交通事故後も収入の減少はありませんでしたが,逸失利益は認められますか?

2017年07月04日
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交通事故後も収入の減少はありませんでしたが,逸失利益は認められますか?

収入の減少がない場合,基本的には逸失利益は認められませんが,本人の努力によって収入減少が起こらないようにしているようなケースでは,逸失利益が認められることもあります。




 逸失利益 


◆逸失利益とは


逸失利益とは,交通事故で後遺障害が残った場合,労働能力の低下により減少してしまった分の収入のことです。

交通事故に遭って後遺障害が残ると,その分労働能力が失われます。


すると,その分得られる収入が減るので,その分が損害となります。そこで,その得られなくなった収入を逸失利益として,相手に支払い請求することができます。

逸失利益とは,事故によって得られなくなった収入なので,事故前に収入があった人に認められるのが基本です。逸失利益は,各後遺障害の等級に定められた労働能力喪失率を基準として計算します。







◆収入減少がないなら逸失利益は認められない


逸失利益は,失われた収入のことです。そこで,後遺障害が残ったことによって労働能力が失われて,収入が減少することが前提となっています。


実際に収入減少がない場合には,基本的に逸失利益は認められません。
過去の最高裁の判例でも,収入減少がない場合には逸失利益を認めないとするものがあります(最判小昭42.11.10)。







◆収入減少がなくても逸失利益が認められるケース


ただ,実際の収入減少がなくても,それが被害者本人の努力によって維持されているケースがあります。

この場合,本来なら労働能力が失われて収入が減少しているはずです。もし,逸失利益を認めなかったら,努力をしない方が損害賠償金を多くもらえることになって不合理です。そこで,事故後収入減少がなくても逸失利益が認められる例はあります。

たとえば,最判小昭和56.12.22では,特段の事情がある場合には,実際の収入減少がない場合にも逸失利益を認める余地があると判断しています。

具体的には,以下のような場合に収入減少がなくても逸失利益を認める余地があるとしています。

●収入が減収しないように本人が特に努力しているだけであり,本来なら減収が起こっている
●今後の昇給・昇任・転職などの際に,不利益取扱を受ける可能性がある


上記の基準を参考にして、ケースバイケースで逸失利益の有無が判断されることになります。

たとえば,バイク便勤務の男性が事務職に転職して増収になったケースで,それは本人の特別の努力と幸運によるものであるから,逸失利益を認めた事案(東京地裁平14.8.28)や,信用金庫の営業係長の事案で,減収が起こっていないのは本人の努力によるものである上,将来の昇進などに対する影響が予想される場合に逸失利益を認めたケース(東京地裁平20.3.11)などがあります。




このように,減収がない場合でも逸失利益が認められる可能性はあります。しかし,その判断はケースバイケースで、非常に難しいです。弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事
・交通事故HP:逸失利益と後遺障害
・交通事故HP:交通事故の逸失利益
・交通事故HP:交通事故による後遺障害の解説




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

会社役員をしていますが,会社役員でも休業損害は補償されますか?

2017年07月03日
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会社役員をしていますが,会社役員でも休業損害は補償されますか?

会社役員でも休業損害が補償されることは多いですが、その金額や計算方法は事案によって異なります。




 会社役員 休業損害 


◆会社役員には休業損害が認められにくい理由


交通事故前に仕事をしていた人の場合,交通事故によって怪我をすると働けない期間が発します。

この場合,その期間に得られたはずの収入を得られなくなるので,損害が発生します。この損害のことを休業損害と言います。

そこで,事故前に働いて収入があった人は,事故によって休業した期間に応じて相手に対し,休業損害の請求ができます。
休業損害の計算方法は,事故前の基礎収入を基準として,「1日あたりの基礎収入×休業日数」によって算出します。


しかし,会社役員の場合には,当然に休業損害が認められるとは限りません。
会社役員は,労働の対価としてお金をもらっているのではなく,事故に遭ったとしてもそれとは無関係に収入を得られる立場にあるから,休業による損害が発生しないと考えられるからです。



そこで,会社役員が交通事故に遭うと,サラリーマンや個人事業主などと比べて休業損害が認められにくくなってしまいます。







◆会社役員の休業損害


会社役員のケースで休業損害が認められにくいと言っても,全く認められないわけではありません。
特に日本では,会社役員とは言っても実質的に従業員と同じような働きをしており,それに対する対価をもらっていることも多いです。


