カテゴリー: 高次脳機能障害

交通事故に遭い,高次脳機能障害で注意障害を発症しました。注意力の持続を訓練して社会復帰することは可能ですか?

2017年04月11日
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交通事故に遭い,高次脳機能障害で注意障害を発症しました。注意力の持続を訓練して社会復帰することは可能ですか?

高次脳機能障害で注意障害を発症すると、注意力が持続せず半覚醒の状態が続きますが、適切なリハビリテーションは、症状を緩和さて注意力の持続を促します。




 注意障害 



◆事故に遭う前はこんなに飽きっぽい人ではなかったのに


Pさん(男性33歳)の奥さんは,交通事故に遭ってからというもの,あたかもPさんの人格が一変したようだと心配していました。

Pさんは頭を打って入院し,事故の当日は意識がなかったものの,翌日には意識を取り戻し,その後は順調に回復している様子
でした。



しかし,奥さんが見舞に行った時,いつもと様子が違う点が多々ありました。
・ベッドから体を起こしていても,半分ねぼけたような様子で反応が鈍い

・Pさんが愛読していた週刊誌を病室に持っていっても,ページをぱらぱらめくっただけで雑誌を放り投げてしまい,読む様子がない。

・ゲーム好きのPさんのためにゲーム機を病室に持ち込んでも,ゲームに集中する様子はなく,5分もするとゲーム機を手放してしまう。


Pさんは,高次脳機能障害による注意障害を発症していたのでした。

医師から,注意障害についての説明を受けたPさんの奥さんは,集中力の欠如は,人格が変わったのではなく後遺症だと聞いてひとまず安心しました。しかし,高次脳機能障害は完全に治らないと告げられ、困惑しました。




Pさん夫婦には2人の子どもがおり,Pさんが一家の大黒柱として働かなければ,生活が成り立たないにもかかわらず,今のPさんの状態からすると,とても会社で勤勉に働けるようには思えません。







◆階段を上るように,徐々に高度な課題に挑戦


医師は,リハビリテーションプログラムを作って実践していくことで,注意障害の症状が軽くなると励ましてくれました。


注意障害のあるPさんには,長い時間を費やさなければ達成できないような課題を,いきなり与えても実行不可能です。
始めは,短時間でできる単純な課題を与え,それを確実にクリアできたら,次第に時間がかかりより複雑な課題を行うリハビリテーションプログラムが作成されました。








◆Pさんはグループ訓練でもリハビリテーションに集中


注意障害は,環境に依存することが多いので,社会復帰に備えてグループ訓練によるリハビリテーションも行われました。


5人がリハビリテーションルームに集まり,かるた取りをしたのですが,Pさんはセラピストが驚くほどの集中力を訓練の間,維持することができました。Pさんは,リハビリテーションの効果により,半覚醒の状態が現れることが減り,社会復帰が可能と診断を受け退院しました。



高次脳機能障害で注意障害になっても,リハビリテーションに熱心に取り組むことで症状が緩和したPさんは,もうじき職場復帰する予定です。




▼参考記事

よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」:84「医師を味方につけよう!」  
文責:弁護士 前原彩


(弁護士法人よつば総合法律事務所)


高次脳機能障害による遂行機能障害を克服して,仕事を再開することはできますか?

2017年04月07日
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高次脳機能障害による遂行機能障害を克服して,仕事を再開することはできますか?

高次脳機能障害で遂行機能障害になると簡単な動作ができなくなりますが、自分で声かけするなどの工夫で職場復帰の可能性を持てます。




 遂行機能障害



◆簡単なことができなくなった


エンジニアのLさん(男性39歳)は,休日に奥さんと買い物に行く途中で車にはねられて転倒し,頭を強く打ちました。
外傷は,擦り傷の他には特に目立ったものはありませんでしたが,頭を打ったということで、救急病院に運ばれ精密検査を受けました。

しばらく安静ということで,入院していたLさんの様子が,交通事故に遭う前と違うことにLさんの奥さんはすぐ気づきました。奥さんがお見舞いに行き,談話室に移動して自動販売機でジュースを買おうとした時のことでした。

