自宅バリアフリー化に要する費用や車両改造費は,どこまで交通事故の損害賠償として認められますか?

2018年03月27日
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自宅バリアフリー化に要する費用や車両改造費は,どこまで交通事故の損害賠償として認められますか?

自宅改造費や車両の改造費は,「実費のうち,相当額」が認められます。どの程度が相当なのかについては,ケースによっても異なります。
過度に高級仕様ではないこと,本当に必要な改造なのか,改造が必要な程度の障害に至っているのか,その改造によって被害者以外も利益を受けているかなどの観点から,改造費用の範囲が判断されています。





 後遺障害による自宅改造費の賠償 



◆自宅改造費の範囲の判断基準




交通事故で,被害者に後遺障害が残った場合,これまでと同様の自宅での生活が難しくなったり,車の運転や同乗ができなくなったりすることがあります。
そのような場合,自宅のバリアフリー化による改造費用や自動車の改造費用を加害者に対して請求できる可能性があります。


ただし,このとき,どのような内容の改造であっても全額の費用を請求できるというわけではありません。



基本的には,以下のようなものが損害として認められます。

     居宅の出入口や風呂場,トイレなどの設置や改良費用,ベッドや
    椅子などの購入費用,自動車の改造費用などのうち,「実費相当額」 




ただ,実費相当額と言っても不明確ですから,個別のケースに応じて判断しなければなりません。


判断基準は,以下のようなものとなります。


● 本当に必要な改造内容となっているか(過度に高級な仕様になっていないか)

● 自宅改造目的で土地を購入したときの損害の範囲

● 改造によって家族が便益を受けているとき,損益相殺的な調整をするのか

● 本当に必要な範囲の自動車改造費か(過度に高級な仕様になっていないか)

● 交通事故による障害の内容に対応した改造となっているか








◆自宅改造の具体例




たとえば,自宅のバリアフリー化を進める際に,1階と2階の両方にシステムキッチンを入れて食洗機を設置した場合,そういった付加的なものは介護に必要と認められない可能性が高いです。


また,エレベーターを設置すると,被害者以外の同居人も利益を受けるとの理由で,設置費用の一部のみが賠償の対象となることが多いです。


また,もともとの家を改造すると新築するより高額になってしまう場合には,新築費用相当分までしか改造費用が認められない可能性が高いです。


バリアフリー化した家を建てるために土地を購入した場合には,土地購入代金の全額が認められるのではなく,新居の何割かの数値が損害費用として認められることが多いです。








◆車両改造費の範囲について




自動車についても,相当な改造内容であることが必要です。交通事故による障害があっても運転するために必要な改造であれば認められますが,
高額なカーステレオやカーナビ,高機能すぎるドライブレコーダーなどを入れても,損害としては認められない可能性が高いです。


また,車椅子ごと乗車する必要があるが,もともと所有していた自動車では車椅子での乗車ができないというとき,新たに介護用自動車を購入する必要があります。そのような場合でも,介護用自動車の価格からその自動車の一般的な(介護用でない)仕様での価格を控除した額のみが損害とされることもあります。



自宅改造費や自動車の改造費用について,保険会社から支払ってもらえると期待していたのに実際には支払ってもらえなかったら,自己負担となってしまいます。

どの程度の範囲の賠償が受けられるか分からない場合には,事前に弁護士までご相談ください。




▼参考記事
・高次脳機能障害の場合自宅改造費は損害として認められますか。
・交通事故の入院付添費は損害として認められないのでしょうか?
・損害賠償額の基準に注意!

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故の損害賠償には,自宅付添費,通院付添費,入院付添費という損害費目があることや,1日当たりの基準があることは知りました。 しかし,付添いを行った人が有職者で,休業して付添いを行ったのですが,付添い1日当たりの減収分は,付添費1日当たりの基準を大きく上回ります。減収分の賠償を受けることはできないのですか?

2018年03月26日
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交通事故の損害賠償には,自宅付添費,通院付添費,入院付添費という損害費目があることや,1日当たりの基準があることは知りました。
しかし,付添いを行った人が有職者で,休業して付添いを行ったのですが,付添い1日当たりの減収分は,付添費1日当たりの基準を大きく上回ります。減収分の賠償を受けることはできないのですか?


