カテゴリー: 後遺障害その他

交通事故で遷延性意識障害になりました。遷延性意識障害でも生活費控除が問題とされたことがあると伺いましたが,どういうことでしょうか?

2017年10月13日
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交通事故で遷延性意識障害になりました。遷延性意識障害でも生活費控除が問題とされたことがあると伺いましたが,どういうことでしょうか?




遷延性意識障害の後遺障害が残ったとき,生活費控除が行われないのが通常です。ただし,一部,生活費控除を行った裁判例が存在します。

遷延性意識障害で生活費控除を主張されても,被害者が存命中なのですから,そのような主張を受け入れるべきではありません。





 遷延性意識障害:生活費控除 



◆遷延性意識障害で認められる逸失利益とは


交通事故によって遷延性意識障害の後遺障害が残ったら,損害として後遺障害逸失利益を計上することができます。

逸失利益とは,後遺障害が残ったことにより,得られなくなってしまった将来の減収分のことです。




遷延性意識障害が残れば,当然働けなくなります。
労働能力喪失率は100%となり,症状固定時から就労可能年数分の後遺障害逸失利益を全額損害として算定できます。










◆遷延性意識障害の場合の問題点


ただ,被害者が遷延性意識障害になった場合,相手の保険会社からは「生活費控除を行うべきだ」と主張されることがあります。

生活費控除というのは,被害者に生活費が要らなくなるので,その分を逸失利益から差し引くべき,という考え方です。




通常,生活費控除が問題になるのは,死亡事故のケースです。
被害者が死亡すると,収入がなくなる一方,生活費がかからなくなります。そこで,死亡逸失利益を計算するときには,被害者にかかるはずだった生活費を控除します。


これが生活費控除の考え方です。

遷延性意識障害の場合には,被害者は死亡していませんが,単に寝ているだけだから普通の人ほど生活費がかからないだろう,などということから生活費控除を主張されるのです。







◆多くの裁判例の考え方


被害者が遷延性意識障害になっただけでも家族は相当ショックを受けますし,実際の負担も大変なものです。

それに加えて,生活費控除をすべきなどの主張をされると,まるで死亡事案と同じように扱われているようで,受け入れがたいと考えることが多いでしょう。




裁判所は,遷延性意識障害のケースで生活費控除を認めているのでしょうか?
この点,多くの裁判例では否定しています(仙台地裁平成21年11月17日,大阪地裁平成22年3月15日,神戸地裁平成16年12月20日,名古屋地裁平成14年1月28日など)。

よって,相手の保険会社が「遷延性意識障害だから,生活費控除をすべき」などと言ってきても,受け入れる必要はありません。








◆生活費控除を認めるものもある


裁判例の中には,遷延性意識障害のケースで生活費控除を行ったものもあります(東京地裁平成12年3月31日,広島地裁三次支部平成21年5月1日)。

このように,遷延性意識障害になると,法律的な議論が関わり,さらにそれが結論に大きな影響を及ぼすことが多いです弁護士によるサポートが肝要です。家族が交通事故で遷延性意識障害になってしまったら,一度,弁護士に相談してみてください。




▼参考記事
・遷延性意識障害を負われた方の解決事例
・遷延性意識障害について
・逸失利益・生活費控除について




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故に遭い,病院で治療していたら,お医者さんから「あなたは普通の人より首が長いから症状が重いのかもしれない。」と言われました。賠償に影響がありますか?

2017年09月05日
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交通事故に遭い,病院で治療していたら,お医者さんから「あなたは普通の人より首が長いから症状が重いのかもしれない。」と言われました。賠償に影響がありますか?

