私の父は交通事故に遭い,後遺障害が残りました。労働能力喪失期間を67歳までとして,後遺障害の逸失利益が計算されて,示談に至り,示談金が支払われました。その直後,父は心筋梗塞で死亡してしまいました。この場合,支払済みの逸失利益を返還する必要はありますか。

2018年06月15日
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私の父は交通事故に遭い,後遺障害が残りました。労働能力喪失期間を67歳までとして,後遺障害の逸失利益が計算されて,示談に至り,示談金が支払われました。その直後,父は心筋梗塞で死亡してしまいました。この場合,支払済みの逸失利益を返還する必要はありますか。

既に支払われた逸失利益を返還する必要はありません。




 交通事故 : 逸失利益を返還すべきか? 




◆逸失利益とは




交通事故で被害者に後遺障害が残ると,加害者に対して「後遺障害逸失利益」という損害費目の賠償を請求することができます。


後遺障害逸失利益とは,後遺障害が残ったことによって労働能力が低下するために発生する将来の減収分です。
後遺障害が残ると,労働能力が低下し,減収が発生すると考えられます。そこで,その分を損害として相手に請求できるのです。


後遺障害逸失利益は,就労可能年数分を計算します。

一般的に就労可能年数は67歳までとされているので,労働能力喪失期間は67歳までの期間を基準とします。

本来,後遺障害による減収は,毎月毎年個別に発生していくものですが,交通事故の損害賠償の場面では,そうした定期的な支払は行われず,一括払が行われています。いわば,先払です。









◆逸失利益は交通事故発生時に確定している




それでは,今回のように,逸失利益の支払を受けた後に被害者が交通事故とは別原因で死亡した場合,支払を受けた逸失利益を返還しなければならないのでしょうか?


結論として,そのようなことはありません。

逸失利益は「交通事故が発生した時点」において就労可能年数に対応する分が損害として確定していると考えられるためです。

つまり,後遺障害が残る程度の交通事故が発生したのであれば,その時点で後遺障害逸失利益は確定的に発生していると理解されています。その後に何らかの事情で被害者が死亡することがあっても,逸失利益が減額されることはありません。

これは,示談成立や判決確定,支払の前後を問いません。




交通事故の逸失利益を計算するときには,専門の法律知識が必要となります。正しい考え方が分からない場合,お気軽に弁護士までご相談下さい。





▼参考記事
・交通事故の被害に遭い,後遺障害に認定されましたが,示談前に被害者が事故とは関係のない別の原因で死亡してしまいました。逸失利益に影響はありますか?
・私の勤務先の定年は65歳です。就労可能年数を67歳までとすることに問題はないのですか?
・逸失利益・基礎収入について(裁判基準)

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故に遭いました。人身傷害保険に加入しているのですが,保険会社から人身傷害保険を使うか聞かれました。こちらの損害賠償を先に進めるか,人身傷害保険を使うかで悩んでいるのですが,両者の関係はどのようなものなのでしょうか?

2018年06月14日
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交通事故に遭いました。人身傷害保険に加入しているのですが,保険会社から人身傷害保険を使うか聞かれました。こちらの損害賠償を先に進めるか,人身傷害保険を使うかで悩んでいるのですが,両者の関係はどのようなものなのでしょうか?

人身傷害補償保険と損害賠償金の両取りは基本的にはできません。ただし,人身傷害保険を先に受け取ると,後にするよりも総受取額が上がる可能性があります。




 交通事故 : 人身傷害補償保険と損害賠償金 




◆人身傷害補償保険とは




人身傷害補償保険に加入していると,交通事故の被害に遭って負傷したり死亡したりすると「人身傷害補償保険」から保険金を受け取れます。


人身傷害補償保険は,加入者やその家族などに死傷の結果が発生したときに保険金が支払われる保険です。


人身傷害補償保険は,被害者が加入している保険会社から支払われる保険金です。事故の加害者や加害者の保険会社から支払われる損害賠償金とは別のものです。









◆人身傷害補償保険と損害賠償金の関係




人身傷害補償保険を利用すると,損害賠償金とは別に保険金を受け取れるので,人身傷害補償保険の分,受取総額が上乗せされるのでしょうか?