小銭の入ったお財布をLさんに渡し自動販売機に行き,「わたしは缶コーヒー以外なら何でもいいわ,あなたは何を飲む?」と話しかけても,黙って立っているのです。「さっき喉が渇いたと言っていたのに,今は何もほしくないの?」と問いかけると,ムッとした様子で何も買わずに病室に戻ってしまいました。


Lさんは,高次脳機能障害の後遺症の一つ,遂行障害を発症していたのです。

Lさんの奥さんは,Lさんの行動がおかしいこと,ものごとを頼んでも実行せず無視することを,医療チームに伝えました。




普段の生活で,何気なく行っている連続した行動が遂行機能です。脳の働きの中でも特に高度な機能なのですが,脳が高速で情報を処理するおかげで,私たちはほとんど脳の命令を意識することなく,スムーズに行動できるのが、遂行機能の特徴です。




つまり,遂行機能を使って行動していることに,普段は気づかないのです。
自動販売機の前に立って,飲みたいものを選び,その値段を確認し,表示してある価格どおりかそれ以上の硬貨を財布から出,、硬貨投入口に入れ,飲み物を取り出し,釣銭があれば釣銭の出口から硬貨を取り出します。

誰かに飲み物を買うことを頼まれたのであれば,相手が飲みたい飲み物を,多数ある選択肢のなかから選ぶ作業も加わります。遂行機能を駆使しているから,これだけのことを何気なく行うことができるのです。

Lさんは,遂行機能障害のため,物事の優先順位が付けられない,頼んだことを実行できず放置してしまうなどの症状が現れていました。


奥さんから小銭入れを渡されたLさんは,それをどう扱って良いか,どうしたら自動販売機に入っている飲み物を取り出して飲めるのかわからなかったので,行動を中止してしまったのです。










◆遂行機能障害をリハビリテーションで克服


なんらかの形で残り,完治することはないのが,高次脳機能障害による後遺症です。
しかし,遂行機能障害は,リハビリテーションである程度軽減させることが可能です。

優秀なエンジニアであるLさんが,遂行機能障害があるからというだけで,退院後も家に閉じこもり,社会復帰しないというのは,社会にとっても損失ですし,Lさん自身も早く会社で仕事をしたいという希望を持っていました。




Lさんの遂行機能障害のリハビリテーションでは,次のような注意が払われました。

・手順を声に出して行動する
・やるべきことをノートに書いて,ノートを見ながら行動する。
・セルフチェックリストを作り,やり残したことがないか確認する。


Lさんの奥さんには,次のような注意が与えられました。

「遂行機能障害の人は,一度に複数のことを行うのが苦手なので,何かを頼むときは1度に1つずつにしましょう。」


朝,起きて布団をたたむ,顔を洗う,歯を磨く,ワイシャツを着てネクタイを締めるなどの一連の動作を,声に出しながら行うことで、動作がスムーズになります。郵便はがきを投函して帰りにスーパーでお肉を買って来てと頼むのではなく,投函だけ頼むようにすれば,行動がよりシンプルになります。

つまり,より単純な遂行機能を使うようにすれば,Lさんは行動しやすくなり間違いも減るのです。

Lさんは,リハビリテーションと奥さんの協力で,日常生活に差支えない程度まで遂行機能障害を克服しました。現在は,中堅社員として会社で生き生きと働いています。




▼参考記事
よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」
No,61「通院時からの丁寧なサポート」(文責:松村茉里)




(弁護士法人よつば総合法律事務所)

交通事故で高次脳機能障害で,記憶障害でも仕事をする事は可能ですか?

2017年04月05日
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交通事故で高次脳機能障害で,記憶障害でも仕事をする事は可能ですか?

交通事故で高次脳機能障害を発症し、記憶障害の後遺症が残ったZ子さんですが、メモを取ったり手順表を作るなどの工夫をすることで、仕事を再開することができました。




 高次脳機能障害:記憶障害 



◆頭を打っただけなのに,一生治らない病気になるなんて


貿易会社で営業事務をしているZ子さん(27歳女性)は,就職して5年,営業マンから頼りにされ,仕事にやりがいを感じていましたが,休日に交通事故に遭って入院することになりました。

