交通事故に遭いました。労災の費目拘束と過失割合は,どんな関係がありますか?

 
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交通事故に遭いました。労災の費目拘束と過失割合は,どんな関係がありますか?

労災保険を利用すると,加害者から受け取る賠償金が差し引かれますが,そのとき,損害賠償金の費目ごとに,控除が行われます。


このことを費目拘束といいますが,費目拘束により,被害者に過失割合があると,労災を使った方が有利に賠償金を計算できる可能性があります。





 労災保険 : 費用拘束 



◆労災を使うと,損益相殺される




業務中や通勤途中で交通事故に遭った場合には,労災の適用を受けることができます。

この場合,労災保険から,治療費や休業補償などが支払われます。

そして,労災から先に保険金を受けとった場合,後に加害者に請求できる賠償金は,その分減額されます。賠償金の二重取りを防ぐためです。

このことを,損益相殺といいます。







◆労災の費目拘束とは




ただし,労災保険において損益相殺をするときには,それぞれの損害項目において計算を行うこととなります。
このことを,費目拘束と言います。

費目拘束されることについては,判例上確立されています(最判昭和58年4月19日)。

たとえば,治療費なら治療費の範囲内だけで差引を行い,休業損害などの他の費目からは,差引を行わないということです。同様に,休業(補償)給付が支払われたとき,休業損害以外の損害から控除を行うということも行われません。







◆被害者に過失割合がある場合




労災には費目拘束が行われると,被害者の過失割合があるときに,被害者が有利になる可能性が高いです。

それは,ある費目で過失相殺をした結果,労災から払い過ぎがあったとしても,他の費目から払い過ぎの分を差し引かれることがないためです。

過失相殺を考慮すると,全体としては,労災からの給付金が,支払われ過ぎになっていたとしても,他の費目から差し引かれないので,被害者に入ってくるお金が大きくなります。




たとえば,治療費が150万円,休業損害が80万円,慰謝料が200万円発生した事故があったとします。被害者の過失割合は,40%でした。



このとき,治療費が150万円全額労災保険から支払われて,休業損害は40万円支払われたとします。
まず,治療費を過失相殺すると,被害者の過失が4割なので,加害者に賠償請求できる治療費の金額は本来90万円です。

しかし,被害者は既に150万円の支払いを受けています。ですが,差額の60万円については,他の賠償金の項目から差し引くことができません。そのままとなります。

休業損害については,被害者の過失割合が4割なので,請求できる金額は本来48万円です。労災からすでに40万円の支払いを受けられているので,残りの8万円だけが加害者から支払われます。

慰謝料については,過失相殺により,6割の120万円を請求することができます。費目拘束があると,被害者は加害者から,合計128万円の支払いを受けることができます。それと,労災からの既払い金190万円があるので,合計すると318万円受けとっていることになります。




もし労災を適用しなかったら,損害賠償金額の合計は150万円+80万円+200万円=430万円です。
被害者の過失割合が40%なので,全体に過失相殺が適用されて,被害者が相手に請求できる金額は,258万円です。

労災保険を使うと,318万円ですから,60万円分,被害者が多く受け取れていることがわかります。


以上のように,労災を使うと,被害者に過失割合がある場合に,被害者に有利になりやすいです。
被害者に過失があり,業務中や通勤中の事故で労災を適用できるケースでは,なるべく労災を利用すると良いでしょう。




▼参考記事
・相手方任意保険,健康保険,労災保険のどれを使えばよいですか?
・労災と自賠責で後遺障害等級が異なることはありますか。
・通勤中の交通事故だった為,通勤災害として労災保険を使用して治療,過失相殺されたものの最小限の減額で抑えて解決できた事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)
| 慰謝料 |

私は男性で,女性と同棲しています。この同棲している女性が運転する自動車に同乗しているときに,この女性が自損事故を起こし,私が怪我をしてしまいました。 賠償はどうなりますか? 自賠責(契約者は同棲相手です。)はどうですか?