実際にはそのような扱いにはなっていません。


人身傷害補償保険は交通事故によって被害者が受け取れるお金(利益)ですが,このような「事故に起因する利益」については,損害賠償金から差し引くべきと考えられています。約款にもその趣旨が記載されています。
こうした考え方のことを「損益相殺」といいます。


そのため,交通事故に遭ったとき,人身傷害補償保険金の総額+損害賠償金の総額の全額を総取りすることは不可能です。








◆人身傷害補償保険を先に受け取った場合




ただし,被害者に過失がある場合には人身傷害補償保険に加入しているとメリットを受けられます。


人身傷害補償保険を先に受け取ると,人身傷害補償保険の受取金は「被害者の過失割合の部分」に先に充当されます。このことにより,被害者の過失部分についての金額まで受けることができます。

たとえば被害者に2割の過失割合がある場合,相手から受け取れる損害賠償金は総損害額に対して2割減になってしまいますが,人身傷害補償保険がその部分に充当されますので,人身傷害補償保険と損害賠償金を合計すると,被害者は総損害額の10割に相当する金銭を受けることができるのです。







◆人身傷害補償保険を後で受け取った場合




これに対し,先に損害賠償金を受け取ると異なる結果となります。先に損害賠償金を受け取る場合,過失相殺によって被害者の過失割合の分,賠償金が減額されますが,人身傷害補償保険からは,「すでに受けとった損害賠償金」が控除されます。


すると,結局は過失相殺を適用した分の損害賠償金しか受けとることができなくなってしまう可能性が高くなります。

人身傷害補償保険が先なら,上記のように被害者の過失割合の分も受け取れる可能性があるので,損害賠償金を先に受け取ると,損になります。






以上のように,被害者に過失がある場合,人身傷害補償保険を先に請求した方が得になる事例が多いです。交通事故の保険についてご不明な点がある場合には,お気軽に弁護士までご相談下さい。





▼参考記事
・交通事故に遭いました。私は,搭乗者傷害保険に加入していますが,どのような補償が受けれますか?
・過失割合について納得がいかないのですがどうすればよいですか。
・交通事故と治療Q&A

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故に遭い,現在,整形外科に通院していますが,保険会社から一括対応できない病院ですとの連絡がありました。この場合,自分で治療費を負担しなければいけませんか?

2018年06月12日
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交通事故に遭い,現在,整形外科に通院していますが,保険会社から一括対応できない病院ですとの連絡がありました。この場合,自分で治療費を負担しなければいけませんか?

このような場合には,被害者が自分で治療費を支払って通院し,後に保険会社に対して治療費を請求する必要があります。




 交通事故 : 病院が一括対応に応じない場合 




◆一括対応とは




この事案では,保険会社から「一括対応できない」といわれていますが,そもそも一括対応とはどういったことなのでしょうか?


一括対応は,自賠責保険の負担分についても任意保険会社が窓口となって支払を行うことです。


交通事故による治療費は,自賠責保険に納まる額は自賠責保険が負担し,それを超える部分は任意保険が負担することになります。ただ,被害者が自賠責保険と任意保険にばらばらに治療費を請求するのは大変なので,多くの場合,任意保険が「一括対応」します。

一括対応が行われると,任意保険会社が自賠責保険の負担分も含めて直接病院に対して治療費を支払うので,被害者が病院に治療費を支払う必要はありません。









◆治療費は後から請求できる




しかし,任意保険会社による一括対応に対応しない病院があります。そうした病院に対しては,任意保険会社が直接病院に治療費を支払うことができません。

また,任意保険会社の方から一括対応を拒絶されたり,途中までは一括対応していても一定期間が経過すると,任意保険会社の方から治療費支払を打ち切られたりするケースもみられます。なお,任意保険会社に一括対応すべき法的義務があるわけではありません。

