益 


◆外貌醜状とは


交通事故の怪我が原因で,顔や頭などの露出部分に醜状痕が残るケースがあります。

このような場合,「外貌醜状」として後遺障害の認定を受けることができます。外貌というのは,頭部,顔面部,頸部のような,上肢及び下肢以外の日常露出する部分のことです。




外貌醜状の後遺障害が認められるには,顔面や頭部,頸部のうち,日常露出している部分に醜状が残ることが必要です。
髪の毛などで隠れる場合には,日常露出している部分とはいえないので外貌醜状とは認められません。







◆外貌醜状の後遺障害の等級


それでは,外貌醜状が認定されると,どの程度の後遺障害が認められるのでしょうか?
その等級を確認していきます。
外貌醜状で認定を受けられる可能性のある後遺障害等級は,以下の3つです。
(1)7級12号:外貌に著しい醜状を残すもの

(2)9級16号:外貌に相当程度の醜状を残すもの

(3)12級14号:外貌に醜状を残すもの




◆外貌醜状で後遺障害が認定される要件


以下では,それぞれに認定される要件を見てみましょう。



(1)7級12号 著しい醜状を残すもの
著しい醜状として7級12号が認定されるための要件は,以下の通りです。

・頭部に手のひらの大きさ(手指は含みません。)以上の瘢痕が残った
・頭蓋骨に手のひら大以上の瘢痕が残った
・顔面部に,鶏卵大以上の瘢痕が残った
・顔面部に10円硬貨大以上の組織陥没が残った
・頸部に,手のひら大以上の瘢痕が残った





(2)9級16号 相当程度の醜状を残すもの
相当程度の醜状を残すものとして9級16号が認定されるための要件は,以下の通りです。

・顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕が残った




(3)12級14号 醜状を残すもの
醜状を残すものとして12級14号の後遺障害は,以下のようなケースで認定されます

・頭部に鶏卵大面以上の瘢痕が残った
・頭蓋骨に鶏卵大面以上の欠損が生じた
・顔面部に,10円硬貨大以上の瘢痕が残った
・顔面部に3センチメートル以上の線状痕が残った
・頸部に,鶏卵大面以上の瘢痕が残った








◆逸失利益が問題になる理由


外貌醜状で後遺障害が認定された場合には,逸失利益が認められるかどうかが問題になりやすいです。
外貌に問題が起こるだけなので,労働能力には影響しないのではないかという問題があるからです。




ただ,モデルなどの人の目に触れる仕事をしている方は,外貌に醜状が残ると仕事ができなくなったり制限されたりします。営業マンのケースなどでも,外貌に醜状が残ると不利になるでしょう。




外貌醜状のケースでも逸失利益を請求できる事案は少なくありません。
交通事故が原因で外貌醜状が残った場合,相手の保険会社から「逸失利益は発生しない」と主張されても即座に受け入れる必要はありません。弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・解決事例:頭部外傷後の傷跡について9級16号の後遺障害が認められた事例
・解決事例:顔に怪我を負われた事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:被害に遭われた方の将来を考える

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故後も収入の減少はありませんでしたが,逸失利益は認められますか?

2017年07月04日
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交通事故後も収入の減少はありませんでしたが,逸失利益は認められますか?

収入の減少がない場合,基本的には逸失利益は認められませんが,本人の努力によって収入減少が起こらないようにしているようなケースでは,逸失利益が認められることもあります。




 逸失利益 


◆逸失利益とは


逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残った場合,労働能力の低下により減少してしまった分の収入のことです。

交通事故に遭って後遺障害が残ると,その分労働能力が失われます。


すると,その分得られる収入が減るので,その分が損害となります。そこで,その得られなくなった収入を逸失利益として,相手に支払い請求することができます。

逸失利益とは,事故によって得られなくなった収入なので,事故前に収入があった人に認められるのが基本です。逸失利益は,各後遺障害の等級に定められた労働能力喪失率を基準として計算します。







◆収入減少がないなら逸失利益は認められない


逸失利益は,失われた収入のことです。そこで,後遺障害が残ったことによって労働能力が失われて,収入が減少することが前提となっています。


実際に収入減少がない場合には,基本的に逸失利益は認められません。
過去の最高裁の判例でも,収入減少がない場合には逸失利益を認めないとするものがあります(最判小昭42.11.10)。







