交通事故で高次脳機能障害になった人のリハビリテーションとチームについて教えていただけますか?

2018年05月09日
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交通事故で高次脳機能障害になった人のリハビリテーションとチームについて教えていただけますか?

交通事故で高次脳機能障害になった人が入院すると、医学的リハビリテーションのほかにも、生活訓練、就労支援などのためのリハビリテーションがチームで行われます。





 高次脳機能障害 : リハビリテーションとチームアプローチ 




◆3種類のリハビリテーションとチームアプローチ




交通事故に遭うなどして高次脳機能障害を発症すると、受傷して間もない時期からリハビリテーションが始まります。

もちろん、絶対安静にしていなければならない期間はリハビリテーションを行いませんが、受傷後数日間を経て症状が安定したら、ベッドの上でリハビリテーショが始まります。

この時期のリハビリテーションを、医学的リハビリテーションと呼びます。この他に,生活訓練のためのリハビリテーション、就労支援のためのリハビリテーションがあります。

たとえば,日常生活で必要な動作を習得するには、生活訓練のためのリハビリテーションが必要になりますし、退院後、職場復帰を希望する人に対しては、就労支援のためのリハビリテーションを行います。

これら3種類のリハビリテーションは、医学的リハビリテーションを終了したら生活訓練や就労支援のためのリハビリテーションを開始するというように決まっているわけではなく、同時に行うこともあります。いずれのリハビリテーションも、実施するにあたってはチームアプローチと呼ばれる方法を取ります。共通の目的のために、異なる専門職が課題解決のために協働(きょうどう)して取り組むのが、チームアプローチです。

チームアプローチでだいじなことは、基本的に専門職同士は平等な関係で互いに意見を述べ合い、それぞれの特性を生かすために働くということです。
チームの誰かがリーダーとなるトップダウンでもなければ、大勢のスタッフの意見を上の者がまとめるボトムアップでもありません。







◆チームアプローチに必要な専門職とは



高次脳機能障害の人にリハビリテーションを行うためのチームアプローチに必要な専門職の例を挙げます。

・医師(主治医・医療科目の異なる他の医師が加わることもある)
・看護師(日々の看護を行う看護師のほかに、帰宅支援のための看護師が加わることもある)
・理学療法士(略称:PT)
・作業療法士(略称:OT)
・言語聴覚士(略称:ST)
・生活支援員
・心理の専門家
・職業指導員
・ソーシャルワーカー
・地域









◆患者さんが介護保険を利用する場合




さらに、高次脳機能障害になった人が、退院後に介護保険によるサービスを受けることを望んでいる場合は、介護保険制度に関する施設や法人の担当者と連絡を取る必要があります。

たとえば、退院後に介護保険を使ってリハビリテーションを続けたいという希望がある場合は、デイケアなどの利用が考えられますが、どのようなリハビリテーションをどのくらいの負荷をかけて行うのが良いかということは、介護職の人にはわかりません。

そのため、ケアマネージャーなどの専門職は、病院内のリハビリテーションチームと連絡を取って情報収集をする必要があります。

この場合、介護職は、病院におけるチームと協働するのではなく、連携(れんけい)することになります。








▼参考記事
・交通事故のリハビリテーション・高次脳機能障害における理学療法士の役割って何ですか?
・頭(脳)に怪我を負われた方の解決事例
・交通事故による後遺障害の解説

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で高次脳機能障害になったら何故リハビリテーションが必要なのでしょうか?

2018年05月07日
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交通事故で高次脳機能障害になったら何故リハビリテーションが必要なのでしょうか?

交通事故で高次脳機能障害になった人にリハビリテーションが必要な理由は、身体的、精神的、社会的という3つの健康を目標とするからです。





 高次脳機能障害 : リハビリテーション 




◆リハビリテーションの目的




そもそもリハビリテーションとは何でしょう?
ストレッチや柔軟体操などで体に負荷をかけて、失った身体機能を徐々に取り戻すための運動だと考えている人も多いのではないでしょうか?