このように,一括対応してもらえなくなったら,被害者は病院の窓口で,自分で治療費を支払わなければなりません(労災の対象となるときは別です。)。


ただ,被害者が自分で病院に治療費を支払ったとしても,それが事故と因果関係のある治療である限り,その負担した分については,最終的には相手の任意保険に請求できます。治療費は,交通事故によって発生した損害であり,加害者はその損害を賠償すべき義務を負っているからです。

任意保険会社と示談交渉を進め,一括対応後の治療費も賠償に含めることを求めることになります。任意保険会社が応じなかったときは,紛争処理センターや裁判所の利用も視野に入ってきます。









◆健康保険を利用して通院する




交通事故の被害者が病院で治療を受けようとすると,健康保険を適用しないという病院があります。

交通事故被害者に健康保険を適用できないという制度や法律はないので,任意保険会社が一括対応しないときは,健康保険をつかって治療し,窓口での負担を軽減するようにするのが賢明です(労災がつかえるときは別です。)。





このように,交通事故では任意保険の「一括対応」に関連してトラブルが発生するケースがあります。お困りの場合には,弁護士までご相談下さい。





▼参考記事
・交通事故に遭って怪我をしました。しかし,任意保険会社が,私の過失が大きいからといって治療費の対応をしてくれません。どうするのがよいですか?
・事故直後・症状固定前から相談可
・鍼灸・マッサージ費用・器具薬品等について(裁判基準)

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| 治療費 |

私の一人娘が交通事故に遭い,亡くなりました。加害者は,私の娘が急に道路に飛び出してきたと主張して,反省の色を一切見せません。加害者に対して,慰謝料を請求するともに,反省文を書いてほしいのですが,可能でしょうか?

2018年06月11日
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私の一人娘が交通事故に遭い,亡くなりました。加害者は,私の娘が急に道路に飛び出してきたと主張して,反省の色を一切見せません。加害者に対して,慰謝料を請求するともに,反省文を書いてほしいのですが,可能でしょうか?

このような場合,加害者の態度が悪いことによって慰謝料が増額される可能性は一応ありますが,反省文を書かせることを強制する手段はありません。
ただし,相手が刑事事件になった場合には,加害者が自発的に反省文を書いてくる可能性があります。被害者が要請したときに加害者が反省文作成に応じる可能性が出てきます。





 交通事故 : 加害者からの反省文 




◆慰謝料の増額事由について




交通事故で被害者が死亡すると,死亡慰謝料という慰謝料が発生します。

本件のご相談者は加害者あるいは加害者の保険会社に対し,上記の死亡慰謝料を請求することができます。

被害者が子どもの場合の死亡慰謝料は,2,000〜2,200万円程度となることが多いです。




また,加害者に反省がないことを慰謝料の増額事由として評価することがあります。


本件のように相手が反省せず謝罪も一切行わず誠意のない態度をとり続ける場合には,上記で示したよりも高額な慰謝料が認められる可能性があります。








◆反省文の作成義務について




しかし,本件のように加害者の態度が悪い場合,死亡慰謝料の支払に関わらず,被害者の遺族は納得など容易にできるものではないと思います。

そのようなとき,加害者本人に反省文を書かせることができるのでしょうか?

まず,法律上は加害者本人に「反省文を書くべき義務」はありません。

交通事故などの「不法行為」を行ったとき,加害者は被害者に対して損害賠償をしなければなりませんが,その賠償方法は金銭で行うべきとされています。反省文を書くべき義務は法律上ありません。
そのため,被害者の立場としては,加害者に対して法的義務のない反省文作成を強制する手段はありません。

相手を脅迫して反省文を書かせたら,被害者の側が脅迫罪や強要罪を問われる可能性もあります。








◆相手が刑事事件になった場合




ただし,交通事故の加害者が「刑事事件」になった場合には状況が変わってきます。


加害者が刑事事件になった場合,なるべく処分を有利にするためには反省の態度を示し,早期に被害者側から許してもらうための努力をしたことを示す必要があるからです。

特に死亡事故の場合,加害者の刑罰も重くなりやすいので,加害者のほうから謝罪文を送ってきて許しを乞うと連絡してくるケースも多いです。




親族が交通事故で亡くなられたときのご心痛は察するにあまりあります。そういったケースでは,被害者の無念に報いるため,きちんと法的な権利を適切に実現することが特に重要です。

