損害賠償として逸失利益の計算をする場合,どのように計算すればよいですか?

2016年11月28日
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損害賠償として逸失利益の計算をする場合,どのように計算すればよいですか?

逸失利益の計算方法は,請求する逸失利益の種類によって異なってきます。




【逸失利益の計算方法】




◆2種類の逸失利益



逸失利益の計算方法は,請求する逸失利益の種類によって異なります。


逸失利益とは交通事故によって得られなくなった将来の収入のことですが,交通事故で逸失利益が認められるのは,後遺障害が残ったケースと死亡事故のケースです。


そこで,以下では後遺障害が残った場合と死亡事故の場合に分けて,逸失利益の計算方法をご説明します。






◆逸失利益の計算方法



@後遺障害が残った場合

交通事故で後遺障害が残った場合,以下の計算式によって計算します。

事故前の基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数


事故前の基礎収入とは,被害者が交通事故に遭う前に得ていた実際の収入のことです。
逸失利益計算の際には,年収を基準とします。

たとえば,サラリーマンの場合には源泉徴収票の記載内容をもとに基礎収入を決定しますし,個人事業者の場合には確定申告書の記載内容を見て基礎収入を決定します。
専業主婦や学生,幼児などが被害者になった場合には,実際の収入がないので,賃金センサスの平均賃金を用いて基礎収入とします。


労働能力喪失率とは,後遺障害の等級ごとに定められた割合です。

基本的には,一番高い等級である1級のケースでは100%,一番低い等級である14級のケースでは5%となります。

ライプニッツ係数とは,中間利息を控除するための特殊な係数のことです。
逸失利益を受け取る場合,将来の分もまとめて受け取ることになるため,その間の利息を控除する必要があり,ライプニッツ係数をかけることが必要になります。

逸失利益の計算は,基本的には就労可能年数までの分となりますが,就労可能年数は67歳までとされているので,事故当時の年齢から67歳までの年数に対応するライプニッツ係数を利用して逸失利益を計算します。

なお,高齢者の場合には,「平均余命の2分の1」と「67歳までの年数」のどちらか長い方を採用します。





A死亡事故の場合

次に,交通事故で死亡してしまった場合の逸失利益計算方法をご紹介します。

事故前の基礎収入×(1−生活費控除率)×就労可能年数に対応したライプニッツ係数


死亡事故の場合,後遺障害のケースとは異なり,交通事故によって完全に働けなくなるので労働能力喪失率は常に100%となり,その計算は不要です。

ただし,死亡した場合には事故後の生活費がかからなくなるので,生活費を控除する必要があります。

生活費控除率は,被害者の属性によって異なり,概ね以下のような基準となっています。

・被害者が一家の支柱のケースでは,30〜40%
・被害者が女性のケース(主婦や独身者,幼児)では,30〜45%
・被害者が男性のケース(独身者や幼児)では50%


また,死亡事故の場合でも,逸失利益を一括で受け取ることになるので,中間利息を控除するために,やはり,事故当時の年齢から67歳までの就労可能年数に対応したライプニッツ係数をかけて調整する必要があります。

(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)



交通事故でよく聞く,逸失利益とは何ですか?

2016年11月25日
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交通事故でよく聞く,逸失利益とは何ですか?

逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりすることによって,それまでとは同じように働けなくなる結果,得られなくなった利益のことです。





【逸失利益】



◆逸失利益とは


逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりすることによって,それまでとは同じように働けなくなる結果,得られなくなった利益のことです。

わかりやすく言うと,交通事故によって働けなくなって収入が減るので,その賠償を相手に求めることができる,ということです。


たとえば,交通事故で死亡してしまったら,その人は事故後働いて収入を得ることができません。そこで,相手に対して逸失利益として,将来得られるはずだった収入を計算して賠償請求することができるのです。







◆逸失利益が認められる交通事故の種類


逸失利益は,どのような交通事故の場合に認められるのでしょうか?
それは,交通事故で怪我をして後遺障害が残ったケースと死亡したケースです。


交通事故で後遺障害が残ると,その分身体が不自由になるので,それまでと同じようには働けなくなって労働能力が失われたと考えられるので,その減収分が逸失利益として認められます。
後遺障害は高い方(重い方)から1級から14級までの等級がありますが,どの等級に該当する場合でも逸失利益は認められます。
ただ,等級が低い場合には労働能力喪失率が低くなって,逸失利益の金額も少なくなります。