そこで,会社役員のもらっている給与は,「役員報酬部分」と「労務対価部分」の2種類に分けて考えられます。

役員報酬部分は,役員として経営に関わることによって支払われる報酬なので,事故とは無関係に支給されます。
労務対価部分とは,役員が実際に会社に労務を提供することによって支払われる給与で,サラリーマンなどと同様のものです。




そこで,役員報酬部分については,労働とは無関係に支給されるものなので休業損害の基礎収入とはなりませんが,労務対価部分については基礎収入として休業損害を請求することができます。







◆役員報酬部分と労務対価部分の計算方法


そうなると,役員報酬部分と労務対価部分をどのようにして計算するかが問題になります。
この場合,職務内容や他の役員や従業員の給与などを参考にして,事案ごとに個別に判断します。


通常は,報酬全額が認められることはなく,割合的に算定されますが,小さい会社などで実質的に役員が労働者と同じ立場であるようなケースでは,100%の役員報酬が基礎収入とされることもあります。

反対に,社外取締役や社外監査役の場合には,労務対価部分を観念できないのでその割合は0%となり,休業損害は認められないことが多いです。




このように,会社役員でも休業損害が認められる可能性はあります。保険会社から支払いが出来ないと言われて困っている場合には,一度弁護士に相談することをおすすめします。




▼参考記事
・解決事例:095 会社役員の休業損害・逸失利益を認定
・交通事故HP:休業損害・会社役員について(裁判基準)
・注目の裁判例:会社代表者の逸失利益




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故当時,無職でしたが,そのような場合でも休業損害が出ますか?

2017年06月30日
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交通事故当時,無職でしたが,そのような場合でも休業損害が出ますか?

無職でも就労の可能性があり,就労意欲と能力があった場合には,休業損害が認められるケースがあります。




 休業損害 無職 


◆休業損害は無職者には認められない


交通事故に遭って怪我をした場合,被害者が有職者であって事故前に収入を得ていたケースでは,休業損害を請求することができます。

休業損害とは,交通事故によって仕事を休んだため,得られなくなった収入に相当する損害のことです。




たとえば,サラリーマンや自営業者,アルバイトの人などに認められます。

これに対し,無職者は,事故で怪我をしても「働けなくなった」ということにはなりませんし,それによって得られなくなった収入もありません。

そこで,無職者には基本的には休業損害は認められません。
収入がある人でも,不動産収入などの不労所得の場合には,やはり休業損害は認められません。







◆失業中でも休業損害が認められるケース


無職者には休業損害が認められないとしても,失業中で事故当時無職だっただけであれば,休業損害が認められるケースがあります。


無職者が休業損害を請求するためには,実際に仕事に就ける可能性があり,かつそのことを書面で証明できることが必要です。

具体的には,以下の要件が必要です。

・事故前に仕事ができる可能性があったこと 
 →たとえば,就職が内定していた場合などです。

・事故前に仕事をする意欲を持っていたこと 
 →本人に働く意欲があり,就職活動などをしていた必要があります。

・事故前に仕事をする能力を持っていたこと 
 →実際に終業後,仕事を継続していける能力を持っていたことも必要です。


これらのことを書面で証明するためには,内定通知書や雇用契約書などの書面が必要です。就職活動をしていた場合には,就職活動のために作成していた履歴書や企業とのやり取りの記録などが資料となります。

このようにして,就業の可能性があったことが証明できれば,事故時に失業していた人でも休業損害を請求できます。







◆失業中の休業損害計算方法


交通事故時に失業していた場合には,どのようにして基礎収入を計算すべきかが問題です。
仕事をしていた人なら実収入を基礎収入としますが,失業中の場合には実際の収入がないからです。


この場合,ケースによって採用される基礎収入が異なります。

内定していて得られる給料がはっきり決まっていた場合には,その給与額を基準にしますし,まだ給与額がはっきりしていなかったケースでは,学歴別や年齢別の賃金センサスの平均賃金を使うことが多いです。

就職活動中に事故に遭った場合には,失業前の実収入を基準にするか,賃金センサスの平均賃金を基準にして基礎収入を算定します。




▼参考記事
・解決事例:091 右手関節に可動域制限があるとして第12級6号(失業中の休業損害)
・解決事例:無職の方の交通事故の解決事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:休業損害・逸失利益について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

個人事業主をしていますが,確定申告書上は赤字です。このような場合も交通事故での休業損害は認められるのでしょうか?