この場合,付き添った近親者の一日分の収入を基礎として付添看護費用を請求することが可能です。ただし,その金額が職業看護人に依頼した場合の費用を超える場合には,職業看護人にかかる相当費用が上限となります。




 交通事故の損害賠償 : 付添看護費用



◆付添看護費用とは



付添看護費用とは,被害者が入通院するときや自宅療養するときに,看護の必要性があるときに看護したときに認められる損害費目です。

職業看護人を雇った場合には実費相当分が,近親者が付添看護をした場合には1日当たり定額が認められます。いわゆる赤い本では,以下のとおりとなっています。


● 入院付添費 1日6500円程度

● 通院付添費 1日3300円程度

● 自宅付添費 必要かつ相当な金額






◆休業損害と付添看護費用について




ただ,有職者が仕事を休んで看護をする場合,上記の金額よりも休業損害の方が金額が大きくなることがあります。

その場合には,休業損害の金額をもとにして,賠償金の請求をすることができます。

たとえば,1日当たりの基礎収入が1万円の家族が付添看護を行うと,1日1万円分の休業損害の請求をすることが考えられます。






◆例外について




ただし,休業損害がどれだけ多くても,常に実収入を元に賠償請求できるわけではありません。

収入によって計算された1日あたりの基礎収入が「職業看護人を雇った場合の金額」を超える場合には,職業看護人を雇った場合の金額にまで,付添看護費用が制限されます。

そのような場合,近親者が仕事を休んで付添看護をするよりも,職業看護人を雇った方が合理的であると考えられるからです。


裁判例にも,入院付添費について被害者の妻の年収を根拠とした請求が行われた事例で,職業付添人の費用を超える部分は損害として認めなかったものがあります(1日1万1286円の限度で認められました。)(徳島地裁阿南支部平成13年5月29日判決)。






◆通院付添費,自宅付添費のケース




また,通院付添費や自宅付添費を請求する際にも注意が必要です。

これらの付添費用については,「付き添ったら常に認められる」ものではないからです。

たとえば,通院付添費用が認められるのは,被害者が幼児で親が通院に付き添う必要があるケースなどであり,自宅付添費が認められるのは,被害者が重症で家族による介護が欠かせないケースなどです。

そもそも付添費用が認められないなら,近親者が仕事を休んで付添いをしても,付添看護費用の請求は認められません。



なお,自宅付添費であっても,被害者の父親が自宅付添いを行った事例で,父親の現実の収入を考慮して1日当たり1万円の自宅付添費を認めた裁判例も存在します(福岡地裁平成25年7月4日判決)。

近親者が仕事を休んで付添看護を行うと,生活に対する影響も大きくなります。

交通事故後の適切な対応方法に迷われた場合には,一度,弁護士までご相談下さい。




▼参考記事
・交通事故における損害賠償の項目について
・交通事故の入院付添費は損害として認められないのでしょうか?
・交通事故に遭った妻を在宅介護する,夫への損害賠償について

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故で遷延性意識障害になった被害者に関し,相手方の保険会社は「被害者の余命は遷延性意識障害者の平均余命を用いて算定すべきであり,健常者の平均余命を用いて算定すべきでない。」と主張してきています。こんなやり方で損害算定されてしまうのですか?

2018年03月23日
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交通事故で遷延性意識障害になった被害者に関し,相手方の保険会社は「被害者の余命は遷延性意識障害者の平均余命を用いて算定すべきであり,健常者の平均余命を用いて算定すべきでない。」と主張してきています。こんなやり方で損害算定されてしまうのですか?