 
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私は男性で,女性と同棲しています。この同棲している女性が運転する自動車に同乗しているときに,この女性が自損事故を起こし,私が怪我をしてしまいました。
賠償はどうなりますか? 自賠責(契約者は同棲相手です。)はどうですか?


この場合,同棲相手の方の対人賠償責任保険が適用されるので,そちらから損害賠償金の支払いを受けることができます。
また,人身傷害補償保険,搭乗者傷害保険,自損事故保険の適用もあります。自賠責保険についても,適用されます。





 自損事故 : 同乗者の賠償(同棲相手)



◆対人賠償責任保険




運転していた人の過失によって自損事故が発生し,同乗者がケガをした場合,法律上,同乗者には,運転者に対する損害賠償請求権が発生します。

そこで,運転者が加入している任意保険の対人賠償責任保険を適用してもらうことができるかが問題となります。




対人賠償責任保険は,被保険者が事故を起こして人を死傷させた場合に適用される保険です。

そして,自損事故により,同乗者にケガをさせた場合,運転者の過失によって,人をケガさせたと言えるので,対人賠償責任保険が適用される場面となります。

ただし,対人賠償責任保険には,免責規定があります。具体的には,同乗者が運転者の配偶者や親,子どもである場合には,適用されないとされています。それ以外の,兄弟姉妹や恋人,友人などである場合には,適用されます。




本件では,事故に遭われたご本人は,運転者と同棲していたということなので,免責規定が適用されません。そこで,対人賠償責任保険の適用があり,運転者(同棲相手)の任意保険から賠償金の支払いを受けることができます。

一方,同乗者が内縁の夫婦であれば,免責規定が適用され,対人賠償責任保険は使えません。

ただし,対人賠償責任保険から支払いを受ける場合,同乗者自身に過失があれば,過失相殺されます。
たとえば,危険な運転をあえて注意せず,煽っていたなどの事情があると,請求できる保険金額が減額されることとなります。







◆人身傷害補償保険,搭乗者傷害保険




同乗者がケガをした場合には,運転者(被保険者)の任意保険の人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険,自損事故保険も適用される可能性があります。

同乗者に人身傷害補償保険が適用される場合には,自損事故保険は適用されませんが,搭乗者傷害保険と自損事故保険は同時に適用されるので,両方から支払いを受けることができます。







◆自賠責保険




自損事故で同乗者がケガをした場合,運転者が加入していた自賠責保険も適用されます。
そして,自賠責保険の場合には,被害者に重過失がない限り,減額が行われません。

そこで,危険な運転の助長行為などがあって,任意保険の対人賠償責任保険が減額されるケースでも,自賠責保険からは満額の保険金を受け取れる可能性があります。

同乗者に適用される保険については,同乗者と運転者の身分関係によって異なります。約款を確認しなければならないケースもあります。迷ったときには,交通事故に強い弁護士まで,お気軽にご相談下さい。




▼参考記事
・損害賠償額の計算方法
・交通事故と物損Q&A
・交通事故問題解決の流れ




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

私の妻が運転する自動車に同乗しているときに,妻が自損事故を起こし,私が怪我をしてしまいました。賠償はどうなりますか? また,自賠責(契約者は妻です。)はどうなりますか?

 
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私の妻が運転する自動車に同乗しているときに,妻が自損事故を起こし,私が怪我をしてしまいました。賠償はどうなりますか? また,自賠責(契約者は妻です。)はどうなりますか?

この場合,妻が契約している任意保険から,人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険,自損事故保険などの保険金が支払われる可能性があります。自賠責についても,保険金支払を受けることができます。




 自損事故 : 同乗者の賠償(夫婦) 



◆任意保険から支払われる保険



車を運転しているときに,事故を起こして同乗者がケガをしてしまうケースがあります。

相手のある交通事故の場合,加害者から賠償金の支払いを受けることができますが,自損事故の場合には,そのようなことは不可能です。

同乗者は運転者に対して損害賠償請求権を有することになりますが,同乗者と運転者が夫婦だと,対人賠償責任保険は使えないのが普通です。

ですから,賠償を任意保険会社から受けるのは困難です。




ただ,の場合には,運転者や自動車が加入している任意保険の適用があります。
適用される可能性がある保険は,人身傷害補償保険と搭乗者保険,自損事故保険などです。


【人身傷害補償保険】
人身傷害補償保険とは,保険加入者や同乗者が事故でケガをしたときに,補償を受けることができる保険です。
この場合の「事故」については,相手のあるなしを問われることがありません。