むろん、ストレッチや柔軟体操もリハビリテーションの一種です。
しかし、運動をすることだけがリハビリテーションではありません。

交通事故などで高次脳機能障害になった人が、リハビリテーションのプログラムを自分で考えて行うことはなく、専門の知識を持った医療チームが、患者さん一人ひとりに最適なプログラムを考えて実行するのがリハビリテーションであり、そのプログラムには身体的な運動以外の内容が含まれていることもあるのです。

体だけでなく、心のありよう、ひいては家族との関わり合いや社会復帰した場合に置かれる立場などを含めて、より良く生きることができるようになるための訓練といえば、高次脳機能障害の人のためのリハビリテーションの目的がイメージできると思います。






◆そもそも健康とは




リハビリテーションは、健康な体を取り戻すための訓練ですが、そもそも健康とは何かということを考えると、リハビリテーションの目的がわかります。

ジュネーブに本部のあるWHO(世界保健機関)は、身体的、精神的、社会的という3つの「健康」を定義しています。
つまり、精神的に満ち足りていなかったり、社会から孤立していと、いくら肉体が健康でも本当の意味で健康にはなれないということです。

その逆を考えてみましょう。

心が満ち足りていて、家族や地域社会との交流に生きる喜びを感じる人は、たとえ肉体が完全な状態でなくても、健康を得ることができるのです。
高次脳機能障害は、リハビリテーションによって後遺症が軽くなることはあっても、完治しない病気です。
病気になる前の肉体に100%戻れるかといえば、それはむずかしいでしょう。



しかし、身体的のみならず、精神的、社会的健康も含めた広い意味での健康を目指すなら、高次脳機能障害の人も、健康を手に入れることができるという希望の光が見えてくるのではないでしょうか?

それは、最近提唱されているQOL(Quality Of Life:生活の質)を高めるという動きにも合致しています。

肉体的な健康は量で評価しますが、心の健康は満足感、幸福感、つまり質で評価するので、得ようと思えばたくさんの健康を享受できます。

趣味や生きがい、友人との会話などを通して、高次脳機能障害の人のQOLが高まり、心が満たされて健康になることを願っています。







▼参考記事
・交通事故で頭を打ち,連合野に損傷があると言われました。高次脳機能障害で,どんな症状が出るのでしょうか?
・交通事故による高次脳機能障害が完治しない理由は何ですか?
・交通事故の注目の裁判例

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

大学に通っていたのですが,交通事故の被害に遭って遷延性意識障害になり,それが理由で退学せざるを得ませんでした。これまで大学で過ごした時間や学んだことだけでなく,大学に支払った受験料,入学金,授業料,学生寮の費用は全部無駄になってしまいました。 これらは賠償の対象になりますか。個人事業主の開業費用(投資)が賠償の対象になるのであれば,同様に考えられませんか?

2018年05月02日
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大学に通っていたのですが,交通事故の被害に遭って遷延性意識障害になり,それが理由で退学せざるを得ませんでした。これまで大学で過ごした時間や学んだことだけでなく,大学に支払った受験料,入学金,授業料,学生寮の費用は全部無駄になってしまいました。
これらは賠償の対象になりますか。個人事業主の開業費用(投資)が賠償の対象になるのであれば,同様に考えられませんか?


このような場合,受傷によって意味をなさなくなった支払済みの授業料などの返還を求めることができます。ただし,全額が認められるとは限りません。




 交通事故 : 遷延性意識障害になった場合の学費 




◆学費も損害として認められる




学生の方が交通事故に遭うと,遷延性意識障害となったり身体が麻痺したり高次脳機能障害になったりして,通学を継続できなくなることがあります。
そのようなとき,それまで支払った学費を損害として,加害者に賠償請求できるかが問題となります。

裁判所は,このような場合の学費を損害として認めています。

そのためには,被害者の受傷内容や被害の程度,被害者の年齢や家庭状況などを具体的に検討して,学習の必要性が認められる必要があります。

また,賠償の対象として認められる学費は「妥当な範囲内」であり,全額とは限りません。







◆受傷で無駄になった学費を認めた裁判例



以下では,被害者の受傷によって無駄になった学費の損害賠償を認めた裁判例を,ご紹介します。


【ケース1】
交通事故によって,被害者である短大生が体幹性小脳失調,失調性構音障害で後遺障害5級2号,骨盤骨変形で12級5号の併合4級になり,短大を退学した事案です。