いいえ,多くの裁判例では,遷延性意識障害のケースにおいても,健常者と同じだけの平均余命をもって計算をしています。
保険会社の主張に応じる必要はありません。





 遷延性意識障害 : 平均余命 



◆遷延性意識障害の将来介護費




交通事故が原因で「遷延性意識障害」になってしまうことがあります。

遷延性意識障害とはいわゆる植物状態のことです。




遷延性意識障害になると,生涯にわたって介護が必要となるので,将来介護費用を請求することができます。

このときに問題になるのが「平均余命」です。

将来介護費用は,症状固定時の平均余命に対応する分が認められます。







◆平均余命の「余命制限」について




ところが,被害者のご家族や後見人が保険会社と示談交渉をしていると,保険会社は「遷延性意識障害の患者は平均余命が短いので,余命を制限すべきだ」という主張をしてくることがあります。

「遷延性意識障害の患者は10年以内に死亡する確率が80%なので,平均余命は10年としましょう」と,具体的なデータを示されることも多いです。

確かに,このような統計データがあることは事実ですが,だからといって,遷延性意識障害の方の平均余命を10年にしてしまって良い,ということにはなりません。




実際に,多くの裁判例では,遷延性意識障害の方のケースで,健常者と同等の平均余命を適用して,将来介護費用を計算しています。

たとえば,裁判例(東京地裁平成6年3月19日)では,保険会社の提示する統計資料のサンプル数が少ないことや,遷延性意識障害の患者への介護や医療水準が日進月歩であり,今後は平均余命が延びていく可能性もあることなどから,平均余命の制限を否定しています。

そこで,保険会社が「遷延性意識障害の患者の場合,平均余命が短いから将来介護費用を減額する」と言ってきても,受け入れるべきではありません。







◆遷延性意識障害の示談交渉は,弁護士までご相談下さい




遷延性意識障害の被害者のご家族は,ただでさえ大きな心痛を被っているところに,こうしたデリカシーのない主張をされてしまうことにより,精神的苦痛がさらに増加してしまうものです。

弁護士に示談交渉をご依頼いただけましたら,そうした精神的ストレスもなくなりますし,法的に適正な基準で賠償金を計算できるので,受け取る賠償金の金額は適正なものになります。

もちろん平均余命についても健常者と同様のものをあてはめて,正当な将来介護費用を請求します。

交通事故でご家族が遷延性意識障害になってしまった場合,患者の権利を守るためにも,お早めに弁護士までご相談ください。




▼参考記事
・遷延性意識障害
・将来介護費について(裁判基準)
・遷延性意識障害を負われた方の解決事例

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

高次脳機能障害になり,転院することになりました。転院した後はどんなリハビリテーションをするのでしょうか?

2018年03月22日
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高次脳機能障害になり,転院することになりました。転院した後はどんなリハビリテーションをするのでしょうか?

急性期を過ぎた高次脳機能障害の患者さんは,自分の病気を理解し,症状の回復をめざして病院で生活訓練を受けます。




 高次脳機能障害 : 生活訓練 



◆医学的訓練の後は生活訓練を行う




交通事故などが原因で高次脳機能障害を発症し,救急病院に入院した人は,いずれ退院について話し合うことになります。

退院もしくは転院する目処は,おおむね入院後2カ月です。

これは,高次脳機能障害の治療を2カ月行えばある程度回復するという意味ではなく,健康保険の制度上,2カ月以上同じ病院に入院していると,病院が受け取る診療報酬が減るので退院を促すためです。




患者とその家族は,院内のソーシャルワーカーや医師と相談しつつ,高次脳機能障害の治療を行っている病院で,回復期の患者を受け入れる病院を探し,転院します。

転院先の病院で行うリハビリテーションは,おもに生活訓練です。

生活訓練とは,高次脳機能障害の人が暮らしていく上で,より質の高い日常生活を送れるようになること,社会のなかで活動することを念頭にその能力を引き出すことなどを目的として行います。

その結果,生活の質を高め,生きていくことに張り合いを持つことができ,社会参加を前向きにとらえることができるようになります。







◆本人に病識はありますか?




病識とは,患者自身が病気だと自覚していることです。
そんなことはあたり前だと思いますか?