「相手を許せない」「高いペナルティを与えたい」「きちんと慰謝料を受け取りたい」「相手との示談交渉が苦痛」などといった思いを抱かれた際,弁護士がアドバイスをいたしますので,お気軽にご相談下さい。







▼参考記事
・加害者の態度に納得できないのですがどうすればよいですか?
・事故後の人生
・刑事裁判(手続)で意見を述べたい

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交通事故によって,顔に傷痕が残りました。周りからは「傷痕ほとんどないね。目立たないし,大丈夫だよ」といわれるのですが,私はすごく気になります。このような場合,何か請求できないでしょうか?

2018年06月08日
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交通事故によって,顔に傷痕が残りました。周りからは「傷痕ほとんどないね。目立たないし,大丈夫だよ」といわれるのですが,私はすごく気になります。このような場合,何か請求できないでしょうか?

まずは「外貌醜状」の後遺障害に該当しないか検討すべきです。後遺障害に該当すれば後遺障害慰謝料や逸失利益を求められます。また,自賠責の後遺障害基準に該当しないとしても,裁判をすれば後遺障害慰謝料が認められることもあります。




 交通事故 : 外貌醜状 




◆外貌醜状とは




交通事故で顔に傷跡が残ると「外貌醜状」という後遺障害が認められる可能性があります。

外貌醜状とは,顔や首,頭などの露出部分に傷痕や瘢痕が残ってしまった場合に認められる後遺障害です。


基本的には他の人から見て「醜い」と感じるかどうかが後遺障害認定の基準となりますが,自賠責の認定基準では傷痕の大きさによって機械的に判断されます。








◆自賠責の外貌醜状認定基準




外貌醜状で認定される後遺障害の等級は,7級か9級か12級です。

12級がもっとも軽い症状で一番認定を受けやすいのですが,12級に認定されると,後遺障害慰謝料として290万円程度の後遺障害慰謝料が支払われますし,後遺障害逸失利益も請求できる可能性があります。




認定基準は以下の通りです。

【12級14号 外貌に醜状を残すもの】

・頭部の場合,鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損が残った場合
・顔面部の場合,10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3p以上の線状痕が残った場合
・頸部の場合,鶏卵大面以上の瘢痕が残った場合


上記については,1つの傷で大きさ・長さの要件を満たす必要があり,複数の傷痕を合計して大きさや長さを測ることはできません。

大きさの測定は機械的に行われるので,1ミリメートルでも不足していたら,後遺障害としての認定は受けられません。







◆自賠責の外貌醜状に該当しなくても慰謝料が認められた例




しかし,上記の自賠責の外貌醜状の基準に該当しなくても後遺障害が認められて,慰謝料が認められた事例があります。


● 大阪地裁平成13年4月24日判決交民集34巻6号1773頁

この裁判例の事案は,被害者の女性の顔面の2か所に傷跡が残りましたが,自賠責の認定基準に足りず,後遺障害非該当とされたというものです。

判決では,女性の醜状痕が12級14号に近い大きさとなっていることを重視して,慰謝料として200万円が認定されました。




以上のように,たとえ自賠責の後遺障害認定基準に該当しなくても,裁判をすると後遺障害として慰謝料が認められるケースもあるので,諦める必要はありません。
交通事故で顔や首,頭などの目立つ場所に醜状痕が残った場合には,一度弁護士までご相談下さい。






▼参考記事
・交通事故での醜状障害の後遺障害慰謝料は高くなることがあると聞きました。本当にそうなのでしょうか?
・傷跡の解決事例
・後遺障害等級について

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故に遭った後,歩くときにぶつかりやすくなったのはなぜですか?

2018年06月06日
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交通事故に遭った後,歩くときにぶつかりやすくなったのはなぜですか?