この場合,相手の保険会社から「素因減額」を主張されて,賠償金の減額を主張される可能性があります。ただ,首が長いというだけでは賠償金の減額は行われません。




 素因減額 



◆素因減額とは


交通事故でけがをして示談交渉をしているとき,相手の保険会社から「あなたは首が長いから,症状が悪化している」などと言われることがあります。

首が長い以外にも,手足が短いとか,目が大きいとか,持病があるとか,高血圧などと指摘されることもあり得ます。




このような場合,相手の保険会社は「素因減額」を主張してくる可能性があります。

素因減額とは,被害者側に何らかの要因があり,その要因によって交通事故の損害が拡大していると認められる場合,支払われる賠償金が減額されることです。

被害者側の事情によって損害が拡大している以上,被害者も結果について責任があるといえるので,その分賠償金を減らすべきだという考え方に基づきます。法律構成としては,過失相殺の規定の類推適用です。







◆身体的素因と心因的素因


素因減額が行われる場合,身体的素因に基づくケースと,心因的素因に基づくケースがあります。

身体的素因とは,被害者の身体的な特徴や持病の素因のことです。
たとえば,もともとヘルニアや腰痛などがあったために,むちうちの症状が悪化して,回復が遅れたケースなどで身体的素因による減額が問題となります。

これに対し,心因的素因とは,被害者の精神的な事情による素因のことです。
たとえば,もともとうつ病であった人や,治療に対する意欲が著しく欠けるため,通常よりも明らかに治療期間が長くなった場合などで心因的素因による素因減額が問題となります。





本件のように「首が長いという素因」は,身体的素因による素因減額が問題になるパターンです。







◆首が長い程度では,賠償金は減額されない


それでは,首が長いという素因があることによって,賠償金が減額されることがあるのでしょうか?



首が長いことによって相手が賠償金減額を主張してくるのは,通常むちうちなどになったケースです。
ただ,このような場合,判例は素因減額を認めていません。

平成8年10月29日における最高裁の判決では,「通常一般の人とは違う,特殊な身体的特徴があったとしても,それが疾患に該当しない限り,特段の事情がなければ,その身体的特徴によって,素因減額することができない」と判断して,首が長い人がむちうちの被害を受けたケースでの素因減額を否定しています。


持病とはいえない,単なる身体的な特徴があるだけでは,身体的な素因減額は認められません。本件で,保険会社が「あなたは首が長いから,賠償金を減額する」と言ってきても,応じる必要はありません。

相手の保険会社からしつこく減額を主張されて困っているなら,まずは弁護士に相談しましょう。




▼参考記事
・保険会社から素因減額を主張された解決事例
・所内における勉強会
・医学知識の習得(交通事故における素因減額問題)




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で,後遺障害等級が認められましたが,加重障害との記載がありました。 自賠責保険の加重障害とは何ですか?

2017年07月19日
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交通事故で,後遺障害等級が認められましたが,加重障害との記載がありました。 自賠責保険の加重障害とは何ですか?

加重障害とは,交通事故以前から何らかの後遺障害を負っていた場合において,事故によって後遺障害が重くなった場合の後遺障害です。加重障害と認定されると,以前の後遺障害の分は賠償金が減額されます。




 加重障害 


◆交通事故以前から後遺障害があると,どうなるのか?



交通事故で後遺障害が残ったら,その内容や程度に応じて後遺障害の等級認定を受けて,相手に対して賠償金を請求することができます。
具体的には後遺障害慰謝料と逸失利益が認められます。

ただ,被害者がもともと障害を負っていた場合には,満額の賠償金を認めるのは相当ではないという考えがあります。


もともとの障害の分は交通事故による損害ではないので,賠償金から差し引かないと不都合だということです。

このように,もともと障害があった人が交通事故に遭い,障害が悪化して後遺障害が残った場合を加重障害と言います。

ただし,もともと障害があっても,かならずしも加重障害認定が行われるわけではありません。
もともとの障害と新たな後遺障害が無関係なものであれば,加重障害とする根拠がないからです。