ところが,よくあることなのですが,高次脳機能障害は病識がないのです。

病気だと思っていないので,突拍子もない言動を取る,強い言葉で相手を非難して嫌な気持ちにさせる,地理的な記憶力が衰えた結果,知っている場所にたどり着けず道に迷う・・いずれも高次脳機能障害の典型的な症状ですが,患者自身は病気だと思っていないので,以前と変わらずふるまっていると考えます。

生活訓練を始めるにあたっては,患者さんが高次脳機能障害であることを理解してもらわなければなりません。そして訓練をすることで,生きづらさをできるだけ軽くし,社会のなかでより良い暮らしを営んでいけるであろうことを説明します。




なお,生活訓練のプログラムを作成するにあたっては,患者本人と家族の目標にギャップが生じやすいので,双方と良く話し合って無理のない目標を立てるようにします。

リハビリテーションのプログラムとしては,生活訓練という名称の通り毎日の生活に即した訓練を行います。
その根幹にあるのは,規則正しい生活です。

日課を作り,それに基づいて外出訓練やグループワークなどの訓練を行います。グループワークとは,集団を作って活動したり意見交換を行う訓練で,社会復帰した際の対人関係の構築のために行います。




▼参考記事
・社会復帰のために,誰に相談すればよいでしょうか。
・高次脳機能障害と家族の会
・高次脳機能障害を負われた方の解決事例

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故で高次脳機能障害になりました。退院するまで,どのようなことをするのでしょうか?

2018年03月20日
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交通事故で高次脳機能障害になりました。退院するまで,どのようなことをするのでしょうか?

高次脳機能障害で入院して最初に受けるのは医学的なリハビリテーションです。記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動などの症状に対し認知の向上を目指して訓練します。




 高次脳機能障害 : 医学的リハビリテーション



◆高次脳機能障害で入院したらすぐにリハビリテーションが始まる




交通事故などによる頭部外傷が原因で高次脳機能障害になった人が入院するのは,救急患者を受け入れて治療する設備がある病院です。

病院に到着した人は必要な治療や検査を受けますが,症状が安定したら,すぐにリハビリテーションが開始されます。

この時期のリハビリテーションを「医学的リハビリテーション」と言います。




道具を扱うこと,文章を作成すること,音読,会話,目的を定めてそれを実行するといった作業や動作は,わたしたちが普段あたり前のように行っています。

しかし,高次脳機能障害の人はわたしたちにとってあたり前のことができないのです。そこで,医学的リハビリテーションを行う際には,認知リハビリテーションという考えに基づいて訓練を行います。

認知とは,外界の事物を判断したり解釈する深層の心理のことで,もともと心理学の専門用語でしたが,日本では認知症に認知という用語が用いられるようになったので,マイナスのイメージが強くなってしまいました。




しかし本来,認知とは知覚,決定,想像,記憶,言語理解などのさまざまな要素を伴う,人間独自の高度な脳の働きを意味しています。

一方,高次脳機能障害になると,これらの認知機能のいずれかが低下します。

知能は衰えていないが,相手の話す意味を理解できなくなった人は,言語理解という認知が低下しているわけです。

相手の気持ちや立場を思いやらず,ズバズバ相手を非難するいわゆる場を読めない高次脳機能障害の人は,相手の気持ちを重んじるという相続力が欠如しています。




このように,認知は高次脳機能障害のあらゆる症状に関連しています。
高次脳機能障害の症状は人によってさまざまですが,治療の根幹にあるのは,認知リハビリテーションです。







◆医学的リハビリテーションの目標




高次脳機能障害でもっとも良く見られる症状は,記憶障害,遂行機能障害,注意障害,そして社会的行動障害で,いずれも,認知の退行が関連しています。

ですから,認知リハビリテーションで認知のレベルを向上させることで,これらの典型的な高次脳機能障害の症状が改善することが期待できるのです。




たとえば,約束を守れない,何度も同じことを繰り返して質問する,新しいことを覚えられなくなるなどの症状が現れる記憶障害は,反復や内的記憶戦略法で記憶を持続させる訓練をします。

内的記憶戦略法とは,視覚や連想でものごとを記憶する訓練です。




▼参考記事
・高次脳機能障害と相談
・治療中に弁護士に相談した方がよい理由は何ですか?
・最新の情報を踏まえた解決をすること

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(よつば総合法律事務所 弁護士 大澤一郎)

交通事故による高次脳機能障害の専門医はありますか?