逸失利益が認められるもう1つの類型が死亡事故です。
交通事故が原因で死亡してしまった場合には,事故後まったく収入を得ることができなくなるので,やはりその減収分を逸失利益として請求することができます。



これらのケースに対し,交通事故の中でも,後遺障害が残らない人身事故では逸失利益は発生しませんし,物損事故でもやはり逸失利益は認められません。







◆逸失利益が認められる人


交通事故で後遺障害が残ったり死亡したりした事案でも,必ずしも逸失利益が認められるとは限りません。
被害者の属性によっては,逸失利益が認められないことがあります。



逸失利益とは,事故によって得られなくなった将来の収入のことなので,逸失利益が認められるためには基本的に事故前に実際に収入があったことが必要です。

たとえばサラリーマンや自営業者,アルバイトの人などの場合には逸失利益が認められます。
また,専業主婦の場合,実際には収入がなくても家事労働に経済的な価値があると認められるので,逸失利益を請求することができます。この場合,基礎収入としては賃金センサスを利用します。

さらに,学生や幼児の場合にも,逸失利益が認められることがあります。
その場合にも,賃金センサスを用いて計算します。




これらのケースに対して,無職無収入の人は,基本的には逸失利益は認められません。
また,不動産収入で暮らしているような不労所得の人も,収入があっても逸失利益が認められません。


この場合,交通事故によって労働能力を喪失したことによって減収があったことにはならないからです。





(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

交差点での交通事故で,被害者にも過失はあるのですか?

2016年11月24日
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交差点で青信号を直進しようとしたところ,前からきた車が急に左折してきてぶつかってしまいました。私からすると避けようのない事故だったのですが,それでも過失はあるのですか?

状況によっても異なりますが,過失があると判断される場合も多いです。




【交差点での交通事故:過失割合】




◆交差点は交通事故が多い


交差点は交通事故が多いです。左右前方車が行き交うため事故も多くなります。

また,それら車の動きに加え横断歩道等を横断中の歩行者や自転車などもいますのでなおさら交通事故が多くなります。







◆千葉県での交通事故多発地点


平成27年度では,千葉県において1万9000件もの交通事故が発生しています(千葉県警察本部ホームページ参照)。平成26年の都道府県別道路交通事故の発生件数では,千葉県は9番目になっています。

ちなみに,日本損害保険協会ホームページに掲載されている平成26年の千葉県交通事故多発交差点は以下のとおりになっています。

1位:幕張公園前交差点(千葉市花見川区幕張町4丁目417番地25)
2位:千葉西警察署入口交差点(千葉市美浜区真砂2丁目1番地1号)
3位:園生十字路交差点(千葉市稲毛区園生町1042番地)

1位から3位まで千葉市が占めております。


日本損害保険協会ホームページには,上記交差点で事故が多い背景まで解説されていてとても興味深いです。

1位の幕張公園前交差点の場合には,件数が多い事故類型として「右折車と直進者の事故」が挙げられ,その原因として「対向車線を直進してくる車両を見落として衝突した」などという分析が記載されています。

交通事故多発交差点は10位まで発表されていますので,ご興味ある方は,日本損害保険協会ホームページをぜひご覧ください。







◆過失割合の決め方


過失割合はどのように決めるかというと,損害賠償額算定基準(いわゆる赤い本)や民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準という本を元に決定される場合が多いです。

これらの本には,事故の想定パターンが何種類も掲載されており,この事故だったらこの過失割合,というように,原則的な過失相殺率が記載されています。



裁判所もこれらの本を基準に過失割合を決定することが多いため,保険会社も弁護士もこの本の基準を参考にして過失割合の交渉をします。







◆交差点での過失割合


交差点での過失割合は,その交差点に信号があったのか,交差点の道路幅はどうなったのかなどによって過失割合が変わっていきます。

事故の加害者が交差点の信号を無視した結果衝突したような場合には,交差点での事故であっても過失割合は100:0です。
しかし,それ以外のパターンだと交差点での過失割合は100:0にはならない場合がほとんどです。


質問の場合の事故だと,基本の過失割合は15:85になります。

ただし,事故状況によって過失割合に修正がかかることも多いため,過失割合について疑問をもった場合には,弁護士に相談することをおススメします。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前原 彩)

子どもをチャイルドシートに乗せないまま,交通事故に遭ってしまったらどうなりますか?