外傷は足の骨にひびが入り,全治1カ月との診断です。さらに,路面で後頭部を強く打ったので脳のCT(コンピューター画像撮影)をしました。




会社の人たちが見舞いに来て,Z子さんがいないと仕事が滞って大変,派遣社員が来て働いているけれど,はやりZ子さんのようには仕事をこなせない,早く仕事に戻ってきてと言われました。そこまで言われたら,一日も早く仕事を再開したいZ子さん。足にギプスをつけたまま松葉づえで通勤したいくらいの気持ちでした。


しかし,医師はZ子さんに待ったをかけました。脳の画像診断の所見は,脳の一部が損傷しているので,慎重な経過観察が不可欠なのだそうです。
骨にひびが入ったこと以外に,痛むところはないし,食欲も旺盛,問題があるようには思えませんが,医師の言葉を聞いてZ子さんはドキッとしました。誰にも話していないのですが,ついさっきあったことや昨日の出来事を思い出せないのです。




昼食を食べ終えて1分後に,何を食べたか思い出せず,これはおかしいと気になってはいたのですが,まさか脳と関係しているとは。Z子さんは,こんなに物覚えが悪くては,多忙を極める営業事務の仕事に復帰するのは絶望的だと悲観しました。







◆記憶障害という後遺症


Z子さんは,高次脳機能障害の後遺症の一つである記憶障害を発症したのです。
しかし,記憶障害があってもZ子さんの知能は,事故に遭う前となんら変わりません。


医師は,物覚えが悪くなったことは,リハビリテーションである程度改善できますが,完治は難しいことをZ子さんに伝えました。それと同時に,Z子さん自身で自分の記憶を補助する仕組みを工夫することで,じゅうぶん仕事をこなせるであろうとも告げました。






◆本人の努力と会社の配慮で記憶障害を克服


医師は,Z子さんが今の仕事が好きで早く仕事を再開したいと望んでいることを理解していました。
Z子さんに自分の記憶をサポートする工夫をするよう提案したところ,Z子さんは次のような方法を考えました。

・ノートに、与えられた仕事を逐一メモして,仕事を終えたらチェックマークを付ける。
・自分あてに「TO DO LIST」をメールして,メールのリストを見て,仕事に漏れがないかどうか確認する。
・仕事の手順を紙に書いて,その紙を見ながら仕事する。


いずれも,高次脳機能障害による記憶障害のあるZ子さんが仕事をするのを助ける良いアイデアです。医師は,Z子さんの会社の人を呼んで,Z子さんが仕事を再開するにあたって配慮してほしい点を伝えました。

・Z子さんが仕事で使う物品の置き場は,できるだけ変えない。
・初対面の人の顔と名前を覚えるのが,苦手であることを理解してあげる。
・Z子さんが手順表などを作って,デスク周りに貼ることを理解してあげる。
・新たな仕事を与えるときは,口頭だけでなくメモも渡す。


会社は,Z子さんの事務能力をおおいにかっていたので,Z子さんが仕事に復帰する環境づくりのために,医師の助言に従うことを約束しました。Z子さんは,本人の努力と会社の人たちの協力で仕事を再開し,充実した毎日を過ごしています。




▼参考記事
よつばの交通事故への「想い」と「こだわり」

No,60「臭いが分からなくなった!?」〜頭部外傷と嗅覚障害〜(文責:前田徹))

No,080「交通事故においての医師との関わり(書類作成編)」(弁護士 小林義和)

(弁護士法人よつば総合法律事務所)




交通事故による高次脳機能障害でも,無事に職場復帰はできますか?

2017年04月03日
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交通事故による高次脳機能障害でも,無事に職場復帰はできますか?

交通事故で高次脳機能障害になったQさんは、会社が高次脳機能障害に理解を示して,働きやすい仕事環境を用意してくれたおかげで,職場復帰ができました。




 職場復帰 



◆完治しなくても仕事ができる?



