交通事故の健康保険と過失相殺,労災給付金と過失相殺の仕組みはどうなっているのですか?

 
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交通事故の健康保険と過失相殺,労災保険と過失相殺の仕組みはどうなっているのですか?

損益相殺と過失相殺の順序の問題です。
健康保険の場合は,損益相殺後過失相殺を行い,労災保険の場合は,過失相殺後損益相殺を行うのが一般的な考え方です。





過失相殺 : 健康保険と労災保険



◆損益相殺




交通事故によって被害を受けたとき,被害者には,加害者に対する損害賠償請求権が発生します。

一方,被害者が交通事故を原因として加害者以外の者から金銭の支払を受けたとき,その支払われた金額は,加害者が賠償すべき金額から控除すべきだという制度を,損益相殺といいます。




たとえば,健康保険を使用して治療を受けたとき,保険者から治療費の7割が支払われます。

この7割分は,損益相殺の対象となり,加害者が被害者へ賠償する必要はなくなります(保険者が加害者に求償されることがあることは別の問題です。)。

また,被害者が労災保険から休業(補償)給付を受けたとき,その給付金額は損益相殺の対象となり,加害者が被害者へ賠償する必要はなくなります(費目拘束や特別支給金の問題がありますが,ここでは触れません。)。







◆過失相殺




交通事故によって被害を受けたとき,被害者には,加害者に対する損害賠償請求権が発生します。

一方,交通事故の被害者にもある程度の落ち度があるときには,被害者の落ち度の分だけ,加害者が賠償すべき金額を減額すべきであるという制度を,過失相殺といいます。







◆損益相殺と過失相殺の順序




被害者に過失があり,かつ,健康保険を使って治療したときは,過失相殺も損益相殺も問題となります。

このような場合,過失相殺を先に行うのか,損益相殺を先に行うのかによって,被害者にとって有利不利が変わってきます。

過失相殺後,損益相殺のほうが不利です。




たとえば,損害額が500万円被害者の過失が2割損益相殺されるべき金額が100万円という事例があった場合,


@過失相殺→損益相殺の方法

まず過失相殺を行って加害者が賠償すべき金額は400万円となります。
さらに損益相殺を行って100万円を控除しますと,300万円となります。
したがいまして,損害賠償額は300万円です。




A損益相殺→過失相殺

まず損益相殺を行って100万円を控除しますから,加害者が賠償すべき金額は400万円となります。その後過失相殺を行うと,320万円となります。
したがいまして,損害賠償額は320万円です。




◆健康保険の場合




健康保険から支払われた治療費について,裁判所では,損益相殺を先に行い,その後過失相殺を行うという考え方が一般的です。

治療費だけでなく,傷病手当や高額療養費についても同様の順序で処理を行った裁判例があります。

なお,健康保険から支給された葬祭費について,過失相殺を先に行うべきであるとする最高裁判例があります(最判 平成15年9月30日民集第59巻5号901頁。ただし政府保証事業の請求がされた事例。)。







◆労災保険の場合




労災保険では,過失相殺を行ってから損益相殺を行う考え方が採用されています(最判平成元年4月11日判例時報1312号97頁など)。

以上のように,過失相殺と損益相殺の順序の問題は単純ではありません。それなので,任意保険会社担当者が正確に理解しているとは限りません。

問題になったときは,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・交通事故の過失相殺とは
・交通事故における損害賠償の項目について
・よつば総合法律事務所の交通事故解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の加害者が酒気帯び運転でした。酒気帯び運転が慰謝料増額事由になりますか?

 
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交通事故の加害者が酒気帯び運転でした。酒気帯び運転が慰謝料増額事由になりますか?