加重障害になるかどうかについては元々の障害と新たな後遺障害の部位によって取扱いが異なるので,以下で見てみましょう。







◆同じ部位に障害があったケース


まず,もともとの障害があった部位に後遺障害が残ったケースです。
この場合には,加重障害となります。


もともと右目の視力が0.6以下だった人が(後遺障害13級相当),事故によってさらに視力が悪化して0.1以下になった場合(後遺障害10級相当)などです。この場合には,後遺障害10級となりますが,もともとの後遺障害の分(13級相当の分)は,賠償金から減額されます。







◆同一の系列に障害があったケース


まったく同じ部位ではなくても,もともとの障害と新たな後遺障害が同一の系列であるケースがあります。この場合にも,加重障害となります。


後遺障害の等級認定では,もともとの後遺障害と新たな後遺障害をそれぞれ認定します。
たとえば,もともとの右手首の障害の等級が12級で,新たな右肘関節の後遺障害が10級の場合には,9級相当となります。


その上で,もともとあった障害の分の賠償金を差し引いて,本件の賠償金を計算します。







◆無関係な部位に後遺障害があったケース


最後に,まったく無関係な部位に後遺障害が残ったケースを考えましょう。
この場合,もともとの障害と新たな後遺障害が無関係なので,加重認定とはなりません。


たとえばもともと視力の低かった人が,右腕に後遺障害が残ったケースです。
認定された等級について賠償金の減額がされるということはありません。







▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:後遺障害等級認定の異議申立て
・解決事例:異議申立により非該当から14級9号となった事例(過去の交通事故での後遺障害と同一部位ではない事故)
・交通事故HP:交通事故による後遺障害の解説




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故で後遺症が残ったので,等級認定申請をしたいと思っています。申請方法はどのような方法がありますか?

2017年07月18日
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交通事故で後遺症が残ったので,等級認定申請をしたいと思っています。
申請方法はどのような方法がありますか?

後遺障害の等級認定申請の方法には,事前認定の方法と被害者請求の方法があります。被害者請求のほうが,手続を自分でコントロールしやすいです。




 後遺障害等級認定申請 


◆後遺障害等級認定申請の方法は2種類



交通事故に遭って怪我をして,治療を継続したものの,その怪我が完治せず症状が残ることがあります。
その場合,残った症状に応じて後遺障害が認められます。

ただし,後遺障害として認めてもらうためには,後遺障害の等級認定を受けなければなりません。




等級認定を受けられていない状態では,相手の保険会社に対して後遺障害慰謝料や逸失利益の請求をしても,支払を受けられることはまずありません。

後遺障害の等級審査をするのは自賠責損害調査事務所ですが,そこで審査をしてもらうための方法には,事前認定と被害者請求の2種類があります。以下で,順番に確認しましょう。




(1)事前認定

事前認定とは,相手の任意保険会社に後遺障害の等級認定請求の手続をしてもらう方法です。
被害者が自分で手続を行う必要はありません。

事前認定をする場合には,被害者は通院している病院において,担当医師に「後遺障害診断書」を作成してもらうだけで済みます。それを受けとって,相手の任意保険会社に渡したら,相手の任意保険会社が必要な手続を進めてくれます。


ただし,この方法は,被害者にとって非常に重要な後遺障害の等級認定を相手に任せてしまうのですから,不安が大きいです。どのような資料を提出するかも任意保険会社が決めるなど,実際にどのような手続が行われているのかは被害者には公開されず,不透明であることも問題です。

任意保険会社が自賠責損害調査事務所に対して,低めの等級が相当であるといった意見書を提出することもあるようです。




(2)被害者請求

被害者請求とは,被害者自身が相手の自賠責保険に対して直接,後遺障害の等級認定請求を行う方法です。被害者請求をする場合には,相手の任意保険会社は関与しません。

被害者請求を行うためには,相手の自賠責保険会社に連絡を入れて,保険金請求書の書式一式を送ってもらいます。

そして,保険金請求書や事故状況発生報告書などの書類を作成し,交通事故証明書や後遺障害診断書,診療報酬明細書やレントゲン画像,CT画像などの各種の検査結果などを集めて,相手の自賠責保険会社に送付します。
追加で必要な書類があれば,収集して提出する必要もあります。