そこで,本件のように,妻が運転していた場合に自損事故を起こしたケースでも,人身傷害補償保険に加入していたら,その支払いを受けることができます。




【搭乗者傷害保険】
搭乗者傷害保険も,人身傷害補償保険と同様に,保険加入者や同乗者が事故でけがをしたときに,保険金が支払われる保険です。同乗していた人すべてに適用される保険なので,自損事故のケースでも適用されます。




【自損事故保険】
自損事故保険は,運転者が自分の責任で発生させた交通事故により,人を死傷させた場合に適用される保険です。
自損事故で,同乗者がケガをしたときにも,自損事故保険の適用があります。

ただし,自損事故保険は,自賠責保険から支払を受けられない場合にのみ支払われます。




【人身傷害補償保険,搭乗者傷害保険,自損事故保険の関係】
人身傷害補償保険と搭乗者傷害保険,自損事故保険のうち,複数に加入している場合には,それぞれの関係も問題となります。

多くのケースでは,人身傷害補償保険と自損事故保険の両方に加入している場合には,人身傷害補償保険しか適用されません。この2つの保険は,重複するところが大きいためです。

これに対し,搭乗者傷害保険の場合は,人身傷害補償保険または自損事故保険とは別に支払を受けることが可能です。





◆自賠責保険




一方,対人賠償責任保険とは異なり,けがをした同乗者が配偶者でも,自賠責保険からも支払いを受けることができます。

自賠責保険は,加害者本人には適用されませんが,同乗者には適用されるわけです。

ただし,車が夫婦の共有になっていて,同乗者も共に「運行供用者」と言える特殊な事情がある場合には,自賠責保険の適用がない可能性もあります。

以上のように,自動車保険の適用関係は,決して単純ではありません。
よくわからない場合には,交通事故に強い弁護士に相談してみて下さい。




▼参考記事
・後遺症と保険について
・よつば総合法律事務所の交通事故解決事例
・ひとりひとりに合った適切な解決方法をご提案




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

父が交通事故の被害に遭い死亡しました。相続人は3人の子です。任意保険会社の担当者は,誰か1人を代表者として選び,その代表者と交渉したいと言ってきています。 しかし,3人の相続人の内部で意見の対立があるため,代表者を選ぶことなどできそうにありません。どうしたらよいですか?

 
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父が交通事故の被害に遭い死亡しました。相続人は3人の子です。任意保険会社の担当者は,誰か1人を代表者として選び,その代表者と交渉したいと言ってきています。

しかし,3人の相続人の内部で意見の対立があるため,代表者を選ぶことなどできそうにありません。どうしたらよいですか?

  

この場合,まずは示談を進めて,相続人間で示談金の分配を話し合う方法が良いのですが,どうしてもできない場合には,単独で損害賠償を進めることも可能です。




 損害賠償請求権 : 被害者死亡の交通事故の相続人




◆賠償金は,相続人全員に相続される




死亡事故が起こった場合,損害賠償請求権は被害者の相続人に相続されます。

このとき,法定相続人に対し,法定相続分に応じて損害賠償請求権が分割されて相続されることとなります。




そこで,死亡事故で相手の保険会社と示談交渉をするときには,相続人全員が一体となって話し合いをすすめることが求められます。

相手の保険会社は,「誰か1人代表者を決めてほしい」と言ってくるので,相続人がまとまらない場合,話を進めることが難しくなることがあります。




ただ,示談交渉には3年の時効がありますから,相続人間でもめている間に時効が完成してしまうおそれがあります。

もし,示談金の配分方法で意見が合わないのであれば,先に示談を進めて示談金を受けとった後,示談金の配分方法についてゆっくりと話し合うという方法を考える必要が出てきます。