酒気帯び運転や飲酒運転のケースでは,慰謝料が増額されることがあります。
特に,死亡事故の場合,慰謝料が増額されやすいです。高額な慰謝料の支払を命じた裁判例も多数あります。





 酒気帯び運転 : 慰謝料増額事由 



◆飲酒運転に対する厳罰化が進んでいる




近年,飲酒運転に対する社会の意識が変わり,厳しく取り締まられるようになっています。

刑事罰としては,自動車運転過失致死傷罪や危険運転致死傷罪が創設されて,厳罰化も進んでいますし,道路交通法も改正されて,取り締まりが強化されています。

それは,飲酒運転が悪質だからです。




飲酒すると,判断力が低下して重大な事故を引き起こしやすいことは知られているのに,あえて飲酒した状態で運転をすることに問題があります。

このような加害者の勝手な行為によって交通事故被害を受けたら,被害者やその遺族が受ける精神的苦痛は,通常の事故より大きくなります。

そこで,飲酒運転や酒気帯び運転で交通事故を起こすと,とくに死亡事故のケースにおいて大きく慰謝料が増額されます。







◆死亡慰謝料の基準




通常の死亡事故の慰謝料の基準は、以下の通りです。

・一家の支柱の場合…2800万円
・母親や配偶者の場合…2500万円
・その他の場合(独身者、子供など)2000万円〜2500万円








◆慰謝料が増額された事例




それでは,酒気帯び運転や飲酒運転のケースにおいては,どの程度慰謝料が増額されるのでしょうか?

以下で、裁判例をご紹介します。



【裁判例1】
酒気帯び運転で,30キロメートル以上のスピードオーバーをしながら共同暴走行為を行い,追突事故を起こして,17歳の男子高校生が死亡した事案です。3000万円の死亡慰謝料支払が命じられました(大阪地裁平成12年1月19日)。


【裁判例2】
飲酒運転をしていて,高速道路を逆走して衝突事故を起こしたために,被害者である61歳の男性が死亡したケースです。この事案では,3600万円の死亡慰謝料が認められました。(東京地裁成15年3月27日)。


【裁判例3】
飲酒運転で対向車線に進入して,被害者の乗用車に衝突した事案です。加害者は,救護活動も一切行いませんでした。この事案では,被害者本人の慰謝料2600万円,妻と母親の慰謝料が各500万円として,合計計3600万円の死亡慰謝料を認定しました(東京地裁平成16年2月25日)。


【裁判例4】
飲酒運転で居眠りしていた加害者が,歩行中の女性をはねて死亡させた事故です。この事案では,本人の慰謝料2700万円,夫が200万円,子ども3人がそれぞれ100万円として,合計3200万円の死亡慰謝料を認定しました(東京地裁平成18年10月26日)。







以上のように,交通事故で相手が酒気帯び状態の場合,死亡事故等の重傷の場合には慰謝料が増額される可能性が高いです。被害者の無念を晴らすためにも,正当な慰謝料支払を請求しましょう。




▼参考記事
・交通事故と慰謝料のすべて
・飲酒運転の加害者に対し,裁判をおこし保険金額が2.74倍に増額した解決事例
・慰謝料増額




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故の怪我が,とても痛いのに後遺障害として認定されません。おかしくないですか?

 
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交通事故の怪我が,とても痛いのに後遺障害として認定されません。おかしくないですか?

交通事故で後遺障害として認定されるためには,痛みなどの自覚症状はもちろんのことですが,それだけではなく,客観的に把握できる他覚症状も重要です。他覚症状を証明するため,適切な方法で検査を受けるなどの対応を行いましょう。




 後遺障害認定 : 他覚症状



◆自覚症状と他覚症状



交通事故が原因でケガをすると,さまざまな症状が出ます。

このとき,症状は「自覚症状」と「他覚症状」に分類することができます。

自覚症状というのは,患者が自分で感じることができる症状です。たとえば,痛みやしびれ,痒みやうずきなどの症状が自覚症状です。

これに対し,他覚症状というのは,医師などの第三者が客観的に把握できる症状です。たとえば,レントゲンやMRIなどにより,骨折や組織の異常,変形などを確認できる場合です。







◆後遺障害認定では,他覚症状が重要




後遺障害の等級認定においては,「他覚症状」が非常に重視されます。

自覚症状は,患者が訴えている症状にすぎず,それだけでは,それを客観的に証明することができません。

痛みを強く感じる人は強く訴えるでしょうし,感じない人はあまり強くは主張しないでしょう。また,同じ痛みを感じていても,強く主張する人もいればおとなしい人もいます。

自覚症状を基準に判断すると,人の感じ方や主張方法によって,不公平になってしまいます。

他覚症状であれば,レントゲンなどの画像によって,確実に客観的に把握できますし,不公平も発生しません。そこで,後遺障害の認定を受けるためには,他覚症状が重要です。







◆他覚症状を証明する方法




後遺障害認定の場面で重視されるのは,他覚症状の中でも画像診断です。
レントゲンやMRIなどの画像に異常が見られると,後遺障害の認定を受けやすいです。

もし,こういった画像検査を十分にしていないなら,新たに検査をしてみるべきです。

たとえば,レントゲンには映らなくてもMRIを撮ったら異常が明らかになることがありますし,より精度の高いMRI検査機器を使うことによって,異常を明らかにできるケースもあります。