被害者請求は大変手間がかかりますが,自分で手続をするのでどのような資料を提出するかを自分で選択できますし,どのような資料が審査に用いられているか分からないという状態ではないという点で,安心感があります。







◆被害者請求を成功させる方法


確実に後遺障害の等級認定を受けたいなら,任意保険会社任せにしてしまう事前認定ではなく,被害者請求を利用して手続を自分でコントロールする方法がおすすめです。

ただ,被害者請求は専門的な手続なので,被害者本人がうまく対処出来ないこともあります。こうした場合には,弁護士に手続を依頼することが有効です。




今,交通事故の後遺障害が残って等級認定請求をしようとしている人は,一度交通事故問題に強い弁護士に相談すると良いでしょう。




▼参考記事
・よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:後遺障害申請の準備はとっても大切!!
・解決事例:会社員が,頚椎捻挫及び腰部打撲後の疼痛により,併合14級の認定を受け,375万円を獲得した事例
・交通事故HP:交通事故による後遺障害の解説




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 佐藤 寿康)

交通事故が原因の後遺障害で,介護が必要になりました。将来介護費の計算はどのようにすればよいですか?

2016年12月06日
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交通事故が原因の後遺障害で,介護が必要になりました。将来介護費の計算はどのようにすればよいですか?

「1年分の介護費用×症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数」が基本の計算式になります。




 将来介護費


◆将来介護費とは



交通事故に遭ったとき,事故の相手に対して将来の介護費を請求することができるケースがあります。

将来介護費とは,交通事故で一定の後遺障害が残った場合に請求できる将来の介護費用のことです。

植物状態(遷延性意識障害)や脊椎損傷,高次脳機能障害になって自分では日常生活で必要なことができなくなってしまった場合に認められることが多いです。






◆将来介護費の計算方法



@基本的な計算式

将来介護費は,どのようにして計算するのでしょうか?
これについては,以下の計算式が基本となります。

1年の介護費用×症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数

これについて,具体的に説明します。



A1年の介護費用

将来介護費を請求する場合,1年分の介護費用が基準となってきます。
これについては,家族などの近親者が介護する場合と職業介護人に介護を依頼する場合とで計算方法が異なります。

家族が介護する場合には,一般的には1日あたり8,000円とされているので,1年では8,000円×365日=2,920,000円となります。

職業介護人に依頼した場合には,実際にかかっている実費が基準となりますが,裁判例をみますと,1日あたり1万円〜2万円程度になることが多いようです。




B症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数

将来介護費を計算する際,症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数も問題になります。
これは,将来介護費を一括で受け取ることになるので,将来の中間利息を控除してもらうための特殊な係数のことです。

将来介護費は,将来にわたって発生していく費用なので,本来なら発生したらその都度受け取るべきものです。ところが,これを当初に一括して受け取ることにより,それにかかる利息を余計に受け取っていることになってしまうので,それを差し引く必要があるという考えです。

そこで,将来介護費を計算する場合には,介護費の計算期間となっている平均余命に対応する分の中間利息を控除する必要があり,ライプニッツ係数をかけて調整します。




C将来介護費の計算例

たとえば,40歳の男性が交通事故で高度脳機能障害となり,要介護の後遺障害1級が認定された場合で,家族が介護する場合の将来介護費を計算してみましょう。

このとき,家族が介護するので1日の介護費用は8,000円となり,年額は2,920,000円となります。
そして,40歳の男性の平均余命は40.81歳です。小数点以下を切り捨てますので,40年に対応するライプニッツ係数を見ると,17.1591となります。

そこで,将来介護費は
2,920,000円×17.1591=50,104,572円
となります。




D定期金賠償方式

将来介護費の計算方法には,定期金賠償方式もあります。
これは,介護費を一括で受け取るのではなく月額25万円などとして,その都度受け取る方法のことです。
これに対しては,将来の支払拒絶や支払不能に備えた履行確保の制度がないことなどを理由に,否定的な考えが多いように思われます。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

将来介護費とは何ですか?