このケースで裁判所は,事故が起こった月から始まる後期分と翌年の前期分の授業料である67万円余を損害として認めました(神戸地裁平成10年7月17日)。


【ケース2】
22歳の被害者が,事故前に普通免許を取るために自動車教習所に通っていましたが,事故によって修了できなくなった事案です。

このケースで裁判所は,教習所代32万円の全額を損害として認めました(東京高裁平成14年6月18日)。






◆本件の検討



特に,ケース1の裁判例は,今回のケースと似ており参考になります。

ただ,上記によっても認められたのは「交通事故後の一定期間の授業料」であり,入学金や受験料などの全額ではありません。
とりわけ,入学金や受験料などは賠償の対象になりにくいと考えられます。

受験料は受験の対価といえますし,入学金は入学する地位の対価という側面もあるからです。

かつて入学金納付期限が早いため,滑り止め校に対しても入学金を納付しておいたところ,その後合格していたことが明らかになった第一志望校に進学した際,滑り止め校に支払った入学金が戻ってこないということが問題となったことがありました。
最高裁判所は入学金返還は不要と判断しました(学納金返還請求訴訟)。


賠償の範囲は「妥当な範囲」に限定されます。

このことからすると,本件でも返還請求できるのは,交通事故後一定期間の授業料に限定される可能性があります。
ただ,本件は遷延性意識障害の事案であり,上記の被害者より後遺障害の程度が重いので,より広い範囲で損害賠償が認められる可能性があります。

なお,ご質問のように個人事業者の開業資金が認められる例がありますが,その場合でも,必ずしも全額が認められるとは限らず,必要かつ相当な範囲に限定されます。


交通事故で無駄になった学費がどこまで損害として認められるかは,ケースによって異なります。お困りの場合には,一度弁護士までご相談下さい。





▼参考記事
・私は個人事業主ですが交通事故に遭い,後遺障害のため事業を継続することができなくなりました。
・交通事故に遭い,家族が遷延性意識障害になりました。どうして何度も転院しなければならないのですか?
また,転院先はどのようにして見つけたり選んだりするのが良いですか?

・交通事故のよくある質問

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故の物損事故です。傷の部分を塗装しましたが,ほかの部分と色むらがあるのが分かります。全塗装してもらいたいのですが,賠償してもらえますか?

2018年05月01日
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交通事故の物損事故です。傷の部分を塗装しましたが,ほかの部分と色むらがあるのが分かります。全塗装してもらいたいのですが,賠償してもらえますか?

一般的な物損事故の場合,全塗装を求めることは困難です。全塗装が認められるのは,部分塗装では明らかに美観が損なわれるケース,塗装が車体価格の大部分となっているケース,全塗装でも部分塗装でも費用があまり変わらないケースなど,例外的な場合のみです。




 交通事故 : 物損事故で全塗装が認められるケース 




◆全塗装は,基本的に認められない




交通事故の被害に遭うと,車の塗装がきずつくことが多いです。その場合,車の修理費用として,車の塗装費用を請求することができます。
このとき,部分塗装にするか,全塗装するかが問題となるケースがあります。


部分塗装とは,きずついた部分のみを塗装する方法,全塗装とは車両全体の塗装をすべてやりなおす方法です。

被害者は全塗装を望むことが多いのですが,一般的には,破損した部分の塗装費用しか賠償の対象として認められないです。


全塗装が認められないのは,以下のような理由によります。

・塗装の効用は「車の防さび効果と美観の保持」である。部分塗装と全塗装を比べたとき,多少の光沢や耐久性の差異はあるとしても,部分塗装でも上記の効用を実現することができる