2016年11月22日
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子どもを車に乗せている際に,後ろから追突され,子どもが怪我をしました。
追突で私は完全な被害者なはずなのに,加害者の保険会社は,「チャイルドシートに乗せてなかった私が悪い」と言ってきます。これってどうなんですか?


チャイルドシートに乗っていなかった子どもが怪我をした場合,過失があると判断されてしまう場合があります。




【チャイルドシートの重要性】



◆チャイルドシートって?


日本では6歳未満の乳幼児を車両に乗せる場合には,乳幼児の安全を確保するために,乳幼児を座席に固定して座らせるチャイルドシートの着用が義務付けられています。


6歳未満の子どもを車に乗せているにもかかわらずチャイルドシートに乗せていなかった場合,1点減点になります。







◆チャイルドシートの使用率


JAFのデータによると,6歳未満の子どものチャイルドシート乗車率は,62.7%という意外な結果が出ています。1歳未満だとその数字は85.2%に上りますが,1歳〜4歳だと64.4%,5歳だと38.1%にまで下がります。
(JAF 交通安全とエコ全国調査データ2015年より引用)




自動車乗車中の幼児の死亡事故のうち,チャイルドシードと使用していなかった場合の死亡率は使用していた場合より3倍高いというデータもありますので(国土交通省自動車総合安全情報より引用),小さな子どもがいる場合には,必ずチャイルドシートに乗せてあげましょう。







◆チャイルドシートに乗せていなかった場合に過失になる!?


では,そのチャイルドシートに子どもを乗せていなかったときに交通事故に遭あった場合,チャイルドシートに乗せていなかったことが何らかの過失になるのでしょうか。



◆裁判例上過失になっている場合も多い


・チャイルドシートの乗せられていなかった2歳2カ月の幼児について,チャイルドシートに乗っていなかったことを理由として5%の過失が認められた事例(名古屋地裁平成21年2月25日判決)。

・センターラインオーバーの対向車に衝突された際,チャイルドシートに乗せられていなかった2歳の子ともが,頭蓋骨骨折等で死亡した事案について,チャイルドシートを装着することのできない後部座席に,大人が介添えもできない位置関係で着席していたことから5%の過失があるとした事例(大阪地裁平成15年9月24日判決)。


チャイルドシートは子どもの大事な命を守ってくれるものであるうえ,追突やセンターラインオーバーなど,本来であれば10:0になる事故であるにもかかわらず,チャイルドシートをしていなかったための,こちらにも過失があるとされる場合がありますので,6歳未満の子どもを車に乗せる際には,絶対にチャイルドシートを使用しましょう。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前原 彩)

物損の時価額って何ですか?

2016年11月21日
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後ろから追突されて,車が凹んでしまいました。
 修理に出そうと思ったら,「時価額までしか修理費を出しません」と言われ
 困っています。どういうことですか?


物損の場合,被害車両の修理費と事故当時の時価額(+買い替え諸費用)を比較して,
 低い方が損害賠償額となります。
 修理費より事故当時の車両時価の方が低い場合には,原則としてその時価までしか補償さ
 れません。


【物損時価額】



◆全損ってなに・・・?


交通事故の損害賠償の世界でいう全損とは,「物理的全損」と「経済的全損」の2種類あります。

物理的全損とは読んで字のごとく,物理的に修復不可能な損害を被った場合をいいます。

具体的には,車がぺちゃんこになり直しようがない場合などです。

経済的全損とは,車の修理費が事故当時の車両時価+買い替え諸費用を超えている場合をいいます。
具体例としては,車の修理費が100万円,車の時価が50万円の場合には,修理費が時価を超えていますので,経済的全損と判断されます。






◆全損の場合の補償額は・・・?