脳の機能の一部が壊れることが原因で発症する高次脳機能障害は,完治しないと言われています。

その理由は,いったん損傷した脳を元通りにすることは,現代医学の技術では不可能だからです。その結果,高次脳機能障害になると,損傷した脳の部位によって様々な後遺症が残ります。




交通事故で頭を打って高次脳機能障害を発症したQさんの場合は,失語症と脱抑制という後遺症が残りました。高次脳機能障害の後遺症で知能の低下が見られる人もいます。しかし,Qさんは,言葉がうまく出てこないこと,感情のコントロールがむずかしいことを除いて,知能の低下はありません。

つまり,現在問題になっている症状が回復すれば,ふたたび会社で戦力として働けるということです。
Qさんは,回復期にリハビリテーションに熱心に取り組んだおかげで,失語症と脱抑制の症状は,かなり軽くなりました。




しかし,会社は多くの人で成り立つ組織であり,社会の縮図でもあります。
同僚との何気ない会話や,取引先との挨拶,電話の応対などで,適切な言葉を選べなければ,人間関係にひびが入る可能性があります。感情を抑えきれずに,すぐ怒るようでは,部下に嫌われるでしょう。

主治医は,Qさんは職場復帰が可能であると判断しましたが,単に仕事に戻るのではなく,会社の環境をQさんのために整えることが大事であると考えました。










◆病院と会社担当者が,面談をして職場環境を整える


リハビリテーションチームは,Qさんの会社の人と連絡を取り,Qさんの健康状態と職場で起こりうる問題行動を説明しました。そして,なにより本人に仕事をしたいという強い意欲があることを理解してもらうことに留意しました。



Qさんは,新卒で入社してから長年に渡って会社に貢献してきたので,会社にとってQさんはかけがえのない人材です。会社の担当社員は,当初,高次脳機能障害で脳にダメージを受けては仕事の能力も失っているのではと心配しました。 

しかし,医師から,Qさんの高次脳機能障害による後遺症は,知能に影響を与えていなこと,今後も通院リハビリテーションを続けることで,さらに回復する余地があると説明を受け,Qさんが再び会社の戦力になり得ることを理解しました。




リハビリテーションチームとQさんの会社は,Qさんが仕事に復帰するために,以下のような仕事の環境を考えました。

・指示は1つずつ,言葉だけでなく,メモにして渡す。

・感情のコントロールがしやすいように,隣の席と低いパーティションを設けるなどして,できるだけ静かな環境で働いてもらう。

・Qさんのペースで働けるように仕事を配分する。


退院してまもなく,Qさんは職場復帰を果たしました。Qさんは,再び仕事ができることに生きがいを感じています。Qさんが努力してリハビリテーションを行ったことと,会社が高次脳機能障害の後遺症に理解を示して,働きやすい環境を用意したことが,Qさんのスムーズな職場復帰を成功させたのです。




▼参考記事
交通事故解決事例080「会社員が高次脳機能障害,肩関節の可動域制限,股関節の可動域制限により併合6級の認定を受け5296万円を獲得した事例」




(弁護士法人よつば総合法律事務所)

交通事故で高次脳機能障害になっても仕事をすることはできますか?

2017年03月28日
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交通事故で高次脳機能障害になっても仕事をすることはできますか?

交通事故が原因で高次脳機能障害になったQさんは、失語症などの後遺症が残りましたが、職場復帰したいという一念でリハビリテーションを頑張り症状が改善しました。




 交通事故で高次脳機能障害になっても仕事をしたい



■頭を打って意識が戻った後も様子がおかしい


Qさん(58歳男性)は,定年まであと2年を残し,仕事一筋で働いてくことができたのも妻の内助の功あってこそだと思い,定年後は夫婦で旅行するのを楽しみに働いていました。
ところが,2月の早朝,自宅を出て駅に向かうQさんに向かって乗用車が暴走してきて,Qさんは跳ね飛ばされ頭を強打し,意識不明のまま救急病院へ運ばれました。


事故の原因は路面の凍結で,乗用車は速度オーバーで走っていたためタイヤがスリップしてもハンドルをコントロールできなかったのです。Qさんは,3日後に意識を取り戻しましたが,頭を打ったということで,後遺症がないかどうか慎重に検査を行いました。


その結果,脳の一部に損傷が見られると診断されました。
Qさんの家族は,意識が回復したことだし,めだつ外傷もないので,じき退院できると安心していました。







■また職場で働きたい


Qさんの様子がおかしいことに最初に気付いたのは,Qさんの奥さんでした。

言葉がうまく出てこないようで,会話が成り立たないのです。
交通事故に遭う前は温和な性格だったのに,怪我をしてから怒りっぽくわがままになったのも気がかりでした。

主治医は,Qさんの家族にQさんは高次脳機能障害を発症したこと,言葉が出にくいのは失語症(しつごしょう),怒りっぽいのは脱抑制という病名であることを告げました。会話が困難なことや,性格が一変したことは,後遺症が原因だったのです。