◆症状を証明できなくても認定される等級




また,画像診断などによって,症状を明確に「証明」できなくても,認定される後遺障害の等級があります。

それは,もっとも低い等級である14級です。

14級9号の場合,自覚症状に相当する症状があることを,医学的に説明できる場合に認定されます。明確に証明ができなくても,説明ができる場合には,認定を受けられる可能性があるということです。

そのためには,たとえば神経学的検査の結果,自覚症状の訴えの経過,その交通事故によってその結果が発生することが自然であるといえるかといった点が評価されます。




以上のように,後遺障害等級認定は,「痛い」との訴えがあれば認定されるというものではないです。
お困りの場合,よつば総合法律事務所まで,お気軽にご相談ください。




▼参考記事
・後遺障害等級について
・後遺障害申請の準備はとっても大切!!
・症状固定・後遺障害の等級認定




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故に遭いました。 脊髄損傷の素因として問題となるものは何がありますか?

 
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交通事故に遭いました。
脊髄損傷の素因として問題となるものは何がありますか?


交通事故で脊髄損傷となった場合,「後縦靱帯骨化症」や「脊柱管狭窄症」の既往症があると,素因減額が問題になりやすいです。




 脊髄損傷の素因



◆素因減額とは




素因減額とは,交通事故の被害者側に何らかの要因があり,それが損害の拡大を招いている場合に,賠償金を減額することです。

交通事故で被害者に発生した損害は,基本的に加害者が負担すべきです。しかし,被害者側にも責任を問うべき事情があれば,その分は被害者に責任を負わせることが公平です。




そこで,被害者側に損害拡大させる要因がある場合には「過失相殺」を類推することにより,賠償金を減額します。

脊髄損傷の場合には,後縦靱帯骨化症や脊柱管狭窄症の既往症(被害者がもともともっていた症状)があると,相手の保険会社から素因減額を主張されやすいです。







◆後縦靱帯骨化症




後縦靱帯骨化症とは,背骨内の「後縦靱帯」という組織が骨化して,脊柱管(脊髄が通っている管)が狭くなる症状です。これにより,脊髄や神経根が圧迫されて,運動障害や感覚障害などが発生します。

後縦靱帯骨化症の人は,脊柱管が通常よりも狭くなっているので,常に脊髄が圧迫される状態になっており,軽いケガによっても脊髄がダメージを受けて症状が発生しやすいです。

そこで,交通事故の脊髄損傷の結果が発生したり悪化したりしやすいので,素因減額を主張されます。




実際に,50%の素因減額を認めた裁判例などもあります(大阪地裁平成24年9月19日)。

ただし,後縦靱帯骨化があるからといって,どのようなケースでも素因減額されるわけではありません。
既往症の程度や内容,被害者の年齢によって,判断が異なります。


減額の程度が低くなることもありますし,場合によっては素因減額が否定される可能性もあるので,個別のケースにおいて,慎重に検討すべきです。







◆脊柱管狭窄症




脊柱管狭窄症とは,脊柱管が狭くなることで,神経組織が圧迫される症状です。
先天性の場合もありますし,後天性の場合もあり,中高年の方に多くみられる疾患です。

脊柱管が狭窄していると,軽度な外傷によっても脊髄がダメージを受けて症状が出やすいので,事故前から脊柱管狭窄症の既往症があると,素因減額を主張されやすいです。

実際に,30%の素因減額を認めた裁判例などもあります(京都地裁平成12年7月25日)。




ただし,脊柱管狭窄症がある場合でも,一律に素因減額が行われるわけではありません。
そもそも,脊柱管狭窄が「疾患」と言える程度に至っていたのか,狭窄の程度は,年齢相応のもののだったのかが問題
です。