2016年12月05日
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将来介護費とは何ですか?

交通事故による後遺障害が原因で,将来介護が必要になった場合の介護費用のことです。将来介護費は,損害賠償の内容として請求することができます。




将来介護費


◆将来介護費とは



将来介護費とは,交通事故によって一定の後遺障害が残って介護が必要になった場合の将来の介護費用のことです。

交通事故に遭った場合,重大な後遺障害が残ることがあります。意識が回復しなくなったり身体がまったく動かなくなったりして,自分一人では生活していくことが難しくなるケースがあります。

このような場合,介護が必要になりますが,介護を受けるには費用がかかるので,その将来の介護費を損害賠償の内容として請求することができるのです。






◆将来介護費が認められる場合


交通事故の中でも,将来介護費が認められるケースは限られています。
基本的には,後遺障害1級と2級に該当するケースで,その中でも一定の症状があるケースに限定されています。

1級(要介護)の場合
1号:神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの
2号:胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,常に介護を要するもの

 2級(要介護)の場合
1号:神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの
2号:胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し,随時介護を要するもの


具体的な症状としては,交通事故が原因で遷延性意識障害になった場合(いわゆる植物人間状態)や高次脳機能障害が重度のケース,脊髄損傷で身体が動かなくなったケースなどで該当することが多いです。
なお,後遺障害3級以下のケースでも,症状に応じて将来介護費が認められることがあります。






◆将来介護の種類


将来介護費を理解しようとするとき,受ける介護の方法や種類のことを知っておく必要があります。
将来介護費は,受ける介護の内容によって大きく異なってきます。


まず,介護を専門職の人に依頼するか家族が自分で行うかという問題があります。
専門職の人に依頼した方が介護費用として認められる金額が高額になりますが,認められなかった場合には自己負担になってしまうので出費が大きくなってしまいます。

また,施設で介護をするか自宅で介護をするかという問題もあります。
遷延性意識障害のケースなどで自宅介護をすると,賠償金額として住宅改造費なども認められるケースがあり,将来介護費と合わせた受け取り合計金額が高くなる傾向にありますが,その分家族の負担は大きくなります。




このように,交通事故で損害賠償として将来介護費を請求する場合には,具体的にどのような方法で介護をするかということが大きな問題になるので,慎重に検討する必要があります。






◆将来介護費の金額は?


将来介護費が認められる場合,具体的にどのくらいの金額になるのでしょうか?

これについては,下記の計算方法で算出できます。


1年の介護費用×症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数


1年の介護費用については,基本的には家族による介護の場合は1日8,000円となりますが,職業介護人を雇った場合には,実費となります。

実際にこれを使って計算してみると,平均余命にもよりますが,数千万円になることも珍しくありません。また,上記のように自宅で介護する場合には自宅改造費が認められるケースがあり,それと合計すると1億円以上になることもあります。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

脊髄損傷と素因減額とは,なんですか?

2016年11月17日
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脊髄損傷と素因減額とは,どんな関係がありますか?

事故前から有していた精神的な要因や体質的な要因(既往症や身体的特徴)が,損害の発生又は拡大に影響している場合に,素因減額を認めるかが問題になることが多いです。




【素因減額】



◆素因減額とは


特に後遺障害が認定されている事案で,交通事故と被害者の身体に生じた損害との間に相当因果関係は認められるが,当該被害者がもともと事故前から有していた精神的な要因や体質的な要因(既往症や身体的特徴)が,損害の発生又は拡大に影響している場合に,賠償金額を定めるにあたり,それらの要因を考慮して,賠償金額を減額することができるかという問題があります。