2018年03月19日
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交通事故による高次脳機能障害の専門医はありますか?

交通事故による高次脳機能障害は,受傷して発症した直後が最も症状が重く,専門医が治療にあたりますが,その後は各分野の医療従事者がチームで治療を担当します。




 高次脳機能障害 : 専門医



◆高次脳機能障害の専門医とは?




高次脳機能障害は,ヒトの脳が普段あたり前のように行っている情報処理ができなくなる病気です。

原因は,脳の疾患のほか,スポーツや交通事故で頭部に強い衝撃を受けたことによっても起こります。

あなたが,頭部に強い衝撃を受けるような事故に遭って病院に行くとしたら,どの診療科目を受診しますか?

頭を打ったから脳外科でしょうか? それとも,脳神経の損傷が心配だから神経内科でしょうか?
念のため身体の他の部分も悪いところがないか診てほしいから外科に行くでしょうか?




その名もズバリ高次脳機能障害科という診療科目がある病院も存在しますが(2018年2月現在東北大学病院にあります),そのような病院はまれで,多くの患者さんは,何科に行けば良いか悩むのではないでしょうか?

それも当然です。
というのは,病院は高次脳機能障害を発症した患者さんに対して,複数の診療科目が連携して治療に当たるからです。

むろん,脳の損傷に伴う疾患なので怪我をして症状が現れた時期,すなわち急性期と呼ばれる期間は,神経内科や脳神経外科が中心となって治療にあたります。

これらの診療科目がある病院は,高次脳機能障害の患者の治療に関するノウハウを持っています。







◆高次脳機能障害の治療はチームアプローチ




病院側は症状が落ち着いた高次脳機能障害の患者さんに対して,チームアプローチを行います。

チームアプローチとは,異なる専門分野の複数の人間が連携して患者の治療に当たることで,全員が情報を共有し,意見を述べ合いながら,主治医が診療方針を決定する方法です。

高次脳機能障害の症状は,受傷直後がもっとも重く,その後症状が安定してきます。この時期を逃さず,できるだけ早い時期にリハビリテーションを開始することで,後遺症からの回復が期待できます。

まだ本調子でないから・・急に体を動かすのは心配だから・・と,リハビリテーションを始める時期が遅れれば遅れるほど,高次脳機能障害の症状は不可逆的に安定し,なかなか回復しなくなります。

言い換えると,怪我をした→高次脳機能障害を発症→リハビリテーションを開始という流れなのです。




むろん,急性期のリハビリテーションに無理は禁物,皆さんがリハビリテーションという言葉から連想するようなトレーニングよりも軽度の機能回復訓練です。

たとえば,ベッドの上に寝たままで理学療法士が足を屈伸させたり腕を動かしたりするような運動が,急性期のリハビリテーションです。早期に体の筋肉を動かすことで,筋肉の衰えを防ぎ血液の循環が良くなって,より強い負荷をかけたリハビリテーションが可能になるのです。

高次脳機能障害に多い失語症や失認などの症状がある場合は,チームアプローチの一員である作業療法士や視覚聴覚士が訓練を担当します。

健康な人でも1週間寝たきりでいると,筋力が10〜15%も低下し,1カ月も経つと筋肉が委縮し,関節が固まるという報告があります。




頭を打ったから安静に・・という考え方は大事ですが,それは怪我をした直後のことで治療を受けるようになったら,専門医の指示を受けながらできるだけ早く体を動かすべきなのです。




▼関連記事
http://www.hosp.tohoku.ac.jp/departments/d1607/
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/haiyo-shokogun.html

▼参考記事
・病院選びはどのようにしたらよいですか。
・高次脳機能障害を負われた方の解決事例
・医師を味方につけよう!

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(よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤寿康)

交通事故で頭を打ちました。外傷はないのですが,脳神経外科を受診した方が良いでしょうか?

2018年03月16日
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交通事故で頭を打ちました。外傷はないのですが,脳神経外科を受診した方が良いでしょうか?