医療チームは,Qさんの家族と何度も面談をして,Qさんの意思を尊重しながらリハビリテーション計画を立てました。これまで実直に働いてきたQさんが職場復帰をして定年まで勤めることが,Qさんと家族の何よりの願いです。

目の前にある物品が何でどのように使うものか説明を求められると,適切な言葉がなかなか出てきません。その物品が,ハサミのように名前や使い方を良く知っているものであるにもかかわらず,言葉に詰まってしまうのです。その結果,Qさんは自分の感情を抑えられず,怒ってリハビリテーションルームから出て行ってしまうこともありました。







■高次脳機能障害の後遺症は本当に改善するの?


物事や状況をうまく説明できなければ,会社の同僚とコミュニケーションがむずかしいでしょう。
感情を爆発させることがたびたび起これば,良い人間関係が築けません。
一時は絶望のどん底に陥ったQさんの家族でしたが,医師の言葉に救われました。

高次脳機能障害による失語症の症状は,急性期すなわち脳を損傷してから間もない時期が一番重いのです。今は,まだ失語症の症状がかなり出ていますが,セラピストのリハビリテーションを受ければ,必ず回復していきますよ。」




感情のコントロールは,投薬や認知行動療法などで改善する可能性があるということで,Qさんの家族は希望の兆しが見えてきました。Qさんは,リハビリテーションをさぼりたくなっても,また仕事をしたいという気持ちが打ち勝って,リハビリテーションを休まず続けることができました。

その結果,徐々にですが,スムーズな会話ができるようになり,わがままを言って家族を困らせることも減っていきました。強い目的意識が,単調なリハビリテーションを継続させる原動力になったのです。




▼参考記事
よつば交通事故への「想い」と「こだわり」08:「高次脳機能障害と家族の会 (文責:前田徹)」
よつば交通事故への「想い」と「こだわり」12: 「事故後の人生 (文責:佐藤寿康)」

(弁護士法人よつば総合法律事務所)

リハビリテーションをグループで行う事は,どんな影響があるのですか?

2017年01月24日
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リハビリテーションをグループで行う事は,どんな影響があるのですか?

高次脳機能障害のリハビリテーションで行われるグループ訓練は,模範的行動を学習できるので,患者さんに良い効果をもたらします。




 グループ訓練



■グループ訓練とは?



グループ訓練とは,グループで行うリハビリテーションです。


交通事故に遭って高次脳機能障害になった人は,急性期が過ぎて回復期に入ると症状が安定してくるので,同程度の障害を持つ患者さんと一緒にリハビリテーションを受ける機会があります。



グループ訓練には,以下のような利点があります。

・他の人の模範的な行動を見ることで学習できる
・他の人とやりとりすることで,学習したことを実際に使えるようになる
・ピアカウンセリングの一面を持っている


ピアカウンセリングとは,同じような悩みを持つ人同士でおこなう相談のことです。

リハビリテーションの現場では,医療スタッフがいるので,高次脳機能障害の患者さんは心のなかで思っていることを言い出せないことがありますが,同じような悩みを持つ患者さん同士の場合は,心の垣根が取り外されて,思っていることを素直に言いやすいのです。

たとえ,話をしたことだけでは悩みを根本的に解決できなくても,同等の立場の他者と話をすることで気持ちが明るくなるなどの効果が期待できます。







■グループ訓練に参加する目的は全員同じでなくても良い


ある人は発話が少ないので,他者と会話することを訓練するためにグループ訓練に参加します。
また,ある人は注意障害があるので,45分と定められたリハビリテーション時間の間,注意をそらさず訓練に集中することが求められます。



上記の2人は,リハビリテーションの目的は異なっても,一緒にグループ訓練に参加できます。
なぜなら,患者さんの目的は異なっていても,各自の課題をリハビリテーションの場で試すことが目標だからです。