◆相続人が単独で損害賠償請求をする




相続人同士の意見が合わず,示談すら進められない場合には,相続人が単独で示談交渉を行うことも法律上は可能です。

法的には,損害賠償請求権は,法定相続分に応じて割合的に相続されるので,それぞれの相続人は,自分の相続分については,単独でも相手に支払請求することができるからです。




たとえば,妻と2人の子どもが相続人となっている場合,子ども1人の相続分は4分の1です。
そこで,子どもは,その4分の1の損害賠償金についてだけ,相手に支払を求めることができます。

ただし,保険会社に対し,単独での示談を求めても,応じてくれないことが多いです。

個別の交渉に応じると,保険会社にとっては二度手間三度手間になってしまいますし,ある相続人との合意内容が,その他の相続人との間での示談交渉に影響が及ぶおそれもあるためです。




相手の保険会社が個別の示談に応じない場合には,訴訟を起こす方法があります。
相続人の損害賠償請求権は法律上の権利ですから,相続分に応じた損害賠償請求は,当然に認められるものだからです。







◆弁護士に依頼する方法について




相続人がなかなかまとまることができない場合や,誰を代表者にするかということでもめているのであれば,弁護士に依頼をする方法も有効です。

「相続人のうち誰かを代表者にするのは納得できないけれど,弁護士が代理人になるのであれば納得する」という方もいらっしゃいます。




よつば総合法律事務所では,交通事故被害者のサポートに非常に力を入れて取り組んでいます。
お困りの場合には,是非とも一度,ご相談下さい。





▼参考記事
・死亡事故と弁護士 〜弁護士に依頼するメリット〜
・死亡事故被害者の救済
・被害者死亡の交通事故で当事務所が代理し,被害者の死亡慰謝料に加え,親族固有の慰謝料も認められる形で解決した事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

幼児が交通事故の被害に遭いました。幼稚園の先生が引率していた最中で,幼児の親はその場にいませんでした。この場合の過失相殺はどうなるのでしょうか?

 
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幼児が交通事故の被害に遭いました。幼稚園の先生が引率していた最中で,幼児の親はその場にいませんでした。この場合の過失相殺はどうなるのでしょうか?

この場合,被害者側の過失とはいえないので,基本的に過失相殺は行われません。幼稚園や幼稚園の先生が,別途損害賠償請求を受ける可能性はあります。




 園児の交通事故 



◆被害者側の過失とは




交通事故の過失には「被害者側の過失」という考え方があります。

これは,被害者本人に過失がなくても,被害者側の人に過失があると,被害者が請求できる賠償金を減額しようとするものです。

通常の過失相殺は,被害者自身の行動をもとに検討し,適用されるものです。
被害者が,損害発生や拡大につながる行為をしたからこそ,賠償金を減額できる根拠があると言えます。




しかし,被害者本人だけではなく,被害者と一体となるような近しい人が過失行為により損害を拡大させた場合にも,被害者側に責任を負担させないと不公平となります。

そこで,被害者の過失があると,民法722条2項が適用されて,過失相殺が行われます。
これが,被害者側の過失です。







◆被害者側の過失の範囲




被害者側の過失が適用されるのは,どのようなケースなのでしょうか?

その範囲を確認しましょう。



判例では,「被害者と身分上・生活関係上,一体をなす関係にあるもの」とされています(最判昭和42年6月27日)。

たとえば,幼児の飛び出し事故で幼児が被害者となる場合には,近くにいた父母が「被害者側」に該当します。父母だけではなく,幼児の監護のために雇っている家事使用人なども「被害者側」とされます。

また,夫婦で自動車に乗っていて交通事故に遭ったケースでは,被害者となった妻が助手席に乗っていたとき,運転をしていた夫が妻の「被害者側」と評価されます。

これらに対し,幼稚園の先生は,幼児と「身分上生活関係上一体性を有する」とはいえないので,「被害者側」の人には当たりません。






本件では,引率していたのは幼稚園の先生なので,被害者側の過失の考え方は適用されず,過失相殺は行われません。また,親も近くにいなかったということですから,親を「被害者側」として過失相殺が行われることもないでしょう。