・現代の塗装技術は発展しており,部分塗装の場合でも,再塗装したことがわかりにくく,車の美観を害することはない

・全塗装にすると,破損部分が小さくても車体全部を再塗装しなければならないので,費用が高額になりすぎる

・全塗装を施すと,被害車両は交通事故前より良い状態になり,被害者が過剰に利得することになる


部分塗装にとどめると多少の色むらが発生することがあるのはたしかですが,その程度であればやむを得ないというのが裁判所の一般的な考え方です。







◆全塗装が例外的に認められるケース



ただし,一部には例外的に,全塗装が認められるケースもあります。
たとえば,以下のようなケースで認められることがあるかもしれません。


・特殊な塗装技術が使われているので,部分塗装にすると,他の部分との相違が一見して明白になり,明らかに美観が害される場合

・車体が高額で,その価値の大部分が外装によるものである場合

・損傷箇所が広くなり,再塗装の範囲も大きくなるので,全塗装でも部分塗装でも費用的に大きな差が生じない場合


たとえば,高級外車であるポルシェが車体の大部分を損傷した事案において,部分塗装では破損部分とそれ以外の部分の相違がわからないように復元できないので,全塗装を認めた事例があります(岡山地裁津山支部平成7年4月25日交民集28巻2号671頁)。

近年では,キャンディ・フレークという特殊塗装が施されている車が交通事故に遭った事例において,全塗装が認められたケースもあります(東京地裁平成25年3月6日)。
しかし,その控訴審は,キャンディ・フレーク塗装であっても部分塗装で足りるとしました(東京高裁平成26年1月29日)。



以上のように,交通事故の物損事故で全塗装が認められるケースはかなり例外的です。





▼参考記事
・損害賠償額の計算方法
・賠償金額の基準に注意!
・交通事故と慰謝料のすべて

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

私は生活保護を受給しています。この度親が交通事故による死亡事故の被害者となり,私に保険金が支払われると聞きました。 私はこのまま生活保護を受給し続けたいです。どんな方法が考えられますか?

2018年04月27日
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私は生活保護を受給しています。この度親が交通事故による死亡事故の被害者となり,私に保険金が支払われると聞きました。
私はこのまま生活保護を受給し続けたいです。どんな方法が考えられますか?


加害者から受け取った賠償金を(ほとんど)全額市町村に返還することが考えられます。
また,他の相続人や家族に賠償金を渡したり,自分は少額のみ受け取ることにしたりすることも考えられます。





 交通事故 : 生活保護の受給 




◆賠償金を取得すると,保護を打ち切られやすい




親族が交通死亡事故に遭った場合,生活保護を受けておられる方は,注意が必要です。

生活保護を受給できるのは,「生活に困窮していて,自力では生活ができない場合」です。
死亡事故が起こると,数千万円の賠償金が入ってくることも多いので,それを受け取ると,「生活に十分な資産がある」として,保護を打ち切られる可能性があります。

保護を打ち切られた後,全額を費消してしまったら再申請できますが,その際,必ずしも認定を受けられるとは限りませんし,手間もかかってしまいます。







◆賠償金を市町村役場に支払い,あまりが残らないケースでは,問題が発生しない




生活保護の受給者が賠償金を受け取ると,保護を打ちきられるのであれば,交通事故の加害者からの賠償金を受け取らない方法しかないのでしょうか?

必ずしも,そうとは言えません。
まず,生活保護受給者が賠償金を受け取ると,市町村に対し,これまで受け取った生活保護のお金を返還しなければなりません。

そこで,保護の受給期間が長いケースなどで,賠償金をほとんどあるいは全部返還してしまい,手元に残らなければ,保護を打ち切られることはありません。

そこで,交通死亡事故の保険金を受け取ることになったら,まずは,いくらの賠償金が支払われるのかを市町村に伝えて,いくらを生活保護費として返還すべきかを聞き,保護が打ち切られる見込みがあるのか,確認しましょう。







◆他の親族にすべて賠償金を渡す




相続人が他にもいる場合にも,生活保護を打ち切られない方法があります。
賠償金を受け取ったら,相続人同士で話合いをして,誰がいくらを受け取るのか決定することになります(遺産分割協議)。

このとき,生活保護を受給している世帯は賠償金を受け取らないことにしたら,生活保護に対する影響は及びません。







◆少しだけ受け取る方法




全額を他の相続人に渡さなくても,生活保護を受給している世帯が数十万円のみ受け取ることなども可能です。

数十万円程度の賠償金が手元にあっても「生活に充分な資力がある」とまでは認定されず,その結果,保護を打ち切られない可能性が高いからです。

ただし,いくらであれば保護を打ち切られないのかについては,事前にきちんと市町村と相談しておく必要があります。



以上のように,生活保護受給者が交通事故による死亡事故の保険金を受け取るときには,保護の打切りに注意しなければなりません。
かといって,交通事故の加害者に賠償金を請求しないのも不当に相手を利することになります。