交通事故で頭を打っても高次脳機能障害に気付かないまま職場に復帰し,うまく仕事ができないことがあります。頭を打ったら脳神経外科などの専門医の検査を受けましょう。




 高次脳機能障害 : 脳神経外科などの専門医の検査の必要性 



◆患者本人も気付かずに高次脳機能障害を発症!?




Lさん(48歳男性)は休日に散歩中,乗用車にはねられ,歩道に頭と腕を打ち付けました。

幸い,目立った外傷はなく,救急病院でレントゲン撮影をしましたが,骨折はしておらず,特に痛むところはないし意識もはっきりして,翌日からいつものように出勤しました。




Lさんの仕事中の様子に異変が見られるようになったのは,交通事故に遭ってから1カ月後です。

記憶力が良く,仕事の段取りが良いので皆に頼りにされているLさんが,たて続けに顧客とのアポイントをすっぽかしたのです。

顧客からの問い合わせで,アポイントに出向かなかったことに気付いたLさんは平謝りしましたが,そのような失態が続くにつれて,社内での立場が悪くなり,退職に追い込まれました。




Lさんは,なぜ物覚えが悪くなったのかわからず,若年性認知症ではないかと絶望的な気持ちになりました。

しかしLさんは,認知症ではなく,交通事故の衝撃で脳が損傷したために,高次脳機能障害を発症していたのです。

Lさんが,交通事故に遭った後すぐ脳神経外科を受診していれば,もっと早く高次脳機能障害と診断され,適切な治療を受けることができていたでしょう。







◆こんな症状が現れたら脳神経外科で精密検査を




脳に傷がついても,その程度が軽い場合,受傷直後には症状が現れなかったり,外見からは発症していることがわからないことがよくありますが,怪我をした後,意識障害が起きた場合は要注意です。

スポーツをしていて頭にボールがあたり,しばらくの間ぼうっとした感覚になったり,家具に頭をぶつけてくらくらっとめまいがした経験をお持ちの方もいるでしょう。

意識障害とは,このような感覚がしばらく続き,その間の記憶がない状態を言います。

高次脳機能障害の場合,急性期すなわち,受傷直後に意識障害が現れることが多いのです。




一般的に,急性期(発症直後)の意識障害はやがて消失するので,もう良くなったと思いがちです。しかし,意識障害が現れたということは,脳の組織に何等かの異変が現れている可能性があるので,短時間で意識障害が消えても精密検査を受けるべきです。

受診する診療科目は,脳神経外科を選べば,脳のCT(コンピュータ断層撮影法)やPET(陽電子放出断層撮影法)検査など,必要に応じて専門的な検査が可能です。

高次脳機能障害の症状は,発症直後がもっとも重く,その後症状が安定する傾向があるため,頭を打ったら,できるだけ早く検査を受けることが望ましいと言えます。




▼参考記事
・高次脳機能障害の症状に気付くには,どのようにすればよいですか。
・被害者ご家族が事故後,被害者のご様子が変わったと話しており,当事務所で高次脳機能障害の可能性を指摘し,必要な検査を受けていただき,検査結果をもとに保険金額0円から4810万円で解決できた事例
・専門家との協力関係

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交通事故による軽い高次脳機能障害は,発見が遅れがちになりますか?

2018年03月15日
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交通事故による軽い高次脳機能障害は,発見が遅れがちになりますか?

軽度の高次脳機能障害は外見からはわかりにくいので,交通事故で頭を打ったら精密検査を受けましょう。




 高次脳機能障害 : 発見の遅れ



◆軽度の高次脳機能障害は外見からは障害がわかりにくい




鉄板や繊維強化プラスチックでできている車のボディーが,人の歩行速度よりはるかに速いスピードで人にぶつかれば,人体の内外に力学的エネルギーを及ぼして,多くの場合,車に衝突した人は怪我をします。

皮膚をすりむいて出血した,腕を動かせないので骨折したかもしれない・・といったひとめでわかる外傷は,すぐ治療を受けるでしょう。

問題は,外見からはわかりにくい怪我です。




その一つが,交通事故に遭ったが,外見からは怪我をしたように見えない高次脳機能障害です。

事故の直後は,ふらつきがあったり,意識がはっきりしないなどの症状があったとしても,時間が経つにつれて意識がはっきりして特に痛いところもないので,怪我はなかったということで済まされがちです。

このような軽度の高次脳機能障害を見過ごした結果は悲惨です。もし,後から脳機能にさまざまな問題が現れるようになったらどうなるでしょう?