物理的全損,経済的全損いずれも,全損と判断された場合には,事故当時の被害車両の時価額の範囲でしか補償がされません。
それは,損害賠償というものが,対象物の価格(交通事故でいえば事故当時の被害車両の時価)を賠償するものであるからです。

そして交通事故の場合,被害車両の時価は,被害車両と同一の車種・年式・型・使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するに要する価格によって定めるとされています(最高裁昭和49年4月15日判決)。






◆実務における時価額の出し方


実務においては,中古車の場合の時価額を,オートガイド自動車月報(レッドブック)に依拠する場合が多いです。保険会社もレッドブックにしたがって時価額を算出している場合が多いです。
レッドブックにはあらゆる年式・車種の価格が記載されており,だいたいの車はレッドブックを見れば時価を知ることができます。

また,レッドブック以外にも「カーと言えばgoo」でおなじみのgooなどのインターネットサイトにて事故当時の被害車両と同じような条件の車がいくらで取引されているかによって時価額を算出する場合もあります。

保険会社から提示された時価額とインターネットサイトに載っている時価額が大きく異なるような場合には,インターネットサイトを根拠の一つとして,時価額賠償額を引き上げるよう交渉するのもいいかもしれません。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前原 彩)

脊髄損傷と素因減額とは,なんですか?

2016年11月17日
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脊髄損傷と素因減額とは,どんな関係がありますか?

事故前から有していた精神的な要因や体質的な要因(既往症や身体的特徴)が,損害の発生又は拡大に影響している場合に,素因減額を認めるかが問題になることが多いです。




【素因減額】



◆素因減額とは


特に後遺障害が認定されている事案で,交通事故と被害者の身体に生じた損害との間に相当因果関係は認められるが,当該被害者がもともと事故前から有していた精神的な要因や体質的な要因(既往症や身体的特徴)が,損害の発生又は拡大に影響している場合に,賠償金額を定めるにあたり,それらの要因を考慮して,賠償金額を減額することができるかという問題があります。


これは,素因減額の問題と呼ばれ,とりわけ訴訟の場において大きな争点になります。



体質的な要因について,裁判実務上は,概ね次のように考えられています。

@被害者にもともと罹患していた疾患があり,それが損害の発生又は拡大に寄与していることが明らかな場合には,賠償金額が減額されます。

A加齢性の変性については,その年齢の人間に通常みられる程度の変性であり,疾患といえるような状態になかった場合には,賠償金額は減額されません。

B被害者が平均的な体格・体質と異なる身体的特徴を有していたとしても,それが疾患に当たらない場合には,賠償金額は減額されません。



◆脊髄損傷と素因減額



被害者が脊髄損傷を負った場合の賠償金額の決定においては,被害者がもともと事故前から後縦靱帯骨化症や,脊柱管狭窄症等の既往症を有していたことを原因として,素因減額を認めるかが問題になることが多いといえます。


そこで,脊髄損傷との関連で問題となる代表的な既往症として,「後縦靱帯骨化症」及び「脊柱管狭窄症」について,以下解説します。


・後縦靱帯骨化症について


後縦靱帯骨化症とは,椎体骨の後面を上下に連結し,背骨の中を縦に走っている後縦靱帯が骨化し,脊柱管が狭窄することにより,脊髄や神経根が圧迫され,感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす疾患です。
当該疾患は,50歳前後で発症することが多く,女性よりも男性に多くみられます。

後縦靱帯骨化が起きている人は,骨化した靱帯により脊柱管が狭くなることで,もともと脊髄が圧迫されていて,軽度の外傷によっても脊髄が傷つきやすい状態にあるとされています。

後縦靱帯骨化症が既往症として認められ,30%の素因減額が認められた裁判例もあります。
もっとも,後縦靱帯骨化が認められたとしても,それだけで素因減額が認められる訳ではなく,後縦靱帯骨化の程度が,その年齢の人間に通常みられる程度の変性にとどまる場合や,脊柱管の占拠率が大きくない場合には,素因減額が否定されたり,減額の程度が低くなることがありますので,慎重に分析・判断することが重要です。

 


・脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症とは,先天的又は後天的に,神経が通る管(脊柱管)が狭くなることにより,神経組織が圧迫され,血行が阻害されることにより症状が出る疾患です。
原因としては,先天性の場合以外に,変形性脊椎症による椎体の骨棘や変性すべり症,後縦靱帯の肥厚などが考えられます。中高年の方に多くみられる疾患です。