2017年06月29日
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個人事業主をしていますが,確定申告書上は赤字です。このような場合も交通事故での休業損害は認められるのでしょうか?

個人事業主が赤字の場合であっても,休業損害が認められる可能性はあります。認められるかどうかや計算方法は,事案によって異なります。




 個人事業主 休業損害 


◆休業損害の計算方法



交通事故前に働いていて収入があった人の場合,交通事故によって負傷すると働けなくなることがあります。

特に個人事業主の場合には,働けなくなった日数分の収入がそのままなくなってしまうので,非常に影響が大きいです。

このように,交通事故によって働けない期間が発生すると,休業損害が発生します。


休業損害とは,働けなかったために得られなくなった収入分を相手に支払い請求できる損害のこと
です。

休業損害を計算するときには,「1日あたりの基礎収入×休業日数」となります。
1日あたりの基礎収入は,基本的には事故前の実収入によります。それに,実際に休んだ日数をかけて休業損害を計算します。







◆個人事業主の基礎収入


それでは,個人事業主の基礎収入はどのようにして計算するのでしょうか?
これについては,確定申告書の記載内容を基準にして計算します。




具体的には,申告所得額を基準にして,固定経費の支出があったら,その金額を足す計算をしています。確定申告書は1年分の収入なので,これを365日(うるう年なら366日)で割って1日あたりの基礎収入を算出します。

そうなると,個人事業主が前年度赤字になっていた場合には,基礎収入が0になってしまうので,休業損害が認められないと言うことになりそうです。







◆固定経費を基礎収入とする


個人事業主が前年度赤字であったとしても,実際には働いて収入があるわけですから,休業損害が全く発生しないというのは不合理なケースがあります。


そこで,個別の事情により実際に収入があったと認められる場合には,相当分の休業損害が認められます。たとえば,固定経費の支払い分が基礎収入として計算するケースがあります。固定経費は必ず支払うものなので,少なくともその分の収入はあったはずだという考え方によります。





◆平均賃金を基礎収入とする


もう1つの考え方は,平均賃金を採用する考え方です。

たとえば過少申告などで,確定申告書の記載内容と実際の収入があっていないことがありますし,実際に入金があって収入があったことが明らかであるケースもあります。

このような場合には,被害者と同業種の平均賃金を使って基礎収入とすることが多いです。

たとえば大阪地裁平成18年6月14日判決では,個人事業主が赤字申告をしていた事案において,各種商品小売業者全労働者の平均賃金の7割程度の収入が得られる蓋然性が高いとして,321万3840円を基礎収入としました。この事案は逸失利益の基礎収入計算の事例でしたが,休業損害の基礎収入計算でも同じことが言えます。




▼参考記事
・解決事例:自営業の方の交通事故の解決事例
・交通事故HP:休業損害・事業所得者について(裁判基準)
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:後遺症(14級9号・12級13号)における逸失利益




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

パートをしている兼業主婦の場合,交通事故に遭い怪我で休んだパート代しか補償されないのですか?

2017年06月28日
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パートをしている兼業主婦の場合,交通事故に遭い怪我で休んだパート代しか補償されないのですか?

パートをしている兼業主婦の場合には,基本的に賃金センサスの女性の平均賃金によって保証を受けることができます。それを超える収入がある場合には,実収入が基準となります。




 兼業主婦 休業損害



◆兼業主婦でも休業損害が補償される




交通事故に遭うと,怪我をして働けなくなることが良くあります。

そうなると,事故がなかったら得られたはずの収入が得られなくなって損害が発生します。この損害のことを,休業損害と言います。




休業損害は,基本的に事故前に働いていた人に認められるので,典型的なケースはサラリーマンや個人事業者などの場合に認められます。反対に,事故前に働いていなかった人には休業損害は認められません。