▼参考記事
・私は被害者で治療中ですが,生活保護を受給しています。ケースワーカーから,間もなく慰謝料が入るから生活保護は今月で打ち切りと言われましたが応じなければなりませんか?
・事故後間もない時点での相談
・当事務所の交通事故解決事例

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

私は交通事故の被害に遭って怪我をしましたが,自賠責が2社使えるそうです。どういうことか詳しく教えてください。 被害者請求は1社に対してしかできませんか。両方に対して被害者請求できるとして,同時にできますか。後遺障害診断書原本や画像ディスクなども同じものが2つ必要ですか?

2018年04月26日
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私は交通事故の被害に遭って怪我をしましたが,自賠責が2社使えるそうです。どういうことか詳しく教えてください。
被害者請求は1社に対してしかできませんか。両方に対して被害者請求できるとして,同時にできますか。後遺障害診断書原本や画像ディスクなども同じものが2つ必要ですか?


自賠責を2社使えるのは,加害車両が2台あったからです。この場合,被害者請求は2社に対して行うことができます。2社に請求する場合には,自賠責の限度額が2倍になりますが,受け取れる金銭が2倍になるわけではありません。
後遺障害診断書原本や画像ディスクは複数取得する必要はありません。





 交通事故 : 自賠責が2社使えるケース 




◆加害車両2台の交通事故では自賠責保険が2社使える




交通事故に遭ったとき,被害者が2社の自賠責保険に対して保険金請求できるケースがあります。


それは,加害車両が2台ある事故です。
加害車両が2台あると,それぞれの車両にかけられている自賠責保険へ被害者請求を請求することができるから
です。

たとえば,複数の自動車の交通事故に巻き込まれて怪我をしたケースや,タクシーに乗車していて運転手と相手方の両方の過失によって交通事故に遭ったケースなどには,加害車両が2台となります。自分の家族が運転する車両に同乗していたところ,その運転手と相手方の双方の過失によって生じた交通事故で怪我をしたときも,自賠責が2つ使えます。
同様に,加害車両が3台あれば,3社の自賠責保険に請求ができます。








◆2社の自賠責保険を利用するメリット




2社の自賠責保険に損害賠償金を請求する場合でも,通常の自賠責基準によって計算された保険金が支払われるので,受領金額が単純に2倍になるということにはなりません。

ただ,自賠責保険の「限度額」が2倍になるので,より多くの損害賠償金を受け取ることにつながりやすいです。

たとえば,傷害の保険金限度額は120万円ですが,2社を利用すると,240万円までの支払いを受けられます。すると,治療が長びいたケースなどでは,自賠責からだけでも十分な治療費や入通院慰謝料が支払われやすくなるのです。








◆提出資料は複数用意しなくてよい




2社の自賠責保険を利用できる場合であっても,被害者請求によって損害賠償金を請求することができます。

被害者請求とは,被害者が直接自賠責保険に対して損害賠償金を請求する方法ですが,自賠責保険が2社の場合,同時に被害者請求の手続を進めることも可能です。

自賠責保険は損害賠償金の請求を受けると「損害保険料率算出機構」の「自賠責損害調査事務所」に調査をさせます。損害調査を行う際,同一の資料が複数あっても意味はありません。
したがいまして,被害者請求する際の後遺障害診断書や画像データは1つ取得すればできます。




以上のように,交通事故といってもさまざまなパターンがあります。対応に困られた場合には,お気軽に弁護士までご相談下さい。








▼参考記事
・一緒に同棲している女性が運転する自動車に同乗しているときに,女性が自損事故を起こし,私が怪我をしてしまいました。賠償はどうなりますか?
・停車中の自動車の助手席のドアが開き,外にいた私が怪我をする交通事故に遭いました。この自動車の任意保険会社は対応してくれますか?
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:被害に遭われた方々の将来を考える

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交通事故の人身傷害保険と相手方損害保険との支払の順序によって違いが出ることがあると聞きました。詳しく教えてください。 その上で,相手方保険会社との間で総損害額400万円,私の過失1割で合意できそうなのですが,この段階で人身傷害保険から40万円だけを支払ってもらおうとしたら,人身傷害保険の担当者にダメと言われました。なぜですか?