脊柱管に狭窄がみられる場合,脊柱管の構造上,外傷によって脊髄に損傷が生じやすいと言われております。
したがって,脊柱管狭窄症がもともと存在していた場合には,事故による外傷とあいまって脊髄損傷が生じたとして,素因減額の対象となることがあります。



その場合の減額率には裁判例上かなりの幅があり,5〜60%のばらつきがあります。

裁判において脊柱管狭窄症が問題となる場合には,

@そもそも脊柱管の状態が疾患に該当するレベルの狭窄といえるか,
A当該狭窄が既往症として存在していたものか,事故による外傷により生じたものなのか,
B脊柱管狭窄が,既往症かつ疾患に該当するレベルであったとしても,減額率をどの程度まで認めるのか,

等が争点になります。


(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

脊髄損傷による等級認定とは,どのような事をするのですか?

2016年11月15日
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脊髄損傷による等級認定とは,どのような事をするのですか?

後遺障害に対する自賠責保険の給付を受けるには,後遺障害等級の認定を受けなければなりません。申請にあたっては,医証の提出・被害者の日常生活状況を伝える報告書などが必要になります。




脊髄損傷による等級認定



◆脊髄損傷による後遺障害等級


後遺障害に対する自賠責保険の給付を受けるには,損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所による後遺障害等級の認定を受けなければなりません。
そして,自賠責保険の等級の認定は,原則として労災の等級認定の基準に準じるとされており,かかる労災の基準は,『労災補償 障害認定必携』に掲載されております。
 

脊髄損傷による後遺障害等級の認定は,以下の7段階に区分されています。

1級:脊髄症状のために,生命維持に必要な身の周りの処理の動作について,常に他人の介護を
   要するもの

2級:脊髄症状のため,生命維持に必要な身の周りの処理の動作について,随時介護を要する
   もの
 

⇒1級及び2級については,「介護を要する後遺障害」に区分されており,極めて重度な状態といえます。


3級:生命維持に必要な身の周りの処理の動作は可能であるが,脊髄症状のために労務に服することができないもの

⇒3級については,介護は不要ながら,いかなる労務にも服することができない状態です。
何らかの労務に服することが可能な場合には,5級以下の等級になります。



5級:脊髄症状のため,きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの
7級:脊髄症状のため,軽易な労務以外には服することができないもの
9級:通常の労務に服することはできるが,脊髄症状のため,就労可能な職種の範囲が相当な程
   度に制限されるもの
12級:通常の労務に服することはできるが,脊髄症状のため,多少の障害を残すもの

⇒5〜12級については,何らかの就労に服することが可能という点では共通しますが,どの程度の労務に就労可能かの判断は非常に難しいものがあります。





◆後遺障害等級の認定に向けて


脊髄損傷の後遺障害等級認定の申請(被害者請求)にあたっては,まずは,医証を集めることが不可欠です。

必要な医証としては,
@通常,症状固定時に作成される後遺障害診断書だけではなく,A「脊髄症状判定用」,
B「神経学的所見の推移について」,C「症状の推移について」
も必要になります。

特にAについては,脊髄損傷の場合に特有な医証になります。
これらの書面を主治医の先生に作成してもらいます。

また,医師には分かりにくい,被害者の日常生活状況を伝えるために,「日常生活状況報告書」を作成するとよいと思います。

特に、後遺障害等級5〜9級のいずれに該当するかが問題となるようなケースでは、「日常生活状況報告書」の記載内容が重要になります。


ご自身またはご家族や職場の同僚の方に、被害者の方の日常生活の様子、特に労務に関する状態につき、具体的なエピソードを交えて詳しく記載していただくことが重要になります。




脊髄損傷が生じた場合の後遺障害等級の認定は,原則として身体的所見及びCT,MRI等によって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度に基づいて判断されますので、CT画像やMRI画像の提出も必要です。


特にMRIについては、撮影機器の性能により、存在するはずの小さな損傷が発見できないこともあり得ます。性能の良いMRIがどの医療機関にあるかは、地元の医療機関の情報に詳しい弁護士に聞いてみるとよいと思います。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

脊髄損傷のリハビリテーションとは,どのような内容ですか?

2016年11月08日
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脊髄損傷のリハビリテーションとは,どのような内容ですか?