◆幼稚園の先生が損害賠償を受ける可能性




ただし,本件のように,幼稚園の先生が引率していて交通事故に遭った場合,幼稚園の先生自身やその使用者である幼稚園が過失にもとづく損害賠償責任を負う可能性があります。




以上のように,交通事故の過失相殺は,必ずしも被害者自身の過失にもとづくものとは限らず,被害者側の過失が問題となるケースがあります。

ご自身では正確な判断が難しい場合には,ぜひよつば総合法律事務所にご相談ください。




▼参考記事
・交通事故の過失相殺とは
・困ったらすぐ相談
・学生・幼児の交通事故の解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故の被害者が幼児だったときの過失相殺について教えてください。親の責任と言われてしまうのでしょうか?

 
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交通事故の被害者が幼児だったときの過失相殺について教えてください。親の責任と言われてしまうのでしょうか?

この場合,親を「被害者側」のものであるとして,過失相殺されてしまう可能性があります。




 被害者が幼児の場合の過失相殺



◆過失相殺とは




幼児が交通事故に遭ったとき,親の監督が行き届いていなかった場合には,過失相殺が行われる可能性があります。

過失相殺とは,被害者に何らかの過失(不注意)があったときに,損害賠償額を減額することです。

不法行為が行われたとき,基本的には加害者が結果についての責任を負うべきですが,被害者の行為が損害の発生や拡大に影響しているケースがあります。

そのような場合には,被害者にも損害についての責任を負わせるべきです。




そこで,被害者の過失割合に相当する部分について,賠償金額を減額します。この制度を,過失相殺といいます。

過失相殺は,原則として,被害者本人の過失がある場合に行われます。







◆被害者側の過失とは




ただ,被害者が幼児の場合,本人の過失を問いにくいことがあります。

過失を問うためには,最低限の事理弁識能力が必要と考えられていますが,その能力が身につくのは,だいたい5〜6歳とされています。それより低い年齢の幼児の場合には,過失相殺が行われません。

しかし,この場合,被害者本人ではなく,「被害者側」の人の過失が問題となる可能性があります。
被害者側の人とは,被害者と身分上,生活関係上一体となる人のことです。

このような人の過失によって事故の結果が発生したならば,やはり損害賠償金額を減額することが公平だという考え方です。




このような,被害者側の過失がある場合にも,民法722条2項による過失相殺が適用されて,賠償金が減額されます。最高裁判所も,同様の考え方をしています(最判昭和42年6月27日)。

父母の場合,幼児と身分上,生活関係上一体となることに問題はありませんから,父母が幼児から目を離したときに幼児の飛び出し等が原因で交通事故に遭ったならば,過失相殺が適用される可能性があります。







◆親の監督不行届による,過失割合




親が幼児から目を離したことなどによって交通事故が起こったら,どのくらいの過失相殺が行われるのでしょうか?

ケースによっても異なりますが,だいたい10%程度,高くても30%程度となることが普通です。
また,親が目を離したから必ず過失相殺が適用されるとは限りません。

以上のように,幼児が飛び出して交通事故に遭った場合には,親の監督状況が問題になることがあります。


判断に迷われた場合や相手の保険会社の主張する過失割合が高すぎると感じているならば,一度よつば総合法律事務所までご相談ください。




▼参考記事
・学生・幼児の交通事故の解決事例
・過失相殺とは
・弁護士をうまく使いこなす!