高次脳機能障害で脳の右側を傷つけると左側の半側空間無視を発症することがあり、左側の障害物を認識できないので、歩行時にぶつかりやすくなります。





 高次脳機能障害と半側空間無視 




◆あちこちにぶつかるようになった




(Lさん45歳女性)
主婦のLさんは、自転車で買い物に行く途中で車に衝突され、転倒して頭を打ってしまいました。
病院で精密検査を受けたところ、交通事故による脳損傷が原因の高次脳機能障害と診断されました。


Lさんの主な後遺症は、半側空間無視(はんそくくうかんむし)でした。


Lさんは、お盆の上に置かれたおかずのうち、右側の皿に盛られているものは全部食べましたが、左側の皿は手つかずで残していました。
茶碗のご飯も、右側にかたよって食べていて、茶碗の左側にご飯が残っています。
Lさんは、脳の右側の損傷が原因で、自分の左側にあるものを認識できなくなったのです。



歩行時に道順がわからないのも、困ることの一つでした。
左側にあるものがわからないので、病室を出て左に曲がらないといけない場所に行けず、まっすぐ歩いていきます。
このような状態のままでは、帰宅しても、街を一人で歩くのが怖いとLさんは思いました。


電信柱や路上駐車の車、歩道に置かれたお店の看板・・半側空間無視の人にとって、街を歩くことは危険を伴います。
道順を知っている場所へ行こうとしても、左側にある道路を認識できなければ、目的地にたどり着けないでしょう。

Lさんは、症状が良くなるならリハビリテーションを頑張ろうと思いました。







◆繰り返し訓練することで認識度が向上



紙に描かれた1本の横線を2分割する訓練では、はじめはずっと右寄りに分割していたLさんですが、訓練を繰り返すうちに、だんだん真ん中寄りに分割できるようになりました。

横書きの文章を音読する訓練は、左側の文字を読み飛ばしていましたが、何度も音読の練習をするうちに、読み飛ばす文字が減ってきました。

円形の時計の文字盤に数字を書く訓練では、右半分にかたよって数字を書いていたLさんですが、やがて左側にも少し数字を書けるようになりました。








◆安全を考えた部屋の模様替えをしてから退院




高次脳機能障害による半側空間無視の症状がやや改善してきたので、Lさんは退院して通院によるリハビリテーションを受けることにしました。


しかし、家の中にも危険はいっぱいあります。

床に積まれた雑誌や本は、視野に入らなければつまずいて転ぶ原因になります。

Lさんの家族は、退院前に家の中の片づけをして、床にはできるだけ物を置かず、とがったもの、落とすと割れるようなインテリア用品はしまいました。

テーブルの角や、廊下からキッチンに入るコーナーには、ラバーのクッションをつけて万一ぶつかっても怪我をしないようにしました。



Lさんは住み慣れた我が家で安全に暮らせるようになったことがうれしく、高次脳機能障害の症状をもっと改善したいと、熱心に通院リハビリテーションに通っています。






▼参考記事
・絶対失敗しない事務所の選び方
・当事務所の交通事故解決事例
・交通事故の注目の裁判例

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故に遭いました。高次脳機能障害の注意障害について教えてください。

2018年06月05日
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交通事故に遭いました。高次脳機能障害の注意障害について教えてください。

高次脳機能障害で注意障害になると、注意力が散漫になり周囲のちょっとした刺激で集中力を失うので、仕事に支障がでることがあります。





 高次脳機能障害による注意障害 




◆落ち着きのない態度は病気のせい?




(Pさん30歳女性)
事務職のPさんは、仕事でミスはしない上に穏やかな性格なので、誰からも好かれています。

しかし、交通事故に遭って1カ月入院した後で勤務を再開してからは、すっかり性格が変わってしまいました。

あの落ち着きのある態度が一変し、仕事に対する集中力がなくなり、つねにそわそわした様子が見られます。



仕事中でも、Pさんの机のそばを誰かが通ると、やりかけの仕事から目を離し、通り過ぎた人の後ろ姿をぼんやり眺めています。


複数の仕事をテキパキ片付けることもできなくなりました。
Pさんが所属する部署は、月末に仕事量が急増して大忙しになります。
そんな時、ベテランのPさんは、営業部員があちこちから声をかけて用事を頼んでも、嫌な顔一つせず、仕事していました。