ただ,主婦の場合には,実際に事故前に収入が無くても休業損害が認められています。
それは,主婦の家事労働には経済的な価値があると考えられているからです。

このことは,パートをしている兼業主婦の場合でも同じです。兼業主婦の場合にも、休業損害が認められること自体に問題はありません。







◆パート代を基準にすると不都合がある


兼業主婦の場合,基礎収入の考え方について問題が起こります。

休業損害は,基本的に「1日あたりの基礎収入×休業日数」によって計算されます。1日あたりの基礎収入については,基本的に事故前の実収入を使って計算します。




たとえば,アルバイトの人の場合には,アルバイト収入を基準にして計算することになります。
そうなると,兼業主婦の場合にはパート代で計算することになりそうです。



しかし,兼業主婦のパート代は非常に少ないことが多いです。たとえば月6万円のパート代の人の場合,1日あたりの基礎収入は2000円になってしまいます。

また,兼業主婦はパートだけではなく家事労働もしていますが,パート代だけを基準にすると,家事労働の部分が無視されてしまうことになります。


しかも,専業主婦との不均衡も起こります。専業主婦の場合には,1日あたりの基礎収入は,賃金センサスの全年齢の女性の平均賃金となるので,1日あたりだいたい1万円になります。
ところが,パートに出ているがために1日あたり2000円になってしまうのは不合理です。







◆パートの主婦の場合の基礎収入


以上のような問題があるため,兼業主婦の基礎収入は,実収入を基準にしません。


この場合には,基本的には専業主婦と同じように,賃金センサスの全年齢の女性の平均賃金を採用します。ですので,兼業主婦の基礎収入も,1日あたり1万円弱となります。




しかし,兼業主婦で全年齢の女性平均賃金を超える収入がある人の場合には,実収入を基準にします。
このように,兼業主婦だからといってパート代で休業損害を計算されてしまうことはないので,覚えておきましょう。






▼参考記事
・交通事故HP:主婦の交通事故の解決
・解決事例:兼業主婦の交通事故の解決事例
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:主婦としての休業損害


(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,休業しています。サラリーマンの休業損害の計算方法はありますか?

2017年06月27日
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交通事故に遭い,休業しています。サラリーマンの休業損害の計算方法はありますか?

休業損害の計算方法は,自賠責基準と裁判所・弁護士基準があります。それぞれ計算方法が異なります。




 休業損害 計算方法 



◆休業損害とは



休業損害とは,交通事故によって休業期間が発生したときに,そのことによって得られなくなった収入分の損害のことです。

交通事故で休業した際,その人が事故以前に働いていて収入があった場合には,相手に対して休業損害を請求することができます。




ただし,休業損害が認められるのは,事故以前に働いていた人だけです。サラリーマンの場合には,会社から給料をもらって収入を得ていたので,問題なく休業損害が認められます。







◆自賠責基準による計算方法


次に,休業損害の計算方法をご説明します。
交通事故の賠償金の計算方法は,自賠責基準と裁判所・弁護士基準で異なります。


自賠責基準とは,自賠責保険の計算をするときに利用される計算方法です。
これによると,休業損害の金額は,「5700円×休業日数」となります。




自賠責の場合の基礎収入は,事故前の実収入とは無関係に一律となります。
ただ,事故前の収入を証明できる場合には、実収入を基準とすることができます。その場合,1日あたりの限度額が19000円です。休業日数は,実際に仕事を休んだ日数です。

たとえば,事故で10日間会社を休んだ場合には,5700円×10日=57000円が休業損害の金額となるので,自賠責保険から57000円の休業損害の支払いを受け取ることができます。








◆裁判所・弁護士基準による計算方法


裁判所・弁護士基準とは,弁護士が交通事故損害賠償金の示談交渉をするときや,裁判をするときに採用される基準です。
これによると,休業損害は、1日あたりの基礎収入×休業日数となります。




(1)1日あたりの基礎収入
1日あたりの基礎収入は,実際の事故前の収入を基準にするので,それぞれの被害者によって異なります。
サラリーマンの場合には,事故前の3ヶ月分の給料の平均値を使って,1日あたりの収入を計算します。毎月の給料の変動が激しい仕事などのケースでは,事故前6ヶ月分や1年分の給料の平均をとることもあります。