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故の醜状障害と後遺障害逸失利益について教えてください。

 
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交通事故の醜状障害と後遺障害逸失利益について教えてください。

醜状傷害が残った場合には,後遺障害逸失利益が否定されることがあります。ただ,すべての場合に逸失利益が認められないわけではないので,個別のケースにおける検討が必要です。




 醜状傷害



◆醜状障害では,逸失利益が認められにくい




醜状障害とは,頭部や顔面,首などの外から見える部分や,上肢,下肢などの露出している部分に傷跡や欠損,瘢痕などが残ってしまう障害です。

このような醜状障害により,客観的に他の人が醜いと感じる程度に至っていたら,交通事故の後遺障害として認定されます。

通常,後遺障害が認定されると,認定された等級に応じて加害者に逸失利益を請求することができます。

一般的に後遺障害が残ると,労働能力が低下すると考えられるからです。




しかし,醜状障害の場合,顔や腕,足などに醜状が残っているだけですから,労働能力自体が低下したとは言いにくいです。

そこで,加害者任意保険会社が逸失利益は発生していないと主張することがあります。







◆醜状障害でも逸失利益が認められるケース




ただし醜状障害でも,逸失利益が認められるケースはあります。

たとえば,モデルや人前に出る職業の場合には,顔などに外貌醜状が残ると仕事を続けられなくなるおそれがあります。また,営業職の場合にも,人に与える印象が重要なので,醜状痕が残っていると業務の継続が難しくなることがあります。

外貌醜状が発生したために,職業選択の幅が狭くなってしまうこともあります。

特に,被害者が若年者や子どもの場合,醜状痕が人格形成や勉強への取り組み姿勢,その後の就職活動や転職活動,キャリア形成に影響しやすいので,逸失利益を認めやすいでしょう。







◆醜状障害で逸失利益を認めた裁判例




被害者が主婦でも,醜状障害で逸失利益が認められた事例があります。

この事案では,以下のような点に着目して,兼業主婦に20%の労働能力喪失率があるとして,逸失利益を認めました(神戸地裁平成25年11月28日)。

・傷痕が人目につきやすい位置にあり,長さが9.5センチメートルの線状痕であること
・被害者が人目を常に気にしており,労働に悪影響が発生していること
・傷痕の部分に触れるとしびれ感が発生すること
・実際に減収はなくても,被害者が,努力をしているから維持できていること
・今後の転職に大きな不利益があること




◆慰謝料が増額されることもある




醜状障害で労働能力喪失率が認められない場合でも,その補完として,慰謝料が100万円〜200万円程度,増額されることがあります。

以上のように,醜状障害の場合にも,逸失利益が認められるケースはありますし,慰謝料の増額事由になるケースもあります。あきらめる必要はないので,まずは一度,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・交通事故で顔面術後瘢痕が認定され,労働能力喪失で逸失利益が認められた解決事例
・傷跡が残ってしまった方の解決事例
・傷跡(醜状痕)に関する後遺障害




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故の健康保険と過失相殺,労災給付金と過失相殺の仕組みはどうなっているのですか?

 
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交通事故の健康保険と過失相殺,労災保険と過失相殺の仕組みはどうなっているのですか?

損益相殺と過失相殺の順序の問題です。
健康保険の場合は,損益相殺後過失相殺を行い,労災保険の場合は,過失相殺後損益相殺を行うのが一般的な考え方です。





過失相殺 : 健康保険と労災保険



◆損益相殺




交通事故によって被害を受けたとき,被害者には,加害者に対する損害賠償請求権が発生します。

一方,被害者が交通事故を原因として加害者以外の者から金銭の支払を受けたとき,その支払われた金額は,加害者が賠償すべき金額から控除すべきだという制度を,損益相殺といいます。




たとえば,健康保険を使用して治療を受けたとき,保険者から治療費の7割が支払われます。

この7割分は,損益相殺の対象となり,加害者が被害者へ賠償する必要はなくなります(保険者が加害者に求償されることがあることは別の問題です。)。

また,被害者が労災保険から休業(補償)給付を受けたとき,その給付金額は損益相殺の対象となり,加害者が被害者へ賠償する必要はなくなります(費目拘束や特別支給金の問題がありますが,ここでは触れません。)。