しかし、今は、以前の半分も仕事をこなせなくなり、しかもやり終えて提出した仕事もミスだらけです。さすがに、直属の上司がおかしいと思い、Pさんに精密検査を受けるよう勧めました。









◆診断名は注意障害




Pさんは、事故で頭を打っていたので、入院時に一応検査を受けましたが、特に自覚症状はなく、元気に退院していましたが、今回は脳の専門医のいる病院で精密検査を受けました。

診断名は、高次脳機能障害による注意障害。

注意障害のおもな症状は、いろいろな刺激に反応して注意がそれるので、一つのことに集中できないことです。
そのほかにも、同時に複数のことに注意を向けることができない、いったん一つのことに取り組むと、他のことに気持ちを切り替えられないなどの症状が現れます。




これらの症状は、まさにPさんの職場での様子を表しています。
Pさんは、医師から、脳の損傷による高次脳機能障害で注意障害を起こしていることを告げられてショックを受けましたが、リハビリテーションで症状を緩和できる可能性を知り、少し気持ちが楽になりました。

ともかく、注意障害を治さなければ、閑職に移動させられるか、最悪の場合は退職に追い込まれる可能性があるのですから、Pさんはまじめにリハビリテーションに取り組みました。









◆はじめは短時間の訓練から




注意障害のリハビリテーションは、静かな個室で行われました。
他の人がそばを歩いていたり、音楽がかかっていると、Pさんが注意散漫になるからです。


注意障害の人は、単純作業で集中力を持続することがむずかしいので、はじめはリハビリテーションを短時間で終え、徐々に訓練時間を長くしていきました。
同じマークや文字、数字などを見つけてチェックするような単純作業と、辞書を使って言葉を調べる、電卓をたたくなどの訓練を組み合わせて、Pさんが興味を持って取り組めるようなプログラムが考案されました。


Pさんは、会社で仕事をしながらリハビリテーションを継続しています。高次脳機能障害による注意障害の症状は、徐々に改善されています。


会社は、もともと有能な働き手だったPさんの復調を心待ちにしています。







▼参考記事
・高次脳機能障害による注意障害における医学的リハビリテーションについて教えていただけますか??
・交通事故で高次脳機能障害になった人が知るべき国の診断基準とは,何ですか?
・高次脳機能障害を負われた方の解決事例

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交通事故に遭うと,視覚に異常が出ることがありますか?

2018年06月04日
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交通事故に遭うと,視覚に異常が出ることがありますか?

交通事故で高次脳機能障害になると、物を見てもその名前がわからない視覚失認になることがあります。





 交通事故による高次脳機能障害と視覚失認




◆物の名前がわからない




(Cさん56歳男性)
夕方から雨が本降りになり、日没前なのに日が暮れたようにあたりは薄暗く見えます。
自宅近くの信号のない横断歩道を渡っているとき、無灯火の車がブレーキをかけずにCさんの方に向かって走ってきました。

その後の記憶は途切れ、Cさんが目を覚ましたのは病院のベッドの上でした。
手足は動くし、どこも痛いところはありません。
車にはねられはしたものの、怪我は軽かったのだ・・Cさんは不幸中の幸いと思うことにしました。


しかし、お医者さんの考えは違いました。
Cさんは、交通事故で頭を打ったことが原因で高次脳機能障害になったことが、画像診断でわかったのです。




Cさんに現れた主な症状は、視覚失認(しかくしつにん)でした。
視力が悪くなったわけではないのに、ものを見てもそれが何か良くわからないのです。

看護師さんがCさんに朝食を運んできます。
スープを飲むためのスプーンと、ソーセージを食べるためのフォークがお盆の上に載っていますが、スプーンとフォークを見ても、それが何か、どう使うのかわかりません。