◆収入減少がなくても逸失利益が認められるケース


ただ,実際の収入減少がなくても,それが被害者本人の努力によって維持されているケースがあります。

この場合,本来なら労働能力が失われて収入が減少しているはずです。もし,逸失利益を認めなかったら,努力をしない方が損害賠償金を多くもらえることになって不合理です。そこで,事故後収入減少がなくても逸失利益が認められる例はあります。

たとえば,最判小昭和56.12.22では,特段の事情がある場合には,実際の収入減少がない場合にも逸失利益を認める余地があると判断しています。

具体的には,以下のような場合に収入減少がなくても逸失利益を認める余地があるとしています。

●収入が減収しないように本人が特に努力しているだけであり,本来なら減収が起こっている
●今後の昇給・昇任・転職などの際に,不利益取扱を受ける可能性がある


上記の基準を参考にして、ケースバイケースで逸失利益の有無が判断されることになります。

たとえば,バイク便勤務の男性が事務職に転職して増収になったケースで,それは本人の特別の努力と幸運によるものであるから,逸失利益を認めた事案(東京地裁平14.8.28)や,信用金庫の営業係長の事案で,減収が起こっていないのは本人の努力によるものである上,将来の昇進などに対する影響が予想される場合に逸失利益を認めたケース(東京地裁平20.3.11)などがあります。




このように,減収がない場合でも逸失利益が認められる可能性はあります。しかし,その判断はケースバイケースで、非常に難しいです。弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事
・交通事故HP:逸失利益と後遺障害
・交通事故HP:交通事故の逸失利益
・交通事故HP:交通事故による後遺障害の解説




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

会社役員をしていますが,会社役員でも休業損害は補償されますか?

2017年07月03日
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会社役員をしていますが,会社役員でも休業損害は補償されますか?

会社役員でも休業損害が補償されることは多いですが、その金額や計算方法は事案によって異なります。




 会社役員 休業損害 


◆会社役員には休業損害が認められにくい理由


交通事故前に仕事をしていた人の場合,交通事故によって怪我をすると働けない期間が発します。

この場合,その期間に得られたはずの収入を得られなくなるので,損害が発生します。この損害のことを休業損害と言います。

そこで,事故前に働いて収入があった人は,事故によって休業した期間に応じて相手に対し,休業損害の請求ができます。
休業損害の計算方法は,事故前の基礎収入を基準として,「1日あたりの基礎収入×休業日数」によって算出します。


しかし,会社役員の場合には,当然に休業損害が認められるとは限りません。
会社役員は,労働の対価としてお金をもらっているのではなく,事故に遭ったとしてもそれとは無関係に収入を得られる立場にあるから,休業による損害が発生しないと考えられるからです。



そこで,会社役員が交通事故に遭うと,サラリーマンや個人事業主などと比べて休業損害が認められにくくなってしまいます。







◆会社役員の休業損害


会社役員のケースで休業損害が認められにくいと言っても,全く認められないわけではありません。
特に日本では,会社役員とは言っても実質的に従業員と同じような働きをしており,それに対する対価をもらっていることも多いです。


そこで,会社役員のもらっている給与は,「役員報酬部分」と「労務対価部分」の2種類に分けて考えられます。

役員報酬部分は,役員として経営に関わることによって支払われる報酬なので,事故とは無関係に支給されます。
労務対価部分とは,役員が実際に会社に労務を提供することによって支払われる給与で,サラリーマンなどと同様のものです。




そこで,役員報酬部分については,労働とは無関係に支給されるものなので休業損害の基礎収入とはなりませんが,労務対価部分については基礎収入として休業損害を請求することができます。







◆役員報酬部分と労務対価部分の計算方法


そうなると,役員報酬部分と労務対価部分をどのようにして計算するかが問題になります。
この場合,職務内容や他の役員や従業員の給与などを参考にして,事案ごとに個別に判断します。


通常は,報酬全額が認められることはなく,割合的に算定されますが,小さい会社などで実質的に役員が労働者と同じ立場であるようなケースでは,100%の役員報酬が基礎収入とされることもあります。

反対に,社外取締役や社外監査役の場合には,労務対価部分を観念できないのでその割合は0%となり,休業損害は認められないことが多いです。




このように,会社役員でも休業損害が認められる可能性はあります。保険会社から支払いが出来ないと言われて困っている場合には,一度弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事
・解決事例:095 会社役員の休業損害・逸失利益を認定
・交通事故HP:休業損害・会社役員について(裁判基準)
・注目の裁判例:会社代表者の逸失利益




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)
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