◆人身事故だと後で気づいたら




他に外傷がなかったので,加害者から人身事故でなく物損事故にしてほしいと頼まれて承諾したが,脳に障害が現れたので治療が必要になった場合,事故を人身事故扱いに変更する申し立てをしなければなりません。

加害者側の任意保険会社との交渉,警察署で必要書類の入手と申請手続き・・その間にも治療費がかかるので,自腹で立て替えざるを得ません。

警察は,物損事故を人身事故に変更する際に慎重に調査しますから,警察に対して明快な医学的証拠を提出する準備も不可欠です。

医学的証拠とは,脳の画像診断などの客観的データですが,専門医のいる設備の整った病院でなければ検査を受けられませんし,通院や検査費用は被害者にとって大きな負担となります。







◆仕事に復帰したあと病気に気付いたら




高次脳機能障害を発症していることに気付かずに仕事を再開し,さまざまなトラブルが身の周りで起こることがあります。

対人コミュニケーションがうまくいかない,記憶力が低下する,空気を読まず思ったことをすぐ口にするなどの症状は,高次脳機能障害によく現れる症状ですが,仕事をする上で支障をきたすので,長期療養を余儀なくされたり,仕事を辞めざるを得なくなることがあります。

外見からは病気のように見えず,病気への理解を得にくいので,仕事を失い,社会のなかで孤立しがちです。
事故で頭部を強打したら,高次脳機能障害を発症していないかどうか精密検査を受けましょう。




▼参考記事
・高次脳機能障害の症状に気付くには,どのようにすればよいですか。
・警察の対応に納得がいかないのですが,どうすればよいですか?
・困ったらすぐ相談!!

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葬儀関係費用に関し,香典・香典返しの交通事故の損害賠償における位置づけは,どうなっているのでしょうか?

2018年03月14日
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葬儀関係費用に関し,香典・香典返しの交通事故の損害賠償における位置づけは,どうなっているのでしょうか?

香典返しは交通事故の損害として認められません。また,反対に,香典を受けとることによって損益相殺されることもありません。香典は交通事故の賠償金とは無関係なものと理解されています。




 死亡事故の損害賠償 : 香典・香典返し



◆香典返しは損害にならない




死亡事故が発生した場合,遺族は,交通事故によって発生した損害の賠償を,加害者に対して請求することができます。

葬儀費用は当然交通事故に起因するものですから,請求できることに問題はありません。

ただ,香典返しも損害に含まれるかは,別途問題となります。

香典は「死者の霊前に供える香の代わりの金銭」であり,参列者に支払義務があるものではありません。「気持ち」によって参列者が喪主本人に手渡すものです。

香典返しは,こうした「気持ち」によって渡された香典に対し,喪主が「自主的に」お返しするお金であることを理由に,「交通事故によって発生した損害」には当たらないと考えられています。

そこで,喪主(遺族)が香典返しをしたとしても,その分のお金を加害者に請求することはできません。







◆香典受取りによる損益相殺も行われない




次に,いただいた香典を「損益相殺するか」という問題もあります。

損益相殺とは,不法行為(交通事故)に起因して得られた利益がある場合に,その利益の分を,相手に請求できる金額から差し引くことです。

たとえば,労災による療養給付や休業給付,健康保険から受け取る傷病手当金などを受けとると,その分が損益相殺されて,加害者に請求できる賠償金から差し引かれます。

そうなると,香典も,交通事故に起因して得られる利益となり損益相殺されてしまうのでしょうか?




繰り返しになってしまいますが,香典は,葬儀への参列者などが喪主に対して「気持ち」でお渡しするお金です。香典を渡すかどうか,いくらにするかなどは参列者次第であり,支払いたくない人は支払をする法的義務はありません。

そこで,基本的に香典は損益相殺の対象にならず,損害賠償金からの差し引きをしないことになっています。







◆香典は損害賠償金の一部にならない




死亡事故の加害者が被害者の葬儀に訪れて香典を支払う場合,贖罪の意味を込めて,非常に高額な金額の香典を渡すことがあります。ときには数十万円以上の香典が渡されるケースも見られます。

このような場合,香典は損害賠償金の一部になるのでしょうか?