たとえば,事故前3ヶ月分の給料を平均する場合の具体例を見てみましょう。事故前の3ヶ月間(90日)の給料が20万円,23万円,22万円であった場合には,合計64万円です。これを90日で割るので,基礎収入は7111円となります。




(2)休業日数
休業日数は,実際に仕事を休んだ日数です。

サラリーマンの場合,有給休暇を使用して通院や療養などに充てたときも休業日数とされています。
休業日数を証明するためには、勤務先で休業損害証明書を作成してもらう必要があります。

休業損害証明書は、保険会社に書式があるので利用すると良いですが、休業日数と給料額を書く欄があります。




(3)計算例
たとえば,基礎収入が7111円のサラリーマンで,休業日数が合計15日のケースであれば、休業損害の金額は7111円×15日=10万6665円となります。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:休業損害・逸失利益について
・交通事故HP:損害賠償額の計算方法
・解決事例:会社役員の休業損害・逸失利益を認定




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,自宅や車の改造が必要になりました。改造費は損害として認められますか?

2017年06月26日
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交通事故に遭い,自宅や車の改造が必要になりました。改造費は,損害として認められますか?

自宅改装費や車の改造費については,必要性に応じて相当額が認められています。
具体的な金額については,個別に判断されています。





 改造費 



◆自宅改装費、車の改造費とは


交通事故に遭って重大な怪我をしてしまったら,今までの自宅に住みにくくなることがよくあります。

たとえば,歩行が難しくなったときなどには,玄関の段差をなくしてバリアフリーにしなければなりませんし,お風呂やトイレも改装する必要があります。植物状態になった被害者を自宅で介護するときには,介護に適した仕様にするための改装も必要です。

同様に,足が不自由になった場合などには,障害があっても運転できるように車も改造しないといけません。

このように交通事故での重大な怪我の影響で,自宅改装費や車の改造が必要となった場合の改造費は,交通事故の損害として認められます。交通事故の損害賠償の対象になるのは,交通事故と因果関係のある損害です。




そして,交通事故による怪我がなければ,このような自宅改装や車の改造は不要だったわけですから,これらにかかった費用は交通事故による損害と認められるのです。
ただし,自宅改装や車の改装は,どのようなものでも認められるわけではありません。交通事故と相当な因果関係にあるものに限られるので,交通事故とは無関係なものや不必要なものは賠償範囲に含まれないのです。

そして,必要性があるかどうかについては,被害者の受傷内容や後遺障害の程度,内容などに照らして判断されます。







◆自宅改装費が認められた事例


次に,具体的に自宅改装費が認められた事例をご紹介します。


【ケース1】
名古屋地裁平成14年11月1日では,高次脳機能障害,四肢麻痺が起こった被害者の事例で,家の全面的な改装を損害と認めました。この被害者は,日常生活が全くできないほとんど寝たきり状態となっており,後遺障害の等級は1級でした。

自宅改装費として認められた改装内容は,家の増改築費用,外装,内装の改装,屋根瓦の吹き替えや解体工事などで,認められた金額は1459万円です。




【ケース2】
次に,自宅改装費と車の改造費が両方認められた事例をご紹介します。
横浜地裁平成4年8月20日判決では,後遺障害の等級が1級の事例において,家屋の建て替え費用と自動車改造費を認めました。


自宅については,改装だけではなく建て替え費用が認められています。かかった費用総額は2229万円でしたが,認容されたのは1560万円でした。内容としては,家屋建築費用,私道改造費用,仮住居の家賃,引っ越し費用や登記費用などが認められています。
自動車改造費としては,110万円が認められました。




このように,自宅改装費や車の改造費も,かなり高額な費用が損害として認められています。困ったときには,弁護士に相談しましょう。




▼参考記事
・交通事故HP:賠償金額の基準に注意!
・交通事故HP:弁護士が入ると損害賠償額が上がる!
・よつばの交通事故子への「想い」と「こだわり」:賠償の大きな要素 慰謝料について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

通院にタクシーを使用したいのですが,タクシー代も交通費として認められますか?

2017年06月23日
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通院にタクシーを使用したいのですが,タクシー代も交通費として認められますか?