◆過失相殺




交通事故によって被害を受けたとき,被害者には,加害者に対する損害賠償請求権が発生します。

一方,交通事故の被害者にもある程度の落ち度があるときには,被害者の落ち度の分だけ,加害者が賠償すべき金額を減額すべきであるという制度を,過失相殺といいます。







◆損益相殺と過失相殺の順序




被害者に過失があり,かつ,健康保険を使って治療したときは,過失相殺も損益相殺も問題となります。

このような場合,過失相殺を先に行うのか,損益相殺を先に行うのかによって,被害者にとって有利不利が変わってきます。

過失相殺後,損益相殺のほうが不利です。




たとえば,損害額が500万円被害者の過失が2割損益相殺されるべき金額が100万円という事例があった場合,


@過失相殺→損益相殺の方法

まず過失相殺を行って加害者が賠償すべき金額は400万円となります。
さらに損益相殺を行って100万円を控除しますと,300万円となります。
したがいまして,損害賠償額は300万円です。




A損益相殺→過失相殺

まず損益相殺を行って100万円を控除しますから,加害者が賠償すべき金額は400万円となります。その後過失相殺を行うと,320万円となります。
したがいまして,損害賠償額は320万円です。




◆健康保険の場合




健康保険から支払われた治療費について,裁判所では,損益相殺を先に行い,その後過失相殺を行うという考え方が一般的です。

治療費だけでなく,傷病手当や高額療養費についても同様の順序で処理を行った裁判例があります。

なお,健康保険から支給された葬祭費について,過失相殺を先に行うべきであるとする最高裁判例があります(最判 平成15年9月30日民集第59巻5号901頁。ただし政府保証事業の請求がされた事例。)。







◆労災保険の場合




労災保険では,過失相殺を行ってから損益相殺を行う考え方が採用されています(最判平成元年4月11日判例時報1312号97頁など)。

以上のように,過失相殺と損益相殺の順序の問題は単純ではありません。それなので,任意保険会社担当者が正確に理解しているとは限りません。

問題になったときは,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・交通事故の過失相殺とは
・交通事故における損害賠償の項目について
・よつば総合法律事務所の交通事故解決事例




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故の加害者が酒気帯び運転でした。酒気帯び運転が慰謝料増額事由になりますか?

 
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交通事故の加害者が酒気帯び運転でした。酒気帯び運転が慰謝料増額事由になりますか?

酒気帯び運転や飲酒運転のケースでは,慰謝料が増額されることがあります。
特に,死亡事故の場合,慰謝料が増額されやすいです。高額な慰謝料の支払を命じた裁判例も多数あります。





 酒気帯び運転 : 慰謝料増額事由 



◆飲酒運転に対する厳罰化が進んでいる




近年,飲酒運転に対する社会の意識が変わり,厳しく取り締まられるようになっています。

刑事罰としては,自動車運転過失致死傷罪や危険運転致死傷罪が創設されて,厳罰化も進んでいますし,道路交通法も改正されて,取り締まりが強化されています。

それは,飲酒運転が悪質だからです。




飲酒すると,判断力が低下して重大な事故を引き起こしやすいことは知られているのに,あえて飲酒した状態で運転をすることに問題があります。

このような加害者の勝手な行為によって交通事故被害を受けたら,被害者やその遺族が受ける精神的苦痛は,通常の事故より大きくなります。

そこで,飲酒運転や酒気帯び運転で交通事故を起こすと,とくに死亡事故のケースにおいて大きく慰謝料が増額されます。







◆死亡慰謝料の基準




通常の死亡事故の慰謝料の基準は、以下の通りです。

・一家の支柱の場合…2800万円
・母親や配偶者の場合…2500万円
・その他の場合(独身者、子供など)2000万円〜2500万円








◆慰謝料が増額された事例




それでは,酒気帯び運転や飲酒運転のケースにおいては,どの程度慰謝料が増額されるのでしょうか?