実際に,脊柱管狭窄症による素因減額を否定した事案もあります(大阪地裁平成13年6月28日,名古屋地裁平成18年12月15日など)。




また,素因減額を行うとしても,どの程度減額するのかも検討しなければなりません。
相手の保険会社の主張を,そのまま受け入れる必要はないケースが多い
です。

このように,脊髄損傷となった場合,示談交渉において素因減額が問題となりやすいです。
お困りの場合には,是非とも一度,ご相談ください。




▼参考記事
・保険会社から素因減額を主張され,主治医への面会や書面の照会等を行い,示談金0円→約2800万円で解決した事例
・脊髄の圧迫骨折
・医師への面談により早期かつ妥当な解決を実現




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

家族が遷延性意識障害になり,職業介護人にも来てもらっています。 ところが,職業介護人の方ができないことがあるそうです。これはどういう事なのでしょうか?

 
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家族が遷延性意識障害になり,職業介護人にも来てもらっています。
ところが,職業介護人の方ができないことがあるそうです。これはどういう事なのでしょうか?


職業介護人は,医師や看護師ではないために,医療行為や医療類似行為を行うことができません。日常的なことであっても,医師の承諾が必要になるものがあります。




 職業介護人ができること・できないこと



◆介護士は,医療行為や医療類似行為はできない




遷延性意識障害になると,職業介護人に来てもらって,被害者の介護を継続していくことがあります。

しかし,介護士は医師や看護師ではないので,「医療行為」や「医療類似行為」をすることはできません。もし,勝手にこれらの行為をすると,医師法などの法律違反になってしまいます。




そして,医療行為とされるものには,一般的な感覚では「当然にできる」と思われるものもあります。

介護士から「それはできません」と言われたときに,家族としては困惑するかもしれませんが,法律による規定があるので,やむをえないのです。







◆介護士ができること




以前は,介護士ができる内容は,非常に限定されていました。

それでは今後の高齢化社会に対応することが難しいだろうということで,2005年に通達が出されて,現在,以下の内容であれば介護士でもできるようになっています。

・体温計を使って体温を測定する     ・電子血圧計を使って血圧を測定する
・血中酸素飽和度を測定する       ・軟膏を塗布する
・湿布を貼付する            ・耳垢をとる
・目薬をさす              ・内服薬の内服介助をする
・坐薬を挿入する            ・薬を鼻腔内へ噴射する介助
・爪切り・爪やすりを使用する      ・使い捨て浣腸器による浣腸
・歯磨きや口腔内清掃をする       
・人工肛門のパウチにたまった排泄物の廃棄やパウチの装着
・自己導尿補助やカテーテルの準備,体位の保持
・軽傷ややけど等で,簡単な処置やガーゼ交換をする


また,2012年からは,研修を受けた介護人は,以下の2つの行為を行うことができるようになりました。

・吸たん機による除痰 
・胃ろうや経管による栄養摂取






◆職業介護人ができないこと




以下のような行為は,医療行為に該当するため,職業介護人が行うことはできません。

・褥瘡の消毒などの処置
・水銀式血圧測定器を使用した血圧測定
・吸入の処置
・点滴の管理
・摘便
・個別のシートに入った薬を,指定個数出して服用させること
・注射
・血糖値の測定


以上のように,職業介護人にはできることとできないことがあります。過剰な期待をしても,法律上制限があるので,致し方ありません。遷延性意識障害の患者の介護は,病院とも連携しながら進めていく必要があります。




遷延性意識障害の患者のご家族でお困りの場合,交通事故問題に強い,よつば総合法律事務所まで,お気軽にご相談ください。




▼参考記事
遷延性意識障害を負われた方の解決事例
・将来介護費について(裁判基準)
・主婦の将来介護費は,どのように計算されますか?




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

任意保険会社から,事故当初から健康保険を使用するよう勧められています。事故当初から健康保険を使用したほうが良い場合もあるのですか?

 
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任意保険会社から,事故当初から健康保険を使用するよう勧められています。事故当初から健康保険を使用したほうが良い場合もあるのですか?