2018年04月24日
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交通事故の人身傷害保険と相手方損害保険との支払の順序によって違いが出ることがあると聞きました。詳しく教えてください。
その上で,相手方保険会社との間で総損害額400万円,私の過失1割で合意できそうなのですが,この段階で人身傷害保険から40万円だけを支払ってもらおうとしたら(これまで人身傷害保険からの支払を受けたことはありません。),人身傷害保険の担当者はそんなのはだめだと言ってきました。なぜですか?



交通事故の人身傷害保険を先に受け取ると,その逆にするよりも受取金額が上がることがあります。ただ,人身傷害補償保険は,被害者の過失割合の分を補填するためのものではないので,先に受け取るのであれば,所定の計算方法によって算出した金額を請求して受け取る必要があります。
示談成立を見越して,過失割合を穴埋めするような受け取り方はさせてくれません。





 交通事故 : 人身傷害補償保険を受け取る順番 




◆人身傷害補償保険と加害者からの賠償金のどちらを先に受け取ると得になるのか?





【人身傷害補償保険を先に受け取ったケース】

交通事故の人身傷害補償保険と相手の損害保険の両方からお金を受け取れる場合,どちらから先に受け取ると得になるのでしょうか?

まず,人身傷害補償保険を先に利用するとどうなるのか,見てみましょう。
たとえば,総損害額は400万円,過失割合が1割,人身傷害補償保険の所定の計算方法によると,200万円が支払われるとします。

被害者は先に200万円を受け取り,その後加害者の保険会社に請求をします。人身傷害補償保険を先に受け取っていると,受け取った200万円は被害者の過失割合のある分に充当されます。そこで,被害者は400万円-200万円=200万円を受け取ることができます。

被害者が受け取るお金は,合計で400万円となります。



【加害者への損害賠償金を先に受け取ったケース】


これに対し,加害者への損害賠償金を先に請求すると,相手からは360万円が支払われます。

そして交通事故の人身傷害補償保険を請求しようとすると,人身傷害補償保険からは既に加害者から支払われた金額が控除されます。

つまり,200万円-360万円となるので「マイナス」になり,人身傷害補償保険からは支払いを受けられないことになります。被害者が受け取るお金は,全部で360万円です。




このように,被害者に過失割合がある場合には,人身傷害補償保険を先に受け取ったら過失割合の分も含めて満額の賠償金を受け取れるのに,相手の損害保険を先に受け取ると,受取金が減ってしまうことが多いのです。

このような結果は不合理とも思えますが,裁判所もこうした考え方を採用しています(大阪高裁平成24年6月7日)。







◆本件で,先に40万円を払ってもらえない理由



本件では,まだ示談が成立していませんが,示談成立を見越して,過失割合の40万円だけを人身傷害保険から支払ってもらいたいところです。
ですが,交通事故の人身傷害補償保険は,被害者の過失割合を穴埋めするものではありません。

保険金を受け取りたいのであれば,示談成立前に人身傷害補償保険の請求をして,所定の計算方法に従って算出された保険金を受け取る必要があります。

そして,その後に示談を成立させれば,満額の賠償金を受け取れる可能性がでてきます。




このように,人身傷害補償保険の受取りと相手の損害賠償金の受取りのタイミングは,被害者にとって重要な意味を持ちます。また,このような一筋縄ではいかない約款の人身傷害保険も出てきています。今後の参考にしてみてください。





▼参考記事
・交通事故に遭って怪我をしました。しかし,任意保険会社が,私の過失が大きいからといって治療費の対応をしてくれません。
・交通事故で相手方が任意保険無保険の場合の対応を教えてください。
・当事務所の交通事故解決事例

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交通事故に遭った際の仮渡金について教えてください。これを請求する手続をすることのメリットやデメリットにはどのようなものがありますか?

2018年04月20日
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交通事故に遭った際の仮渡金について教えてください。これを請求する手続をすることのメリットやデメリットにはどのようなものがありますか?