Cさんは、脳のなかで行われる視覚による情報処理に問題が起きたために、高次脳機能障害の後遺症のひとつである視覚失認を起こしたのでした。









◆症状が改善するとリハビリテーションが楽しくなる




Cさんは、医師や看護師に励まされてリハビリテーションを始めました。

絵カードに描いてあるハサミや植木鉢、メガネなどを見てそれが何という物品か答える訓練は、はじめは答えができず、苦労しましたが、何度も同じ訓練を繰り返すうちに、だんだん物の名前が言えるようになりました。


そうなると、単調でつまらなく感じていたリハビリテーションが楽しみになってきます。


次は、実物を見て名前を答える訓練です。
立体的な物は、見る角度によって形が違って見えるので、視覚情報がより複雑になるので、より難易度が高くなります。

Cさんは、リハビリテーションの課題ができた時の達成感を味わいたくて、次の訓練に集中して取り組みました。
立体を認知する能力が上げるために、視線を動かす訓練も行いました。



Cさんは退院するにあたって身の周りのものを決まったところに置くと視覚失認の症状が出にくくなると教わりました。

そこで、妻と相談しながら、不要なものは捨て、カーテンの色を統一するなど部屋の模様替えをした結果、視覚失認をあまり気にせず暮らせるようになりました。



Cさんは、積極的にリハビリテーションと向き合った結果、高次脳機能障害による視覚失認を克服したのです。






▼参考記事
・交通事故による高次脳機能障害:左半側空間無視とリハビリテーションですか?
・当事務所の交通事故解決事例
・交通事故の注目の裁判例

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交通事故で高次脳機能障害になった際,早期にリハビリテーションしたほうが良い理由はなぜですか?

2018年05月31日
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交通事故で高次脳機能障害になった際,早期にリハビリテーションしたほうが良い理由はなぜですか?

交通事故で高次脳機能障害になった人は、早期にリハビリテーションを始めると、失われた能力を脳の他の部分が補おうとするので、後遺症が軽くなる傾向があります。





 交通事故で高次脳機能障害:早期のリハビリテーションと脳の変化




◆早期にリハビリテーションを始めると脳はどうなる?



昨日のコラム「交通事故で高次脳機能障害:リハビリテーションはベッドの上で始まる」では、交通事故で高次脳機能障害になった人のリハビリテーションは、できるだけ早く開始するのが、現在の医学における考え方であることを述べました。

なぜ、そんなに早い時期に急いでリハビリテーションを始めるのでしょう?
怪我をしてしばらくの間は、事故のショックや、体が思うように動かないことによるいらだちなど、精神的に不安定な時期が訪れます。
高次脳機能障害による意識障害を起こす場合もあります。

しかし、高次脳機能障害は、発症してしばらくすると、症状が安定し、それからは進行しないという特徴があります。
この時期を逃さずにリハビリテーションを開始することが、脳にとても良い効果を生み出すのです。





いったん損傷した脳細胞を、元通りに治すことはできません。
ですから、高次脳機能障害による後遺症の原因となっている脳の部分を治療する手段は、現在のところ見つかっていないのです。



しかし、脳の神経には「可塑性(かそせい)」という素晴らしい性質があります。
可塑性とは、機能の変化を起こすことです。
壊れた脳を再生することはできないけれども、脳の他の部分の神経は、失われた能力を補おうとする柔軟性を持っているのです。







◆リハビリテーションが脳神経に刺激を与える



脳に可塑性という素晴らしい性質があるとは言っても、何もしないでそのままでは、失われた能力を他の部分で補おうとする働きは起きません。

脳の神経が、何らかの刺激を受けることで、可塑性が起き、失われた能力を補おうとするのです。

その「刺激」が、リハビリテーションなのです。







◆達成感を感じることがだいじ



リハビリテーションというと、単調な動きを繰り返し行う、忍耐を要する訓練というイメージがありませんか?