脊髄損傷のリハビリテーションは,その時期により,内容が異なります。脊髄損傷では必ず問題になる合併症の予防のためにも,リハビリテーションは極めて重要です。


【脊髄損傷のリハビリテーション】



◆リハビリテーションの重要性


脊髄損傷におけるリハビリテーションは,残存筋力の維持・強化のみならず,脊髄損傷では必ず問題になる合併症の予防のためにも,極めて重要です。また,社会復帰に向けた動作訓練としてのリハビリテーションも必要不可欠なものです。

脊髄損傷のリハビリテーションは,その時期により,内容が異なります。


具体的には,受傷時より3〜4週間までの急性期と,受傷から3〜4週間経過後の亜急性期では,リハビリテーションの目的や内容が異なります。


以下,急性期の治療と亜急性期に分けて説明致します。






◆急性期のリハビリテーション


急性期のリハビリテーションの主要な目的として,まず,合併症の予防があげられます。
代表的な合併症としては,褥瘡の予防,尿路・呼吸器感染症の予防,関節拘縮の予防が挙げられます。

褥瘡の予防には,頻回の体位交換が重要ですまた,無圧マットや枕を使って荷重を分散させることも行います。
さらに,最近では,褥瘡予防を目的とした種々のベッドが開発されています。



脊髄を損傷した多くの方は,自力で排尿できないため,カテーテルを使って導尿を行います。

カテーテルを介して雑菌が尿道や膀胱に入らないよう,排尿時には手指や器具の清潔を徹底する必要があります。

関節拘縮の予防には,関節可動域訓練,理学療法,他動運動を行う必要があります。
残存筋力の維持・強化については,徒手筋力テストによる筋力の評価を見ながら,運動療法が処方されます。






◆亜急性期のリハビリテーション


社会復帰へ向けて,リハビリテーションの内容が変わっていきます。
主たる目的としては,座位あるいは立位の保持,移動動作,食事や入浴といった日常生活動作,車椅子動作,歩行動作ができるようになることがあげられます。

具体的には,上肢を使いプッシュアップ訓練を行ったり,姿勢を維持するための体幹筋強化訓練,寝返り訓練やバランス訓練などの基本的リハビリテーションが行われます。

基本動作の訓練が進むと,車椅子訓練や,平行棒歩行や松葉杖歩行といった移動訓練などに進みます。社会復帰に向けて,食事や更衣,入浴といった日常生活の動作の訓練も行われます。







(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

脊髄損傷の治療には,どのようなものがありますか?

2016年11月01日
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脊髄損傷の治療には,どのようなものがありますか?

現在,挫滅損傷された脊髄に対しては,再建のための確立された治療手段はないと言われております。脊髄損傷治療の基本的な考え方は,二次的な脊髄障害を防止し,脊髄の不可逆性変化を最小限にとどめることにあるとされています。




【脊髄損傷の治療】




■脊髄損傷の治療


現在,挫滅損傷された脊髄に対しては,再建のための確立された治療手段はないと言われております。
脊髄損傷治療の基本的な考え方は,二次的な脊髄障害を防止し,脊髄の不可逆性変化を最小限にとどめることにあるとされています。


そして,脊髄損傷治療は,その時期により内容が異なります。

具体的には,受傷時より3〜4週間までの急性期と,受傷から3〜4週間経過後の亜急性期の治療では,その内容が異なります。以下,急性期の治療と亜急性期の治療に分けて説明致します。




■急性期の治療


急性期の治療の主要な目的は,損傷脊椎部の安静を維持しながら,脊髄損傷及び合併損傷による危険な全身状態を管理し,これからも発生する可能性のある合併症をあらかじめ防止し,破壊された脊椎を固定し,早期に離床やリハビリテーションに進むことにあるとされております。

・救命措置と全身管理

全身管理については,呼吸管理,循環管理,消化器管理,尿路管理があり,その中でも,特に呼吸管理と循環管理が重要だとされています。頚髄損傷では,気道の確保や人工呼吸といった呼吸管理を行い,原則として気管切開の方法がとられます。




・薬物療法

脊髄損傷後に進行する二次的破壊を防ぐ目的で,受傷直後にステロイド剤(メチルプレドニゾロン)を大量投与する治療法が行われることがあります。かかる治療法の効果や合併症については,現在も議論がなされています。