仮渡金は,示談や損害調査の前に,被害者が自賠責保険から受けられる損害賠償金です。後日損害賠償債権に充当されるものの早期に金銭を受け取れる点がメリットです。
請求手続が面倒であり,一括対応を打ち切られる点がデメリットとなります。





 交通事故 : 仮渡金 




◆仮渡金とは




仮渡金とは,交通事故の被害者が,加害者の自賠責保険から「先渡し」してもらえる損害賠償金のことです。

交通事故では,示談交渉が成立するまでは賠償金や保険金が支払われないことが一般的ですが,それでは葬儀費用や治療費などで当面のお金が必要な被害者が救済されません。

そこで,自賠責保険は「仮渡金制度」を作り,被害者からの請求があれば,一定金額を先に支払うことにしています。

仮渡金として先に支払われた金額は損害賠償の既払いとして扱われ,後に損害賠償金から差し引かれることになります。






◆仮渡金の金額



仮渡金で受け取れる金額は,以下のとおりです。

・死亡事故の場合,遺族に290万円
・傷害事故の場合,傷害の程度に応じて5万円,20万円,40万円








◆仮渡金を受け取るメリット



仮渡金を受け取る場合,示談が成立したり損害調査が行われたりする前にお金を受け取れる点が,大きなメリットとなります。

一般的に交通事故で示談が成立するまでには長い期間がかかり,治療期間が長引いた場合などには,3年以上かかるケースなどもあります。

また,死亡事故などの場合,葬儀のためにまとまったお金が急に必要になります。
そのようなとき,仮渡金を受け取ると,そのお金で治療を受けたり葬儀費用に充てたりすることができます。








◆仮渡金を受け取るデメリット



仮渡金を受け取るためには,被害者が加害者の自賠責保険に対し,直接賠償金を請求する手続によらなければなりません。

被害者が加害者の自賠責保険に対して直接請求する手続には,かなりたくさんの書類を集めたり作成したりしないといけないので,手間がかかります。


また,仮渡金請求のために被害者請求をすると「治療費支払の一括対応」が解除されます。

「治療費支払の一括対応」とは,任意保険会社が病院に治療費を直接支払うことです。いったん解除されても治療費が仮渡金を超えれば復活させることは可能ですが,一時的に解除されるので,その間被害者は,病院に治療費を自分で支払わなければならないことになります。

このようなデメリットがあるため,仮渡金が少額の場合(5万円のケースなど),あえて請求しない方が良いこともあります。

交通事故に遭ったときには,仮渡金制度を利用することもできますが,メリットばかりではなくデメリットもあります。正しく理解して,不利益を受けないように対応しましょう。








▼参考記事
・交通事故の被害があったとき,家族に対する慰謝料は認められますか?
・交通事故の慰謝料が増額される場合は,どのような場合ですか?
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:保険会社担当者について思うこと

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交通事故の家屋改造費で,サンルームを設置する費用は家屋改造費として認められますか。認められるとしたらどのような場合ですか?

2018年04月18日
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交通事故の家屋改造費で,サンルームを設置する費用は家屋改造費として認められますか。認められるとしたらどのような場合ですか?

家屋改造費としてサンルームの設置費用が認められることは,そう多くはないと考えられます。
ただし,被害者の介護や生活のために日光浴が必要なケースなどには,必要かつ相当な範囲で,費用が認められる可能性があります。





 交通事故 : 家屋改造費 




◆家屋改造費が認められる範囲



交通事故に遭ったとき,加害者に対して「家屋改造費」の請求ができるケースがあります。

家屋改造費とは,被害者の介護や生活のために,自宅の改造が必要になったときに発生する,自宅のリフォーム費用のことです。

交通事故に遭うと,さまざまな後遺障害が残る可能性がありますが,後遺障害が残ると,それまでの家で暮らすことが難しくなり,家屋の改造が必要になるケースがあります。

その場合,家屋改造費は交通事故によって発生した損害となるので,加害者に請求できるのです。

具体的な改造内容としては,自宅のバリアフリー化やホームエレベーターの設置などをすることが多いです。







◆家屋改造費が認められるケース



しかし,後遺障害が残ったとき,どのようなケースでも家屋改造費が認められることはありません。
被害者の生活や介護のための自宅のリフォームが必要であることが必要です。