被害者側の過失割合が大きいケースや,重症で治療費が高額になることが見込まれる場合には,健康保険の利用をお勧めします。

加害者が任意保険に加入していないケースも,健康保険を使用すべきです。
(後期高齢者医療保険もありますが,考え方は同じです。)





 治療 : 健康保険を利用した方が良い場合



◆交通事故後の診療には,自由診療と保険診療がある




交通事故に遭って,病院で治療を受けるときの診療方法には,自由診療と保険診療があります。

保険診療とは,健康保険を利用する場合の診療で,1点10円で計算されます。

これに対し,自由診療の場合には,病院が点数の単価を任意に決定するので,1点が20円や30円程度となっていることなどが普通です(1点20円であることがほとんどです。)。




交通事故後,健康保険を使って診療を受ける場合には保険診療となりますが,相手の任意保険会社から支払をしてもらう場合には,自由診療となることが多いです。

そして,相手が任意保険に加入していない場合や任意保険の限度額が小さい場合,被害者の過失割合が大きい場合,重症で治療費が高額になることが見込まれる場合には,事故当初から健康保険を使って治療をする方が,結果的には被害者にとってメリットになります。







◆被害者の過失割合が大きい場合




交通事故の態様により,被害者の過失割合があるケースでは,健康保険を利用した方が得になりやすいです。

交通事故の損害賠償金には,過失相殺が行われます。
このとき,治療費も損害と扱われ,過失相殺の対象となります。

相手の任意保険会社が,高額な治療費を全額支払った場合,その分過失相殺される対象の金額が上がってしまうので,結果的に任意保険会社から受けられる賠償金が減額されてしまいます。

そこで,事故後,相手から「被害者の過失割合がある」と主張されているケースなどでは,当初から健康保険を適用して通院をすることを検討しましょう。







◆重傷で治療費が高額になることが見込まれるとき




典型的には,長期の入院や手術を要するような治療が必要なケースです。

こうしたケースでは,点数が高くなり,1点10円のときと1点20円のときの治療費の差額が大きくなります。したがって,このようなとき,加害者の任意保険会社は健康保険の使用を要請してくることがあります。




過去の裁判例では,1点単価の相当性が問題となった事例もあるので,任意保険会社の要請に応じたほうが,治療終了後の争点を1つ減らすことになりますし,相当な1点単価は20円未満と判断されることにより不利益を受ける可能性をゼロにすることができます。







◆相手が任意保険に加入していない場合




相手が任意保険に加入していない場合には,加害者本人の賠償能力がないことが通常です。

そうすると,治療費は相手の自賠責保険からしか出してもらうことができません。




自賠責の傷害の限度額は120万円です。
病院で高額な自由診療を受けていると,120万円の限度額はすぐにいっぱいになってしまいます。
限度額を超えてしまった場合,その後の高額な治療費を被害者自身が全額支払わなければなりません。

相手の任意保険の限度額が小さい場合にも,これと似た危険が発生します。

そこで,相手が任意保険に加入していない場合や,加入していても限度額が小さい場合には,事故当初から健康保険を利用して通院する方が金銭的には得になりやすいです。




交通事故後,健康保険を使って通院をするときには,健康保険組合や市町村役場に対し,第三者行為による傷病届という書類を提出します。

病院によっては,健康保険の適用を嫌がるところもありますが,法律上や制度上,交通事故後の治療に健康保険を適用することに問題はないので,遠慮する必要はありません。どうしても健康保険の適用を認めない病院なら,転院も検討すると良いでしょう。

交通事故後の治療についてお悩みの場合には,交通事故に専門的に取り組んでいる,よつば総合法律事務所までご相談ください。




▼参考記事
・交通事故の治療で相手方保険,健康保険,労災保険のどれを使えばよいですか。
・事故直後・症状固定前から相談可
・弁護士が入ると賠償金が上がる!




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故で頭を打ち,連合野に損傷があると言われました。高次脳機能障害で,どんな症状が出るのでしょうか?

 
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交通事故で頭を打ち,連合野に損傷があると言われました。高次脳機能障害で,どんな症状が出るのでしょうか?