■グループ訓練に参加する人への配慮



・失語症の人への配慮

聴覚理解が同程度の人同士のグループ訓練が望ましいと言えます。
聴覚理解がいちじるしく低下している人が参加する場合は,言語を使わなくてもできる訓練を行います。


・注意障害の人への配慮

グループでの会話が難しすぎないか注意しながら訓練を行い,休憩を交えながら集中力を維持するよう努めます。



・感情コントロールがある人への配慮

トラブルがあった場合は,トラブルを起こした人を別の部屋に連れて行き,落ち着きを取り戻すようにします。
トラブルの前兆として,感情が高ぶったり,暴言が出た場合は休憩します。



・記憶障害がある人への配慮

ゆっくりと会話を進め,会話のテンポが速くならないように気を付けます。
グループ訓練の内容をホワイトボードに書くと,患者さんの理解が深まります。







(弁護士法人よつば総合法律事務所)

高次脳機能障害の家族が困ることはなんでしょうか?

2017年01月23日
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高次脳機能障害の家族が困ることはなんでしょうか?

高次脳機能障害の家族は,病気を受け入れるのが難しかったり,問題行動に対処できないため悩みますが,医療スタッフや行政の支援を受けて問題を解決していきましょう。




 高次脳機能障害の家族 


◆高次脳機能障害の家族が抱える悩みとは?


交通事故による高次脳機能障害は完治がむずかしい病気なので,患者さんの家族は様々な問題を抱えて悩みます。

以下に,高次脳機能障害の患者さんの家族が抱えることの多い問題を挙げます。









◆家族が高次脳機能障害という病気を受け入れない場合


 ・高次脳機能障害であることを認めない   ・高次脳機能障害について理解できない

患者さんの家族がこのような態度で医療スタッフに接する場合は,家族に高次脳機能障害という病気を理解してもらうことが大事です。


医療スタッフによるカウンセリングを受け,機能回復訓練を行っているところを見学させてもらうなどすることにより,将来に対する希望が芽生えます。

同じ病院に複数の高次脳機能障害患者が入院している場合は,家族向けの学習会に参加して,病気に対する理解度を深めましょう。全国に構築されている家族会に参加することも,ネットワークを通じて病気を理解する助けになります。








◆家族が高次脳機能障害を支援している場合


家族が高次脳機能障害を理解しようと努めて患者さんを支援しても,家族だけでできることには限界があるので,医療スタッフや専門家に助言を求めましょう。




・リハビリテーションについて理解しよう
急性期からリハビリテーションを始めると,患者さんが嫌がっていると異議を唱えたくなることもありますが,急性期にリハビリテーションを受けるかどうかは,予後に大きく影響します。
急性期から回復期,慢性期に及ぶリハビリテーションプログラムの概要を家族が理解することが,患者さん自身がリハビリテーションに意欲を持つことにつながります。

・症状に対する対応に苦慮している
高次脳機能障害が原因の暴言・暴力などに悩んでいる家族は,自分たちだけで悩まず,医療スタッフや関係機関に相談しましょう。

・経済的な問題で悩んでいる
一家の大黒柱が高次脳機能障害になると収入が途絶え,高次脳機能障害の治療費が家計の負担となります。
経済的に困窮している場合は,患者さんの年齢や病状に応じて利用できる福祉サービスがあります。
病院のソーシャルワーカーに相談しましょう。

・家事負担が大きく家族が疲弊している
高次脳機能障害の患者さんに対する介助負担が大きく,家族が疲れ切っている場合に利用できる福祉サービスについて,行政の窓口で相談しましょう。
区市町村役場の相談窓口以外に,各都道府県には,高次脳機能障害支援普及事業拠点機関があり,より専門的な助言を受けられます。







(弁護士法人よつば総合法律事務所)

子どもが高次脳機能障害になったら,どんな事に気をつければ良いでしょうか?

2017年01月20日
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子どもが高次脳機能障害になったら,どんな事に気をつければ良いでしょうか?

子どもが高次脳機能障害になると,復学が一つの大きな目標になります。家族だけで復学の環境を整えるのではなく,リハビリスタッフや学校の協力を求めましょう。




 高次脳機能障害の子どもの復学



◆子どもが高次脳機能障害になったら?