交通事故後の通院では,タクシー代が交通費として認められる場合と,認められない場合があります。認められる場合は,特にタクシー利用の必要性があるケースです。




 通院交通費:タクシー 



◆交通費は損害賠償金に含まれる


交通事故に遭って怪我をしたら,治療のために通院が必要になります。

このとき,徒歩で病院に行けないことも多く,そういった場合には電車やバス,自家用車やタクシーなどの乗り物によって通院をします。

この場合,電車代やバス代などの交通費が発生しますが,これらの交通費は交通事故の損害に含まれ,相手に支払ってもらうことができます。


交通事故がなければ交通費を支払って病院に行くこともなかったのですから,交通費は交通事故と因果関係のある損害と言えるからです。







◆原則的には公共交通機関が基準となる


交通費が交通事故の損害に含まれるなら,病院に通院するためのタクシー代も損害の内容となって相手に請求出来るとも思えます。

しかし,タクシー代はいつでも請求できるわけではありません。交通事故の損害賠償金は,交通事故と相当因果関係のある範囲内に限定されます。そこで,タクシーを使う必然性がないのにタクシーで通院をしても,それは交通事故によって発生した損害とは言えず,賠償の範囲に含まれなくなってしまいます。


交通事故による損害として認められる交通費は,原則として電車やバスなどの公共交通機関を使ったものとなります。
単に「タクシーの方が楽だから」と思って闇雲にタクシーを利用して通院しても,それは賠償範囲に含まれず自腹になってしまうおそれがあるので注意しましょう。





◆タクシー代が認められる基準



それでは,交通事故後の通院でタクシー代が認められることはないのでしょうか?
実際にはそのようなことはなく,通院にタクシー利用の必要があれば,タクシー代も損害として認めてもらうことができます。



そして,タクシー利用の必要があるかどうかについては,以下のような基準で判断されます。
・医師の指示によってタクシーを利用した
・他に利用できる公共交通機関がない
・被害者が歩行困難でタクシー利用の必要性が高い
・タクシー利用によって得られる利便性や時間的なメリットが大きい
・被害者に外貌醜状などがあって、公共の場で通院すると精神的苦痛が大きい


裁判例でも,上記のようなケースではタクシー代を損害として認める傾向があります。

交通事故後,自己判断でタクシーを利用すると,後でその利用分の支払を受けられずに不利益を受けるおそれがあります。

タクシーを利用して損害内容として認められるかどうか不安がある場合には,弁護士に相談してから行動することをおすすめします。




▼参考記事
・交通事故HP:交通事故と慰謝料のすべて
・交通事故HP:損害賠償額の計算方法
・交通事故HP:賠償金額の基準に注意!


(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)




入院中の差額ベッド代は損害として認められますか?

2017年06月22日
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入院中の差額ベッド代は損害として認められますか?

差額ベッド代は、常に認められるとは限りませんが、認められるケースもあります。




 入院 差額ベット代


◆差額ベッド代とは?


交通事故で重傷を負い入院することになった場合,普通は大部屋に入ることになります。
しかし,怪我の状況によっては個室や少人数部屋に入院することがあります。そうなると,大部屋に入院したときとの入院費の差額が発生します。

このように,個室や少人数部屋を利用した時の入院費と,通常の大部屋を利用した時の入院費の差額のことを「差額ベッド代」と言います。


交通事故に遭ったときにも,怪我の程度が重大であったり大部屋が空いていなかったり,自分が大部屋になじめなかったりすると,個室や少人数部屋に入って差額ベッド代が発生します。







◆差額ベッド代が認められるケース


交通事故による入院で,差額ベッド代を損害として認めてもらうことはできるのでしょうか?
もし認めてもらえないとすると,差額ベッド代を自己負担しなければならないので,問題となります。
これについては,認められるケースと認められないケースがあります。


認められる場合は、以下のようなケースです。

(1)治療上の必要性が特に高い場合
たとえば,救急患者や手術後の患者などであり,重症なので安静が必要な人や,免疫力が低下しているので感染症になる可能性が高い人,集中治療の必要がある人や身体的な苦痛を和らげる必要がある人などです。