先にもお書きしましたとおり,香典は交通事故の損害とは別次元のものと考えられています。

そこで,加害者から支払われた香典が賠償金の一部に充当されることは,基本的にはありません。
ただし,香典として支払われる常識的な金額の範囲をあまりにも超える場合(数百万円のケースなど)では,損害に充当されることもあり得ます。


損害算定に関し,お一人で考えるよりは,弁護士に一度相談してみて頂いたほうが,悩む時間が少なくて済むと思います。




▼参考記事
・葬儀関係費用
・死亡された方の解決事例
・死亡事故における慰謝料

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交通事故の後遺障害認定手続きの事前認定と被害者請求の違いは何ですか?

2018年03月13日
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交通事故の後遺障害認定手続きの事前認定と被害者請求の違いは何ですか?

事前認定も被害者請求も,後遺障害認定のための手続です。
事前認定は,加害者の保険会社に後遺障害の認定請求手続を任せる方法です。


これに対し,被害者請求は,被害者が自ら自賠責保険会社に対して後遺障害の認定請求を行う方法です。





 後遺障害認定 : 事前認定と被害者請求の違い



◆後遺障害認定請求の方法




事前認定も被害者請求も,どちらも後遺障害等級認定請求の方法です。

交通事故に遭うと,さまざまな後遺障害が残ることがありますが,その場合,自賠責損害調査事務所に対して書類や資料を提出し,等級認定を受ける必要があります。

そのときに利用できる方法として,事前認定と被害者請求の2種類があるのです。







◆事前認定




事前認定とは,加害者の任意保険会社に後遺障害等級認定の申請を任せる方法です。

被害者が弁護士をつけずにご自身で示談交渉を進めるケースでは,多くの場合,こちらの方法が利用されています。

事前認定による場合,被害者は,主治医に後遺障害診断書を作成してもらい,それを相手の任意保険会社に送付するだけで済みます。申請をすると,数ヶ月後,任意保険の担当者から,認定結果が通知されます。







◆被害者請求




被害者請求とは,被害者本人が直接自賠責保険会社に対して後遺障害等級認定の請求をする方法です。

弁護士が後遺障害認定請求を代行する場合には,ほとんどのケースで被害者請求の方法を利用します。

被害者請求をするときには,後遺障害診断書だけではなく,たくさんの資料が必要です。




たとえば,交通事故証明書や事故発生状況報告書,保険金請求書や診断書,診療報酬明細書,各種の検査結果の資料(レントゲン画像やMRI画像など)などを,被害者自身が用意して,自賠責保険会社へ提出しなければなりません。

申請をすると,自賠責損害調査事務所が審査を開始して,認定結果は自賠責保険会社から被害者宛に,書面で通知されます。

事前認定と被害者請求を比較したとき,被害者が手続をコントロールできる度合いが高いのは被害者請求です。




被害者請求の場合,被害者の裁量によって,有利な資料や医師の意見書などを取得して提出することもできますし,被害者が自分で手続を行うので,手続の過程は事前認定よりは被害者に可視化されています。

事前認定では,どのような資料が損害調査事務所に提出されたのか,被害者からは見えません。

ただし,被害者請求を効果的に活用するためには,専門的な知識やノウハウも必要です。
弁護士に依頼することが望ましいと言えるでしょう。

当事務所でも,積極的に後遺障害認定請求に取り組んでおりますので,交通事故に遭われて後遺障害認定請求をお考えの場合には,一度お気軽にご相談ください。




▼参考記事
・後遺障害の申請を弁護士に依頼することのメリットとは?
・後遺障害認定サポートは何をしているのか?
・後遺障害申請の際に,医師に正しく自覚症状を伝え,MRI撮影も依頼し,放射線科医の意見も取得し,症状を正確に伝えたことで裁判基準と同水準で解決できた事例

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