これは,素因減額の問題と呼ばれ,とりわけ訴訟の場において大きな争点になります。



体質的な要因について,裁判実務上は,概ね次のように考えられています。

@被害者にもともと罹患していた疾患があり,それが損害の発生又は拡大に寄与していることが明らかな場合には,賠償金額が減額されます。

A加齢性の変性については,その年齢の人間に通常みられる程度の変性であり,疾患といえるような状態になかった場合には,賠償金額は減額されません。

B被害者が平均的な体格・体質と異なる身体的特徴を有していたとしても,それが疾患に当たらない場合には,賠償金額は減額されません。



◆脊髄損傷と素因減額



被害者が脊髄損傷を負った場合の賠償金額の決定においては,被害者がもともと事故前から後縦靱帯骨化症や,脊柱管狭窄症等の既往症を有していたことを原因として,素因減額を認めるかが問題になることが多いといえます。


そこで,脊髄損傷との関連で問題となる代表的な既往症として,「後縦靱帯骨化症」及び「脊柱管狭窄症」について,以下解説します。


・後縦靱帯骨化症について


後縦靱帯骨化症とは,椎体骨の後面を上下に連結し,背骨の中を縦に走っている後縦靱帯が骨化し,脊柱管が狭窄することにより,脊髄や神経根が圧迫され,感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす疾患です。
当該疾患は,50歳前後で発症することが多く,女性よりも男性に多くみられます。

後縦靱帯骨化が起きている人は,骨化した靱帯により脊柱管が狭くなることで,もともと脊髄が圧迫されていて,軽度の外傷によっても脊髄が傷つきやすい状態にあるとされています。

後縦靱帯骨化症が既往症として認められ,30%の素因減額が認められた裁判例もあります。
もっとも,後縦靱帯骨化が認められたとしても,それだけで素因減額が認められる訳ではなく,後縦靱帯骨化の程度が,その年齢の人間に通常みられる程度の変性にとどまる場合や,脊柱管の占拠率が大きくない場合には,素因減額が否定されたり,減額の程度が低くなることがありますので,慎重に分析・判断することが重要です。

 


・脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症とは,先天的又は後天的に,神経が通る管(脊柱管)が狭くなることにより,神経組織が圧迫され,血行が阻害されることにより症状が出る疾患です。
原因としては,先天性の場合以外に,変形性脊椎症による椎体の骨棘や変性すべり症,後縦靱帯の肥厚などが考えられます。中高年の方に多くみられる疾患です。

脊柱管に狭窄がみられる場合,脊柱管の構造上,外傷によって脊髄に損傷が生じやすいと言われております。
したがって,脊柱管狭窄症がもともと存在していた場合には,事故による外傷とあいまって脊髄損傷が生じたとして,素因減額の対象となることがあります。



その場合の減額率には裁判例上かなりの幅があり,5〜60%のばらつきがあります。

裁判において脊柱管狭窄症が問題となる場合には,

@そもそも脊柱管の状態が疾患に該当するレベルの狭窄といえるか,
A当該狭窄が既往症として存在していたものか,事故による外傷により生じたものなのか,
B脊柱管狭窄が,既往症かつ疾患に該当するレベルであったとしても,減額率をどの程度まで認めるのか,

等が争点になります。


(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

脊髄損傷による等級認定とは,どのような事をするのですか?

2016年11月15日
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脊髄損傷による等級認定とは,どのような事をするのですか?

後遺障害に対する自賠責保険の給付を受けるには,後遺障害等級の認定を受けなければなりません。申請にあたっては,医証の提出・被害者の日常生活状況を伝える報告書などが必要になります。




脊髄損傷による等級認定



◆脊髄損傷による後遺障害等級


後遺障害に対する自賠責保険の給付を受けるには,損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所による後遺障害等級の認定を受けなければなりません。
そして,自賠責保険の等級の認定は,原則として労災の等級認定の基準に準じるとされており,かかる労災の基準は,『労災補償 障害認定必携』に掲載されております。
 