以下で、裁判例をご紹介します。



【裁判例1】
酒気帯び運転で,30キロメートル以上のスピードオーバーをしながら共同暴走行為を行い,追突事故を起こして,17歳の男子高校生が死亡した事案です。3000万円の死亡慰謝料支払が命じられました(大阪地裁平成12年1月19日)。


【裁判例2】
飲酒運転をしていて,高速道路を逆走して衝突事故を起こしたために,被害者である61歳の男性が死亡したケースです。この事案では,3600万円の死亡慰謝料が認められました。(東京地裁成15年3月27日)。


【裁判例3】
飲酒運転で対向車線に進入して,被害者の乗用車に衝突した事案です。加害者は,救護活動も一切行いませんでした。この事案では,被害者本人の慰謝料2600万円,妻と母親の慰謝料が各500万円として,合計計3600万円の死亡慰謝料を認定しました(東京地裁平成16年2月25日)。


【裁判例4】
飲酒運転で居眠りしていた加害者が,歩行中の女性をはねて死亡させた事故です。この事案では,本人の慰謝料2700万円,夫が200万円,子ども3人がそれぞれ100万円として,合計3200万円の死亡慰謝料を認定しました(東京地裁平成18年10月26日)。







以上のように,交通事故で相手が酒気帯び状態の場合,死亡事故等の重傷の場合には慰謝料が増額される可能性が高いです。被害者の無念を晴らすためにも,正当な慰謝料支払を請求しましょう。




▼参考記事
・交通事故と慰謝料のすべて
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(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故の怪我が,とても痛いのに後遺障害として認定されません。おかしくないですか?

 
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交通事故の怪我が,とても痛いのに後遺障害として認定されません。おかしくないですか?

交通事故で後遺障害として認定されるためには,痛みなどの自覚症状はもちろんのことですが,それだけではなく,客観的に把握できる他覚症状も重要です。他覚症状を証明するため,適切な方法で検査を受けるなどの対応を行いましょう。




 後遺障害認定 : 他覚症状



◆自覚症状と他覚症状



交通事故が原因でケガをすると,さまざまな症状が出ます。

このとき,症状は「自覚症状」と「他覚症状」に分類することができます。

自覚症状というのは,患者が自分で感じることができる症状です。たとえば,痛みやしびれ,痒みやうずきなどの症状が自覚症状です。

これに対し,他覚症状というのは,医師などの第三者が客観的に把握できる症状です。たとえば,レントゲンやMRIなどにより,骨折や組織の異常,変形などを確認できる場合です。







◆後遺障害認定では,他覚症状が重要




後遺障害の等級認定においては,「他覚症状」が非常に重視されます。

自覚症状は,患者が訴えている症状にすぎず,それだけでは,それを客観的に証明することができません。

痛みを強く感じる人は強く訴えるでしょうし,感じない人はあまり強くは主張しないでしょう。また,同じ痛みを感じていても,強く主張する人もいればおとなしい人もいます。

自覚症状を基準に判断すると,人の感じ方や主張方法によって,不公平になってしまいます。

他覚症状であれば,レントゲンなどの画像によって,確実に客観的に把握できますし,不公平も発生しません。そこで,後遺障害の認定を受けるためには,他覚症状が重要です。







◆他覚症状を証明する方法




後遺障害認定の場面で重視されるのは,他覚症状の中でも画像診断です。
レントゲンやMRIなどの画像に異常が見られると,後遺障害の認定を受けやすいです。

もし,こういった画像検査を十分にしていないなら,新たに検査をしてみるべきです。

たとえば,レントゲンには映らなくてもMRIを撮ったら異常が明らかになることがありますし,より精度の高いMRI検査機器を使うことによって,異常を明らかにできるケースもあります。







◆症状を証明できなくても認定される等級




また,画像診断などによって,症状を明確に「証明」できなくても,認定される後遺障害の等級があります。

それは,もっとも低い等級である14級です。

14級9号の場合,自覚症状に相当する症状があることを,医学的に説明できる場合に認定されます。明確に証明ができなくても,説明ができる場合には,認定を受けられる可能性があるということです。

そのためには,たとえば神経学的検査の結果,自覚症状の訴えの経過,その交通事故によってその結果が発生することが自然であるといえるかといった点が評価されます。




以上のように,後遺障害等級認定は,「痛い」との訴えがあれば認定されるというものではないです。
お困りの場合,よつば総合法律事務所まで,お気軽にご相談ください。




▼参考記事
・後遺障害等級について
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・症状固定・後遺障害の等級認定




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)
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