高次脳機能障害は,脳を損傷すれば大人だけでなく子どもでも発症する病気です。

大人は,高次脳機能障害の治療でリハビリテーションを受けるとき,社会復帰や復職,就労などを目標とします。

一方,交通事故などが原因で子どもが高次脳機能障害になった場合は,学業の継続が大きな課題となります。




しかし,高次脳機能障害による後遺症は,人間関係を変化させます。
注意障害や記憶障害,遂行機能障害などの症状がある場合,復学した後,学校の友人が病気による症状であると理解せず,孤立する可能性もあるでしょう。

さらに,長期間に渡って休学していたことによる学業の遅れを取り戻さなければならないという重圧もあります。高次脳機能障害の子どもにとって,復学は大きなプレッシャーになる可能性があるのです。



退院したからといってすぐに復学するのではなく,専門家による心理的なサポートを受けながら復学に向けて準備するのが望ましいでしょう。







◆復学支援を受けよう


高次脳機能障害の子どもが復学する際には,リハビリテーションを担当している言語聴覚士(ST)を中心に,学校や地域の教育相談担当者とチームを作って,復学の環境を整えましょう。

たとえば,復学後も,午前と午後の授業をすべて受けることはむずかしいと言語聴覚士が判断した場合,午後は保健室で休憩するなど,学校側に臨機応変の対応を求めていきます。







◆復学後もリハビリテーションを受ける機会を維持しよう


高次脳機能障害による後遺症が残っているかぎり,リハビリテーションを受けて,機能回復の期待を持つことができます。

復学すると家庭と学校の往復で,通院してリハビリテーションを受ける時間を設けることがむずかしくなりますが,できる限りリハビリテーションを継続しましょう。
リハビリテーションの達成度を定期的に評価し,次の目標を設定する作業も不可欠です。







◆学校に理解を求める


授業を受けずに保健室で休んでいる時間が長かったり,リハビリテーションを受けるために学校を早退する様子を見て,学校の友達が特別扱いされていると感じるかもしれません。

高次脳機能障害であっても,外見からはわからないことが多いので,復学する際には学校と生徒に理解を求めましょう。







◆高次脳機能障害の家族会などのネットワークを活用する




高次脳機能障害に関する悩みを一人で抱え込まず,家族会などのネットワークに参加すると,悩みを聞いてもらえたり,問題解決のヒントを得られます。




(弁護士法人よつば総合法律事務所)

高次脳機能障害のリハビリテーションでは,どんな工夫が必要ですか?

2017年01月19日
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高次脳機能障害のリハビリテーションでは,どんな工夫が必要ですか?

高次脳機能障害のリハビリテーションは時間がかかる長い道のりなので,本人の意欲を喪失させないように,できることを見つけて喜ぶといった共感を持つことが大事です。

 高次脳機能障害のリハビリテーション



◆高次脳機能障害のリハビリテーションは長い道のり


交通事故で高次脳機能障害を発症すると,完治がむずかしく後遺障害が残る病気なので,リハビリテーションは時間をかけて取り組む必要があります。

数週間リハビリテーションに精を出したからといって,すぐに効果が現れるとは限りません。



高次脳機能障害のリハビリテーションは,長い道のりであることを患者さんに理解させ,家族が協力してリハビリテーションに取り組まなくては効果は期待できません。




「高次脳機能障害の治療をこれ以上続けても病状は変わらない,または治ったようでも元の状態に戻る。」と主治医が認めて後遺障害診断書を作成すると,症状固定をしたことになり,後遺障害が残ったことが明らかになります。
つまり,その症状は固定されたままで,今後もその症状が軽くなることはありませんというのが,症状固定が意味するところです。

しかし,高次脳機能障害の患者さんは,しばしば症状固定を認めたがりません。
症状固定をした後,遺障害を回復させてもとの健康状態に戻りたい,職場復帰をしたいなど,患者さんにはそれぞれ願望があります。

高次脳機能障害の患者さんは,早い時期からリハビリテーションプログラムに沿って機能回復訓練を受けます。患者さんがそれぞれ目的を持つからこそ,モチベーションを維持してリハビリテーションを頑張ることができるのです。







◆リハビリテーションに対する意欲を引き出す


患者さんが抱く願望のなかには非現実的なものもあり,リハビリテーションを行っても,患者さんが望むような健康状態に戻ることができない可能性もあります。


医療スタッフと患者さんの家族は,患者さんのリハビリテーションに対する意欲を引き出す工夫が求められます。

たとえば,できることを見つけ,できたことを喜ぶことは,患者さんが感じる達成感を共有し,さらに一段階上の目標に挑戦する意欲を引き出します。
たとえ,目標を達成できなくても,チャレンジした過程を検証し,患者さんの努力を認めることで,患者さんがもう一度挑戦してみようという気持ちを持つことができます。










◆リハビリテーションのゴールとは?