連合野とは,人間の思考や認知に深く関わる大脳皮質の一部分で,連合野を損傷するとさまざまな高次脳機能障害の症状が現れます。




 連合野の損傷 : 高次脳機能障害の症状 



◆まさに人間らしさを生み出す脳




連合野(れんごうや)とは,脳の高度な働きを担当している大脳の一部分です。

大脳は,他に運動野(うんどうや),感覚野(かんかくや),視覚野(しかくや)があり,それぞれがその名の通り,運動、感覚、視覚に関する情報伝達を行っています。




連合野は,運動や感覚,視覚に関する情報を処理する機能があります。
時には,連合野の判断により,入ってきた情報に基づいた判断や行動が必要になるでしょう。

このように複雑な情報処理を行うことが高次脳機能です。

連合野を怪我すると高次脳機能障害を発症し,以前のような感情表現や思考力,表現力,認知,行動などができなくなります。










◆連合野の分類




大脳の表面に存在する大脳皮質の部分が連合野です。

連合野は,前頭連合野(ぜんとうれんごうや),頭頂連合野(とうちょうれんごうや),側頭連合野(そくとうれんごうや)の3つに分かれています。

3つの連合野のうちもっとも大きいのが,前頭葉(ぜんとうよう)のうち運動野より前の部分にある前頭連合野です。

前頭連合野は,抽象的な考え,論理的判断,結果の予測,善悪の判断などを行います。
前頭連合野の特徴は,複数の情報の収集と分析です。

人間が人間らしさを保つことができるのは前頭連合野の働きがあるからだと言え,交通事故などが原因で,前頭連合野を損傷して高次脳機能障害になった場合,やる気がなくなってぼんやりする,性格が変わる,段取りを立ててものごとを進めることができないなどの症状が現れます。




頭頂連合野は,空間の認識や,体の認識を担当しています。
自分がどこにどういう姿勢でいるかわかるのは,頭頂連合野の働きによるものです。

頭頂連合野を傷付けて高次脳機能障害を発症すると、次のような症状が現れます。


・空間に関する認知の問題

物の遠近、上下、左右の判断などが困難になり,歩きなれた道順がわからなくなり道に迷う地誌的障害を発症することもあります。損傷した部位によっては半側空間無視の症状が現れます。


・身体失認(しんたいしつにん)

自分の体の部位や指の名前を言えません。
その他、文章が読めない失読(しつどく)、文字が書けない失書(しっしょ)を発症することもあります。



側頭連合野は,物の認知,聴覚と視覚,時間や場所などの認識に関わっています。

側頭連合野を損傷すると,高次脳機能障害の症状として,画像の意味がわからない画像失認,よく知っている人の顔を見ても誰かわからない相貌失認,言語障害,発症した後で起きたことを記憶できない前行性健忘などが挙げられます。







▼参考記事
・高次脳機能障害の具体的な症状には,どのような症状がありますか?
・交通事故と弁護士費用のすべて
・事故後の人生




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で頭を打ち,高次脳機能障害になりました。症状の一つ,半側空間無視とは何ですか?

 
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交通事故で頭を打ち,高次脳機能障害になりました。症状の一つ,半側空間無視とは何ですか?

体の片側にあるものを認識できない症状で,特に左側にあるものを認識できなくなることが多いのが特徴です。この症状は,大脳が右と左に分かれていることと関係があります。




 半側空間無視 : 左脳と右脳 



◆大脳を出た神経はすべて交差して反対方向へ伸びる




人間の脳の大部分を占める大脳は,右半球と左半球に分かれていて,2つの半球を脳梁(のうりょう)が橋のようにつないでいます。

右半球から出た神経は左側へ,左半球から出た神経は右側へと,1回交差して体の各部へと伸びています。


神経の交差に例外はなく,すべての運動神経や感覚神経は,右半球から出たら体の左側へ,左半球から出たら体の右側につながっています。




このように神経が1回クロスしているため,左半球は体の右側の運動,感覚,視覚などの情報を担当することになります。右半球は,体の左側の運動,感覚,視覚を担当します。







◆半側空間無視で片側の情報が入ってこない理由




交通事故で高次脳機能障害になった人に現れる症状の一つに,半側空間無視(はんそくくうかんむし)がありますが,この症状は,大脳が右と左に分かれていることと関係があります。