脊髄損傷による後遺障害等級の認定は,以下の7段階に区分されています。

1級:脊髄症状のために,生命維持に必要な身の周りの処理の動作について,常に他人の介護を
   要するもの

2級:脊髄症状のため,生命維持に必要な身の周りの処理の動作について,随時介護を要する
   もの
 

⇒1級及び2級については,「介護を要する後遺障害」に区分されており,極めて重度な状態といえます。


3級:生命維持に必要な身の周りの処理の動作は可能であるが,脊髄症状のために労務に服することができないもの

⇒3級については,介護は不要ながら,いかなる労務にも服することができない状態です。
何らかの労務に服することが可能な場合には,5級以下の等級になります。



5級:脊髄症状のため,きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの
7級:脊髄症状のため,軽易な労務以外には服することができないもの
9級:通常の労務に服することはできるが,脊髄症状のため,就労可能な職種の範囲が相当な程
   度に制限されるもの
12級:通常の労務に服することはできるが,脊髄症状のため,多少の障害を残すもの

⇒5〜12級については,何らかの就労に服することが可能という点では共通しますが,どの程度の労務に就労可能かの判断は非常に難しいものがあります。





◆後遺障害等級の認定に向けて


脊髄損傷の後遺障害等級認定の申請(被害者請求)にあたっては,まずは,医証を集めることが不可欠です。

必要な医証としては,
@通常,症状固定時に作成される後遺障害診断書だけではなく,A「脊髄症状判定用」,
B「神経学的所見の推移について」,C「症状の推移について」
も必要になります。

特にAについては,脊髄損傷の場合に特有な医証になります。
これらの書面を主治医の先生に作成してもらいます。

また,医師には分かりにくい,被害者の日常生活状況を伝えるために,「日常生活状況報告書」を作成するとよいと思います。

特に、後遺障害等級5〜9級のいずれに該当するかが問題となるようなケースでは、「日常生活状況報告書」の記載内容が重要になります。


ご自身またはご家族や職場の同僚の方に、被害者の方の日常生活の様子、特に労務に関する状態につき、具体的なエピソードを交えて詳しく記載していただくことが重要になります。




脊髄損傷が生じた場合の後遺障害等級の認定は,原則として身体的所見及びCT,MRI等によって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度に基づいて判断されますので、CT画像やMRI画像の提出も必要です。


特にMRIについては、撮影機器の性能により、存在するはずの小さな損傷が発見できないこともあり得ます。性能の良いMRIがどの医療機関にあるかは、地元の医療機関の情報に詳しい弁護士に聞いてみるとよいと思います。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 前田 徹)

労働能力喪失率について教えてください

2016年06月23日
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労働能力喪失率について教えてください。
基本的に労働能力喪失表を参照しますが,個別具体的なケースに応じた考慮が必要です。

【労働能力喪失率】


■逸失利益
後遺障害が認定された場合,将来にわたり,労働に支障を来すのものと考えられます。将来就労する際に,事故がなければ得られるはずであったのに,事故によって得ることができなくなった利益を逸失利益といいます。逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間という計算式により求められます。

■労働能力喪失率
労働能力喪失率とは,当該後遺障害によりどれだけ労働能力を喪失したか(就労が不可能となったか)を割合で示したものです。労働能力喪失率の認定に際しては,国の定める労働能力喪失立表が参照されることが多く,実務上も自賠責機関の認定した等級と同表の喪失率に基づいて解決がされることが多いです。

■後遺障害
後遺障害には1級から14級まであります。
(等級が低くなるに従いより重い症状を示します。)
各等級の労働能力喪失率は以下のとおりです。
[1〜3級 100%,4級 92%,5級 79%,6級 67%,7級 56%,
8級 45%,9級 35%, 10級 27%,11級 20%,12級 14%,
13級 9%,14級 5%]

■判例@
もっとも,具体的な障害の内容と被害者の職務内容に応じて,これらの割合を修正すべき場合があります。最高裁の判例(最高裁判所昭和48年11月16日)においても,労働能力喪失率表が有力な資料となることは否定できないとしつつ,「被害者の職業と障害の具体的状況により,同表に基づく労働能力率以上に収入の減収を生じる場合には,その収入率に照応する損害の賠償を請求できることはいうまでもない。」と判示しています。
例えば,鍼灸大学生の右前腕及び手関節の疼痛14級10号の障害(併合14級)が認定された場合,上の表によれば喪失率は5%ですが,鍼灸師には筋力低下や可動域の制限の影響が大きいとして14%の喪失率を認めた判例があります(京都地判平成14年9月26日)。