その際には,以下の事情が考慮されます。

・被害者の受傷内容
・後遺症の内容と程度



認められやすいのは,以下のようなリフォーム費用です。

・バリアフリー化(段差解消)
・ホームエレベーターの設置
・浴室やトイレの改造費用
・玄関に設置するリフトの費用

サンルームの場合,そもそも被害者の介護や生活に必要かということが問題になります。
たとえば,日光浴がリハビリに役立つなどの事情があれば,認められる余地があるでしょう。






◆家屋改造費の限度額




家屋改造費が認められるとしても,全額が認められるわけではありません。

家族による利用予定なども考慮の上,必要かつ相当な範囲に金額が限定されます。
特に,サンルーム設置費用は高額になりやすいですし,同居の家族も利用できますから,全額は認められない可能性が高いです。

そこで,サンルームを設置する前に「そもそもサンルームの設置費用が賠償の対象として認められる事案か」及び「どのような設備を設置するか」という問題の検討が重要となってきます。


サンルームが補償対象となるかどうか判断しにくいケースでは,お気軽に弁護士までご相談下さい。





▼参考記事
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・将来介護費について教えてください。自宅介護と施設介護ではどのように異なりますか?
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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故時に失業者だった被害者の休業損害について教えてください。

2018年04月17日
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交通事故時に失業者だった被害者の休業損害について教えてください。

交通事故時に失業者であっても,就労の意欲と能力があり,実際に就労する蓋然性が高ければ,休業損害が認められる可能性があります。




 交通事故 : 失業者の休業損害 




◆休業損害は,有職者に認められる



交通事故に遭ってケガをすると,被害者は入通院によって治療を受けなければなりません。その間,通院や症状のために仕事ができなくなってしまうことがあります。

その場合,被害者が働いて得られたはずの収入を「休業損害」として,加害者に請求することができます。

ただ,休業損害が認められるのは,基本的に「事故前に働いていた人」です。
働いていなかった人は,もともと収入が無いので,事故によって働けない状態となったとしても,減収が発生しないからです。


そのため,失業者が交通事故に遭った場合には,基本的には休業損害は発生しません。






◆失業者に休業損害が認められるケース



ただし,一定のケースでは,失業者であっても休業損害が認められるケースがあります。
それは,以下のような場合です。

【就労の能力がある】
まず,実際に就労するだけの能力があることが必要です。
過去に働いていた実績なども考慮されます。

【就労意思がある】
本人に就労意思があることが必要です。事故前から就職活動をしていたなどの事情が考慮されます。

【就労の蓋然性がある】
実際に就労の蓋然性があったかどうかも判断材料となります。たとえば,事故前に既に内定が出ていた場合などには,失業者でも休業損害が認められやすくなります。

また,事故前に失業していても,治療期間が長期に及ぶ場合には,その期間中に就業した蓋然性が高いと考えられて,休業損害が認められるケースもあります。






◆失業者の休業損害の立証方法



失業者が休業損害を認めてもらうためには,比較的高度な立証が必要です。
職歴,前職の内容,また失業していた理由,事故前に健康であったのかなどを,具体的に説明し,立証しなければなりません。


就職のため,具体的にどのような求職活動をしていたかも重要なポイントとなります。







◆失業者の休業損害の計算方法



具体的に就職先が決まっていた場合などには,就職先での給料額を基準として,休業損害を計算します。

そうでないケースでは,
被害者の年齢や職種などをもとにした「平均賃金」を使って基礎収入を算定したり,前職での給料を考慮の上,現実的な収入を算出したりします。

休業期間については,被害者の就業意欲や前職の就労期間,無職期間の割合などの諸事情を考慮の上,裁判所の裁量で適当な期間を認定することなどがあります。



以上のように,失業者でも休業損害が認められるケースはあります。加害者との示談交渉の際に疑問を持たれた場合には,お気軽に弁護士までご相談下さい。





▼参考記事
・会社役員をしていますが,会社役員でも休業損害は補償されますか?
・交通事故に遭い,休業しています。サラリーマンの休業損害の計算方法はありますか?
・交通事故事案に弁護士がかかわる意味

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