半側空間無視は,体の片側にあるものを認識できない症状で,特に左側にあるものを認識できなくなることが多いのが特徴です。

自分の左側に置かれた食べ物だけ残したり,廊下で左側にぶつかるなどの動作が現れます。左半側空間無視の症状が現れる高次脳機能障害の人は,大脳右半球に損傷を受けたと考えられます。

右脳には視覚をつかさどる神経があり,右側と左側,両方の視覚を担当しており,他の神経と同じように右脳を出ると1回交差して体の左側に伸びていき,左側の感覚を支配します。そのため,大脳右半球に問題があると自分の左側を認識できなくなるのです。




このように,右半球と左半球は,それぞれ異なる役割を持っています。

脳神経の研究が進んだおかげで,脳のどこを損傷したかによって,高次脳機能障害でどのような後遺症が現れるか,ある程度わかるようになりました。

頭をぶつけた場合は,軽く考えずに精密検査を受けるだけでなく,どの部分をぶつけたかという情報も,医師に説明しましょう。







◆右脳と左脳は独立しているわけではない




感覚的な活動は右半球が,理論的な活動は左半球が行うという話を良く聞きますが,2つの大脳半球は独立して情報処理を行っているわけではありません。

太い神経線維の束である脳梁は,2つの大脳半球をつないで反対側の脳と連絡を取り合うシステムになっています。

高次脳機能障害で半側空間無視の症状が出た場合でも,認識できない側への注意をうながす,正しい動作のための声かけをするなどのリハビリテーションを行うことで症状の改善を試みます。

参考
http://www.brain-science.jp/brain02.index.html




▼参考記事
・高次脳機能障害とは
・高次脳機能障害の後遺障害の認定基準
・高次脳機能障害を負われた方の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で高次脳機能障害になった場合,脳への栄養補給はどうなるのですか?

 
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交通事故で高次脳機能障害になった場合,脳への栄養補給はどうなるのですか?

脳が必要とする栄養と酸素は動脈を流れる血液が運びます。交通事故による高次脳機能障害などで血管が一部切れても,輪状の脳大動脈のおかげで血流は保たれます。




 脳への栄養補給



◆脳の病気だからこそ脳の栄養に気を使いたい




脳は,大きな衝撃を受けると損傷して高次脳機能障害を発症することがあります。

とくに交通事故は,とんでもない方向からものすごい力で衝撃が加わるので,高次脳機能障害の原因の第一位になっています。




病気になったら,弱っている体に栄養を与えて元気になってもらいたいと思いませんか?

そもそも、脳の栄養とは何でしょう?
とくに脳の栄養を考えて食事を摂らなくても,脳はちゃんと栄養を補給しているのでしょうか?










◆脳は大食漢




脳は脳細胞と呼ばれる神経細胞の集まりで,その数は大脳だけで100億個以上と言われています。

細胞は生き物ですから,生きていくためには栄養と酸素が必要です。
つまり,これほど膨大な数の細胞が密集している脳は,大量の栄養と酸素を必要とするのです。




栄養と酸素は,脳細胞でなくても,すべての細胞にとって欠かせないものですが,なかでも脳細胞はずば抜けて酸素を大量に消費します。私たちが呼吸して体内に取り入れる酸素のうち,25パーセントが脳で消費されるのです。

しかも,筋肉組織など,人体の細胞には酸素を貯蔵できる機能を持っているものもありますが,脳細胞は酸素を貯えておくことができません。

すなわち,脳は常に酸素を送り込んでやらなければ,ダメージを受けてしまうのです。







◆脳の栄養はすべて血管で運ばれる




脳が必要とする酸素と栄養は,すべて血液で運ばれます。

つまり,脳のなかを走る血管が,脳の栄養補給を担当しているのです。

脳に血液を送りこんでいるのは,総頚動脈(そうけいどうみゃく)と鎖骨下動脈(さこつかどうみゃく)で,頭部で枝分かれして脳の隅々まで血液を供給しています。総頚動脈と鎖骨下動脈は,いずれも首を通って頭部に伸びています。

首に手のひらを当てると太い血管を感じることができるでしょう?
この血管が、脳が活発に活動するために欠かせない酸素と栄養素を運んでいるのです。







◆脳の血管がもし切れたら?