脳は、新しい物事に出会うこと刺激を受けます。

リハビリテーションは、単調な動きを毎日のように繰り返すのではなく、新しい訓練方法も順次取り入れることが不可欠なのです。
バリエーションのある動作は脳を活性化させるので、理学療法だけでなく、高次脳機能障害の症状に応じた作業療法も行います。



そして、忘れてはならないのが、リハビリテーションで達成感を感じることです。


目標をクリアして達成感を感じると、ドーパミンという脳内伝達物質が分泌されます。
やり遂げたという満足感、自己肯定感は脳に良い影響を与えて、リハビリテーションの効果を高めるのです。


達成感を感じてその日のリハビリテーションを終えることができるといいですね。






▼参考記事
・交通事故で生活が一変。。まさか自分が高次脳機能障害になるとは,これからどう生活していけば良いのでしょうか?
・交通事故で高次脳機能障害で,記憶障害でも仕事をする事は可能ですか?
・「臭いが分からなくなった!?」〜頭部外傷と嗅覚障害〜

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交通事故で高次脳機能障害になった場合のリハビリテーションについて教えていただけますか?

2018年05月30日
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交通事故で高次脳機能障害になった場合のリハビリテーションについて教えていただけますか?

交通事故で高次脳機能障害になった人のリハビリテーションは、まだ患者さんに大きな負荷をかけられなくても、ベッドの上で行うことができます。





交通事故で高次脳機能障害:リハビリテーションはベッドの上で始まる




◆リハビリテーションを始める時期はいつが良い?




リハビリテーションの方法とその効果に対する研究が進んだ結果、昔と今では、リハビリテーションに対する認識が大きく変わってきました。

以前は、交通事故で高次脳機能障害を発症した人のような重症患者は、入院してから容体がある程度落ち着くまで絶対安静で過ごすのがあたり前でした。



つまり、その間、リハビリテーションは全く受けず、ただ病室のベッドの上で動かずに過ごしていたのです。
しかし、現在の医学では、「リハビリテーションは、できるだけ早く開始すべきである」という考えが主流です。



リハビリテーションという言葉から連想するのは、専用のマシンが完備されたトレーニングルームで、手すりや歩行器を使って歩くなどの訓練を行う光景ですが、ここで言うリハビリテーションは、そのように身体に大きな負荷を与えるものではなく、できる範囲で体を動かすことを意味します。

理学療法士が病室を訪れ、高次脳機能障害の患者さんがベッドの上にいる状態でリハビリテーションを行えば、患者さんが病室を移動することによる体力の消耗を防ぐことができます。
また、患者さんはベッドの上だけでも、以下のようないろいろな体位を取ることができるので、体位に合わせてバリエーション豊富なリハビリテーションを行うことができるのです。



むろん、患者さんによってできる体位とできない体位がありますから、医療チームで良くコミュニケーションを取りながら、どのような運動をしたら良いか判断した上で実施します。







◆ベッド上の体位



ベッドの上で取ることができる姿勢は、こんなにいろいろあります。

・仰臥位(おうがい:上向きに横たわる姿勢)
・腹臥位(ふくがい:うつ伏せに横たわる姿勢)
・側臥位(そくがい:上半身を横向きにして横たわる姿勢)
・長座位(ちょうざい:ベッドの上で上半身を起こし、足を延ばした姿勢)
・端座位(たんざい:ベッドの端に腰掛ける姿勢)

病室のベッドが、マットレスの角度を変えることができるギャッジベッドであれば、以下の姿勢も可能です。
・半座位(はんざい:頭側のマットレスを持ちあげ、上半身を15度から45度くらい起こす姿勢)



そうして十分な体力が付いたら、いよいよ立位(りつい:両足で立つ姿勢)、歩行訓練など、次のステップに進みます。


その頃には、高次脳機能障害は急性期を脱して症状が安定してきますから、より負荷をかけたリハビリテーションにも耐えうる体になってきます。



交通事故に遭い高次脳機能障害になった場合は,ぜひ高次脳機能障害に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。






▼参考記事
・交通事故で頭を打ちました。外傷はないのですが,脳神経外科を受診した方が良いでしょうか?
・高次脳機能障害でリハビリテーションが重要と言われる根拠はなんですか?
・頭(脳)に怪我を負われた方の解決事例

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)
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