(2)病棟の管理などのために個室利用の必要があり,患者が選択出来ない場合
MRSAの感染防止などのため,有無を言わさず個室を割り当てられるようなケースです。


(3)空室がなかったとき
大部屋に空きがなかったため,個室などに入院しなければなら勝ったケースです。







◆差額ベッド代が認められた例


次に,交通事故で実際に差額ベッド代が認められた例をご紹介します。

大阪地裁平成2年4月23日の判決では,交通事故が原因で植物状態になった男性について,特別室の利用料日額7000円として,約6年分の1503万円の差額ベッド代が認められました。

大阪地裁平成3年1月31日判決では,交通事故で重傷を負ったため特別室に入院した被害者について,日額2万円の差額ベッド代を83日分認めました。




また,将来の差額ベッド代が認められるケースもあります。

たとえば,大阪地裁平成13年9月10日の判決では,将来の手術の際に必要になる個室利用料の差額ベッド代を,1日9270円として,合計38861円分認められていますし,平成12年9月27日東京地裁では,びまん性脳髄損傷で植物状態になった被害者について,1日あたり4000円の計算で2057万円あまりの差額ベッド代を認めています。
このように、差額ベッド代が認められるケースもあります。




▼参考記事

・交通事故HP:入院慰謝料
・交通事故HP:損害賠償額の計算方法
・交通事故HP:交通事故問題解決の流れ「治療・リハビリ」


(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

症状固定後の治療費は,損害として認められますか?

2017年06月21日
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症状固定後の治療費は,損害として認められますか?

症状固定後の治療費は,基本的には損害として認められません。ただし,特別の場合には症状固定後の治療費なども認められる場合もあります。




 症状固定後の治療費 



◆交通事故の治療費支払いは,基本的に症状固定まで



症状固定後の治療費は,基本的には損害として認められません。

交通事故に遭って通院を継続する場合,通院期間にかかる病院の治療費は損害内容として認められます。
そこで,被害者が自己負担する必要はなく保険会社が病院に対して支払をしてくれることが多いですし,そうでない場合にも後日示談が成立したら,被害者が医療機関に対して支払った治療費の支払いを受けることができます。

しかし,治療費はいつまでも支払われるわけではありません。

基本的には「症状固定」するまでの分しか認められないのです。







◆症状固定とは


症状固定というのは,それ以上治療を続けても症状の改善が期待できない状です。
それ以上症状が改善しないのですから,それ以上の治療は不要だということになります。
そこで,症状固定後の治療費は不要なものだということになり,損害として認められないことになっています。

ですから,治療費は症状固定時までに要したものが損害として計上されますし,入通院慰謝料も症状固定時までの計算になります。
また,後遺障害の等級認定請求の手続も,症状固定時まで治療を継続してはじめて行うことができます。

交通事故に遭ったら,症状固定時までは必ず治療を継続することが重です。







◆症状固定後の治療費支払いが認められるケース


それでは,症状固定後の治療費の支払いは,一切認められないのでしょうか?
実は,そういうわけでもありません。
症状固定後,治療によって症状を改善することができなくても,その状態を維持するために治療が必要なケースがあります。

たとえば,継続的なリハビリをしないと状態が悪化してしまうケースです。
この場合,リハビリにかかる費用は交通事故によって発生した損害と認められるので,治療費として支払が認められます。




実際に,左股関節可動域制限が残ったケースで,症状固定後の送付装着リハビリ入院費用として4万円余りの支払が認められた事例があります(神戸地判平26.9.12)。

また,植物状態になった被害者の現状を維持するため,医師や看護師の往診が必要であるとして約1017万円の将来治療費を認めた裁判例もあります(東京地判平8.2.20)。

また,将来の手術費用が認められるケースもあります。
たとえば,右膝の靭帯を損傷し,左大腿骨骨折が生じた事案において,将来3度の人工関節埋め込み手術が必要になる見込みが高いとして,症状固定後の手術費の支払いが認められた事例があります(横浜地判平9.10.30)。




以上のように,特別の場合には症状固定後の治療費なども認められる場合があります。
症状固定後の治療費は,常に一切賠償の対象にならないというわけではありません。
一度弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・交通事故HP:症状固定後の治療費について
・交通事故HP:事故直後・症状固定前から相談可
・交通事故HP:交通事故で怪我をした場合,いつ弁護士に相談すべきか?




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)
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