脳の動脈は,輪(わ)のような形になっていて脳の組織を取り囲む特殊な形状をしています。

これが大脳動脈輪(だいのうどうみゃくりん)で,脳を通っている動脈が切れても酸素の補給が途絶えて脳細胞が死滅しないためのシステムです。

脳の左側で動脈が壊れるたら右側の動脈が,右側の動脈が切れたら左側の動脈によって血液を補うことができるという融通性のある構造です。




高次脳機能障害になるほどの怪我をした際に,血管が切れる場合がありますが,このような血管構造のおかげで脳細胞への血液供給は保たれているのです。




▼参考記事
・自賠責における高次脳機能障害認定の入口の3要件
・当事務所の交通事故解決事例
・後遺障害等級について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で頭を打って高次脳機能障害を発症しました。脳は壊れやすいものなのですか?

 
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交通事故で頭を打って,高次脳機能障害を発症しました。脳は壊れやすいものなのですか??

神経の集合体である脳は,頭蓋骨,硬膜,クモ膜,軟膜で保護されていますが,それでも交通事故による衝撃から脳を守れなかった場合は,高次脳機能障害を発症することがあります。




 頭を打つだけで,脳は損傷する?



◆ぶつかっただけで壊れるほど脳は壊れやすい?




人間らしさとはなんでしょう?

思考力,豊かな感情,判断力,行動力,表現力などが組み合わさってその人らしさが生まれ,人間性を表すと言って良いでしょう。

人間が人間たるゆえんは,脳の働きのおかげです。

その脳が壊れてしまったら,それまで行っていた知的活動ができなくなることがあります。




たとえば,交通事故などで脳に強い衝撃を受けると,脳の組織の一部が壊れて高次脳機能障害になる場合があります。

人間の体のなかでもっとも重要な場所とも言える脳が,そんなに壊れやすいのでは心配になりませんか?本当に脳は壊れやすいのでしょうか?







◆脳は神経の集合体




心臓,肝臓,肺,腎臓・・人体にはいろいろな臓器がありますが,脳に骨はないし筋肉でもない,とすると脳も内臓の一種でしょうか?

いいえ,脳は神経の集まりです。

人間の生命活動を維持する上で絶対に欠かせない呼吸や血液の循環を担当する肺や心臓は,肋骨(ろっこつ)で守られています。野球のボールが胸に当たると,痛くても肋骨のおかげで衝撃は心臓に直接は伝わりませんし,肋骨の内側にある筋肉や皮下脂肪も心臓を守っています。

神経細胞の集合体である脳も,頭蓋骨(ずがいこつ)ですっぽり覆われて守られていますが,内臓とはまったく違う仕組みで保護されています。










◆厳重に守られている脳の組織



内臓は,筋肉や脂肪というクッションで外部の衝撃から守られています。
それに対して脳は,ゆりかごのなかでゆらゆらゆれて守られている存在です。




頭蓋骨と脳の間には,髄膜(ずいまく)という膜があり,髄膜は,頭蓋骨に近い順に硬膜(こうまく),クモ膜,軟膜(なんまく)と3層からできています。

硬膜は頭蓋骨に張り付いていて動きませんが,クモ膜と軟膜の間にはクモ膜下腔(くもまくかくう)というすき間があり,このすき間は,無色透明の脳脊髄液(のうせきずいえき)で満たされています。

つまり,脳全体は,この液体のなかにぷかぷか浮いている状態です。

ちなみに,人間の脳のクモ膜下腔には,110ミリリットルの脳脊髄液が存在します。

脳脊髄液は,1日に500ミリリットル作られ,脳室(のうしつ)とクモ膜下腔を1日に数回循環しています。ですから,生産されたばかりの新鮮な脳脊髄液で脳は守られているというわけです。




頭をぶつけると,まず頭蓋骨が,そして硬膜が衝撃から脳を守り,そしてクモ膜下腔を満たす脳脊髄液も,衝撃を吸収します。こうして,神経の集合体として柔らかいかたまりである脳は,外部からの衝撃から幾重にも保護されているのです。

ただし,このシステムでも防ぎきれないほど強い衝撃を受けた場合は,脳の神経組織が破壊されて高次脳機能障害を発症することがあります。




▼参考記事
・高次脳機能障害を負われた方の解決事例
・重度の後遺障害と示談交渉について
・交通事故における頭部外傷 頭部の構造




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)
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