■判例A
反対に,傷害の類型によっては,労働能力を喪失しない(逸失利益がない)と争われるケースも散見されます。
例えば,醜状根,変形障害,嗅覚・味覚障害,下肢短縮,歯牙障害,圧迫骨折などは具体的に労務に影響を及ぼさないと主張される例が散見されます。(詳しくは各障害と逸失利益についての記事をご参照ください。)

■まとめ
労働能力喪失率の認定は,将来の事故による不利益を最小限に抑えるためにも適正な評価を受けるべきであることはいうまでもありません。実際よりも,低い労働能力喪失率を相手方保険会社に主張される場合には,是非,専門家に一度相談することをお勧めします。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 粟津 正博)

労働能力喪失期間について教えてください

2016年06月22日
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労働能力喪失期間について教えてください。
原則67歳まで就労すると考えて計算しますが,障害内容や等級によって期間が異なることがあります。また中間利息控除を考慮する必要があります。


【労働能力喪失期間】


■逸失利益
後遺障害が認定された場合,将来にわたり,労働に支障を来すのものと考えられます。将来就労する際に,事故がなければ得られるはずであったのに,事故によって得ることができなくなった利益を逸失利益といいます。逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間という計算式により求められます。

■労働能力喪失期間
就労可能年限までの期間を労働能力喪失期間といいます。裁判や示談交渉では原則67歳まで就労可能と考えます。給与所得者で退職勧奨慣行等ある場合でも,定年後67歳までは再就職可能性なども考慮して稼働年限として計算することが多いです。
一方で,具体的な障害の内容と被害者の職種,地位,健康状態,能力等に応じて就労可能年限を修正することもあります。
例えば,開業医(男性・56歳)について,70歳まで稼働可能とされた裁判例などがあります。(京都地判平成7年12月21日)。

■高齢者
高齢者の場合,67歳までの年齢と各年の簡易生命表の平均余命年数の2分の1のいずれか長期の方を採用されることが多いです。67歳以上の高齢者であっても,平均余命年数の2分の1が逸失利益として認められます。

■未就労者
また,未就労者の就労の始期については,原則として18歳とされますが,大学卒業を前提とする場合は大学卒業予定時とされます。

■交通事故での判例
交通事故事件では,頸椎捻挫腰椎捻挫等のいわゆるむち打ち損傷が多くみられますが,12級12号の神経症状の場合5年ないし10年に,14級9号の場合5年以下の労働能力喪失期間を認める例が多いです。
これは,むちうち損傷については,自覚症状を主体とするため喪失期間の決定に困難を伴うことなどが理由として指摘されています。もっとも,この点についても具体的な職務内容等に応じた評価が必要です。また,事故から一定期間が経過している場合には,現実にどのような障害による不利益が残っているかを検討すべきです。
例えば,派遣配膳員(女・50歳)(右上肢の痛み=14級9号,右下肢の痛み=14級9号)について,神経症状は長時間の立ち仕事や配膳に差し支えるところが少なくないこと,2回職場復帰を試みたが果たせなかったこと,事故後4年近くが経過した後も復職できていないこと等を考慮して,67歳までの17年間労働能力を認めた裁判例があります(横浜地判平成24年2月2日)。

■まとめ
裁判基準では,就労可能年限はある程度定型化されていますが,保険会社が提案する示談案では,就労可能年数について極端に少なく主張してくるケースもあります。就労可能年限はフィクションの要素も多分にありますので,自分の現在の状況を把握して,正しく計算することが大切です。




(弁護士法人よつば総合法律事務所 弁護士 粟津 正博)
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