高次脳機能障害におけるリハビリテーションは,患者さんの希望をどのように実現させるかをゴールに設定すると良いでしょう。完全な機能回復をゴールにするのは非現実的で,リハビリテーションに対する患者さんの意欲を喪失させます。

たとえば,職場復帰が患者さんの目標の場合,健康な時のように通勤して同じ仕事をこなすことはできないかもしれません。
就労で求められるコミュニケーション能力,交通機関を利用した通勤,仕事に対する集中力とスキルは十分かといったことを確認しつつ,後遺症があっても職場復帰できるように,リハビリテーションプログラムを組みます。







(弁護士法人よつば総合法律事務所)

交通事故で高次脳機能障害を発症してしまったら,家族はどんなサポートをすれば良いのでしょうか?

2017年01月18日
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交通事故で高次脳機能障害を発症してしまったら,家族はどんなサポートをすれば良いのでしょうか?

高次脳機能障害が原因の暴言,暴力などの社会的行動障害で苦しんでいる家族は,保健所や精神福祉センターなどの窓口に相談に行きましょう。




 社会的行動障害と家族の対応



◆高次脳機能障害の人が周囲を困らせる症状とは?


交通事故に遭って高次脳機能障害を発症すると,発病する前には見られなかった社会的行動障害がしばしば現れます。


社会的行動障害とは,暴言,暴力,徘徊,性的逸脱,浪費,自傷,ギャンブル,飲酒,万引きなどを指します。
これらの行動は周囲の人,特に家族を困らせ,高次脳機能障害の患者さんが孤立する原因となります。


高次脳機能障害で社会的行動障害が現れるのは,脳の損傷だけが原因とは限りません。
怪我により能力が低下したことや,高次脳機能障害になったために激変した生活を受け入れることができずにいるため,その感情のはけ口が社会的行動障害となって現れる場合もあります。

しかし多くの場合は,高次脳機能障害のために,人間関係を築く能力や問題解決能力が低下したことが原因で,社会的行動障害が現れます。さらに,日常生活における様々な技能が低下したことも,社会的行動障害を引き起きします。







◆家族は保護者か?それとも被害者か?


退院後の高次脳機能障害の患者さんは,発病前より生活圏が狭まり,自宅にこもりがちになります。
そのため,社会的行動障害の症状がある患者さんの感情のはけ口は,家族に向けられることが多くなります。



暴力や浪費癖による金銭の要求などがあっても,高次脳機能障害の患者さんを守ることができるのは家族だけだと思って,患者さんの理不尽な行動を黙認しがちです。
高次脳機能障害の患者さんの家族は,社会的行動障害の被害者であると同時に社会から守る保護者でもあるため,我慢をしてしまうのです。

しかし,家族の忍耐には限界があります。
高次脳機能障害の患者さんが,深刻なトラブルを起こさないうちに,社会的支援を求めてください。

たとえば,たえまない暴言,暴力に家族が耐えかねているような場合は,家族の心のなかには不安や不満がうっ積していることでしょう。



では,高次脳機能障害の患者を抱える家族が平温な日常を取り戻すためには,どうすれば良いのでしょうか?







◆行政の窓口に相談に行く


保健所や精神保険福祉センター,都道府県の障害福祉担当課などに,患者さんをどのようにケアしたら良いか相談し,患者さんと家族を交えた関係者会議を開催するよう行動してください。



社会的問題行動がある高次脳機能障害の患者さんは,無意識にそのような行動をするのではありません。行動をやめたくてもやめられなくて,問題を起こしてしまったときは,患者さんを非難したり叱ったりすることは避けるべきですが,患者さんが周囲の人間を困らせている症状については,周囲を困らせていることを本人が明確に知るようにするべきです。







(弁護士法人よつば総合法律事務所)
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