・手術や保存療法による脊髄除圧と脊髄保護

脊髄損傷に対する手術の目的は,主には脊髄の除圧にあり,除圧の後に脊椎固定術を行い脊柱の支持機能を再建します。
不完全損傷の場合には,骨傷のない場合以外は,ほとんどが手術の適用となるとされています。
骨傷のない脊髄損傷については,基本的には局所安静,装具による保存療法となります。

・合併症予防

受傷早期からの合併症対策は,患者の予後に大きな影響を与えるとされています。代表的なものとしては,褥瘡の予防,尿路・呼吸器感染症の予防,関節拘縮の予防が挙げられます。関節拘縮の予防として,ベッドサイド運動療法が行われます。




■亜急性期の治療


亜急性期の治療の主要な目的は,遅発性脊柱変形や遅発性脊髄障害の治療,合併症や随伴症状の措置,社会復帰に向けてのリハビリテーションを行うことにあります。

・遅発性脊柱変形や遅発性脊髄障害の治療

遅発性脊柱変形や外傷性脊髄空洞症を原因として,改善していた麻痺が悪化することがあります。
これらに対しては,手術による治療が行われることが多くあります。

 

・合併症や随伴症状の措置

麻痺域の関節周辺に発生することの多い異所性骨化,筋肉に力が入り過ぎて動きにくかったり,勝手に動いてしまう痙縮,尿路感染症等への措置が問題となることがあります。




・リハビリテーション

亜急性期のリハビリテーションでは,ベッドサイド運動療法から,座位や立位保持,日動生活動作,移動動作の訓練に移ります。社会復帰に向けた訓練が行われます。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

羽賀研二受刑者(詐欺・恐喝未遂で懲役6年で服役中)に民事裁判で勝訴してお金の返金を受けることはできるでしょうか。

2016年10月28日
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 羽賀研二受刑者(詐欺・恐喝未遂で懲役6年で服役中)に民事裁判で勝訴してお金の返金を受けることはできるでしょうか。


タレント・羽賀研二受刑者に約4億円の賠償金の支払を命ずる判決がでたそうです。(注1)
2013年に懲役6年の刑(詐欺・恐喝未遂)(注2)となりで現在服役中ですが,民事裁判に勝ったとして回収はできるものなのでしょうか。

結論としては,回収はなかなか難しいと思います。

民事裁判で勝った場合,裁判所は「4億円を支払え」という判決を出してくれます。
しかし,もちろんですが,裁判所がお金を支払ってくれることはありません。被告が任意にお金を支払ってくれればよいですが,誠意をもって支払ってくれないからこそ,ここまで話がこじれてしまっているのだと思います。

とすれば,後は,裁判で勝ったことを前提にして差押えの手続きをするということになります。
差押えの手続きをする場合には財産を特定する必要があります。例えば,不動産(土地建物)であれば具体的な住所(正確には地番等),預貯金であれば原則として銀行名と支店名などです。

一般的には刑務所で受刑中という人の場合,不動産をもっている確率は低いです。
また,預貯金口座を特定することも難しいですし,預貯金口座を特定できたとしても,その口座にお金が入っている可能性も低いです。

また,刑務所の作業報奨金を差押えるということも不可能ではありませんが,金額が少ない割には手続きが極めて複雑です。

出所後に芸能活動を再開するようなことがあれば,収入を差押えするということはありえそうですが,出所後に芸能活動を再開するというのは普通に考えると難しいのではないかと思います。

なお,ニュースによると,裁判を起こした原告は「全額返してくれるならもう一度助けてやりたい」と話しているとのことです。

交通事故で相手が無保険・無資力の事案の時などでもよくあるのですが,相手が刑務所にいってしまい,全く回収ができないということは多々あります。

非常に不条理ですが,これが現実です。


■結論

羽賀研二受刑者(詐欺・恐喝未遂で懲役6年で服役中)に民事裁判で勝訴してもお金を回収することは難しい。


(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

(注1)毎日放送10月27日付WEBサイトの記事による。

(注2)
刑事事件については以下の判断がされています。
地方裁判所の判決 無罪
高等裁判所の判決 懲役6年
最高裁の判決 上告棄却で懲役6年が確定
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弁護士法人よつば総合法律事務所
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